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18章 魔国の下見
乱入者へは
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「しかし、求められたとして。」
「それこそ、どうにかするしかあるまい。」
神国でも今後を考えたときに、資源に不足が出ると結論づけられている。その解消のために、戦力などあって困る事は無い。常の活動で足りない資源、それを得るための手段は用意されているのだが、そこに必要とされるのが国の誇る騎士という名の戦力たちだ。他国になどと、それも魔国のこれから直面するだろう不足を補うだけとなれば、マリーア公爵が散々にため息と愚痴を交えながらもどうにかこぎつけた予定を全て白紙に戻すことになる。
アベルとて、それには大いに関わっただろうと。今回の事が前例となれば、今後負荷は容赦のない物になるだろうと。
「我らは、神国の誇る確かな輝きだ。いかなる困難からも民を守る輝ける盾であり、難事を切りはらう閃く剣だ。」
「その矜持に対しては、恩恵にあずかっている身としては感謝を間違いなく捧げはしますが、想いだけでどうにかなるほど限界というものは生易しくありませんよ。」
意志などというもので、その程度のものでどうにかなることなど、あまりに少ない。そんな物如きが現実を変える確かな力となるというのなら、シグルドはとうにオユキにもトモエさえも下していなければおかしい。
過去のトモエがそうであったように、相手を確実に殺し、情報が漏れない場面でもなければ、それすらも使って価値を拾わなければならない場面でもない。要は、ある程度を超えれば、負けても良いのだ、トモエにとっては。そんな心が目を持って臨んでいる相手と、必ず勝とうとがむしゃらであるシグルド。意志が確かな物だというのなら、これまで散々に得ている結果は全て逆でなければおかしいというもの。
精神は時に肉体を凌駕する。しかし逆もまた然り。オユキがこれまでどれほどそれを思い知ったか。トモエの掌中にある術理がどれほどそれを前提としているか。
「おや、想定よりも早いですね。」
「そういった事は、事前に相談しちゃくれない物かね。」
「アイリスさんが同席していない以上、同じ認識を持っている、そのように考えてしまいますから。」
そして、レジス候も交えて、互いに遠く離れた他国、その道行が異なった者達が話に花を咲かせていれば、何やら剣呑な空気が離れた場所に漂い始める。押し問答をしているのだろう。だが公爵本人ではなく、使用人では扱いに困る相手の不作法。それに対応しきれぬからこそだと、実にわかりやすい。
「対応は、相談するまでも無いでしょう。」
「出来るのなら有難いのだがな。」
「何やら、騒がしい生憎と私はその程度の理解ですが。」
事前に話を聞く事が出来たのなら、色々と打つ手もあった。
しかし、廃嫡などというのは、醜聞以外の何物でもない。王太子妃にしても開示しなかった情報なのだろう。しかし、現状の混乱こそ、廃嫡されるだけの理由が存在する相手が望んでいた事であり、その行動を妨害しきれるものではないと判断したからこそ、打ち明けたのだろう。
「まぁ、お前らは心配するまでもないと考えているのだが。」
「ええ。交渉相手として見るには、あまりに不足です。結論が先に有る相手ですから。」
そして、オユキとしてはそもそもとり合う心算が無い相手だ。
こうして押し入って、それだけで十分すぎるほどに現状を理解できない愚物という評価を出来る物であるし、知識と魔の国が是とする方策、それを超えるだけの案があるのだとして、それをこのような手段で得られる時間で説明しきれるなどと考えている浅薄はあまりにわかりやすい。
「ただ、魔術師ギルドを経由する、その程度は期待していたのですが。」
「廃嫡などという手段を択ばなければならなかったのだ。」
「成程。であれば、その選択が行われた時期が問題になりますか。それと、レジス侯爵は、私どもが神国に戻る際にご一緒にと考えておりますが。」
「畏まりました。巫女様から斯様なご提案を頂いたと。」
