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25章 次に備えて
早速それぞれに
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これを手本としなさい、そう言外に告げられたオユキは、木枠も使わずに見事なまでにそれぞれに見事なまでにまっすぐ縫い上げたものを手土産に渡されて。オユキとしては、さてこれを一体どう使うべきかと全く思いつかないものだが、トモエのほうでは思い当たるところがあるようでオユキの手習いとして、観察が終われば預けてくれとそのような話になった。
一体、どこを観察するのかもオユキとしては定かではないのだが、確かにオユキの手習いとして渡すことになっているだけあり縫い目も色々。ただ、正直なところ、それぞれにどういった意図があってのことかはさっぱりわからない。そんなオユキの様子に、トモエは楽し気に。ナザレアのほうはより一層の悲壮感を湛え。そんな同僚の肩を、そっとシェリアが叩いている。シェリアにしても、淑女としてのことは片手間にできたのだと、そうした話をすでに聞いている。オユキが分からぬこれやそれに関して、彼女のほうは一応の理解があるのだろう。
そんな、何とも言えぬ王城からの帰り道を過ごせば、さすがにオユキが付かれたこともありその日は早々に床に就くことになった。
「では、オユキさん」
「はい、どうぞお気をつけて」
明けて翌日。
その日は随分と朝早くからトモエもオユキも目を覚まして。オユキのほうは、体調はやはりまだ優れはしないのだが、あの短い時間でも隣国の王妃から何某かの手助けがあったのだろう。少なくとも座って作業をする分には問題がないという状況。食事にしても、この季節であることを考えればそれなりに進んだこともある。そんなオユキの様子を見守っていたトモエとしては、やはりそれらはうれしいものであり。今回のことが、人の手によって齎されている一つの結果でこれほどだというのならばと、意気揚々とさっそく鉱山に向かうのだと言い出した。
「シェリア様もついてきてくださいますし、他にも幾人か」
「ええ、オユキ様、どうぞお任せくださいませ」
ナザレアに関しては、これからオユキが行う針仕事そちらの監督といえばいいのだろうか。昨夜のうちに、既にカレンに声をかけて、この屋敷にもさんざんにため込まれている布や糸を漁っているとそうした話は聞いている。さて、オユキの描いた図案、雪の結晶を果たしてナザレアがどのようにするのかそれに関しての興味はトモエにもあるのだが、やはり今は優先すべきことがほかにもある。
今回のこと、供え物を求めたのは冬と眠りであることには違いないのだが、トモエとしては雷と輝き、こちらにも何かを送れないかと考えている。雷神の伝承など、正直あまりに多岐にわたっているし、先ごろ見た姿だけで断定するのはさすがに躊躇われるのだが、いろいろと、そう、こうして今に至るまでにいくつか話に出ていたものもある。翡翠を、いくつか。せっかくの機会ということもある、オユキの髪飾りにもいくつか欲しいと思っていたそれを、せっかくの機会だからと。
「荷物については」
「そのあたりは、カレン様に頼んでいたのですが」
「あの、トモエさん」
積み荷を運ぶ人足、それが屋敷の出入り口、馬車のそばにも見られないことにオユキが疑問を覚えればしかしトモエからは丸投げしましたと、そのような回答が。
「一応、改めてカレンに確認をしてから出発としたほうが」
「いえ、何やらナザレア様と忙しくしていたようですから」
そして、ことこれに関してはお互い様。互いに慣れぬことを、慣れぬままに行おうとしているからこそ、周囲に対して随分と過剰な負担をかけることになる。おそらく、これを改善しようと思えば、方法は当然ある。しかし、それを今できないという前提を無視すれば。オユキは、鉱山に向かうにはいまだに体調に不安がある。トモエが刺繍を行うのは構わないのだが、それをしてしまえば鉱山で貴石を探すことができない。王都の鉱山、公爵領の都で見た、足を運んだ場と似たようなものもいくつかあるとそうした話を聞いたものでもある。いくつかではなく、二か所だとそのような話だったかもしれないが。
