860 / 1,235
25章 次に備えて
揃って机に向かい
しおりを挟む
「オユキ、貴方まさかとは思っていたのだけれど」
「あの、オユキさん、それはあまりにも」
オユキとしては、手習いとして渡されたいくつかの物。トモエは、明らかに少々難易度の高い方法で緩やかな曲線を縫取っていたため、それ以外。ひとまずの目標としてある雪の結晶、その縫い取りを手早く片付けて見せたところ、せっかくだからと同席している異邦人たちから随分と不評を得た。
一応は、直線を主体として、ナザレアは今もまだ本番で使うための布を隣で選んでいるためオユキの様子を見ることはできず、一針縫っては半分ほど戻して、そこから少し続けてと。そのようなことを繰り返して。なかなかうまくいかない部分として、どうにも定められた図案、それを縫取ろうとしたときにオユキの定めた間隔、最初にこの程度かと判断したものと最後が著しくずれているあたり、オユキとしてもどうかとは思うのだが。どうにも、それ以上に周囲には不評な様子。
「その、私としても確かにこう、最後のほうの不揃いは気になるのですが」
「いえ、それもそうなのですけど、基本の縫い取りばかりでは」
「ええ、表現としても今回は雪の結晶なのでしょう、ならばもう少し柔らかさを表現するか、固さを表現するにしてもやりようがあるものでしょうに」
「とは申されましても」
さて、そうして指摘されてみたところで、何をもってしてそのように言われているのかとんと分からぬとオユキは首をかしげるばかり。参考として昨日渡されたものを隣に並べ、ナザレアがしっかりと用意した木枠に張られた布に、さっそくとばかりに己が刺繍をしたものと比べてはみるのだが。
「確かに、少々精度に劣ってはいるかと思いますが」
カリンとヴィルヘルミナが口をそろえて言う言葉が、どうにも分からぬオユキとしては改めてまじまじと見てはみるのだが。
「そうですね、こちらはオユキがこれと思う図案を、急ぎで縫取ったものなのでしょう」
「よくお分かりですね」
「それは、わかりますわよ。縫い目には随分と熟練が感じられるんですもの。こうして、慣れぬ図案であるというにもかかわらず、こうして均等に」
示される縫い目は、確かにオユキが縫取った少々不揃いな、端の部分だけでなくそこまでに至るまでも所々長さが変わってしまっているようなものとは違う。均一に並ぶ縫い目、刺繍として裏面を見なければまさにこうした図がそのままに布に描かれているのだとそう思わせるような。やはり刺繍らしい立体感といえばいいのだろうか、基本の、オユキに渡すための物としてあくまで基本の縫い方でしかないというのにそこまでを見事になしている。
「こちらは、誰の手によるものでしょうか。叶うなら、私の衣装にもいくつか頼みたいわ」
軽く指でなぞって、ヴィルヘルミナがほうと息をつきながらそのようなことをいうものだが。
「王妃様の手によるものですので、頼めるかと言われれば」
「あら、それは残念ですね。では、こちらで刺繍が得意なものを改めて探してみましょうか」
「それこそ、オユキに頼んで商人ギルドの者たちをまた呼んで貰えば良いのではないかしら。さすがにミーナがそのままふらりと出かけてと、それをやると面倒も多いでしょう」
「私の歌を求めてくださる方が多いのは、ええ、嬉しくはあるのですが」
「何か、不都合がありましたか」
カリンが訳知り顔でオユキに頼めばというものだが、さすがに早々頻繁に商人たちを呼び出す気はオユキにもない。一応はトモエが持ち帰るだろう貴石、鉱石の類を処理するためにまた呼び出す気でいることは確かではあるのだが。
「不都合、というほどではないのだけれど。こちらでも、ほら、私は私としてあるでしょう」
「そういえば、あまりお話を伺ってはいませんでしたが」
要は、以前に王都に来た時に、そして今回もあちらこちらで歌声を披露して回っているということらしい。さすがに、始まりの町とは違い、今度ばかりはファンタズマ子爵家あてに公演の依頼などは届いていないのだが。
「特に、そうした話を当家は受けていませんよね」
