54 / 234
番外編【腰痛】7大鷹さんと彼女の関係は……
しおりを挟む
「新しく入社した人と一緒だとは聞いていましたが、まさか、その社員というのが……」
大鷹さんに今の自分の居場所を伝えたら、歯切れ悪い返答があった。河合さんが大鷹さんにしきりに会いたがっている理由と、何か関係があるのだろうか。
「大鷹さん、もしかして、河合さんと知り合い」
「もしもし、おおたかっち、久しぶりい!最近、顔見ないなと思っていたけど、こんなところにいたとは思わなかったよお」
突然、横から河合さんの腕が伸びてきて、私のスマホが奪われた。私の言葉は途中で遮られ、河合さんが大鷹さんと会話を始める。
「お久しぶりです。相変わらずの話し方ですね。まあ、そんなことはどうでもいいので、さっさと僕の妻を帰してもらえますか。いや、それよりも」
「僕が迎えに行きますって感じかな」
「あ、あの、河合さんと大鷹さんはどういった関係なのでしょうか?」
河合さんは、私に配慮してか、通話をスピーカー状態にして、私にも大鷹さんの声が聞こえるようにしてくれていた。そのため、大鷹さんの困惑したような、呆れたような声がスマホから聞こえてくる。かなり親しげな様子なので、気になってしまう。
「彼女は、僕と同じ大学で」
「元カノでーす!」
二人の声が重なった。
「も、元カノ……」
「そう、元カノなの。倉敷先輩が結婚しているって聞いて、旦那さんのことを平野さんに聞いたって言ったけど、その時に、旦那さんの苗字を聞いたら、『大鷹』だって。大鷹って苗字は珍しいでしょ。確か、おおたかっちはこの地域で働いているって思って。だから、写真を見たかったんですよ」
「はあ」
スマホから大きなため息が聞こえた。大鷹さんは河合さんの説明を否定するだろうか。耳を澄ませて大鷹さんからの言葉を待つと、河合さんとの関係は肯定された。
「河合さんの言う通りです。同じ大学に通っていて、大学生の時に一年ほど付き合っていましたよ。でも、今は彼女に未練はまったくありません。浮気なども絶対にありえないので、心配はしなくて大丈夫ですよ」
「心配なんて……。でも、なぜ、大鷹さんは河合さんのことを知っていたのですか?」
大鷹さんの言葉を信用できないわけではない。ただ、私の心がすっきりしないだけだ。この気持ちが何なのか考えたら終わりである。考えないように、疑問に思ったことを大鷹さんに質問する。
「紗々さんが話していたでしょう?『話し方が独特で、河合さんという26歳の中途採用の女性がうちにきた』と。そして、『僕のことをしきりに知りたがっている』とも言っていましたよね」
そういえば、夕食時にそんなことを話したかもしれない。しかし、それだけで元カノかどうかわかるものだろうか。
「勘ですよ。なんとなく、嫌な予感がしたので、電話してみただけです。でも、当たっていて良かった」
「ていうか、おおたかっちが、倉敷先輩と結婚していたとはね。あれ、そうなると、おおたかっちは、腐男子ってやつだったの?だったら、私にも話してくれれば良かったのに」
河合さんが空気を読まずに、大鷹さんに話しかける。それに対して、私を置いてきぼりにして、大鷹さんが返答する。
「河合さんといたときは、腐男子ではありませんでした。紗々さんがBL(ボーイズラブ)の魅力を教えてくれたんですよ」
「ふうん。もし、私がBL好きで、腐女子だって暴露して、一緒に鑑賞しようと誘ったら、おおたかっちは、今でも私とつき合っていたのかな」
大鷹さんと河合さんが私をさしおいて、会話をしている。大鷹さんも表情はわからないが、無視することなく会話を続けている辺り、彼女のことを嫌いではないのだろう。そう思うとなんだか、無性に嫌な気持ちになったので、河合さんからスマホを奪い返してやった。
「大鷹さん、私、今からすぐに帰ります」
「えええ!」
「僕が迎えにいき」
「車なので大丈夫です。では」
大鷹さんの言葉を最後まで聞かずに、強制的に通話を終了した。
「私に対して、嫉妬したんですかあ!」
「しちゃいけませんか?」
「別にー。まあ、今日はもう、ゆっくり落ち着いて話はできそうにないから、いろいろ積もる話は、倉敷先輩の家でしましょう!おおたかっちも交えて、三人でどうでしょうか」
「お邪魔しました。夕食とデザートありがとうございました」
私の気持ちを知ってか知らずか、あっけらかんと次の予定を立てる彼女に、私は何も返すことはなく、河合さんの家を後にした。
