632 / 1,214
18章 魔国の下見
咲く花もある
しおりを挟む
オユキの想像以上の事が起こる事もなく、トモエとレジス侯爵の立ち合いは終わりを迎えた。その後は少々感想戦などもはさみはしたが、流石にでは他の者達もという訳にもいかず、フォンタナ公爵から借り受けた使用人の目はどうした所で排せはしないが、久しぶりに顔を合わせる事もあり色々と話すべきこともあるというものだ。
「改めて、お久しぶりです。ご健勝なようで、まずは何より。」
「ファンタズマ子爵もと言いたいところではありますが。」
「ええ、何分ついて早々に大きな事もありましたから。」
どうにも、見てすぐに分かる程度にオユキの疲労は隠せていない物であるらしい。
昨日より幾分ましになっているとはいえ、前回よりも軽度とはいえ月単位で時間のかかるような事だ。一日でどうにかなるわけもない。
「話だけは伺っておりますが。」
「それこそ、詳細にとなれば時間ばかりが取られますから。聞かれた内容で、凡そ間違いは無いでしょう。」
全てをこの場で話せるわけもない為、簡単に濁しながらもただ、聞きたいことがあればそれには答えるとオユキからは付け加えておく。それこそ余人のいない場であれば、何一つ問題なく要点をかいつまんでとしたものだが。
「いえ、今は他に話すべきこともありますので。」
「それなのだが、レジス候。生憎と先遣としてその方が向かったとだけこちらでは聞いていてな。」
「その件ですか。正直急な事であり、私は事前の調整を行う文官たちの護衛統括以上の物ではない、というのが実情でしたが。」
「今後も踏まえて、顔合わせなどという話もあったかとは思うのだが。」
レジス侯爵を川沿いの町、今後イマノルが一先ず治める領地。話が進めば、レジス侯爵家として修めなければならない土地。そして、新しい魔国との出入口となる地。そこに新たに根を下ろすにあたって、それも目的であったのには違いないのだ。
しかし、そこからされたレジス侯爵の話を聞けば、然も有らんと揃って頷くしか無い事でもある。
要は、持ち込まれた話を魔国も取り扱いに苦慮することとなったのだ。そして、神国側は現状あまりに規模が不足しているのだが、それでも人が暮らせるだけの素地がある。しかし、魔国の側で選定された場所にはそれが無い。どうにか変えられないのかと、そう言った話も出た。しかし、魔国に於いて神の配剤を保証するオユキの知人でもある相手から、場所は既に神々が定めており、変えられぬとの断言があったのだという話と共に。
「予想はありましたが、相も変わらずミズキリは。」
「お前からも、頼むからよくよく言っておいてくれ。」
「オユキさん、その、ニコラというのは。」
「いよいよトモエさんとは、ほとんど会う機会もなかった相手ですね。何度かお伝えはさせていただきましたが、ミズキリの親族による会社、そこにお勤めで会った方ですから。」
そもそも巨大な構造物をつくるような、携わるような相手はミズキリが興した会社には全くもって必要が無かったという事もある。共同で行う事は確かにあった。実際に現実で知己を得たのは、その折ではあったがいよいよ関係性としても遠い相手だ。折に触れてゲーム内で継続して会う事もあったが、それでも顔を合わせて多少言葉を交わす程度。今は河沿いの町で架橋に向けた陣頭指揮を行っているアマギにしても似たようなものではあるが、こちらはハードウェアの設計や、流用する技術を用いた施設などもあったため一応は同じ場で働くことも多かったのだが。
「そちらは、いよいよ数が多いですし、流石に数度顔を合わせる機会があっただけの方は。」
「まぁ、流石に会う機会も少ない相手までは、詳細に覚えていないのが道理か。」
そして、オユキとしても見てわかるほどの疲労があるならと、魔国に向かうと決めて以降こうして試しを行う機会というのが増えている。トモエの目がオユキがなにをしたいのか分かっているのだと、そう語っていた上で話を向けた事もある。
アベルに対して、既に語った内容は極一部。