ひどく簡略化された図案、雪の結晶の縫い取りを初めて既に一時間は経ってしまっている。これでは、オユキの求める中央に少し派手なものを据えて、その周囲を彩るようなものというのは、さてどれだけがかかるのかと。
「いえ、そのあたりはカレンが差配を行っています」
「なるほど、それで私の元までは話が来ていないわけですか」
「ごめんなさいね、私としても気が進まないのだけれど」
「いえ、以前にも庇護を行うとそう約束はしていますから。今もこうして、いろいろとお付き合いいただいていますし」
そして、オユキが終わってからしばらく。今度はこうして並んで一つの机を囲んで、お茶を楽しみながらも裁縫に勤しんでいる二人もそれぞれに一区切りとばかりに出来上がったものをオユキに見えるようにしながら。
「ありがたい限りです。正直、生前も本当にいろいろな人に頼んでやっとと言う所でしたもの」
「世界に名を馳せた歌姫である以上、それはそうなるものでしょうとも。カリンさんも、同じような煩雑はあったかと思いますが」
「私のほうは、そのあたりは弟子たちが引き取ってくれていましたね。やはり、舞とは言え武に身を捧げた者である以上は、世の煩雑に係わってばかりは」
それぞれに刺しゅうを施したひとひらの布。オユキは生憎と木枠からいかに外すかもよく分からぬのだが、それが当然とばかりに外した上でオユキのほうへ。要は、完成したらこのようにして外すのだとそれを示して見せて。それを見ながらオユキもどうにかねじを緩めて、二つ重なる木枠をずらして布を取り出す。そうして、オユキ自身が縫い上げたものをカリンとヴィルヘルミナが縫い上げたものと並べて見比べてはみるのだが、どうにも。
「武に傾倒してというのもかまいはしないと思いますけど、カリン、貴女も舞を主体としているのでしょう」
「それは、そうなのですがやはり体を動かすとなれば、そのためにも日々行わなければならないことが」
「そういえば、確か、東のほうで有名な踊り子がいると、そんな話を聞いた覚えもあるのだけど」
「それが私かは、生憎と」
踊りという意味では、有名なものというのはやはりそれなりに多く。カリンにしても、ゲームの中では対人において名を馳せていたのだがそれに関してはヴィルヘルミナの知るところではなかったということなのだろう。闘技場にも足を運んで、そこで観戦を楽しんだりは下には違いないのだろうが、それでもそこにいる者たちを個別に認識してとそうするほどでは無かったのだと、何ともまたわかりやすい。
「そういえば、オユキ、貴女は生前どういった者だったのかしら」
「興味はあれど、聞いていませんでしたね、思い返してみれば」
「まぁ、もとよりマナーとしてそういった部分はありましたから」
思い返してみれば、確かにこれまで出会った異邦人たちはオユキの知人ばかり。アルノーもミズキリがどういった由来の相手かは知っていたようであり、その知人であるというオユキのことも成程そうした知り合いかとばかりに。
「そうですね、では、次の刺繍を行う間にでも少しの昔語りを」
ただ、その前に、オユキとしてもこの難題に関してぶつけたい疑問が存在しているのだ。甚だ分からぬ、昔からげいじゅと呼ばれるものに関しては本当に分からぬことばかりだと。
「正直、機能として大差ないように思うのですが」
確かに、カリンの物も、ヴィルヘルミナの物も。オユキが行ったものに比べて手間がかかっているというのはわかる。細かい部分で完成度が、針の幅が均等に近いとそれはわかるのだがやはりそれ以上はわからない。
「機能ではなく、美意識の問題ですわ」
「オユキ、機能美という言葉もあるでしょう」
「刺繍における機能というのは、凡そ布の強度を上げる程度だったように思いますが」
そんなオユキの言葉に、何やら著しく衝撃を受けたのか、ナザレアが手に持っていた次の布を取り落とす。シェリアは、まぁそのようなものかと一応の納得はするのだろうが、こうして習おうとまで言い出した相手が、まさかとそう考えてのことではあるのだろう。今、同席している二人にしても、何故それだけのためにとそんな視線。
