百合色雪月花は星空の下に

楠富 つかさ

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 翌日のお昼、早速花井さんと一緒にランチを……なんて展開にはならなかった。それもそうだ、彼女には彼女の友達がありコミュニティがあるのだから。むしろ私くらいだろう、ここまでクラスに馴染んでいないのは。別に私にだって友達はいる。新聞部での担当がダンス部っていうのと、去年のクラスメイトっていうことで、希海ちゃんやあきなちゃんとは友達だし、去年も今年もクラスメイトといえば砂塚さんがそうだ。でも彼女はなんだか栗橋さんと一緒にいるし、そこに城谷さんが加わって独特な空間を形成している気がする。
 とにもかくにも、友達はいるけどその友達には親友がいて私の優先順位が低い。そんな感じで結局ひとりぼっちになってしまうのだ。だからこそ、こうしてお昼を一人外のベンチで食べているんだけど。新聞部の部室で食べるというのも手だけど、あそこは普通に記事の校正とか編集作業をしていて忙しいので敬遠してしまう。

「お昼寝……お昼寝……すぅ」

 目の前をクラスメイトの可児さんっぽい人が通り過ぎていったけれど、私に気付くことはなかった。二個ほど離れたベンチにうつ伏せで寝るとどこからか猫が現れて背中の上で丸まり始めた。不思議な光景をつい新聞部としてスマホのカメラに収めていた。

「お、今日もここにいたか。って、なんだぁありゃ?」
「さ、さぁ? 花井さんはどうしてここに?」

 そう聞くと彼女は横山ベーカリーの袋を掲げた。

「パンの恩はパンで返そうと思ってな。つーか、ブッキーはどっか行っちまったしミサも最近付き合い悪いんだよなぁ。てなわけで、一緒に飯食おうぜ」

 ベンチに行儀悪く膝を立てて座る花井さん。太ももがちらちら視界に入ってドキドキしてしまう。昨日と違ってショートパンツを穿いていないだろうに。

「焼きそばパンはなかったからホットドッグにした。好きか?」
「うん。いただきます。横山ベーカリー美味しいですよね、私もよく行きます」

 学校近くの商店街は色んなお店があって活気に溢れている。去年はお祭りにも行ったけど、人が大勢いて驚いたのをよく覚えている。

「いやぁ、ほんとはお弁当でも作って持ってきてやろうとか思ったけど、ゆきは食が細そうだからなぁ」

 メロンパンをかじりながら笑う花井さん。意外とよく食べる方なんだけどなぁ、私。華奢ってタイプじゃないし。ていうか、

「花井さん料理出来るんですか?」

 ギャルギャルしい、という形容詞があるかさておき、そんな雰囲気の彼女がエプロンして朝からお弁当作りにいそしむ様というのはなかなか想像しづらい。

「おぉ? アタシの家事スキルを疑ってるな? これでも三人の妹を養うお姉ちゃんなんだぜ?」

 姉御肌とは思っていたけど、本当にお姉ちゃんなんだ。姉妹、かぁ。私は一人っ子だからよく分からないや。にしても四姉妹は大変そうだ。

「三人とも小学校か中学校だから弁当の必要はたまになんだけどよ、飯はほとんどアタシの担当だからさ」

 なかなか忙しい家庭らしい。それからしばらく、妹たちが可愛くてしかたないという話を聞きながらゆっくりと昼休みの時間を過ごした。

「こういう時間もありだな。晴れてたらちょくちょくここ来るわ」
「そうですか? なら、私も嬉しいです」

 花井さんと少し近づけた、そんな気がした。
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