かつて、この世界が出来上がる前進となっていたはずの舞台で、そこに絞った話だけを開示した。つまり、それ以外の背景をそれぞれに持っていた、そのとっかりを与えたならばアベルは間違いなく反応を示す。この場では、オユキの疲労によるミスだと判断して、他愛もない、異邦人の過去語りだとして流れを修正したうえで、後で機会をうかがうに違いない。そのはずだというのに、さらりと流すだけ。つまり、制限が緩んだところで、それもそもそも限られた場だからこそ許されていたのであって常にという訳ではない。
ミズキリが隠しておきたいこと、それがこうした部分から透けて見える。
こちらの世界にかつての世界から技術を持ち込めないように。そのような制限は別にかかっていない。かつて、過去、それぞれに失敗したのは単純に法則が違うからだ。それを考慮するだけの、そこに研鑽を加えるほどの物を持ち込めなかった、ただそれだけの話に過ぎない。確かに数は多かった。しかし、それだけで覆せるほど生易しくは無かった。それだけの話だ。多くの碩学がこの世界に含まれた神秘を解き明かさんと奔走していた。そしてそれだけの熱意を持っていた者達は、間違いなく一部とはいえこちらにも来ていただろう。そして、過去に難しかった、他の分野、アプローチ、そして彼らを補助する後援者。それらに恵まれて届かなかった物に、こちらにあるものだけでと望むのはやはり、難しい。
戦と武技、その道を歩いたトモエだからこそ、そしてそれに並ぼうとしたオユキだからこそ簡単なのだ。
科学とは、観察を重ね法則を解き明かす学問だ。しかし、法則を司るはずの相手、法と裁きの姿は未だこの世界に存在しない。闘技大会に合わせて安置される事とはなったが、その姿がどのように見えるかにしても曖昧であったのだ。神殿の外観や、そこに飾られた物がそうであるように。
「ええ。流石にすべての事柄を覚えていられるわけでもありませんから。」
それこそ、既に相応の時は立ったものだが、それでも覚えている顔ははっきりとある。ふと、トモエと揃って懐かしさを覚える瞬間というのもある。しかし、仮受けていた人材は、身の回りの相手ばかりだけではなく、屋敷を整える為の相手もいた。そういった相手は、流石に会えば名前を思い出すこともあるだろうが、それくらいの物だ。そして、それよりも距離のあった護衛達は猶の事。
「ま、重要な事を忘れないのであれば、問題ないだろう。私としても正直城勤めの者達の顔と名前を全て覚えている陛下は、正直信じられないと思う事もある。」
「当主であれば、屋敷に勤める者の把握は最も大切な責務ですから。流石に、城程ともなれば、私も難儀するでしょうが。」
「確かに、一度覚えた後は出入りの把握をすればよいと考えれば、無理ではないのでしょうが。」
ただ、まぁ、見た目が似た相手もいる。その全てを間違いなくというのは、それはもはや才能と呼ぶしかないだろう。努力だけでどうにかなるなどと、とてもではないがオユキは言えるものではない。過去の己を振り返ってみれば、さて、どれだけ同じ会社に勤める者達で、名前も知らぬ相手がいたものかと。
「それはひとまず置いておきましょう。それにしても、混乱する期間が不可解とも思える物ですが。」
「確かに、巫女様方であれば、簡単に治められるのでしょうが。」
「こちらの陛下は、いえ、そこも国ごとに差があるものですか。」
神国は、恐らくという程度でしかないが、建国の由来を聞いた折にも王家は水と癒しの神、その血を継いでいるという話も合った。だからという訳ではなく、貴族制、王権これらは切っても切り離せないとそのような先入観があった。
「そうだな。私が知っているのも少ないが、それを公に口にすることができていると記録があるのは、神国とテトラポダだけだな。いや、あちらはあちらでまた少し異なりはするが。」
「確かに、祖霊という存在の扱いがありますか。」
さて、どうにも話が飛びがちだと、疲れもあって話しながらも遊んでいる思考が顔をのぞかせていると改めて己を戒めて、話を進める。
「さて、そうなると成程。」
だとすれば、こちらの国が抱える問題は神国よりもよほど根深い。幸いと言えるのは、間に他を挟んでいるという事だけ。さらに大河が隔てており、移動の難しさが単純に付きまとう。それに尽きる。
「こちらは流石に今後、でしょうか。手に余ると言いますか。」
