百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

003 ここはランジェリーカフェ

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 カフェ&ショップ――シルキストのアルバイト面接に来た私、下条藍は今……困惑している。
 ショップを併設する飲食店があるのは何となくわかる。ただ、カフェと……下着屋さんが組み合わさるというのは、あまりにも想定外だった。

「お待たせ~、バイトリーダーのマカだよ」

 奥の部屋(おそらくバックヤード)から現れたのは、二十歳くらいの女性。背は平均より少し高いくらいで私と同じくらい。ただ、胸は私より大きい。なぜそう断言できるか、それは彼女が下着姿だからだ。
 淡いブルーのベースにフリルがあしらわれた可愛らしい下着、きっちりホールドしているのか歩いていても大きさのわりに胸があまり揺れない。というか……。

「え、4Mのマカちゃん……!?」

 4Mというのは、マルチ・メディア・ミックス・ミュージックという動画配信ユニットの略称でメンバーの名前はマカ、ミキ、メグ、モエ。音楽活動をしたりゲームの実況をしたり大食いしたりと、様々な動画を配信している。私も大ファンで何度も見ているんだけど……まさか本人に出会えるなんて。

「あ、4M知ってるんだ。実はここで全員バイトしてるよ~」
「――!! た、確かに……全員巨乳だなぁって思ってたけど、そっか。シルキストのブラ、前にレビュー動画上げてたわ……」

 あんまり聞かないブランドだからすっかり忘れてしまっていたけど……たまに出る方言から出身この辺なんだろうと予想していたのがまさか本当だったなんて。

「感動してるところごめんね、ここでの仕事について説明してもいい?」
「あ、はい」
「ここはね、キャスト――店員さんのことね、キャストがシルキストで販売している下着を着用していること以外は普通のカフェだよ。まぁ、キャストが下着しか着てないから熱々のスープとかは売ってないけど。で、ここは一応風営法の認可を取っているので、お客さんのことをゲストって言うんだけど、ゲストに接待ができるの。隣とか正面に座ってお話したり、胸を触らせたり、ね?」
「……え!?」

 やっぱりここいかがわしいお店じゃん!! そんなお店で4Mのメンバーが働いてるの!?

「あ、忘れてたけどゲストは女性だけ。ここ男子禁制のお店だから、おっぱい触らせてもまぁ大丈夫だよ。逆に、ゲストが下着を買う時にフィッティングとかのお手伝いで私たちキャストがゲストのおっぱいを触ることもあるし」

 まぁ大丈夫って言うけど……いやぁ、どうなんだろう。これが時給900円のお仕事ってことか……。

「ちなみに客層は30代が多いかな。そんな乱暴な触り方をする人はいないよ。店舗の営業時間は朝の十時から夜の十時まで、シフト制でほとんどの人は6時間シフトかな。週に2日から5日くらいで、定休日は火曜と水曜、場合によってはキッチンに入ってもらう場合もあるけど、料理はできる?」
「……ええっと、一人暮らしビギナーの程度です」
「じゃあ洗い物とか後片付けくらいで、メインはホール業務だね。藍ちゃんスタイルいいし、人気出そうだね。ちなみに、たまーにチップくれるお客さんいるけど、いくらもらったかお店に報告してくれれば全額もらっていいよ」

 チップかぁ。海外ではメジャーな文化らしいけど、ここでくれるお客さんなんているんだろうか。

「まぁ接待としてキャストにドリンクを入れてくれるゲストさんもいるし、名前を憶えてあげたり手を握ってあげたり、そうしているうちにチップくれたり、多めに注文してくれたりするんだよね。売上のいいキャストにはインセンティブも出るから頑張ってね」

 そんな話をしているとバックヤードからシンディ先輩が戻ってきた。当然のごとく下着、黒のシックなブラジャーが大人っぽい。

「あたしはインセンティブ、けっこうもらってるぜ」
「シンディちゃんカッコいいからね。お姉さん方がよく谷間に万札入れてるのを見るよ」

 ……キャバクラじゃん!! いや、ドラマとかでしか見たことないけど。

「ちなみに福利厚生としては食事補助と、下着類も一か月に一着は無料でプレゼントするし、基本の価格から三割引きで買えるよ。ちなみに、中間業者を挟まない直売だから店頭から比べると半額くらいかな」
「が、頑張ります!!」

 正直、下着のサイズが大きくなって値段もかさばっていたのだ。これはもう願ったりかなったりだろう。なにせあの4Mと一緒に働けるのだから。……でもやっぱり下着は恥ずかしいから、知り合いには言わないようにしておこう。




※この物語はフィクションで実在の人物、法律とは一切関係ありません。
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