「それでは、流石に難しそうではありますから、レジス候が望まれるのであれば、一筆したためましょうか。」
そして、それに対して有難いと、そう話し相手が返したところで乱入者がついにその姿を現す。
「貴様らが、隣国から訪れた者達か。」
「先ほどの間でのお話を伺う限りでは、レジス候がこちらに残る意味も薄いように思えますから。」
そして、訪れた物が開口一番何かを口にするがオユキはそれを一切とり合わない。
「まぁ、仕方あるまい。交渉、外交、そういった物を実際に見るのが主目的であったはずだが、相手がそれに応える余裕が無いのではな。」
そして、それはアベルも同様。
経験に乏しいレジス候だけが、乱入者に完全に意識を傾けている。トモエも同じく経験には乏しいのだが、オユキが常と変わらぬ風情ではなく、殊更とり合う気が無いと見せていれば、それに倣うだけの思慮は勿論持ち合わせている。そこにある確かな役割分担、それに従って必要だと判断されたのだろうからと。
「いよいよ練習の機会もなく、本番。そのような日程になりそうではありますが。」
「どうだろうか。その方の予想、段取りが実際に起こるのであれば、一先ず熟すべき事柄は交渉と呼べるものではないようにも思えるが。」
「思惑をそれぞれに乗せる余地は、作られる物でしょうから。」
そして、トモエは単純に排除する必要がいつ生まれるかもわからぬ相手に向けて警戒をただ強め。レジス侯爵は、先ほどまでと何を変えるでもないアベルとオユキの振る舞いに、何が起きているのか分からぬとそういった有様。
そして、そこから十分すぎるほどの情報が得られる。
つまり、今ここに乱入してきた相手は、最低限の情報しか得られぬ、その程度の相手だと。
「我が問うておるのだ。応えるのが筋であろう。」
「それは、そうではあるか。しかし、其の方の考える日程では、いよいよ出たところでとなるぞ。」
「やむを得ないでしょう。と、言いますか、そこにまで私が口を挟むというのは流石に。」
「それも間違いではないのだが、陛下はその方にまずは所感を求める事になると思うぞ。」
「それこそ、親書の類を預かるでしょうし、それを届けて後はいよいよ。」
間違いなく、事前の折衝、最も大きな方針、戦略、そういった物が多分に含まれた手紙をオユキは預かるだろう。レジス侯爵は、始まりの町へ戻る時に誘うのだが、知識と魔の国から神国へ移動する道行きに同行しないと決めているのは、相応に理由あっての事。神国に向けた要望を預かって持ち帰り、それに対応するための時間を作る事を考えているからだ。
こちらで有れば、恐らく神々経由で何か連絡を取ろうと考えれば叶えられるのだろうが、詳細が分からないため、計画に組み込むのは難しい。だからこそ、先に戻る日付を伝え、その日程に合わせtえ神国への親書を魔国に用意させようと、オユキは少なくともそう考えている。どうした所で、己の所属する集団と、そうでは無い集団。その二つを比べれば、オユキは前者にこそ重きを置くのだから。
「仕方あるまい。白痴共が集まる蛮族の国、そこから訪れたのであれば、我の言葉も、我が如何様な物であるか知らぬのも当然というもの。」
さて、そうして何やら少し離れた場所で己の弁舌に、誰も耳を傾けぬそれに悦に入っているものが何やら環境音として努力しているようではあるのだが。そもそも、何故己が同席することも出来ず、ただその場で足を止めて誰が共感するのかも、教官を得る為なのかもわからぬ戯言を垂れ流すのを聞きながら、オユキからはため息しか出ない。
「ご期待は嬉しく思います。こうして過分な役職を得た事を考えれば、そのようにも思います。しかし、手に余ります。」
「それも、そうか。そもそもこちらの家に対しての理解も余りといった風であったからな。」
「その折に「トモエも語ったように思いますが、私にとっては形骸化した仕組みですから。」
一応は過去の創作物、それをなぞる形で。もしくは企業という組織が似た構造を持っているため、それに準じる形として。どうにか必要とされるであろう物を熟して見せてはいる。ただ、それを成すにも、今は正誤を尋ねる事が出来る相手もいない。言ってしまえば、今オユキとトモエは他の企業との会議の場、交渉の場に身を置いているのであって、上長に判断をゆだねる事を許されていない、そう言った状況だ。