「まぁ、おまえらよりも、俺らの方がよほどその辺りに関しちゃ問題視している。」
そして、オユキやトモエでは、どうした所で書簡を聞かねば気が付かぬが、ここまでの道中で散々にそれを思い知った相手からは、実に深いため息が。
「正直、それに関しちゃ知恵を借りたい。」
「人材の交流、彼我の抱える優れた人員、それの為し得る事を互いに知る。その辺りで題目としてはと思いますが。」
「ほう。」
これまで、人の移動すら問題を抱えていたのだ、こういった事がこちらの世界に暮らす相手の頭から抜けていたとして、納得がいくというものだ。内々には、腹案として伝えていたこともある。今こうして流れに乗って話しているのは、混乱し、指針を己で見つけられない者達に連なっている使用人、それに聞かせて行動をこちらの望む様に作らせるため、それ以上の物ではない。
「元より、腹案として伝えていたことではありますが、知識と魔の国は魔石を求める訳ですが、それを輸出だけに頼るというのは、あまりに非効率ですから。」
「確かに、戦力をこちらに置いて、それで得られる物の方が大きく、簡単ではあるが。」
「そうですな。私も鍛錬を兼ねて、時間のある時には、王都の周囲で槍を振るいましたが、こちらの方々はそれだけでも驚いてと、そのような様子でした。」
「レジス候、確かにオユキの話に利が有るのは私も分かるのだが、問題は他国に神国の戦力を置くという行為そのものなのだ。」
但し、他国に戦力を送り込むと言える行為でもある。そして、これまでの不足を喧伝することが仕事でもある集団となる。
「その辺りは、事前にある程度折衝があると考えていましたが、どうにもそこまで話が進まなかった様子。」
「お恥ずかしながら。」
「いえ、レジス候ではなく、陛下より任を得た方々がなすべきことではあるでしょうから。」
どうにも、レジス侯爵という人物はこういった事が苦手であるらしい。オユキの言葉は、寧ろ魔国の担当者を責めるための言葉であったのだが、レジス候が己が与えられた役割を果たせなかったととらえている。それも間違いではないのだが、今度ばかりは無理だろうとそう考えての事でもある。寧ろ予定通り、そう言っても良いのだから。
「改めて、お久しぶりです。ご健勝なようで、まずは何より。」
「ファンタズマ子爵もと言いたいところではありますが。」
「ええ、何分ついて早々に大きな事もありましたから。」
どうにも、見てすぐに分かる程度にオユキの疲労は隠せていない物であるらしい。
昨日より幾分ましになっているとはいえ、前回よりも軽度とはいえ月単位で時間のかかるような事だ。一日でどうにかなるわけもない。
「話だけは伺っておりますが。」
「それこそ、詳細にとなれば時間ばかりが取られますから。聞かれた内容で、凡そ間違いは無いでしょう。」
全てをこの場で話せるわけもない為、簡単に濁しながらもただ、聞きたいことがあればそれには答えるとオユキからは付け加えておく。それこそ余人のいない場であれば、何一つ問題なく要点をかいつまんでとしたものだが。
「いえ、今は他に話すべきこともありますので。」
「それなのだが、レジス候。生憎と先遣としてその方が向かったとだけこちらでは聞いていてな。」
「その件ですか。正直急な事であり、私は事前の調整を行う文官たちの護衛統括以上の物ではない、というのが実情でしたが。」
「今後も踏まえて、顔合わせなどという話もあったかとは思うのだが。」
レジス侯爵を川沿いの町、今後イマノルが一先ず治める領地。話が進めば、レジス侯爵家として修めなければならない土地。そして、新しい魔国との出入口となる地。そこに新たに根を下ろすにあたって、それも目的であったのには違いないのだ。
しかし、そこからされたレジス侯爵の話を聞けば、然も有らんと揃って頷くしか無い事でもある。
要は、持ち込まれた話を魔国も取り扱いに苦慮することとなったのだ。そして、神国側は現状あまりに規模が不足しているのだが、それでも人が暮らせるだけの素地がある。しかし、魔国の側で選定された場所にはそれが無い。どうにか変えられないのかと、そう言った話も出た。しかし、魔国に於いて神の配剤を保証するオユキの知人でもある相手から、場所は既に神々が定めており、変えられぬとの断言があったのだという話と共に。
