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始まりには終わりがあるとしても
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「こうかんど…?かんすと…、一体何の話だい?」
「え!?あ、えっと…」
湧き上がる感情を抑えきれず声に出してしまった。
だって、だっておかしいんだ。
王太子ルートは、全ルートをクリアし、好感度を最高値まで上げなければ辿り着けない。
つまり王太子なんてそう易々と落とせる相手ではないのだ。
何度も周回したからアルバートルートは何回も見れてるけど、当時はルート探しに苦労した記憶がある。
そんな相手の好感度がカンスト!?
好感度が見れる…ってことは、俺はゲームの主人公なのか…?
デフォルト名を忘れてしまった今、何も手掛かりはない。
でも姓はウィルアスじゃなかった気がする。
今となっては憶測でしか語れないけれど…。
「なんだか今日のリオ、変?熱でもある?」
そう言ってアルバートは額をくっ付けてきた。
待って!距離感バグってない!?
思わず固まってしまったけれど、アルバートは何も変わらない。まるでいつもしてるみたいに。
……え、もしかして、リオはアルバートと付き合ってたりする!?
いやでも、アルバートに元恋人が居たという情報は無い。
寧ろ王家に関わりたいが為に、我先にとお近付きになりたい人間が嫌いで、恋人なんて以ての外…、な、筈なんだけど…?
アルバートを見上げると小首を傾げる仕草。
待って今の可愛い。
スクショ…じゃない、これは今の俺にとって現実だ。
ゲームでは確かに結ばれるけど、こんな表情見た事ない…。
「あ、アル…あの…」
「…?」
言葉が出てこない。
ましてや、貴方は俺の恋人ですか?なんて聞ける訳もない!
記憶喪失とか言っとく?でもリオの記憶を思い出せたらそっちの方がいいし……駄目だ!頭が混乱して記憶を引き出すとこまで回らない!
どうしようどうしようと焦っていると、アルバートが隣に座って覗き込んできた。
「私に言い難い事でもあるのかな?」
「そういう訳じゃなくて…、えっと、夢…そう!夢みたいだなって!」
黄色い落ち葉がカサカサ風で流される音だけになる。
しまった…と頭を抱える以外の選択肢は捨てたみたいだ…。
「…ふっ」
「ぇ?」
小刻みに肩を震わせながら、アルバートは笑うのを堪えていた。
こっちは真剣なのに!
ぶすくれた顔をしていたのだろう。アルバートはまだ笑みを浮かべたまま、俺の頬を撫でてきた。
「私の方がまだ夢を見ている気分だよ。だってようやくリオと両想いになれたんだから」
ぶわ、と顔に熱が集まる。
アルバートのスチルは幾枚も見てきた。
だけど、こんなに愛おしそうに目を細めて、目元を赤らめているアルバートを、俺は見た事がない。
…、ん?ようやく…?
アルバートの目に嘘は見られない。なんなら好きですアピールに見える気さえしてきた。
裏設定?
それとも何かのバグの可能性。
…、バグの可能性の方が高い。
俺はモブの一人で、アルバートに見初められはしたけれど、主人公が来るまでの一時的なものなんだろう。
だって、アルバートはまだ主人公と出会っていないから。
アルバートルートが現れる分岐点は秋の終わり頃。今は精々、初秋頃だ。
確かに今のアルバートは俺を…リオ・ウィルアスを好きかもしれないけれど、所詮此処はゲームの中。少し筋書きが変わるだけ。
それに、強制力が働く可能性が高い。
主人公の見た目は、ヒースカラーのふわりとしたシルエットのショートカットで、瞳はコスモスカラー…だった気がする。
デフォルト名だけが覚えてないのは本当痛手だよな…。デフォルト名じゃ面白くないと思って自分の名前にしたの、よく考えれば痛い行動だったな…。
でも、そのおかげでアルバートを好きになれた。
今だけ、あと数ヶ月もしないうちに離れていってしまうなら…。
「…好き、だよ、…アル」
認めよう。俺はアルバートが好きだ。
だからせめて、いっそ傷になる程この瞬間を心に刻み付けておこう。
アルバート…、アルは嬉しそうに、俺にキスをした。
「え!?あ、えっと…」
湧き上がる感情を抑えきれず声に出してしまった。
だって、だっておかしいんだ。
王太子ルートは、全ルートをクリアし、好感度を最高値まで上げなければ辿り着けない。
つまり王太子なんてそう易々と落とせる相手ではないのだ。
何度も周回したからアルバートルートは何回も見れてるけど、当時はルート探しに苦労した記憶がある。
そんな相手の好感度がカンスト!?