だからこそ、オユキは己の決めた事として、これから何を行うのかを告げ、そこで必要と思える事には譲歩をして見せる。しかし、それ以上は無い。
「いよいよ愚物であるらしい。その方らに金言を与えているのが誰か、そのような事すらわからぬのであるからな。良かろう、我に手間を掛けさせる、それとて偉大なる我は許そうではないか。物を知らぬ愚物共に、知識を与える事こそ務めであるのだからな。」
そして、他人を愚かと浅薄に決めつける事で己こそが愚物であると証明し続ける男が、その愚かさの証明とばかりに、名を名乗ろうとした矢先に、いよいよその口を閉ざされる。
当然だ。
この相手は己の存在だけで立脚できるほどの能力があるなどと見受けられない。ならば、そこで使うべきものが何かなど決まっている。そして、廃嫡されたのだというあまりに単純な事実を知る者達は、それを決して許しはしない。狩りに許してしまえば、その罪が周囲に向く事は無いのだとしても、こうして実に楽し気に日々を過ごす存在を処分しなければならなくなるのだから。廃嫡という、あまりに重い処置でも不十分であるため、いよいよこれから先何も問題が興せ無くなる、この男が起こしうるすべての可能性を、早々に奪う為として。
「巫女様、あちらの方は宜しかったのですか。」
「ええ。時間を浪費するだけです。個人的に気になる事は操り糸を持っている相手がいるのかどうか、それだけです。」
そして、それにしてもこの人物と対話の時間を取るためという訳ではない。
やり直せる可能性があるのか、若しくはこれほど離れた地にまで、汚染の手が及んでいるのか。それ以上の興味はない。
「しかし、何か話したいことがあったのではないかと。」
「私たちが伺いたいことはありませんから。」
迂闊にも、そう判断した者達が一切の容赦なく見覚えのない技術を用いて、乱入者の意識を奪うところを目にして、レジス侯爵がそのような憐憫を見せる。しかし、オユキにとっては、トモエにとっては、それを向けるに値するだけの物を何一つ示さなかった以上、結局は取るに足らぬ相手でしかないのだ。
「それこそ、どうにかするしかあるまい。」
神国でも今後を考えたときに、資源に不足が出ると結論づけられている。その解消のために、戦力などあって困る事は無い。常の活動で足りない資源、それを得るための手段は用意されているのだが、そこに必要とされるのが国の誇る騎士という名の戦力たちだ。他国になどと、それも魔国のこれから直面するだろう不足を補うだけとなれば、マリーア公爵が散々にため息と愚痴を交えながらもどうにかこぎつけた予定を全て白紙に戻すことになる。
アベルとて、それには大いに関わっただろうと。今回の事が前例となれば、今後負荷は容赦のない物になるだろうと。
「我らは、神国の誇る確かな輝きだ。いかなる困難からも民を守る輝ける盾であり、難事を切りはらう閃く剣だ。」
「その矜持に対しては、恩恵にあずかっている身としては感謝を間違いなく捧げはしますが、想いだけでどうにかなるほど限界というものは生易しくありませんよ。」
意志などというもので、その程度のものでどうにかなることなど、あまりに少ない。そんな物如きが現実を変える確かな力となるというのなら、シグルドはとうにオユキにもトモエさえも下していなければおかしい。
過去のトモエがそうであったように、相手を確実に殺し、情報が漏れない場面でもなければ、それすらも使って価値を拾わなければならない場面でもない。要は、ある程度を超えれば、負けても良いのだ、トモエにとっては。そんな心が目を持って臨んでいる相手と、必ず勝とうとがむしゃらであるシグルド。意志が確かな物だというのなら、これまで散々に得ている結果は全て逆でなければおかしいというもの。
精神は時に肉体を凌駕する。しかし逆もまた然り。オユキがこれまでどれほどそれを思い知ったか。トモエの掌中にある術理がどれほどそれを前提としているか。
「おや、想定よりも早いですね。」
「そういった事は、事前に相談しちゃくれない物かね。」