「一応、一度確認してから出たほうが」
「そうですか。では、そのように」
さて、随分とトモエが気炎を上げているとそう感じるところがある。オユキから見ても、それはトモエをある程度知る周囲の物から見ても。懸念として、トモエは足の多い虫が基本的にダメなのだ。しかし、洞窟には、やはりその手の魔物が多いこともある。大丈夫なのだろうかと、そうした部分も含めたうえでの不安がオユキの視線に乗ったのだろうか、トモエのほうでも先に領都で見かけたムカデが頭をよぎったのか、少しぞっとしたように腕をさすったりなどもしているのだが。
「そちらは、そうですね」
「シェリア、トモエさんが苦手とする相手もいます。そちらへの対処は、良しなに」
「苦手、ですか。ええ、確かに洞窟の中ではトモエ様の武技というのは些か過剰かもしれませんが」
「武技ではなく、ですね」
さて、それを口にしてもいいものだろうかとオユキが言葉を選ぼうとしていれば。
「その、私は足の多い虫がどうしても苦手でして」
「ああ、なるほど。畏まりました、そちらの対応はどうぞ私にお任せを」
「その、視界に入ったとしても、トモエさんは動きが止まってしまいますから」
「そこまで、ですか。では、改めて護衛の者たちに間引く様に伝えねばなりませんね」
「やはり、こちらにもいるのですか」
トモエが辟易しているとそれを隠しもせずに、ため息をこぼす。相も変わらず、苦手なものは克服できないままでいるらしい。そもそも、どういった由縁で苦手になったのか、それに関してもオユキは聞いていないのだが、とにかく一緒にいることが増えて、そこで苦手なのだと気が付くことがあったものだ。一応は、過去には知らぬ相手には、子供や孫を相手にしているときには隠している素振りは見せていたものだが、まぁ敏い子供たちはしっかりと気が付いていたようでもある。そんな過去を感じさせる事柄で、変わらずこちらにというのはやはりどこか楽しく。
「ええ、洞窟と鉱山と呼ばれる場所には凡そ」
「已むを得ませんか。くれぐれも、お願いしますね」
覚悟を決めたと、己の知らぬ場所で、見えたとしても可能な限りに早くと。そうシェリアにトモエが頼めば、彼女のほうも心得たとばかりに頷いて見せる。
「近衛として、確実に。閉所での戦闘は、他の騎士たちに引けを取らぬと自負しておりますので」
「広域での戦闘を騎士が行えるというのも、いえ、私が行った以上はそういったこともあるのでしょうが」
どうにも、こちらの人々の間では戦闘の種類があまりにも明確に分かれているらしいと、トモエだけでなくオユキも気が付いてきた。町の外で、魔物を相手にするというのならば、求められるのはやはり広域殲滅。魔術に頼ってもよいのだが、武技というものがやはりそれを可能にする。そして、雲霞の如く沸き立つ魔物を処理しようと考えれば、それも一つの正解なのだ。一方で、近衛という存在はやはり貴人の護衛を担当することになる。町から町の移動であれば、それこそ他の騎士たちでも十分に対応できるのであろうし、むしろ大いに暴れればなかなか近寄れるものも確かに少なくなるだろう。だが、屋敷の中、市街地、屋内、そうした限定される場所で守らなければならないものが生命ばかりではなく、物品にも及ぶというのであれば。
「トモエ様にしても、基本は閉所での立ち振る舞いをされているようにお見受けするのですが」
「ええ、確かに先の乱獲の際には、かなり無理をしましたし、流派の物とは根底からして異なります」
そう、トモエが示すために、己がオユキの伴侶であり万が一にもオユキに無体を働くことがあれば、いったいどれだけの武威をもって思い知らせるつもりがあるのかと。荒れ狂う雷を共に、センヨウを駆って戦場を駆け抜けて見せたものだ。勇壮なその姿に、オユキは己の体調不良を鑑みて少々不満を覚えはした。トモエにそこまでの選択をさせてしまったことに、流派の物とは違うとこうして明言するだけのことを行わせてしまった事に忸怩たる思いを抱えもした。だが、やはり嬉しかったのは事実。誇らしかったのも事実。オユキは、胸を張ってトモエの武を語るだろう。己の伴侶は、師と仰ぐ相手はこれほどの物なのだと。
