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6結婚したくない腐女子は結婚しました~もうしばらくは付き合いましょう②~
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「大鷹さんは、子供が欲しいとは思わないのですか。」
家に着いた私たちは、リビングでコーヒーを飲んでいた。特に面白い内容でもなかったようで、大鷹さんはコーヒーを口から吹き出すことはなかった。私がいつもと様子が違っていることを感じ取ったとでもいうのだろうか。大鷹さんならそれくらいはやりそうなので、真偽のほどはわからないが。
考えるそぶりをしていたが、質問には答えてくれはしなかった。
「紗々さんはどうですか。」
「質問を質問で返すのは、よくありません。」
「先に答えてくれれば、僕も正直に答えるとします。」
「私は今も昔も変わりません。この先も変わることはないでしょう。でも、大鷹さんは普通の人間ですので、今がチャンスかもしれませんよ。」
正直、これ以上は自分でもやばいと思っていた。これ以上、大鷹さんと一緒に居れば、間違いなく、離れがたくなってしまう。離婚をしたくなくなってしまう。そうなると、どう転んでも大鷹さんに明るい未来は来ない。それはいけない。自分のせいで、大鷹さんの未来をつぶしてしまうのは悲しい。
ふと、頭にある考えが浮かんだ。この気持ちは、BLの受けの気持ちに似ているのではないだろうか。そうなると、がぜん、この気持ちを文章に起こしたい欲求にとらわれる。そうか、自分で実体験しているのだ。なんということだ。
「受けはこんな気持ちでつきあっていたのか。そう考えると素晴らしいこの切ない気持ち。BLの中の男の気持ちがわかる日がこようとは。」
「あの。」
「わかっています。大鷹さんのことを考えれば、選択肢は一つでしょう。そう、本来なら、私たちは出会ってはいけなかった。出会ってしまったがゆえに、不幸は訪れた。それならいっそ会わなければ、私がおとなしく家に引きこもっていれば……。」
妙にテンションが上がってきた。そう、私は物語の悲劇の主人公。そう思えば、この試練は神からの贈り物。
テンションが上がりだした私に大鷹さんは戸惑っている。しかし、私の独白は止まらない。否、もうこのまま最後まで走り切ってしまえと、頭の中の私が叫んでいる。
「そう、私のせいでこれ以上、大鷹さんを苦しめるのはよそう。ただ一言、ただ一枚の紙にサインをするだけで私はあなたを解放できる。」
「いや、何を突然、っていうか、ダメですよ。絶対僕は嫌ですからね。」
「ああ、どうして。私はあなたのことを考えているのに、罪な男。そうやって、今まで女性や男性をたぶらかしてきたのね。悪い男。」
本当に気分がいい。そうだ。初めからそうだったのだ。私は、結婚したくなかったはず。それなのに自分の気持ちを無視して、結婚にこぎつけたのが悪かった。
「すいません。お願いですから、一度、元の世界に戻ってきてください。」
大鷹さんが何か言っているが、この際、全無視だ。
「ふふふ。」
笑いがこみ上げてくる。急いで、今日この瞬間に感じたことを文章に起こさなければ。私は急いで、自分の部屋のパソコンに電源を入れようとした。部屋に入ろうとしたが、それはかなわなかった。ドアの下に長い足が挟まっている。
「紗々さん。」
大声で名前を呼ばれて我に返る。少々どころか、興奮しすぎてだいぶ正気を失っていた。どうやらやりすぎてしまったらしい。
「あなたが子供を欲しくないことも、僕と離婚したいことはわかります。でも、いつも言っているでしょう。僕にだって、変わらないものがあるんです。」
いきなり私の唇に自分の唇を押し付けてきた。ぶちゅっと色気のない音がして、それは離れていく。離れていく顔は赤く染まっていた。
「僕は、好きな人以外に自らキスしたことはありませんからね。」