大鷹さんに今の自分の居場所を伝えたら、歯切れ悪い返答があった。河合さんが大鷹さんにしきりに会いたがっている理由と、何か関係があるのだろうか。
「大鷹さん、もしかして、河合さんと知り合い」
「もしもし、おおたかっち、久しぶりい!最近、顔見ないなと思っていたけど、こんなところにいたとは思わなかったよお」
突然、横から河合さんの腕が伸びてきて、私のスマホが奪われた。私の言葉は途中で遮られ、河合さんが大鷹さんと会話を始める。
「お久しぶりです。相変わらずの話し方ですね。まあ、そんなことはどうでもいいので、さっさと僕の妻を帰してもらえますか。いや、それよりも」
「僕が迎えに行きますって感じかな」
「あ、あの、河合さんと大鷹さんはどういった関係なのでしょうか?」
河合さんは、私に配慮してか、通話をスピーカー状態にして、私にも大鷹さんの声が聞こえるようにしてくれていた。そのため、大鷹さんの困惑したような、呆れたような声がスマホから聞こえてくる。かなり親しげな様子なので、気になってしまう。
「彼女は、僕と同じ大学で」
「元カノでーす!」
二人の声が重なった。
「も、元カノ……」
「そう、元カノなの。倉敷先輩が結婚しているって聞いて、旦那さんのことを平野さんに聞いたって言ったけど、その時に、旦那さんの苗字を聞いたら、『大鷹』だって。大鷹って苗字は珍しいでしょ。確か、おおたかっちはこの地域で働いているって思って。だから、写真を見たかったんですよ」
「はあ」
スマホから大きなため息が聞こえた。大鷹さんは河合さんの説明を否定するだろうか。耳を澄ませて大鷹さんからの言葉を待つと、河合さんとの関係は肯定された。
「河合さんの言う通りです。同じ大学に通っていて、大学生の時に一年ほど付き合っていましたよ。でも、今は彼女に未練はまったくありません。浮気なども絶対にありえないので、心配はしなくて大丈夫ですよ」
「心配なんて……。でも、なぜ、大鷹さんは河合さんのことを知っていたのですか?」
大鷹さんの言葉を信用できないわけではない。ただ、私の心がすっきりしないだけだ。この気持ちが何なのか考えたら終わりである。考えないように、疑問に思ったことを大鷹さんに質問する。
「紗々さんが話していたでしょう?『話し方が独特で、河合さんという26歳の中途採用の女性がうちにきた』と。そして、『僕のことをしきりに知りたがっている』とも言っていましたよね」
そういえば、夕食時にそんなことを話したかもしれない。しかし、それだけで元カノかどうかわかるものだろうか。
「勘ですよ。なんとなく、嫌な予感がしたので、電話してみただけです。でも、当たっていて良かった」
「ていうか、おおたかっちが、倉敷先輩と結婚していたとはね。あれ、そうなると、おおたかっちは、腐男子ってやつだったの?だったら、私にも話してくれれば良かったのに」
河合さんが空気を読まずに、大鷹さんに話しかける。それに対して、私を置いてきぼりにして、大鷹さんが返答する。
「河合さんといたときは、腐男子ではありませんでした。紗々さんがBL(ボーイズラブ)の魅力を教えてくれたんですよ」
「ふうん。もし、私がBL好きで、腐女子だって暴露して、一緒に鑑賞しようと誘ったら、おおたかっちは、今でも私とつき合っていたのかな」
大鷹さんと河合さんが私をさしおいて、会話をしている。大鷹さんも表情はわからないが、無視することなく会話を続けている辺り、彼女のことを嫌いではないのだろう。そう思うとなんだか、無性に嫌な気持ちになったので、河合さんからスマホを奪い返してやった。
「大鷹さん、私、今からすぐに帰ります」
「えええ!」
「僕が迎えにいき」
「車なので大丈夫です。では」
大鷹さんの言葉を最後まで聞かずに、強制的に通話を終了した。
「私に対して、嫉妬したんですかあ!」
「しちゃいけませんか?」
「別にー。まあ、今日はもう、ゆっくり落ち着いて話はできそうにないから、いろいろ積もる話は、倉敷先輩の家でしましょう!おおたかっちも交えて、三人でどうでしょうか」
「お邪魔しました。夕食とデザートありがとうございました」
私の気持ちを知ってか知らずか、あっけらかんと次の予定を立てる彼女に、私は何も返すことはなく、河合さんの家を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる