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ふたつのバトル
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──やめてくれる?
武尊は自身を屈服させるかのような重い威圧をひと睨みで霧散させた。
「取り込み中って言いましたよね?高熱なんです、早く寝かせてあげないと」
「ここには、オメガが三人いるだけのはずだ。君は一体…」
オメガが三人のところで武尊の眉がピクリと動いた。
目の前のアルファが周平のことも知っている、そう思うとふつふつと腹が煮えてくる。
「お前が誰だか知らないが失せろ」
「君、嘘だろ…まさか、九鬼のはぐれ者か」
「失せろ」
ガクガクと膝が震えているアルファを押しのけて武尊は玄関の鍵を開けてピシャリと閉めた。
待たせたね大和君、と二階への階段をあがって大和の部屋のベッドに寝かせて、さてどうしようと首を捻った。
おでこにぺったんこするやつを貼ればいいんだろうか。
風邪なんかひいたことがないからわからないが、そんなCMを見たことがある。
シュウに電話しよっとウキウキで階段を降りた武尊だったが、玄関の磨りガラス越しにまだ人影が見えた途端チッと舌打ちをした。
ガラガラと玄関扉を開けて男を威圧する。
「失せろって言ったよね?」
「あ、いや、その松下君は…」
「なにしてんの?」
「シュウ!大和君、ちゃんと寝かせたよ!」
男に見せた表情とは打って変わって、ぱぁっと顔を綻ばせた武尊が靴も履かずに周平に駆け寄った。
「やまちは?」
「寝かせた。今、おでこぺったんこするやつどこか聞こうと電話しようと思ってたとこ」
「なんか履け」
ペちと額を叩かれた武尊はそれでも嬉しそうにでれでれと周平にまとわりついた。
「卯花編集長、なにか御用ですか?」
「シュウ、これ誰?まさか…」
「元カレとかじゃないから」
良かった、と笑う周平を卯花は呆然と見つめていた。
さっきまでの威圧はどうした、どこへやった?やにさがった表情とほんの少し前の刺すような視線が一致しない。
「あの、松下君のサイトに商品が無くて、それで体調でも悪いのかと…」
大和を気にするなんてどういう風の吹き回しだろう。
卯花はうろうろと視線を彷徨わせ、それもチラチラと武尊を気にしている。
こんな卯花は初めて見たな、と周平は思った。
いかにも上流のアルファ然としていて、ゆったり構えていた卯花はどこへいってしまったのか。
武さんがなにかした?いや、どう考えても卯花の方が格が上っぽいしなぁと、周平は武尊を見たがニコニコと笑ってるだけ。
よくわからないけど、今は大和の元へ早く行きたい。
「まぁ、立ち話もなんですから中へどうぞ」
「シュウ!アルファなのに家に入れるの!?」
「それ武さんが言う?」
ごもっともな話である。
ところ変わって、柳楽の爺が入院している総合病院の一室で侑はバナナを食べていた。
食べながら相対しているのは、詰襟の制服を着た高校生である。
「だれれふか?」
先手必勝、相手になにか言われる前に侑はもごもごとバナナを口に入れたまま問うた。
バナナは爺への昼食についてきたものだ。
「おじいちゃん、この人誰?」
「爺、これ孫か!?」
ごくんとバナナを飲み込んだ侑は高校生を上から下までまじまじと眺めて、爺に頬をグーでぐりぐりとされた。
いひゃいいひゃい、と言う侑を無視して爺は孫に声をかける。
「和明、一人で来たのか?」
「いや、父さんと」
「そうか、もう帰れ」
「随分な言いようだな。入院だって家族の保証人がいるんだぞ」
現れた男は爺の息子と名乗り、最初に侑を周平と間違えた。
それくらい息子の明は実家と疎遠だった。
「医者と話した。高血圧以外は問題ないそうだ。明日、退院できる」
「そうか」
「これ以上、近所に迷惑かける前に施設に入れ」
「馬鹿言うな」
「どっちが馬鹿だ。梅園君が気づかなかったら孤独死だって有り得たんだぞ」
「お前にゃ迷惑かけん」
「今!現在!かけてるだろう!」
「頼んでないだろう!」
やんややんやと言い合う二人を見ながら侑はバナナを食べ終わった。
高校生の孫、和明は無言だがその視線は明らかに呆れていた。
「そっくりだね」
「「 どこがだ! 」」
「カッとなってそうやって言い合うとこ」
なあ?と侑は和明に声をかけた。
和明は未だに無言で、ふいと視線を逸らす。
「似てるわけないだろ、親父と俺は血が繋がってない」
「ふうん、でも親父なんだ」
「小僧、黙っとれ!」
「なんなんだ君は!」
爺も息子の明も真っ赤な顔で侑に向き合った。
「ほら、似てるじゃん」
へらりと笑う侑に、とうとう和明が吹き出して笑いだした。
あっははと腹を押さえながら笑うのに爺と息子が、和明!とまた揃って声を荒らげた。
「僕も、父さんとおじいちゃんは似てると思うよ。二人とも意地っ張りなところとか」