「予想はありましたが、相も変わらずミズキリは。」
「お前からも、頼むからよくよく言っておいてくれ。」
「オユキさん、その、ニコラというのは。」
「いよいよトモエさんとは、ほとんど会う機会もなかった相手ですね。何度かお伝えはさせていただきましたが、ミズキリの親族による会社、そこにお勤めで会った方ですから。」
そもそも巨大な構造物をつくるような、携わるような相手はミズキリが興した会社には全くもって必要が無かったという事もある。共同で行う事は確かにあった。実際に現実で知己を得たのは、その折ではあったがいよいよ関係性としても遠い相手だ。折に触れてゲーム内で継続して会う事もあったが、それでも顔を合わせて多少言葉を交わす程度。今は河沿いの町で架橋に向けた陣頭指揮を行っているアマギにしても似たようなものではあるが、こちらはハードウェアの設計や、流用する技術を用いた施設などもあったため一応は同じ場で働くことも多かったのだが。
「そちらは、いよいよ数が多いですし、流石に数度顔を合わせる機会があっただけの方は。」
「まぁ、流石に会う機会も少ない相手までは、詳細に覚えていないのが道理か。」
そして、オユキとしても見てわかるほどの疲労があるならと、魔国に向かうと決めて以降こうして試しを行う機会というのが増えている。トモエの目がオユキがなにをしたいのか分かっているのだと、そう語っていた上で話を向けた事もある。
アベルに対して、既に語った内容は極一部。
かつて、この世界が出来上がる前進となっていたはずの舞台で、そこに絞った話だけを開示した。つまり、それ以外の背景をそれぞれに持っていた、そのとっかりを与えたならばアベルは間違いなく反応を示す。この場では、オユキの疲労によるミスだと判断して、他愛もない、異邦人の過去語りだとして流れを修正したうえで、後で機会をうかがうに違いない。そのはずだというのに、さらりと流すだけ。つまり、制限が緩んだところで、それもそもそも限られた場だからこそ許されていたのであって常にという訳ではない。
ミズキリが隠しておきたいこと、それがこうした部分から透けて見える。
こちらの世界にかつての世界から技術を持ち込めないように。そのような制限は別にかかっていない。かつて、過去、それぞれに失敗したのは単純に法則が違うからだ。それを考慮するだけの、そこに研鑽を加えるほどの物を持ち込めなかった、ただそれだけの話に過ぎない。確かに数は多かった。しかし、それだけで覆せるほど生易しくは無かった。それだけの話だ。多くの碩学がこの世界に含まれた神秘を解き明かさんと奔走していた。そしてそれだけの熱意を持っていた者達は、間違いなく一部とはいえこちらにも来ていただろう。そして、過去に難しかった、他の分野、アプローチ、そして彼らを補助する後援者。それらに恵まれて届かなかった物に、こちらにあるものだけでと望むのはやはり、難しい。
戦と武技、その道を歩いたトモエだからこそ、そしてそれに並ぼうとしたオユキだからこそ簡単なのだ。
科学とは、観察を重ね法則を解き明かす学問だ。しかし、法則を司るはずの相手、法と裁きの姿は未だこの世界に存在しない。闘技大会に合わせて安置される事とはなったが、その姿がどのように見えるかにしても曖昧であったのだ。神殿の外観や、そこに飾られた物がそうであるように。
「ええ。流石にすべての事柄を覚えていられるわけでもありませんから。」
それこそ、既に相応の時は立ったものだが、それでも覚えている顔ははっきりとある。ふと、トモエと揃って懐かしさを覚える瞬間というのもある。しかし、仮受けていた人材は、身の回りの相手ばかりだけではなく、屋敷を整える為の相手もいた。そういった相手は、流石に会えば名前を思い出すこともあるだろうが、それくらいの物だ。そして、それよりも距離のあった護衛達は猶の事。
「ま、重要な事を忘れないのであれば、問題ないだろう。私としても正直城勤めの者達の顔と名前を全て覚えている陛下は、正直信じられないと思う事もある。」
「当主であれば、屋敷に勤める者の把握は最も大切な責務ですから。流石に、城程ともなれば、私も難儀するでしょうが。」