広域殲滅、武技を、加護を笠に着る者たちを相手には、こちらに来て間もないトモエが既にこれほどまでのことができるようになっているのだぞと。
「オユキさん、あまりに気になさらぬよう。覚悟の上ですから」
「ええ、それについては存分に。自慢のトモエさんだと、そう胸を張って言えるものです」
「そのあたりについては、互いに必要なものが集まれば、また少し話しましょうか」
「そう、ですね」
オユキとしては、正直あまり気乗りしない部分ではある。既に、こちらに残る気がないのだと、それをトモエによって口にされてもいる。では、そう考えた理由は何か、それほどまでに疲労を覚えているものは何か。次に夫婦の話し合いを持てば、間違いなくそこに話も及ぶだろう。
そして、そんな事は、オユキの考えというのはトモエはとうに気が付いている。
「では、オユキさん」
「はい。どうぞ、お気をつけて」
そうして、かつてとは逆に。オユキが出ていくトモエを見送って。
さて、先ほど話したことにしても、どうにも互いに放っておいてしまっている気がすると、そんなことを考えたりもするのだが、こうして話している間にシェリアとナザレアが何やら身振りで他の者たちを動かしていたこともある。いよいよ任せてしまえば問題がないことだろう。てっきり、このあたりの仕事は家宰として働いているカレンの領分かと思えば、どうにもそうでもないらしい。
「さて、それでは、ナザレア」
「用意は、既に終えております」
そして、馬車に乗って屋敷の外に向かうトモエたちを見送った後には、オユキはこの場に残るナザレアに。
「正直なところ、どの程度の時間がかかると考えていますか」
「まずは練習を、図案にしてもこちらで一応ご用意させていただいておりますが、オユキ様が望むものかはわからず」
「図案の用意、ですか」
さて、いったい何を用意することがあるのだろうかとオユキが首を傾げれば、ナザレアからはやはりかといわんばかりにため息とともに。
「布地に、下絵を描かねばなりませんから」
一体、どこを観察するのかもオユキとしては定かではないのだが、確かにオユキの手習いとして渡すことになっているだけあり縫い目も色々。ただ、正直なところ、それぞれにどういった意図があってのことかはさっぱりわからない。そんなオユキの様子に、トモエは楽し気に。ナザレアのほうはより一層の悲壮感を湛え。そんな同僚の肩を、そっとシェリアが叩いている。シェリアにしても、淑女としてのことは片手間にできたのだと、そうした話をすでに聞いている。オユキが分からぬこれやそれに関して、彼女のほうは一応の理解があるのだろう。
そんな、何とも言えぬ王城からの帰り道を過ごせば、さすがにオユキが付かれたこともありその日は早々に床に就くことになった。
「では、オユキさん」
「はい、どうぞお気をつけて」
明けて翌日。
その日は随分と朝早くからトモエもオユキも目を覚まして。オユキのほうは、体調はやはりまだ優れはしないのだが、あの短い時間でも隣国の王妃から何某かの手助けがあったのだろう。少なくとも座って作業をする分には問題がないという状況。食事にしても、この季節であることを考えればそれなりに進んだこともある。そんなオユキの様子を見守っていたトモエとしては、やはりそれらはうれしいものであり。今回のことが、人の手によって齎されている一つの結果でこれほどだというのならばと、意気揚々とさっそく鉱山に向かうのだと言い出した。
「シェリア様もついてきてくださいますし、他にも幾人か」
「ええ、オユキ様、どうぞお任せくださいませ」
