百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

023 ゆったりとした時間

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 ランジェリーショップ併設のコンカフェ 「シルキスト」 では、今日も変わらず華やかな時間が流れている。

 午後三時、店内はまるで優雅なティーサロンのように甘い空気に包まれていた。カウンターの上には焼きたてのスコーンやマカロンが並び、紅茶の香りがふわりと広がる。

「ランちゃん、カフェラテふたつ、お願い」

 振り向くと、メグさんが優雅な手つきでトレイを持っていた。彼女の落ち着いた笑顔に促されながら、私はエスプレッソマシンのスイッチを押す。

「了解です! ちょっと待っててくださいね」

 カフェラテ用のミルクをスチームしながら、私はちらりと店内を見渡す。

 シルキストの店員は、全員がブランドのランジェリーをまとっている。上質なレースやシルクが織りなすデザインは、それぞれの個性にぴったりと寄り添い、美しく映えている。

 カフェスペースのテーブル席では、お客様がゆったりと過ごしていた。シルキストはランジェリーショップ併設ということもあって男子禁制。だから、気の置けない雰囲気の中、みんな思い思いの時間を楽しんでいる。

「はい、お待たせしました。カフェラテです」

 私はメグさんにカップを手渡し、ふとカウンター越しに視線を感じた。

「ランちゃんのラテアート、今日も可愛いね」

 サラさんが微笑みながら、私が作ったラテアートを覗き込んでいる。カフェラテの表面には、ハートの模様を描いたつもりだったけれど、少し歪んでしまったかもしれない。私としては、私らしくない可愛い趣味だから、あんまり口外してなかったんだけど、仕事に活かせるならと話してみてよかった。

「えへへ……ちょっと形が崩れちゃいました」
「大丈夫、こういうのは気持ちが大事だから」

 サラさんはそう言いながら、そっと私の頭を撫でた。ふわっとした手のひらの感触が、なんだかくすぐったい。

「サラさん、なでるのやめてくださいよ~」
「可愛い反応するから、ついね」

 お客様もクスクスと楽しそうにこちらを見ている。シルキストは 「おもてなし」だけでなく、キャスト同士の関係性を楽しむ場所 でもあるのだ。

 そんな中、少し離れた席ではユラちゃんとアミさんが紅茶を淹れていた。

「お客様、アールグレイはいかがですか?」
「ベルガモットの香りが優雅な気分にさせてくれますよ」

 二人の落ち着いた接客に、お客様も嬉しそうに頷いていた。

 一方で、モエちゃんはカウンターでケーキの盛り付けを担当している。

「よし、今日の特製チョコレートケーキ、完成っと!」

 ドヤ顔でプレートを掲げるモエちゃんに、マカさんが「はいはい、お疲れさま」と軽く肩を叩く。
 時計が進み、カフェタイムが終わる頃。

「ランちゃん、お疲れさま。ちょっと休憩しない?」

 サラさんがそっと私の肩を叩いた。

「いいんですか?」
「もちろん。カフェもお仕事も、メリハリが大事だからね」

 そう言って、サラさんは私のために一杯のミルクティーを用意してくれた。
 ほんのり甘い香りに包まれながら、私は今日の営業を振り返る。

 シルキストでは、こうして毎日が特別な時間になる。
 お客様とキャストが一緒に過ごす、甘くて心地よいひととき。

 それが、ここ シルキストの「日常」 なのだった。
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