「アイリスさんが同席していない以上、同じ認識を持っている、そのように考えてしまいますから。」
そして、レジス候も交えて、互いに遠く離れた他国、その道行が異なった者達が話に花を咲かせていれば、何やら剣呑な空気が離れた場所に漂い始める。押し問答をしているのだろう。だが公爵本人ではなく、使用人では扱いに困る相手の不作法。それに対応しきれぬからこそだと、実にわかりやすい。
「対応は、相談するまでも無いでしょう。」
「出来るのなら有難いのだがな。」
「何やら、騒がしい生憎と私はその程度の理解ですが。」
事前に話を聞く事が出来たのなら、色々と打つ手もあった。
しかし、廃嫡などというのは、醜聞以外の何物でもない。王太子妃にしても開示しなかった情報なのだろう。しかし、現状の混乱こそ、廃嫡されるだけの理由が存在する相手が望んでいた事であり、その行動を妨害しきれるものではないと判断したからこそ、打ち明けたのだろう。
「まぁ、お前らは心配するまでもないと考えているのだが。」
「ええ。交渉相手として見るには、あまりに不足です。結論が先に有る相手ですから。」
そして、オユキとしてはそもそもとり合う心算が無い相手だ。
こうして押し入って、それだけで十分すぎるほどに現状を理解できない愚物という評価を出来る物であるし、知識と魔の国が是とする方策、それを超えるだけの案があるのだとして、それをこのような手段で得られる時間で説明しきれるなどと考えている浅薄はあまりにわかりやすい。
「ただ、魔術師ギルドを経由する、その程度は期待していたのですが。」
「廃嫡などという手段を択ばなければならなかったのだ。」
「成程。であれば、その選択が行われた時期が問題になりますか。それと、レジス侯爵は、私どもが神国に戻る際にご一緒にと考えておりますが。」
「畏まりました。巫女様から斯様なご提案を頂いたと。」
「それでは、流石に難しそうではありますから、レジス候が望まれるのであれば、一筆したためましょうか。」
そして、それに対して有難いと、そう話し相手が返したところで乱入者がついにその姿を現す。
「貴様らが、隣国から訪れた者達か。」
「先ほどの間でのお話を伺う限りでは、レジス候がこちらに残る意味も薄いように思えますから。」
そして、訪れた物が開口一番何かを口にするがオユキはそれを一切とり合わない。
「まぁ、仕方あるまい。交渉、外交、そういった物を実際に見るのが主目的であったはずだが、相手がそれに応える余裕が無いのではな。」
そして、それはアベルも同様。
経験に乏しいレジス候だけが、乱入者に完全に意識を傾けている。トモエも同じく経験には乏しいのだが、オユキが常と変わらぬ風情ではなく、殊更とり合う気が無いと見せていれば、それに倣うだけの思慮は勿論持ち合わせている。そこにある確かな役割分担、それに従って必要だと判断されたのだろうからと。
「いよいよ練習の機会もなく、本番。そのような日程になりそうではありますが。」
「どうだろうか。その方の予想、段取りが実際に起こるのであれば、一先ず熟すべき事柄は交渉と呼べるものではないようにも思えるが。」
「思惑をそれぞれに乗せる余地は、作られる物でしょうから。」
そして、トモエは単純に排除する必要がいつ生まれるかもわからぬ相手に向けて警戒をただ強め。レジス侯爵は、先ほどまでと何を変えるでもないアベルとオユキの振る舞いに、何が起きているのか分からぬとそういった有様。
そして、そこから十分すぎるほどの情報が得られる。
つまり、今ここに乱入してきた相手は、最低限の情報しか得られぬ、その程度の相手だと。
「我が問うておるのだ。応えるのが筋であろう。」
「それは、そうではあるか。しかし、其の方の考える日程では、いよいよ出たところでとなるぞ。」
「やむを得ないでしょう。と、言いますか、そこにまで私が口を挟むというのは流石に。」
「それも間違いではないのだが、陛下はその方にまずは所感を求める事になると思うぞ。」
「それこそ、親書の類を預かるでしょうし、それを届けて後はいよいよ。」