ナザレアに関しては、これからオユキが行う針仕事そちらの監督といえばいいのだろうか。昨夜のうちに、既にカレンに声をかけて、この屋敷にもさんざんにため込まれている布や糸を漁っているとそうした話は聞いている。さて、オユキの描いた図案、雪の結晶を果たしてナザレアがどのようにするのかそれに関しての興味はトモエにもあるのだが、やはり今は優先すべきことがほかにもある。
今回のこと、供え物を求めたのは冬と眠りであることには違いないのだが、トモエとしては雷と輝き、こちらにも何かを送れないかと考えている。雷神の伝承など、正直あまりに多岐にわたっているし、先ごろ見た姿だけで断定するのはさすがに躊躇われるのだが、いろいろと、そう、こうして今に至るまでにいくつか話に出ていたものもある。翡翠を、いくつか。せっかくの機会ということもある、オユキの髪飾りにもいくつか欲しいと思っていたそれを、せっかくの機会だからと。
「荷物については」
「そのあたりは、カレン様に頼んでいたのですが」
「あの、トモエさん」
積み荷を運ぶ人足、それが屋敷の出入り口、馬車のそばにも見られないことにオユキが疑問を覚えればしかしトモエからは丸投げしましたと、そのような回答が。
「一応、改めてカレンに確認をしてから出発としたほうが」
「いえ、何やらナザレア様と忙しくしていたようですから」
そして、ことこれに関してはお互い様。互いに慣れぬことを、慣れぬままに行おうとしているからこそ、周囲に対して随分と過剰な負担をかけることになる。おそらく、これを改善しようと思えば、方法は当然ある。しかし、それを今できないという前提を無視すれば。オユキは、鉱山に向かうにはいまだに体調に不安がある。トモエが刺繍を行うのは構わないのだが、それをしてしまえば鉱山で貴石を探すことができない。王都の鉱山、公爵領の都で見た、足を運んだ場と似たようなものもいくつかあるとそうした話を聞いたものでもある。いくつかではなく、二か所だとそのような話だったかもしれないが。
「一応、一度確認してから出たほうが」
「そうですか。では、そのように」
さて、随分とトモエが気炎を上げているとそう感じるところがある。オユキから見ても、それはトモエをある程度知る周囲の物から見ても。懸念として、トモエは足の多い虫が基本的にダメなのだ。しかし、洞窟には、やはりその手の魔物が多いこともある。大丈夫なのだろうかと、そうした部分も含めたうえでの不安がオユキの視線に乗ったのだろうか、トモエのほうでも先に領都で見かけたムカデが頭をよぎったのか、少しぞっとしたように腕をさすったりなどもしているのだが。
「そちらは、そうですね」
「シェリア、トモエさんが苦手とする相手もいます。そちらへの対処は、良しなに」
「苦手、ですか。ええ、確かに洞窟の中ではトモエ様の武技というのは些か過剰かもしれませんが」
「武技ではなく、ですね」
さて、それを口にしてもいいものだろうかとオユキが言葉を選ぼうとしていれば。
「その、私は足の多い虫がどうしても苦手でして」
「ああ、なるほど。畏まりました、そちらの対応はどうぞ私にお任せを」
「その、視界に入ったとしても、トモエさんは動きが止まってしまいますから」
「そこまで、ですか。では、改めて護衛の者たちに間引く様に伝えねばなりませんね」
「やはり、こちらにもいるのですか」
トモエが辟易しているとそれを隠しもせずに、ため息をこぼす。相も変わらず、苦手なものは克服できないままでいるらしい。そもそも、どういった由縁で苦手になったのか、それに関してもオユキは聞いていないのだが、とにかく一緒にいることが増えて、そこで苦手なのだと気が付くことがあったものだ。一応は、過去には知らぬ相手には、子供や孫を相手にしているときには隠している素振りは見せていたものだが、まぁ敏い子供たちはしっかりと気が付いていたようでもある。そんな過去を感じさせる事柄で、変わらずこちらにというのはやはりどこか楽しく。
「ええ、洞窟と鉱山と呼ばれる場所には凡そ」
「已むを得ませんか。くれぐれも、お願いしますね」
覚悟を決めたと、己の知らぬ場所で、見えたとしても可能な限りに早くと。そうシェリアにトモエが頼めば、彼女のほうも心得たとばかりに頷いて見せる。
