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幼馴染、そして兄
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どうしよう。
俺…ユーリに告白された…?
俺が殿下の婚約者と分かっていながら、ユーリは俺をあのパーティーに誘った。
それは王家を敵に回すも同然の事。
「ぁ…っ」
この国で王家は絶対。
それに逆らったら、ユーリの家すら危ない。
「…、ごめん…!」
ユーリを守る選択肢は、これ一つしかない。
俺は大事な親友で幼馴染を、失いたくはないのだ。
ユーリは俺の言わんとした事は分かったのだろう。
苦笑を浮かべ、いつも通り俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回して背を向けた。
「殿下の婚約者…だもんな、お前は高嶺の花だよ」
違う、そんなんじゃない。
ユーリの為とか言いながら、頭の中はアルバートでいっぱいだった…。
アルバートじゃないと嫌だ。
初めて手離したくないと想えた存在。
画面越しじゃなく、温かくて、俺の名前を呼ぶアルバートをどうして拒絶出来ようか。
それが例え、親友を傷付ける事になっても。
「…そろそろ戻るぞー」
「うん…」
きっと泣きたいのは、俺じゃなくてユーリの方。
だから俺は泣かない。
そんな資格、俺には無い。
家に帰ると、まだレオンは帰ってきていなかった。
自室に戻り、ベッドに全身を預けて沈む。
……正解は、あったんだろうか。
俺は自分の欲を優先した。
…勇気を出して言ってくれたユーリの気持ちを、無下にして。
あれから先生達の元に戻るまでの道中、気にするなとユーリに言われたけど、気にするに決まってるじゃないか。
「…、まだ親友でいたいなんて、虫が良すぎるよな…」
それに、アルバートが本当にそのパーティーに一緒に行ってくれるとは限らない。
また別の方法でアルバートに近付く可能性が高い彼の存在が、俺にとっての脅威だった。
だからと言って、キープを作るなんて事も出来ない…そんな器用じゃないし、相手に悪いじゃないかそんなの!
ばふばふと枕に苛立ちや何やらを詰め込んだ気持ちをぶつけていると、扉を叩く音がしてすぐさま起き上がった。
「リオ、帰ってきてる?」
レオンの声だ。
俺は前回突然扉を開けられたのを思い出し、今度は自分から開けようと早足で扉まで行って開けた。
「おかえり、レオ兄さん。今日は遅かったね」
「うん…テストの問題考えてたら遅くなったんだ。ほら、来月中間テストの時期じゃないか」
……忘れてた。
社会人を7年も続けてたら学生の頃に受けたテストなんていつだったか忘れてしまっていた。
確かに冬休み前にテスト受けたな…って微かに記憶にある…。
「リオは優秀だからな!お兄ちゃん今年の成績も期待してるぞ!この間の実技も上手く出来てたしな」
兄の期待に満ちた眼差しが、俺の良心をドスッと突き刺す。
言えない…、筆記テストに自信がないなんて…!
…、待てよ?これはいい機会なのでは?
「ねえ、兄さん」
「どうした?ハグか?」
「あ…、それもそうなんだけど…」
言うより早く、レオンに抱き締められてしまう。
もう慣れたものだ。
俺より背の高いレオンを見上げ、俺はこの機会を逃さないと真剣な瞳を向けた。
「勉強で分からないところがあるんだ、…だから教えて欲しいの!」
「……、リオから勉強を見てくれなんて初めてだな」
「え、…、あ…やっぱり学年が上がる毎に難易度も上がるでしょ?だから少し不安で…。…やっぱりダメかな、兄さんは先生でもあるし…」
あくまで自然に伝えたつもりだが、やっぱり少し不信感があるようだ。
無理もない。
元のリオより、確実に俺は劣っている。
テスト範囲は大体把握してるけれど、やっぱりここは教員であるレオンに聞くのが最善の策だと思った。
「…まあ、見るだけなら構わないだろう。聞きに来る生徒もそこそこ居る。その範囲で良ければ教えられるぞ」
「!それで大丈夫!だから教えて兄さん…いや、先生!」
「未だにリオの先生呼びは慣れないなあ…、特別だからね。それでどこが分からないんだ?」
俺は教科書を取り出し、苦手な科目とこの間受けた授業で分からないところを指して、机に向かう。
レオンの教え方はやっぱり上手で、正直担当の先生より内容が頭に入ってくる。
「これで赤点取ったら修了式後のパーティーは欠席させるから」
「…はい…」
笑顔が怖い。そして圧の強さ…マジだこの人。
「パーティーには悪い虫がうじゃうじゃ居るんだから、気を付けなよ?」
「俺一応殿下の婚約者だし、下手なことはされないと思うけど…」
「その逆。殿下の婚約者だからだよ。妬み嫉みで恥をかかせてやろうと企む奴だっている」
確かにそうだ…。
それに、パーティーまでちゃんとアルバートの婚約者で居られるかも怪しいんだ。
…主人公と出逢ってしまったら、強制力が働くんじゃないかってまた怖くなる。
「…そこで、いい考えがある」
「いい考え…?」
「パーティーの同行者を俺にすればいいと思うんだ。殿下なんかよりずっと傍に居てあげられるしね?」
この人…今、殿下なんかって言った?
不敬罪で訴えられたら勝てないよ?
「どうする、リオ。悪い話じゃないと思うんだけど?」
そうだった、この人ブラコンだったんだ…。
本来であれば主人公が誘われるパーティー。
そして目の前には攻略対象のレオン。
何故誰も主人公に靡かないのか気になりつつも、俺はユーリの時とは違い、あっさりとその誘いは断ることにした…。
俺…ユーリに告白された…?
