百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

020 キス

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「はぁ~疲れたぁ」

 今日はシルキストお盆休み前最後の営業日ということもあり、たくさんのお客様がやってきた。メンバーも今日は私以外にサラさん、モエちゃん、ミキさん、ユラちゃん、セリカさんという六人体制でお迎えしたというのに、どうしても指名が入るとホールをあけてしまうので、忙しさは緩和されないわけだ。

「ランさんお疲れ様」

 休憩室でぐだぁっととけている私にサラさんが声をかけて、ソファの隣に腰を下ろす。
 サラさんも少し疲れてそうだけど、ほがらかな笑みは崩さない。

「大丈夫? おっぱい揉む?」
「……揉むぅ」

 今日はたくさん揉まれたから、私だって揉みたい。アイボリーのフルカップブラに包まれたサラさんのたわわに下から添えるように触れる。優しく揉みながら、サラさんの瞳を覗き込む。

「あぅ……」

 甘い吐息を漏らすサラさんに興奮の火がメラメラとムラムラと燃え上がる。

「はぁ、えっちしたい……」
「ひぇ?」

 思わず声に出てしまった。初日にホテルに誘われ、完全にラブホテルことだと思った件もあったが、やはりラブホ直行でも良かったかもしれないなぁ……。

「は、恥ずかしいよ……」
「あれ、サラさんここでえっちなこともいっぱいしたとか言ってませんでした?」

 最初に会った時の自己紹介で、そんなようなことを言っていた気がしたんだけど。

「うぅ、あれはマンガとかゲームで、知識だけを。その、実体験はまだないです。キスだって……前にお客様にキスされそうになった時は、モエさんが助けてくれて。お客様とモエさんのキスだって、見るのすっごく恥ずかしかったんですから」
「え、ここお客さんとキスしていいの!?」

 壁際のソファで漫画を読んでいたユラちゃんが反応を示す。私も思わず似たような反応をしてしまう。

「私もモエちゃんとチューしたい!」
「呼んだ~?」

 タイミングよく休憩室に入って来たモエちゃんが私の隣に座る。右手にサラさん、左手にモエちゃんが座っていると、とんでもなく高級な大人のお店に来てしまったのではという錯覚がすごい。

「どこにしてほしいのかな~?」

 私の腰に右手を回したモエちゃんが、左手で私の唇から喉、胸からおへそ、そしてショーツのラインを通って太ももへと指を滑らせていく。高校時代、タチとして何人かの後輩と寝た私が、生娘のネコちゃんになってしまいそうだ。サラさんよりワンサイズ大きな胸が作る谷間に視線が釘付けになってしまう。

「く、唇に、して?」
「はーい♡」

 モエちゃんのあどけないのにどこか艶っぽい顔が目の前に迫り、唇同士がそっと触れる。思い起こせば今年最初のキスだ。

「「んちゅ、ちゅぱ……じゅる、ずちゅぅ」」

 当然のように舌を入れ、歯茎を舐められ、舌を絡ませる。腰が引けそうになるのを負けるものかと、左手をモエちゃんの腰に回し、右手で頭を撫でる。お互いの胸がつぶれるほどの密着で口づけを交わし、離れると私たちの間に銀の糸の橋がかかる。

「っぷは……はぁ、はぁ、ん」
「ふふ、ランちゃん、上手♡」
「つ、次は私!!」
「はーい♡」

 ユラちゃんのいるソファへ向かうモエちゃん。一方の私は――

「ランさん、わ、私の初めて……もらって、ください」

 そう言われてしまえば久々に私のスイッチが完全に入ってしまった。サラさんの肩を抱き、唇を重ねる。

「力を抜いて」

 左手はおっぱいを揉みながら、舌をそっと入れる。サラさんのたどたどしい舌遣いを感じながら、口内で感じる部分を探していく。頬を紅潮させ、目が蕩けていくサラさんの表情だけで値千金だろう。もっと、深く繋がりたい

「はーいそこまで!!!」

 パァンと手を叩く音がしてハッとする。休憩室の入口にはミキさんとセリカさんがいた。

「キスとおっぱいだけでイく癖がついたら仕事にならないでしょうが! ほら、さっさと帰るんだよ」

 セリカさんの言葉にちらっと視線を向けると、まさにユラちゃんが使い物にならなくなりかけていた。モエちゃん、恐ろしい子。まぁ、サラさんもわりとギリギリだったかもしれないけど。

「は、はぅわ~!!」

 頬どころか顔全体を真っ赤にしたサラさんは、シュバババって擬音が似合うくらいの猛スピードで服を着て、脱兎のごとく店を出て行ってしまった。

「モエ~、同僚に手を出すのダメって言ったでしょう?」
「えへへ、ミキちゃんが妬いてくれるから愉しくなっちゃうんだよねぇ」
「はぁ、今夜はみんなで相手してあげるから勘弁してよ……」

 ……4Mの関係性ってまさか!?
 それはそれとして、この燻っている熱をどうしたらいいものか。

「はぁ、ギター回収してカラオケでも行くかな……」

 火照る身体を引きずって、私も家路につくのだった。
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