「近衛として、確実に。閉所での戦闘は、他の騎士たちに引けを取らぬと自負しておりますので」
「広域での戦闘を騎士が行えるというのも、いえ、私が行った以上はそういったこともあるのでしょうが」
どうにも、こちらの人々の間では戦闘の種類があまりにも明確に分かれているらしいと、トモエだけでなくオユキも気が付いてきた。町の外で、魔物を相手にするというのならば、求められるのはやはり広域殲滅。魔術に頼ってもよいのだが、武技というものがやはりそれを可能にする。そして、雲霞の如く沸き立つ魔物を処理しようと考えれば、それも一つの正解なのだ。一方で、近衛という存在はやはり貴人の護衛を担当することになる。町から町の移動であれば、それこそ他の騎士たちでも十分に対応できるのであろうし、むしろ大いに暴れればなかなか近寄れるものも確かに少なくなるだろう。だが、屋敷の中、市街地、屋内、そうした限定される場所で守らなければならないものが生命ばかりではなく、物品にも及ぶというのであれば。
「トモエ様にしても、基本は閉所での立ち振る舞いをされているようにお見受けするのですが」
「ええ、確かに先の乱獲の際には、かなり無理をしましたし、流派の物とは根底からして異なります」
そう、トモエが示すために、己がオユキの伴侶であり万が一にもオユキに無体を働くことがあれば、いったいどれだけの武威をもって思い知らせるつもりがあるのかと。荒れ狂う雷を共に、センヨウを駆って戦場を駆け抜けて見せたものだ。勇壮なその姿に、オユキは己の体調不良を鑑みて少々不満を覚えはした。トモエにそこまでの選択をさせてしまったことに、流派の物とは違うとこうして明言するだけのことを行わせてしまった事に忸怩たる思いを抱えもした。だが、やはり嬉しかったのは事実。誇らしかったのも事実。オユキは、胸を張ってトモエの武を語るだろう。己の伴侶は、師と仰ぐ相手はこれほどの物なのだと。
広域殲滅、武技を、加護を笠に着る者たちを相手には、こちらに来て間もないトモエが既にこれほどまでのことができるようになっているのだぞと。
「オユキさん、あまりに気になさらぬよう。覚悟の上ですから」
「ええ、それについては存分に。自慢のトモエさんだと、そう胸を張って言えるものです」
「そのあたりについては、互いに必要なものが集まれば、また少し話しましょうか」
「そう、ですね」
オユキとしては、正直あまり気乗りしない部分ではある。既に、こちらに残る気がないのだと、それをトモエによって口にされてもいる。では、そう考えた理由は何か、それほどまでに疲労を覚えているものは何か。次に夫婦の話し合いを持てば、間違いなくそこに話も及ぶだろう。
そして、そんな事は、オユキの考えというのはトモエはとうに気が付いている。
「では、オユキさん」
「はい。どうぞ、お気をつけて」
そうして、かつてとは逆に。オユキが出ていくトモエを見送って。
さて、先ほど話したことにしても、どうにも互いに放っておいてしまっている気がすると、そんなことを考えたりもするのだが、こうして話している間にシェリアとナザレアが何やら身振りで他の者たちを動かしていたこともある。いよいよ任せてしまえば問題がないことだろう。てっきり、このあたりの仕事は家宰として働いているカレンの領分かと思えば、どうにもそうでもないらしい。
「さて、それでは、ナザレア」
「用意は、既に終えております」
そして、馬車に乗って屋敷の外に向かうトモエたちを見送った後には、オユキはこの場に残るナザレアに。
「正直なところ、どの程度の時間がかかると考えていますか」
「まずは練習を、図案にしてもこちらで一応ご用意させていただいておりますが、オユキ様が望むものかはわからず」
「図案の用意、ですか」
さて、いったい何を用意することがあるのだろうかとオユキが首を傾げれば、ナザレアからはやはりかといわんばかりにため息とともに。
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