「その、私の現状ですね、それを改善するための手立てをいただくにあたって、供え物をと」
そして、このあたりの共有もまだだったかとオユキがかいつまんで話をすれば。
「それこそ、オユキであれば買い上げるほうが早いのではなくて」
「己の身の為にというのであれば、浪費ではなく必要な経費とそう考えるものでは」
「ええ、そうは考えますし、これで供え物を求められてというわけでもなければ。いえ、勿論いくらかは買い求めますが」
そう、すでにそのあたりは、カレンに人足の手配をどうしたのかを訪ねるとともに頼んである。まもなく、というほどでもないが、明日にもまた御用聞きにこの屋敷に商人たちが訪れることだろう。今度は、トモエとオユキの不興を買わぬ様にと気を払って。
「であるならば、よいのですが」
「そうですね、その際、私が同席しても宜しくて」
「ご希望とあれば、構いませんとも。と、言いますかお二方も、必要とあれば呼んでいただいてもかまいませんよ」
オユキが、そのあたりは気にすることも遠慮することもないのだとそう話をしてみるのだが。
「いえ、私たちがそれをしてしまうと、いらぬことを引き起こすでしょう」
「そうした心得違いを行う相手に関しては、どうでしょうか」
さすがに、もうこちらに来ないのではないのか、そうオユキは考えているのだが。確かに、この二人が呼びつけて、そこで何某かの品を求めてとした場合には、それをファンタズマ子爵家との取引実績とそう喧伝する可能性もないではない。寧ろ、ここぞとばかりにしそうな気もするのだ。それもあって、始まりの町や領都では買い物を楽しんでいた二人にしてもこちらではそれをしていないのだろう。
「そうですね、ただ不便を、不自由を感じてほしいわけではありませんから、必要とあれば事前に話だけをしていただければ。」
「ええ、ならばそのように」
「その時には、トモエさんやオユキを誘ったりと」
「いえ、その必要は正直そこまでは」
「あの、オユキさん、それはあまりにも」
オユキとしては、手習いとして渡されたいくつかの物。トモエは、明らかに少々難易度の高い方法で緩やかな曲線を縫取っていたため、それ以外。ひとまずの目標としてある雪の結晶、その縫い取りを手早く片付けて見せたところ、せっかくだからと同席している異邦人たちから随分と不評を得た。
一応は、直線を主体として、ナザレアは今もまだ本番で使うための布を隣で選んでいるためオユキの様子を見ることはできず、一針縫っては半分ほど戻して、そこから少し続けてと。そのようなことを繰り返して。なかなかうまくいかない部分として、どうにも定められた図案、それを縫取ろうとしたときにオユキの定めた間隔、最初にこの程度かと判断したものと最後が著しくずれているあたり、オユキとしてもどうかとは思うのだが。どうにも、それ以上に周囲には不評な様子。
「その、私としても確かにこう、最後のほうの不揃いは気になるのですが」
「いえ、それもそうなのですけど、基本の縫い取りばかりでは」
「ええ、表現としても今回は雪の結晶なのでしょう、ならばもう少し柔らかさを表現するか、固さを表現するにしてもやりようがあるものでしょうに」
「とは申されましても」
さて、そうして指摘されてみたところで、何をもってしてそのように言われているのかとんと分からぬとオユキは首をかしげるばかり。参考として昨日渡されたものを隣に並べ、ナザレアがしっかりと用意した木枠に張られた布に、さっそくとばかりに己が刺繍をしたものと比べてはみるのだが。
「確かに、少々精度に劣ってはいるかと思いますが」
カリンとヴィルヘルミナが口をそろえて言う言葉が、どうにも分からぬオユキとしては改めてまじまじと見てはみるのだが。
「そうですね、こちらはオユキがこれと思う図案を、急ぎで縫取ったものなのでしょう」
「よくお分かりですね」
「それは、わかりますわよ。縫い目には随分と熟練が感じられるんですもの。こうして、慣れぬ図案であるというにもかかわらず、こうして均等に」