「確かに、一度覚えた後は出入りの把握をすればよいと考えれば、無理ではないのでしょうが。」
ただ、まぁ、見た目が似た相手もいる。その全てを間違いなくというのは、それはもはや才能と呼ぶしかないだろう。努力だけでどうにかなるなどと、とてもではないがオユキは言えるものではない。過去の己を振り返ってみれば、さて、どれだけ同じ会社に勤める者達で、名前も知らぬ相手がいたものかと。
「それはひとまず置いておきましょう。それにしても、混乱する期間が不可解とも思える物ですが。」
「確かに、巫女様方であれば、簡単に治められるのでしょうが。」
「こちらの陛下は、いえ、そこも国ごとに差があるものですか。」
神国は、恐らくという程度でしかないが、建国の由来を聞いた折にも王家は水と癒しの神、その血を継いでいるという話も合った。だからという訳ではなく、貴族制、王権これらは切っても切り離せないとそのような先入観があった。
「そうだな。私が知っているのも少ないが、それを公に口にすることができていると記録があるのは、神国とテトラポダだけだな。いや、あちらはあちらでまた少し異なりはするが。」
「確かに、祖霊という存在の扱いがありますか。」
さて、どうにも話が飛びがちだと、疲れもあって話しながらも遊んでいる思考が顔をのぞかせていると改めて己を戒めて、話を進める。
「さて、そうなると成程。」
だとすれば、こちらの国が抱える問題は神国よりもよほど根深い。幸いと言えるのは、間に他を挟んでいるという事だけ。さらに大河が隔てており、移動の難しさが単純に付きまとう。それに尽きる。
「こちらは流石に今後、でしょうか。手に余ると言いますか。」
「まぁ、おまえらよりも、俺らの方がよほどその辺りに関しちゃ問題視している。」
そして、オユキやトモエでは、どうした所で書簡を聞かねば気が付かぬが、ここまでの道中で散々にそれを思い知った相手からは、実に深いため息が。
「正直、それに関しちゃ知恵を借りたい。」
「人材の交流、彼我の抱える優れた人員、それの為し得る事を互いに知る。その辺りで題目としてはと思いますが。」
「ほう。」
これまで、人の移動すら問題を抱えていたのだ、こういった事がこちらの世界に暮らす相手の頭から抜けていたとして、納得がいくというものだ。内々には、腹案として伝えていたこともある。今こうして流れに乗って話しているのは、混乱し、指針を己で見つけられない者達に連なっている使用人、それに聞かせて行動をこちらの望む様に作らせるため、それ以上の物ではない。
「元より、腹案として伝えていたことではありますが、知識と魔の国は魔石を求める訳ですが、それを輸出だけに頼るというのは、あまりに非効率ですから。」
「確かに、戦力をこちらに置いて、それで得られる物の方が大きく、簡単ではあるが。」
「そうですな。私も鍛錬を兼ねて、時間のある時には、王都の周囲で槍を振るいましたが、こちらの方々はそれだけでも驚いてと、そのような様子でした。」
「レジス候、確かにオユキの話に利が有るのは私も分かるのだが、問題は他国に神国の戦力を置くという行為そのものなのだ。」
但し、他国に戦力を送り込むと言える行為でもある。そして、これまでの不足を喧伝することが仕事でもある集団となる。
「その辺りは、事前にある程度折衝があると考えていましたが、どうにもそこまで話が進まなかった様子。」
「お恥ずかしながら。」
「いえ、レジス候ではなく、陛下より任を得た方々がなすべきことではあるでしょうから。」
どうにも、レジス侯爵という人物はこういった事が苦手であるらしい。オユキの言葉は、寧ろ魔国の担当者を責めるための言葉であったのだが、レジス候が己が与えられた役割を果たせなかったととらえている。それも間違いではないのだが、今度ばかりは無理だろうとそう考えての事でもある。寧ろ予定通り、そう言っても良いのだから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
419
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる