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本編
024 てんてこまい
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「やばい、めちゃくちゃ混んできた……!」
カウンターの中で、私は必死にエスプレッソマシンのレバーを引いた。
今日はたまたま出勤キャストが少なくて、カフェスペースの対応が私とメグさん、ユラちゃんの3人しかいない。にもかかわらず、なぜか今日はお客様が多い。
「ランさーん! カフェラテ3つとアールグレイ1つ、急ぎで!」
「了解した!」
ミルクをスチームしながら、ユラちゃんを見ると、彼女もお客様対応に追われていた。前回の出勤日が比較的まったりとした日だったから、ギャップに身体が追いつかない。いや、お盆休み明けのあの日よりはマシかな? でもキャストの人数が足りない! 猫の手も借りたいとはこのことか。
「申し訳ありません、ただいま混み合っておりまして……少々お待ちくださいませ」
笑顔を絶やさず接客するユラちゃんの姿はプロフェッショナルそのものだけど、その額にはじんわりと汗が滲んでいる。一方、ホール担当のメグさんは、トレイを持って店内を駆け回っていた。
「お待たせしました! カフェモカと、シルキスト特製スコーンです!」
いつもは余裕たっぷりな彼女も、今日はさすがに息を切らしている。
「メグさん、私がこっちのテーブル片付けます!」
「助かる、お願い!」
空いたお皿を素早く回収し、カウンターに戻ると、新しいドリンクの準備に取り掛かる。
「ラン、ラテアート描く余裕ある?」
「無理です!!」
今日ばかりは可愛く仕上げる余裕なんてない。ただひたすら、効率重視で次々とオーダーをこなしていくしかない。
「わ~! めっちゃ忙しそう!」
そこに、モエちゃんが遅れて出勤してきた。
「モエちゃん!! 神!!」
「えへへ~、遅れてごめんね! でも今から巻き返すよ!」
ふわふわな淡いピンクのランジェリーの上に、さっとエプロンを着てキッチンに着任するモエちゃん。私はキッチンをモエちゃんにお任せして、既に出来上がった商品をトレイに載せてホールに出る。
「お客様、お待たせしました! ご注文の品をお持ちしました~!」
キッチンにほど近い席にいるお客様には、モエちゃんが直接届けに行く。元気な声が響き、店内の雰囲気がパッと明るくなる。さすがモエちゃん、こういう時のムードメーカーだ。
なんとかピークを乗り切った頃、私はカウンターに突っ伏した。
「もう……腕がパンパン……」
「私も……こんなに動いたの久しぶり……」
メグさんが隣でぐったりしている。ユラちゃんは、乱れた髪を整えながら「でも、お客様みんな楽しそうでしたね」と微笑んだ。
「お疲れさまー!」
モエちゃんが勢いよく私の肩に抱きついてきた。
「いや~、みんなすごかったよ! こんなに忙しいのに、ちゃんとお客様を楽しませてるんだから!」
「まぁ……なんとか乗り切れたよね」
「うん! それに、ほら!」
モエが指さしたのは、テーブルに残されたメモ。そこには、
「今日も素敵な時間をありがとう! みんな大変そうだったけど、最高の接客でした♡」
と、可愛らしい字で書かれていた。
「……頑張ってよかった」
そう呟くと、モエちゃんが「でしょでしょ!」と満面の笑顔で抱きついてくる。
「ちょっ、モエちゃん、汗ついてるから!」
「いいじゃん、ランちゃんのもついてるよ~?」
モエとじゃれ合っていると、メグさんが「あのさぁ……いい加減片付けない?」と、呆れたように言った。
「はーい!」
こうして、シルキストのてんてこまいな一日は、笑いとともに幕を閉じたのだった。
カウンターの中で、私は必死にエスプレッソマシンのレバーを引いた。
今日はたまたま出勤キャストが少なくて、カフェスペースの対応が私とメグさん、ユラちゃんの3人しかいない。にもかかわらず、なぜか今日はお客様が多い。
「ランさーん! カフェラテ3つとアールグレイ1つ、急ぎで!」
「了解した!」
ミルクをスチームしながら、ユラちゃんを見ると、彼女もお客様対応に追われていた。前回の出勤日が比較的まったりとした日だったから、ギャップに身体が追いつかない。いや、お盆休み明けのあの日よりはマシかな? でもキャストの人数が足りない! 猫の手も借りたいとはこのことか。
「申し訳ありません、ただいま混み合っておりまして……少々お待ちくださいませ」
笑顔を絶やさず接客するユラちゃんの姿はプロフェッショナルそのものだけど、その額にはじんわりと汗が滲んでいる。一方、ホール担当のメグさんは、トレイを持って店内を駆け回っていた。
「お待たせしました! カフェモカと、シルキスト特製スコーンです!」
いつもは余裕たっぷりな彼女も、今日はさすがに息を切らしている。
「メグさん、私がこっちのテーブル片付けます!」
「助かる、お願い!」
空いたお皿を素早く回収し、カウンターに戻ると、新しいドリンクの準備に取り掛かる。
「ラン、ラテアート描く余裕ある?」
「無理です!!」
今日ばかりは可愛く仕上げる余裕なんてない。ただひたすら、効率重視で次々とオーダーをこなしていくしかない。
「わ~! めっちゃ忙しそう!」
そこに、モエちゃんが遅れて出勤してきた。
「モエちゃん!! 神!!」
「えへへ~、遅れてごめんね! でも今から巻き返すよ!」
ふわふわな淡いピンクのランジェリーの上に、さっとエプロンを着てキッチンに着任するモエちゃん。私はキッチンをモエちゃんにお任せして、既に出来上がった商品をトレイに載せてホールに出る。
「お客様、お待たせしました! ご注文の品をお持ちしました~!」
キッチンにほど近い席にいるお客様には、モエちゃんが直接届けに行く。元気な声が響き、店内の雰囲気がパッと明るくなる。さすがモエちゃん、こういう時のムードメーカーだ。
なんとかピークを乗り切った頃、私はカウンターに突っ伏した。
「もう……腕がパンパン……」
「私も……こんなに動いたの久しぶり……」
メグさんが隣でぐったりしている。ユラちゃんは、乱れた髪を整えながら「でも、お客様みんな楽しそうでしたね」と微笑んだ。
「お疲れさまー!」
モエちゃんが勢いよく私の肩に抱きついてきた。
「いや~、みんなすごかったよ! こんなに忙しいのに、ちゃんとお客様を楽しませてるんだから!」
「まぁ……なんとか乗り切れたよね」
「うん! それに、ほら!」
モエが指さしたのは、テーブルに残されたメモ。そこには、
「今日も素敵な時間をありがとう! みんな大変そうだったけど、最高の接客でした♡」
と、可愛らしい字で書かれていた。
「……頑張ってよかった」
そう呟くと、モエちゃんが「でしょでしょ!」と満面の笑顔で抱きついてくる。
「ちょっ、モエちゃん、汗ついてるから!」
「いいじゃん、ランちゃんのもついてるよ~?」
モエとじゃれ合っていると、メグさんが「あのさぁ……いい加減片付けない?」と、呆れたように言った。
「はーい!」
こうして、シルキストのてんてこまいな一日は、笑いとともに幕を閉じたのだった。
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