示される縫い目は、確かにオユキが縫取った少々不揃いな、端の部分だけでなくそこまでに至るまでも所々長さが変わってしまっているようなものとは違う。均一に並ぶ縫い目、刺繍として裏面を見なければまさにこうした図がそのままに布に描かれているのだとそう思わせるような。やはり刺繍らしい立体感といえばいいのだろうか、基本の、オユキに渡すための物としてあくまで基本の縫い方でしかないというのにそこまでを見事になしている。
「こちらは、誰の手によるものでしょうか。叶うなら、私の衣装にもいくつか頼みたいわ」
軽く指でなぞって、ヴィルヘルミナがほうと息をつきながらそのようなことをいうものだが。
「王妃様の手によるものですので、頼めるかと言われれば」
「あら、それは残念ですね。では、こちらで刺繍が得意なものを改めて探してみましょうか」
「それこそ、オユキに頼んで商人ギルドの者たちをまた呼んで貰えば良いのではないかしら。さすがにミーナがそのままふらりと出かけてと、それをやると面倒も多いでしょう」
「私の歌を求めてくださる方が多いのは、ええ、嬉しくはあるのですが」
「何か、不都合がありましたか」
カリンが訳知り顔でオユキに頼めばというものだが、さすがに早々頻繁に商人たちを呼び出す気はオユキにもない。一応はトモエが持ち帰るだろう貴石、鉱石の類を処理するためにまた呼び出す気でいることは確かではあるのだが。
「不都合、というほどではないのだけれど。こちらでも、ほら、私は私としてあるでしょう」
「そういえば、あまりお話を伺ってはいませんでしたが」
要は、以前に王都に来た時に、そして今回もあちらこちらで歌声を披露して回っているということらしい。さすがに、始まりの町とは違い、今度ばかりはファンタズマ子爵家あてに公演の依頼などは届いていないのだが。
「特に、そうした話を当家は受けていませんよね」
ひどく簡略化された図案、雪の結晶の縫い取りを初めて既に一時間は経ってしまっている。これでは、オユキの求める中央に少し派手なものを据えて、その周囲を彩るようなものというのは、さてどれだけがかかるのかと。
「いえ、そのあたりはカレンが差配を行っています」
「なるほど、それで私の元までは話が来ていないわけですか」
「ごめんなさいね、私としても気が進まないのだけれど」
「いえ、以前にも庇護を行うとそう約束はしていますから。今もこうして、いろいろとお付き合いいただいていますし」
そして、オユキが終わってからしばらく。今度はこうして並んで一つの机を囲んで、お茶を楽しみながらも裁縫に勤しんでいる二人もそれぞれに一区切りとばかりに出来上がったものをオユキに見えるようにしながら。
「ありがたい限りです。正直、生前も本当にいろいろな人に頼んでやっとと言う所でしたもの」
「世界に名を馳せた歌姫である以上、それはそうなるものでしょうとも。カリンさんも、同じような煩雑はあったかと思いますが」
「私のほうは、そのあたりは弟子たちが引き取ってくれていましたね。やはり、舞とは言え武に身を捧げた者である以上は、世の煩雑に係わってばかりは」
それぞれに刺しゅうを施したひとひらの布。オユキは生憎と木枠からいかに外すかもよく分からぬのだが、それが当然とばかりに外した上でオユキのほうへ。要は、完成したらこのようにして外すのだとそれを示して見せて。それを見ながらオユキもどうにかねじを緩めて、二つ重なる木枠をずらして布を取り出す。そうして、オユキ自身が縫い上げたものをカリンとヴィルヘルミナが縫い上げたものと並べて見比べてはみるのだが、どうにも。
「武に傾倒してというのもかまいはしないと思いますけど、カリン、貴女も舞を主体としているのでしょう」
「それは、そうなのですがやはり体を動かすとなれば、そのためにも日々行わなければならないことが」
「そういえば、確か、東のほうで有名な踊り子がいると、そんな話を聞いた覚えもあるのだけど」
「それが私かは、生憎と」
