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主人公の存在と幼馴染

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ヒースカラーのショートウルフ。
グラデーションで鮮やかなコスモスカラーの瞳。

間違いない。


彼が、この世界の主人公だ。


「ユウー、何してるんだ?早く来いよ」
「……、今行く」

ユウ、と呼ばれた彼は俺を再度睨み付けた後、声のした方へ走っていった。

頭が痛い。

ふらりとアルバートの腕の中に崩れる。
まだ眩暈がする…。

「リオ?大丈夫?」
「へ…き、大丈夫だよ…」
「さっきのは…一年生か。知り合い?」
「…ううん、知らない子」

首を横に振って否定したけど、…アルバートに嘘つくことになっちゃった。
だって知らなかったんだ、本当に。
名前…ユウっていうんだ…。

「行こう、アル。もう大丈夫だから」
「そうかい…?リオがそう言うならいいけど…」

まだちょっと眩暈がするけど、これ以上アルバートに迷惑はかけられない。
腕の中から抜け出しアルバートの手を引いて、元々行くはずだった道へ行こうと歩いた。

でも頭の中はあのグラデーションのコスモスカラーが浮かんでしょうがない。

…、どうしよう。
物語、変えちゃった。







「…、見付けた」

​───────​───────​───────



「そういやこの間話した幼馴染、見に行って来たぞ」
「!?」

驚いた拍子に、飲んでいた水が気管に入ったのか俺は噎せてしまった。

「え、そ、それで…?」
「ん?いや別に?相変わらず小さいなって言ったら怒られた」
「それは俺でも怒るよ…」

実技の授業後、疲れた体を癒しに水飲み場に来たらついてきたユーリの一言目がこれ。

という事は、物語が軌道修正し始めてる…?
いや、まだユーリと主人公が会っただけで決めるのは早計な判断だ。

「これからも面倒見てあげるの?」
「んー…そんな事しなくても、別にいいんじゃないか?俺は一応上級生だし同級生に頼る方がいいだろ」

…、されてなかった…。

「あ、でも変なこと言ってたな」
「え…?」

「殿下の婚約者に気を付けろ…だったかな。婚約者ってお前だろ?」

待って、どういう事?
彼にとって、俺は脅威なのか?

脅威だとしたら…やっぱり狙いは、アルバートルート。

アルバートの婚約者…、…もしかして俺は、悪役令嬢ならぬ、悪役令息位置なのか?
……もしそうなら、俺は悪役にならないように動かないといけない。

悪役は、断罪される未来しかないのだから。

「…、なあ、リオ」
「なに?」
「まだ来月だけどさ、パーティーあんじゃん。…アルバート殿下と来るのか…?」
「え、…うん…そのつもり」

正直、自信はなかった。
秋の終わりを告げる枯れた落ち葉。
葉を落とした枝だけの木達。

本当であれば、あの時アルバートは主人公と出逢っている筈だった。
だけどそれを、俺が変えてしまった。

冷たい瞳。
あれは…憎悪、だと思う。
やっぱり、アルバートルート狙いなんだ…。

当たり前だよね。
俺だったら、迷いなくアルバートルートを選ぶ。
でもそれは俺がアルバート推しだったからだ。

彼は、どうしてアルバートルートを選ぼうとしているのだろう。

「リオ?」
「あ、ごめんユーリ。…それで、どうしてそんな事聞いたの?」
「あー…」

ユーリがガリガリと後頭部を乱雑に掻く。
何か言いたげな言葉を飲み込んでは出そうとしているみたいで、俺は首を傾げた。
ユーリは何を言おうとしてるのだろう…?
どうやら決意を固めたようだ。
ユーリが俺を見る目が真剣で、もしかして…と頭の中で浮かぶ憶測。




「お前が殿下の婚約者って分かってる。…だけど俺はその前からずっとお前を見てきた」

「そのパーティー、俺と行く気はないか」




やっぱり、と自分の予想が当たってしまった事に…頭を抱えた。
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