「おう、これが強引攻めというものか。」
「さすがにその反応はひどくないですか。」
「いや、まあ、今ので、逆に冷静になれた。そう。もし本気で離婚したいのなら、いろいろ証拠を集める必要があったのを忘れていた。大鷹さんの理想の相手も見つけていないのに、大鷹さんをほっぽり出すのはダメだった。」
当初の計画をすっかり忘れていた。
「あきらめてくれていないみたいですけど、今すぐにとはならなそうで安心しました。では、執筆頑張ってくださいね。『紗々の葉先生』。」
大鷹さんは気分がよくなったようで、鼻歌を歌いながら、自分の部屋に消えていく。
残された私は、自分の唇に触れて考える。
「とうとうファーストキスを奪われてしまった。私もとうとう、二次元の仲間入りということか。それとも、『三次元にようこそ、リア充の仲間へ』とでもいえばいいのか。」
今まで、頬やおでこにキスされたことはあったが、唇にされたのは初めてだった。初めてのキスだったが、潔癖気味の私にしては珍しく、鳥肌も嫌悪感もなかった。
「よし、今日はたくさん書いて書いて書きまくるとしますか。」
私はこの一連の出来事と気持ちを小説にぶつけることに決めた。
その後、私は少しだけ、大鷹さんと離婚しないでもいいかなと思い始めていた。子供の件は譲れそうにないけれど、離婚して大鷹さんが他の女性(男性)に、笑顔を振りまいているのを想像すると、胸が痛むのだ。あの笑顔は私のものだと私の心が叫んでいる。
これはきっと、恋である。30歳にしてやっと恋愛というものをした。大鷹さんには迷惑かもしれないが、これからも一緒に時を歩んでいきたいと思ってしまった。
さて、結婚したくない女子は結婚してしまった。大鷹さんは口では離婚したくない、好きだと言ってはいても、将来どうなるかわからない。それでも、今この瞬間は、大鷹さんは私のものだ。
コミュ障ボッチの引きこもり腐女子を好きというのなら、とことん、付き合ってもらうまで。
そう思うことにして、私は今日も結婚生活を満喫するだけだった。もちろん、今まで通り、離婚するための材料を集めることは忘れない。それでも、その材料を使わないで済むことを願っている自分がいることに苦笑を隠し切れなかった。
家に着いた私たちは、リビングでコーヒーを飲んでいた。特に面白い内容でもなかったようで、大鷹さんはコーヒーを口から吹き出すことはなかった。私がいつもと様子が違っていることを感じ取ったとでもいうのだろうか。大鷹さんならそれくらいはやりそうなので、真偽のほどはわからないが。
考えるそぶりをしていたが、質問には答えてくれはしなかった。
「紗々さんはどうですか。」
「質問を質問で返すのは、よくありません。」
「先に答えてくれれば、僕も正直に答えるとします。」
「私は今も昔も変わりません。この先も変わることはないでしょう。でも、大鷹さんは普通の人間ですので、今がチャンスかもしれませんよ。」
正直、これ以上は自分でもやばいと思っていた。これ以上、大鷹さんと一緒に居れば、間違いなく、離れがたくなってしまう。離婚をしたくなくなってしまう。そうなると、どう転んでも大鷹さんに明るい未来は来ない。それはいけない。自分のせいで、大鷹さんの未来をつぶしてしまうのは悲しい。
ふと、頭にある考えが浮かんだ。この気持ちは、BLの受けの気持ちに似ているのではないだろうか。そうなると、がぜん、この気持ちを文章に起こしたい欲求にとらわれる。そうか、自分で実体験しているのだ。なんということだ。
「受けはこんな気持ちでつきあっていたのか。そう考えると素晴らしいこの切ない気持ち。BLの中の男の気持ちがわかる日がこようとは。」
「あの。」
「わかっています。大鷹さんのことを考えれば、選択肢は一つでしょう。そう、本来なら、私たちは出会ってはいけなかった。出会ってしまったがゆえに、不幸は訪れた。それならいっそ会わなければ、私がおとなしく家に引きこもっていれば……。」