俺が殿下の婚約者と分かっていながら、ユーリは俺をあのパーティーに誘った。
それは王家を敵に回すも同然の事。
「ぁ…っ」
この国で王家は絶対。
それに逆らったら、ユーリの家すら危ない。
「…、ごめん…!」
ユーリを守る選択肢は、これ一つしかない。
俺は大事な親友で幼馴染を、失いたくはないのだ。
ユーリは俺の言わんとした事は分かったのだろう。
苦笑を浮かべ、いつも通り俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回して背を向けた。
「殿下の婚約者…だもんな、お前は高嶺の花だよ」
違う、そんなんじゃない。
ユーリの為とか言いながら、頭の中はアルバートでいっぱいだった…。
アルバートじゃないと嫌だ。
初めて手離したくないと想えた存在。
画面越しじゃなく、温かくて、俺の名前を呼ぶアルバートをどうして拒絶出来ようか。
それが例え、親友を傷付ける事になっても。
「…そろそろ戻るぞー」
「うん…」
きっと泣きたいのは、俺じゃなくてユーリの方。
だから俺は泣かない。
そんな資格、俺には無い。
家に帰ると、まだレオンは帰ってきていなかった。
自室に戻り、ベッドに全身を預けて沈む。
……正解は、あったんだろうか。
俺は自分の欲を優先した。
…勇気を出して言ってくれたユーリの気持ちを、無下にして。
あれから先生達の元に戻るまでの道中、気にするなとユーリに言われたけど、気にするに決まってるじゃないか。
「…、まだ親友でいたいなんて、虫が良すぎるよな…」
それに、アルバートが本当にそのパーティーに一緒に行ってくれるとは限らない。
また別の方法でアルバートに近付く可能性が高い彼の存在が、俺にとっての脅威だった。
だからと言って、キープを作るなんて事も出来ない…そんな器用じゃないし、相手に悪いじゃないかそんなの!
ばふばふと枕に苛立ちや何やらを詰め込んだ気持ちをぶつけていると、扉を叩く音がしてすぐさま起き上がった。
「リオ、帰ってきてる?」
レオンの声だ。
俺は前回突然扉を開けられたのを思い出し、今度は自分から開けようと早足で扉まで行って開けた。
「おかえり、レオ兄さん。今日は遅かったね」
「うん…テストの問題考えてたら遅くなったんだ。ほら、来月中間テストの時期じゃないか」
……忘れてた。
社会人を7年も続けてたら学生の頃に受けたテストなんていつだったか忘れてしまっていた。
確かに冬休み前にテスト受けたな…って微かに記憶にある…。
「リオは優秀だからな!お兄ちゃん今年の成績も期待してるぞ!この間の実技も上手く出来てたしな」
兄の期待に満ちた眼差しが、俺の良心をドスッと突き刺す。
言えない…、筆記テストに自信がないなんて…!
…、待てよ?これはいい機会なのでは?
「ねえ、兄さん」
「どうした?ハグか?」
「あ…、それもそうなんだけど…」
言うより早く、レオンに抱き締められてしまう。
もう慣れたものだ。
俺より背の高いレオンを見上げ、俺はこの機会を逃さないと真剣な瞳を向けた。
「勉強で分からないところがあるんだ、…だから教えて欲しいの!」
「……、リオから勉強を見てくれなんて初めてだな」
「え、…、あ…やっぱり学年が上がる毎に難易度も上がるでしょ?だから少し不安で…。…やっぱりダメかな、兄さんは先生でもあるし…」
あくまで自然に伝えたつもりだが、やっぱり少し不信感があるようだ。
無理もない。
元のリオより、確実に俺は劣っている。
テスト範囲は大体把握してるけれど、やっぱりここは教員であるレオンに聞くのが最善の策だと思った。
「…まあ、見るだけなら構わないだろう。聞きに来る生徒もそこそこ居る。その範囲で良ければ教えられるぞ」
「!それで大丈夫!だから教えて兄さん…いや、先生!」
「未だにリオの先生呼びは慣れないなあ…、特別だからね。それでどこが分からないんだ?」
俺は教科書を取り出し、苦手な科目とこの間受けた授業で分からないところを指して、机に向かう。
レオンの教え方はやっぱり上手で、正直担当の先生より内容が頭に入ってくる。
「これで赤点取ったら修了式後のパーティーは欠席させるから」
「…はい…」
笑顔が怖い。そして圧の強さ…マジだこの人。
「パーティーには悪い虫がうじゃうじゃ居るんだから、気を付けなよ?」
「俺一応殿下の婚約者だし、下手なことはされないと思うけど…」
「その逆。殿下の婚約者だからだよ。妬み嫉みで恥をかかせてやろうと企む奴だっている」
確かにそうだ…。
それに、パーティーまでちゃんとアルバートの婚約者で居られるかも怪しいんだ。
…主人公と出逢ってしまったら、強制力が働くんじゃないかってまた怖くなる。
「…そこで、いい考えがある」
「いい考え…?」
「パーティーの同行者を俺にすればいいと思うんだ。殿下なんかよりずっと傍に居てあげられるしね?」
この人…今、殿下なんかって言った?
不敬罪で訴えられたら勝てないよ?
「どうする、リオ。悪い話じゃないと思うんだけど?」
そうだった、この人ブラコンだったんだ…。
本来であれば主人公が誘われるパーティー。
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