間違いなく、事前の折衝、最も大きな方針、戦略、そういった物が多分に含まれた手紙をオユキは預かるだろう。レジス侯爵は、始まりの町へ戻る時に誘うのだが、知識と魔の国から神国へ移動する道行きに同行しないと決めているのは、相応に理由あっての事。神国に向けた要望を預かって持ち帰り、それに対応するための時間を作る事を考えているからだ。
こちらで有れば、恐らく神々経由で何か連絡を取ろうと考えれば叶えられるのだろうが、詳細が分からないため、計画に組み込むのは難しい。だからこそ、先に戻る日付を伝え、その日程に合わせtえ神国への親書を魔国に用意させようと、オユキは少なくともそう考えている。どうした所で、己の所属する集団と、そうでは無い集団。その二つを比べれば、オユキは前者にこそ重きを置くのだから。
「仕方あるまい。白痴共が集まる蛮族の国、そこから訪れたのであれば、我の言葉も、我が如何様な物であるか知らぬのも当然というもの。」
さて、そうして何やら少し離れた場所で己の弁舌に、誰も耳を傾けぬそれに悦に入っているものが何やら環境音として努力しているようではあるのだが。そもそも、何故己が同席することも出来ず、ただその場で足を止めて誰が共感するのかも、教官を得る為なのかもわからぬ戯言を垂れ流すのを聞きながら、オユキからはため息しか出ない。
「ご期待は嬉しく思います。こうして過分な役職を得た事を考えれば、そのようにも思います。しかし、手に余ります。」
「それも、そうか。そもそもこちらの家に対しての理解も余りといった風であったからな。」
「その折に「トモエも語ったように思いますが、私にとっては形骸化した仕組みですから。」
一応は過去の創作物、それをなぞる形で。もしくは企業という組織が似た構造を持っているため、それに準じる形として。どうにか必要とされるであろう物を熟して見せてはいる。ただ、それを成すにも、今は正誤を尋ねる事が出来る相手もいない。言ってしまえば、今オユキとトモエは他の企業との会議の場、交渉の場に身を置いているのであって、上長に判断をゆだねる事を許されていない、そう言った状況だ。
だからこそ、オユキは己の決めた事として、これから何を行うのかを告げ、そこで必要と思える事には譲歩をして見せる。しかし、それ以上は無い。
「いよいよ愚物であるらしい。その方らに金言を与えているのが誰か、そのような事すらわからぬのであるからな。良かろう、我に手間を掛けさせる、それとて偉大なる我は許そうではないか。物を知らぬ愚物共に、知識を与える事こそ務めであるのだからな。」
そして、他人を愚かと浅薄に決めつける事で己こそが愚物であると証明し続ける男が、その愚かさの証明とばかりに、名を名乗ろうとした矢先に、いよいよその口を閉ざされる。
当然だ。
この相手は己の存在だけで立脚できるほどの能力があるなどと見受けられない。ならば、そこで使うべきものが何かなど決まっている。そして、廃嫡されたのだというあまりに単純な事実を知る者達は、それを決して許しはしない。狩りに許してしまえば、その罪が周囲に向く事は無いのだとしても、こうして実に楽し気に日々を過ごす存在を処分しなければならなくなるのだから。廃嫡という、あまりに重い処置でも不十分であるため、いよいよこれから先何も問題が興せ無くなる、この男が起こしうるすべての可能性を、早々に奪う為として。
「巫女様、あちらの方は宜しかったのですか。」
「ええ。時間を浪費するだけです。個人的に気になる事は操り糸を持っている相手がいるのかどうか、それだけです。」
そして、それにしてもこの人物と対話の時間を取るためという訳ではない。
やり直せる可能性があるのか、若しくはこれほど離れた地にまで、汚染の手が及んでいるのか。それ以上の興味はない。
「しかし、何か話したいことがあったのではないかと。」
「私たちが伺いたいことはありませんから。」
迂闊にも、そう判断した者達が一切の容赦なく見覚えのない技術を用いて、乱入者の意識を奪うところを目にして、レジス侯爵がそのような憐憫を見せる。しかし、オユキにとっては、トモエにとっては、それを向けるに値するだけの物を何一つ示さなかった以上、結局は取るに足らぬ相手でしかないのだ。
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