百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

002 お店に行ってみよう

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 大学の学食で先輩からバイトを紹介された翌日、私は空の宮駅西の商店街にいた。
 通っていた中学高校の近くにも商店街はあったが、あっちが個人経営の一軒家店舗ばかりで学生相手に盛り上がっていたのに対して、こっちは雑居ビルやら居酒屋、英会話教室やらが連なり昼間は寂れた印象すら感じる商店街だ。
 やはり紹介されるバイトはキャバクラとかそういうのではないだろうかという心配をしながら、西に向かって五分ほど歩くと、ビルの一階部分にある喫煙スペースでシンディ先輩が一服していた。

「ちっす、先輩ボーカルのくせにタバコ吸うんですね」
「あぁ、大学じゃあんまり吸わないけどな。お気に入りはマイセン、今は名前変わってなんだっけっか……まぁいいや、お前は吸わない方がいい。声、綺麗だしな」
「ちょ、褒められると照れますって」

 照れる私にお構いなしで先輩はたばこを灰皿にこすりつけると、エレベーターを指さした。

「五階だ。行くぞ」

 エレベーターに乗り込むと、シンディ先輩からはたばこの臭いに交じって花のような香りもする。きっとこっちが先輩本来の香りなのかもしれない。そんなことを考えながら、エレベーター内にあるテナントの案内表示を見てみる。五階には……。

「カフェ&ショップ……シルキスト?」

 何かを売るショップを併設したカフェ……字面だけを見て分かるのはその程度だ。チーンという音とともにエレベーターが停止する。ドアを開けてくれた先輩に一礼しながら、エレベーターを降りると黒に金の装飾が施された重厚そうなドアが目の前にあった。隣にはエレベーターでも見たシルキストの文字。SILKISTという表記らしい。

「ちゃーす、ハナエさーん、新人連れてきましたよー」

 シンディ先輩がドアを開けて奥へと声をかける。すると一人の女性が入口側で立ち尽くす私にさっさと入るように促す。
 長い髪を明るい茶色に染めてゆるくウェーブさせた大人の女性だ。この人がきっとハナエさんだろう。
 なかなかお目にかかれないくらいの美女で服装自体はシンプルなブラウスとスカートというキャリアウーマンって感じの恰好なんだけど、ブラウスを第二ボタンまで開けていたり、スカートに深いスリットが入っていたりと、昼間働く女性ではないなというオーラがひしひしと伝わってくる。

「初めまして、貴女……名前は?」
「は、はい。下条藍です。星花女子大学の文学部一年で、シンディ……新藤先輩と同じ軽音楽サークルで活動しています」

 アルバイトの面接なんて初めてだけれど、どういう流れなのか、とか、どう受け答えたらいいのか、なんてことはネットで調べた。ただ……立ち話で始まるのは完全に想定外なんですけど。

「じゃあもう一つ。貴女、バストサイズは?」

 唐突なセクハラ質問に一瞬フリーズするが、そういえばシンディ先輩も胸元を見て大丈夫だろうとか言ってたし……やっぱりそういうお店なのかな。でも時給は魅力的だし……。

「えっと、最近Eカップになりました……」
「採用。後の説明はホールリーダーから聞くといいわ。じゃあ、よろしく」

 そう言ってハナエさんは去ってしまった。去ってしまったと言っても奥の扉を開けて別の部屋にいっただけなのだが。ともあれ残された私はシンディ先輩に目を向けるのだが、ひょっとして先輩がホールリーダーなのだろうか。

「な? 大丈夫だったろ。ハナエさんがホールリーダー呼んできてくれてるだろうから、あたし着替えてくるわ。んじゃ、座って待ってな」

 そう言って先輩も奥の扉へ行ってしまった。バックヤードなのだろう。
 取り敢えず促されたように手近な席に座ったのだが、私はこれまで店内を一方向からしか見ておらずカフェ部分だけを見ていた。しかし席に座ったことでショップ部分が見えたのだ。
 そして売っている商品は……。

「え……下着?」
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