なあ?と今度は和明から笑いかけられた侑は、そうだなと優しく笑った。
武尊は自身を屈服させるかのような重い威圧をひと睨みで霧散させた。
「取り込み中って言いましたよね?高熱なんです、早く寝かせてあげないと」
「ここには、オメガが三人いるだけのはずだ。君は一体…」
オメガが三人のところで武尊の眉がピクリと動いた。
目の前のアルファが周平のことも知っている、そう思うとふつふつと腹が煮えてくる。
「お前が誰だか知らないが失せろ」
「君、嘘だろ…まさか、九鬼のはぐれ者か」
「失せろ」
ガクガクと膝が震えているアルファを押しのけて武尊は玄関の鍵を開けてピシャリと閉めた。
待たせたね大和君、と二階への階段をあがって大和の部屋のベッドに寝かせて、さてどうしようと首を捻った。
おでこにぺったんこするやつを貼ればいいんだろうか。
風邪なんかひいたことがないからわからないが、そんなCMを見たことがある。
シュウに電話しよっとウキウキで階段を降りた武尊だったが、玄関の磨りガラス越しにまだ人影が見えた途端チッと舌打ちをした。
ガラガラと玄関扉を開けて男を威圧する。
「失せろって言ったよね?」
「あ、いや、その松下君は…」
「なにしてんの?」
「シュウ!大和君、ちゃんと寝かせたよ!」
男に見せた表情とは打って変わって、ぱぁっと顔を綻ばせた武尊が靴も履かずに周平に駆け寄った。
「やまちは?」
「寝かせた。今、おでこぺったんこするやつどこか聞こうと電話しようと思ってたとこ」
「なんか履け」
ペちと額を叩かれた武尊はそれでも嬉しそうにでれでれと周平にまとわりついた。
「卯花編集長、なにか御用ですか?」
「シュウ、これ誰?まさか…」
「元カレとかじゃないから」
良かった、と笑う周平を卯花は呆然と見つめていた。
さっきまでの威圧はどうした、どこへやった?やにさがった表情とほんの少し前の刺すような視線が一致しない。
「あの、松下君のサイトに商品が無くて、それで体調でも悪いのかと…」
大和を気にするなんてどういう風の吹き回しだろう。
卯花はうろうろと視線を彷徨わせ、それもチラチラと武尊を気にしている。
こんな卯花は初めて見たな、と周平は思った。
いかにも上流のアルファ然としていて、ゆったり構えていた卯花はどこへいってしまったのか。
武さんがなにかした?いや、どう考えても卯花の方が格が上っぽいしなぁと、周平は武尊を見たがニコニコと笑ってるだけ。
よくわからないけど、今は大和の元へ早く行きたい。
「まぁ、立ち話もなんですから中へどうぞ」
「シュウ!アルファなのに家に入れるの!?」
「それ武さんが言う?」
ごもっともな話である。
ところ変わって、柳楽の爺が入院している総合病院の一室で侑はバナナを食べていた。
食べながら相対しているのは、詰襟の制服を着た高校生である。
「だれれふか?」
先手必勝、相手になにか言われる前に侑はもごもごとバナナを口に入れたまま問うた。
バナナは爺への昼食についてきたものだ。
「おじいちゃん、この人誰?」
「爺、これ孫か!?」
ごくんとバナナを飲み込んだ侑は高校生を上から下までまじまじと眺めて、爺に頬をグーでぐりぐりとされた。
いひゃいいひゃい、と言う侑を無視して爺は孫に声をかける。
「和明、一人で来たのか?」
「いや、父さんと」
「そうか、もう帰れ」
「随分な言いようだな。入院だって家族の保証人がいるんだぞ」
現れた男は爺の息子と名乗り、最初に侑を周平と間違えた。
それくらい息子の明は実家と疎遠だった。
「医者と話した。高血圧以外は問題ないそうだ。明日、退院できる」
「そうか」
「これ以上、近所に迷惑かける前に施設に入れ」
「馬鹿言うな」
「どっちが馬鹿だ。梅園君が気づかなかったら孤独死だって有り得たんだぞ」
「お前にゃ迷惑かけん」
「今!現在!かけてるだろう!」
「頼んでないだろう!」
やんややんやと言い合う二人を見ながら侑はバナナを食べ終わった。
高校生の孫、和明は無言だがその視線は明らかに呆れていた。
「そっくりだね」
「「 どこがだ! 」」
「カッとなってそうやって言い合うとこ」
なあ?と侑は和明に声をかけた。
和明は未だに無言で、ふいと視線を逸らす。
「似てるわけないだろ、親父と俺は血が繋がってない」
「ふうん、でも親父なんだ」
「小僧、黙っとれ!」
「なんなんだ君は!」
爺も息子の明も真っ赤な顔で侑に向き合った。
「ほら、似てるじゃん」
へらりと笑う侑に、とうとう和明が吹き出して笑いだした。
あっははと腹を押さえながら笑うのに爺と息子が、和明!とまた揃って声を荒らげた。
「僕も、父さんとおじいちゃんは似てると思うよ。二人とも意地っ張りなところとか」
なあ?と今度は和明から笑いかけられた侑は、そうだなと優しく笑った。
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