妙にテンションが上がってきた。そう、私は物語の悲劇の主人公。そう思えば、この試練は神からの贈り物。
テンションが上がりだした私に大鷹さんは戸惑っている。しかし、私の独白は止まらない。否、もうこのまま最後まで走り切ってしまえと、頭の中の私が叫んでいる。
「そう、私のせいでこれ以上、大鷹さんを苦しめるのはよそう。ただ一言、ただ一枚の紙にサインをするだけで私はあなたを解放できる。」
「いや、何を突然、っていうか、ダメですよ。絶対僕は嫌ですからね。」
「ああ、どうして。私はあなたのことを考えているのに、罪な男。そうやって、今まで女性や男性をたぶらかしてきたのね。悪い男。」
本当に気分がいい。そうだ。初めからそうだったのだ。私は、結婚したくなかったはず。それなのに自分の気持ちを無視して、結婚にこぎつけたのが悪かった。
「すいません。お願いですから、一度、元の世界に戻ってきてください。」
大鷹さんが何か言っているが、この際、全無視だ。
「ふふふ。」
笑いがこみ上げてくる。急いで、今日この瞬間に感じたことを文章に起こさなければ。私は急いで、自分の部屋のパソコンに電源を入れようとした。部屋に入ろうとしたが、それはかなわなかった。ドアの下に長い足が挟まっている。
「紗々さん。」
大声で名前を呼ばれて我に返る。少々どころか、興奮しすぎてだいぶ正気を失っていた。どうやらやりすぎてしまったらしい。
「あなたが子供を欲しくないことも、僕と離婚したいことはわかります。でも、いつも言っているでしょう。僕にだって、変わらないものがあるんです。」
いきなり私の唇に自分の唇を押し付けてきた。ぶちゅっと色気のない音がして、それは離れていく。離れていく顔は赤く染まっていた。
「僕は、好きな人以外に自らキスしたことはありませんからね。」
「おう、これが強引攻めというものか。」
「さすがにその反応はひどくないですか。」
「いや、まあ、今ので、逆に冷静になれた。そう。もし本気で離婚したいのなら、いろいろ証拠を集める必要があったのを忘れていた。大鷹さんの理想の相手も見つけていないのに、大鷹さんをほっぽり出すのはダメだった。」
当初の計画をすっかり忘れていた。
「あきらめてくれていないみたいですけど、今すぐにとはならなそうで安心しました。では、執筆頑張ってくださいね。『紗々の葉先生』。」
大鷹さんは気分がよくなったようで、鼻歌を歌いながら、自分の部屋に消えていく。
残された私は、自分の唇に触れて考える。
「とうとうファーストキスを奪われてしまった。私もとうとう、二次元の仲間入りということか。それとも、『三次元にようこそ、リア充の仲間へ』とでもいえばいいのか。」
今まで、頬やおでこにキスされたことはあったが、唇にされたのは初めてだった。初めてのキスだったが、潔癖気味の私にしては珍しく、鳥肌も嫌悪感もなかった。
「よし、今日はたくさん書いて書いて書きまくるとしますか。」
私はこの一連の出来事と気持ちを小説にぶつけることに決めた。
その後、私は少しだけ、大鷹さんと離婚しないでもいいかなと思い始めていた。子供の件は譲れそうにないけれど、離婚して大鷹さんが他の女性(男性)に、笑顔を振りまいているのを想像すると、胸が痛むのだ。あの笑顔は私のものだと私の心が叫んでいる。
これはきっと、恋である。30歳にしてやっと恋愛というものをした。大鷹さんには迷惑かもしれないが、これからも一緒に時を歩んでいきたいと思ってしまった。
さて、結婚したくない女子は結婚してしまった。大鷹さんは口では離婚したくない、好きだと言ってはいても、将来どうなるかわからない。それでも、今この瞬間は、大鷹さんは私のものだ。
コミュ障ボッチの引きこもり腐女子を好きというのなら、とことん、付き合ってもらうまで。
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