踊りという意味では、有名なものというのはやはりそれなりに多く。カリンにしても、ゲームの中では対人において名を馳せていたのだがそれに関してはヴィルヘルミナの知るところではなかったということなのだろう。闘技場にも足を運んで、そこで観戦を楽しんだりは下には違いないのだろうが、それでもそこにいる者たちを個別に認識してとそうするほどでは無かったのだと、何ともまたわかりやすい。
「そういえば、オユキ、貴女は生前どういった者だったのかしら」
「興味はあれど、聞いていませんでしたね、思い返してみれば」
「まぁ、もとよりマナーとしてそういった部分はありましたから」
思い返してみれば、確かにこれまで出会った異邦人たちはオユキの知人ばかり。アルノーもミズキリがどういった由来の相手かは知っていたようであり、その知人であるというオユキのことも成程そうした知り合いかとばかりに。
「そうですね、では、次の刺繍を行う間にでも少しの昔語りを」
ただ、その前に、オユキとしてもこの難題に関してぶつけたい疑問が存在しているのだ。甚だ分からぬ、昔からげいじゅと呼ばれるものに関しては本当に分からぬことばかりだと。
「正直、機能として大差ないように思うのですが」
確かに、カリンの物も、ヴィルヘルミナの物も。オユキが行ったものに比べて手間がかかっているというのはわかる。細かい部分で完成度が、針の幅が均等に近いとそれはわかるのだがやはりそれ以上はわからない。
「機能ではなく、美意識の問題ですわ」
「オユキ、機能美という言葉もあるでしょう」
「刺繍における機能というのは、凡そ布の強度を上げる程度だったように思いますが」
そんなオユキの言葉に、何やら著しく衝撃を受けたのか、ナザレアが手に持っていた次の布を取り落とす。シェリアは、まぁそのようなものかと一応の納得はするのだろうが、こうして習おうとまで言い出した相手が、まさかとそう考えてのことではあるのだろう。今、同席している二人にしても、何故それだけのためにとそんな視線。
「その、私の現状ですね、それを改善するための手立てをいただくにあたって、供え物をと」
そして、このあたりの共有もまだだったかとオユキがかいつまんで話をすれば。
「それこそ、オユキであれば買い上げるほうが早いのではなくて」
「己の身の為にというのであれば、浪費ではなく必要な経費とそう考えるものでは」
「ええ、そうは考えますし、これで供え物を求められてというわけでもなければ。いえ、勿論いくらかは買い求めますが」
そう、すでにそのあたりは、カレンに人足の手配をどうしたのかを訪ねるとともに頼んである。まもなく、というほどでもないが、明日にもまた御用聞きにこの屋敷に商人たちが訪れることだろう。今度は、トモエとオユキの不興を買わぬ様にと気を払って。
「であるならば、よいのですが」
「そうですね、その際、私が同席しても宜しくて」
「ご希望とあれば、構いませんとも。と、言いますかお二方も、必要とあれば呼んでいただいてもかまいませんよ」
オユキが、そのあたりは気にすることも遠慮することもないのだとそう話をしてみるのだが。
「いえ、私たちがそれをしてしまうと、いらぬことを引き起こすでしょう」
「そうした心得違いを行う相手に関しては、どうでしょうか」
さすがに、もうこちらに来ないのではないのか、そうオユキは考えているのだが。確かに、この二人が呼びつけて、そこで何某かの品を求めてとした場合には、それをファンタズマ子爵家との取引実績とそう喧伝する可能性もないではない。寧ろ、ここぞとばかりにしそうな気もするのだ。それもあって、始まりの町や領都では買い物を楽しんでいた二人にしてもこちらではそれをしていないのだろう。
「そうですね、ただ不便を、不自由を感じてほしいわけではありませんから、必要とあれば事前に話だけをしていただければ。」
「ええ、ならばそのように」
「その時には、トモエさんやオユキを誘ったりと」
「いえ、その必要は正直そこまでは」
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる