百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

021 休日カラオケ

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 世間的にはお盆休みということで、シルキストも店を休むことになった。そんなわけで私、下条藍は高校時代の親友、出水綾香・建原三咲・有働七瀬の三人と一緒にカラオケへとやってきた。

「やっぱり蘭の歌は最強だよね」
「サンキュ」

 私以外の三人はわりと真面目でおとなしいタイプだけど、なにかの拍子ですっと打ち解けて、それから長い間ずっと一緒に過ごしてきた。三咲と七瀬は昔からの仲らしいが、私と綾香がそこに高等部から加わった形だ。趣味とか部活もバラバラで、私と綾香は同じ大学だけど、学部は違うし、進路はそれぞれって感じだ。
 三咲なんて関東の大学に進学したから、こうして顔を合わせるのは軽く五ヵ月ぶり。だというのに、全然そんな感じがしないのは、ちょくちょくメールでやり取りしたり、電話掛け合っているからなんだろうけど。

「そういえば藍ちゃん、ギター新調した?」
「まぁね。合格祝いでもらったお金を残してたし、これからバイト代も入ってくるからさ」

 買ったのはゴールデンウィークの頃だけど、こうして見せるのは初めてだったっけな。まだ新しくて手に馴染みきってないけど、買った決めては色と柄だったことを後悔させないだけの音色が出る。ギターってのは一期一会なんだよなぁ。買わないでする後悔が一番みっともない。

「そういえば藍ちゃんが何のバイトしてるか、まだ知らないんだよね」
「綾香ちゃんにも言ってないって、いったいどんなバイトしてるのよ。音楽系じゃないの?」
「大丈夫? なにかその、怪しいお仕事じゃ?」

 三者三様に尋ねてくるのだけれど、なんて答えたものか。七瀬はさておき、三咲もランジェリーカフェで働いたら人気すぐ出そうだなぁ。

「ま、音楽系じゃないんだが、ちょっとしたカフェさ。あんまり混雑されても困るから秘密にしてるってだけ」
「そうなんだ。でも藍ちゃんが働いている姿っていうのが、あんまり想像できないんだよね。ほら、藍ちゃんってちょっと奔放なところ、あるからさ」
「なぁなぁせぇ? そっちこそなんかバイトしてないのかよ?」
「え、いやぁ……私は勉強で手一杯っていうか」
「七瀬ちゃんはすぐ無理しちゃうから、詰め込み過ぎは厳禁よ?」

 この四人で一番頭が良くない私だが、その次は七瀬だ。だというのに、一人で県内のちょっと難しい公立大に受かって、そのまま入学してしまった。本人がギリギリと言っているくらいなんだから、大学の勉強には苦戦しているのだろう。それこそ、ほかのことなんて考える暇がないくらい。
 七瀬からは高校時代に三咲が好きだと相談されたことがある。私が女の子と遊び歩いているところをひょっこり見られて、同性愛者だと打ち明けた時のことだ。慎重すぎて奥手になっているのか、それとも遠距離恋愛が耐えられないのか、三咲の進学先が関東の大学だと知ったあたりから相談はぱったり絶えているけど。

「バイトといえば、私は塾の講師として九月からお仕事決まったよ」
「そうなんだ、夏期講習の後ってことなんだね」
「そうなの。やっぱり夏は忙しくて新入りバイトに時間が割けないんだろうね」
「さてと、そろそろ私もなんか曲入れようかな」
「じゃあこれ一緒に歌おうよ」

 三咲が曲を選んだところにすかさず恋愛ソングのデュエットを誘うあたり、まだ気はあるんだろうなぁ。そういや、綾香から浮いた話を聞いた覚えがないけど……確か、仲良くしている後輩がいたと思ったけどどうなんだろう。

「あ、それ歌うならギター弾いてやるよ」

 まぁ、あんまり親友の恋路に首を突っ込んでもよくないな。せっかくだし、もっとギター聞かせてやるか。
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