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魔法授業、請け負います

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「ウィルアス弟いるかー?」
「ここにいまーす」

お昼休みの為食堂に向かう途中、先生に呼び止められた。

ウィルアス弟。
先生達の大半はそう呼んでくる。
兄が教員組にいるせいだと思うけど…、まあ学校に通っちゃえば先生の方が偉いのはどこも一緒だしね。
特に不自由も感じてないから訂正とかは何もしない。

さて、お呼び出しの件はなんだろう?
テストの点数はそこそこ戻せた筈だけど…。

「どうかしましたか?」
「いやな、ウィルアス先生が今日休みだろう。それで一部授業が出来ないクラスがあるんだ」

そう、今日は珍しくレオンが休みの日…という訳ではなく、風邪の為有給を消化し寝ているところである。
学校での俺が見えないのが不安だ嫌だと言うレオンを宥め賺し、俺はいつも通り登校して来たということだった。
……ブラコン具合もここまでくるといっそ清々しい。あの時のレオンは、本当に大きな子供と称してもおかしくなかった。

しかし、それと俺となぜ関係があるのだろう。

「魔法科が受けられないのは一クラスなんだ。魔法に関して秀でているのは学園内ではウィルアス弟しか居なくてな、そのクラスで授業をして欲しいんだ」

「……はい??」


どういう事かと言う前に、単位は保証すると言われてしまい断る機会を失った…。




​───────​───────​───────

「…と、言う訳で、今日は兄の代わりに自分が授業を担当する事になりました。今日は実技みたいなので、皆さん指定の場所まで集まってください」

俺はレオンの使っていた教科書を借り、今日の授業内容を確認した後生徒達…一年のクラスの子達にそう案内した。
周りはザワついてる。
本当に代わりが勤まるのかとか、ただのコネじゃないかとか。
その中で唯一満面の笑みで手を振ってくれている、セシル。

…、そう。受け持ったのはセシルのクラス。
つまり主人公が居るクラスだ……。

あまり視線を上げたくない…。
なんとなく訝しげな視線に混ざって、刺さる様な視線を感じるのは勘違いじゃないだろう。
こんなイベントあったかな、と思いながらも、俺は生徒達を誘導して練習場まで歩いたのであった。



さて、実技と言っても色々ある。
それぞれの属性に合った魔力を伸ばしていくこと。
実際の敵を想定して模擬戦をすること。

今回は……。


「あの、ウィルアス伯爵令息」
「なに?」
「他の先生方からの推薦で選ばれたらしいですね、正直レオン先生と同様の授業を受けられるか不安なのですが…」

ふむ。一理ある。
レオンの程の魔力がある訳ではないのは重々承知しているけれど、こちとらその先生からお墨付きを頂いているんだよね。

意外にも魔法というものは構造を知ってしまえば面白い。
俺はのめり込んでしまい、寧ろ程々にしとけと言われてしまう始末。

「みんなの意見はご最もだ。論より証拠。本日は模擬戦を開始します」

まあそんな事みんなは知らないからね。
それならその不安を拭えばいい。

俺は魔力を集中させ、液体状のゴーレムの様な物を作ってみせた。

「な……!あんな大きいのを一瞬で!?」
「信じられない…」
「少しは納得してもらえたかな?」

論より証拠。これはレオンの口癖。いつの間にか移ってしまった。

…それにしても、こんなモノ一つ作っただけで驚かれるとは思わなかった。

「じゃあこれから模擬戦を開始します。人数分作ってもいいけど、流石に全員見られないからこれを三体作ります。それをみんなで協力して倒してみて」

そう言って残り二体を生成したところで、セシルの視線に気付いた。
あれは頑張るから見ててください!…って言ってるみたいな目だ。うんうん、やっぱり後輩は可愛いな。


「それでは、始め!」


各々がゴーレムに突っ込んで行くところを確認し、後方から見守る事にした。
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