好感度が見れる…ってことは、俺はゲームの主人公なのか…?
デフォルト名を忘れてしまった今、何も手掛かりはない。
でも姓はウィルアスじゃなかった気がする。
今となっては憶測でしか語れないけれど…。
「なんだか今日のリオ、変?熱でもある?」
そう言ってアルバートは額をくっ付けてきた。
待って!距離感バグってない!?
思わず固まってしまったけれど、アルバートは何も変わらない。まるでいつもしてるみたいに。
……え、もしかして、リオはアルバートと付き合ってたりする!?
いやでも、アルバートに元恋人が居たという情報は無い。
寧ろ王家に関わりたいが為に、我先にとお近付きになりたい人間が嫌いで、恋人なんて以ての外…、な、筈なんだけど…?
アルバートを見上げると小首を傾げる仕草。
待って今の可愛い。
スクショ…じゃない、これは今の俺にとって現実だ。
ゲームでは確かに結ばれるけど、こんな表情見た事ない…。
「あ、アル…あの…」
「…?」
言葉が出てこない。
ましてや、貴方は俺の恋人ですか?なんて聞ける訳もない!
記憶喪失とか言っとく?でもリオの記憶を思い出せたらそっちの方がいいし……駄目だ!頭が混乱して記憶を引き出すとこまで回らない!
どうしようどうしようと焦っていると、アルバートが隣に座って覗き込んできた。
「私に言い難い事でもあるのかな?」
「そういう訳じゃなくて…、えっと、夢…そう!夢みたいだなって!」
黄色い落ち葉がカサカサ風で流される音だけになる。
しまった…と頭を抱える以外の選択肢は捨てたみたいだ…。
「…ふっ」
「ぇ?」
小刻みに肩を震わせながら、アルバートは笑うのを堪えていた。
こっちは真剣なのに!
ぶすくれた顔をしていたのだろう。アルバートはまだ笑みを浮かべたまま、俺の頬を撫でてきた。
「私の方がまだ夢を見ている気分だよ。だってようやくリオと両想いになれたんだから」
ぶわ、と顔に熱が集まる。
アルバートのスチルは幾枚も見てきた。
だけど、こんなに愛おしそうに目を細めて、目元を赤らめているアルバートを、俺は見た事がない。
…、ん?ようやく…?
アルバートの目に嘘は見られない。なんなら好きですアピールに見える気さえしてきた。
裏設定?
それとも何かのバグの可能性。
…、バグの可能性の方が高い。
俺はモブの一人で、アルバートに見初められはしたけれど、主人公が来るまでの一時的なものなんだろう。
だって、アルバートはまだ主人公と出会っていないから。
アルバートルートが現れる分岐点は秋の終わり頃。今は精々、初秋頃だ。
確かに今のアルバートは俺を…リオ・ウィルアスを好きかもしれないけれど、所詮此処はゲームの中。少し筋書きが変わるだけ。
それに、強制力が働く可能性が高い。
主人公の見た目は、ヒースカラーのふわりとしたシルエットのショートカットで、瞳はコスモスカラー…だった気がする。
デフォルト名だけが覚えてないのは本当痛手だよな…。デフォルト名じゃ面白くないと思って自分の名前にしたの、よく考えれば痛い行動だったな…。
でも、そのおかげでアルバートを好きになれた。
今だけ、あと数ヶ月もしないうちに離れていってしまうなら…。
「…好き、だよ、…アル」
認めよう。俺はアルバートが好きだ。
だからせめて、いっそ傷になる程この瞬間を心に刻み付けておこう。
アルバート…、アルは嬉しそうに、俺にキスをした。
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