憧れの世界でもう一度

五味

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1章 懐かしく新しい世界

チュートリアル 3

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そのあと、少し談笑を続け、ロザリアを先頭にオユキとトモエは礼拝堂に戻ってくる。
二人とも、改めて礼拝の作法の教えを乞うたからでもある。
ただ、教えてくれるのは、修道女や、間にお茶を運んできてくれた、他の教会勤めの相手だと思えば、ロザリア自ら教えを授けるとのことであった。

こちらの世界では分からないが、元の世界では司教といえばかなりの高位、そうでなくとも協会の責任者がいくら創造神に頼まれていようとも、突然現れた人間に。
そう気後れするところが確かにあった。

「では、改めて我らについてご説明を。
 私どもは創造神ルゼリア様にお仕えするものです。
 ルゼリア様を中心に他の神々、7人の使徒様方も併せて御祀りさせていただいております。」

オユキはうろ覚えの知識を思い出す。
確かこの世界では魔法を使おうと思えば、その魔法、現象をつかさどる神に祈りを捧げる形を取らなければいけなかったはずだ。
当時の彼は剣に魅せられていたため、剣と戦、その神以外に関しては記憶に残っていなかったが。

「また、7人の使徒様方は創造神様が父と呼ぶ方です。使徒ではありますが、やはり多くの方が、特にお二方のように別の世界から来られた方の信仰を集めています。」

私達としては、少し対応に困ったりもするのですが。
そうロザリアは茶目っ気のある笑顔を浮かべる。
確かに、最高神と呼んでも間違いない創造神、その神が父と慕うのが神の使徒。
入れ子にしても、歪だろう。

「また、昔は存在しなかったと、そう聞いていますが。」

そう前置きしてロザリアは続ける。

「現在では、一定の功績をなした方が、神に祈りを捧げると、その功績をたたえる証が与えられます。」

私の司教という役職もそうですよ、そうロザリアが言って、首にかけられた、聖印を象ったペンダントトップを見せる。
ゲームのシステムとしては、そんなものは実装されていなかったはずだと、オユキは思い返す。
そもそもそれまで一般的だったRPGに存在する機能、それは存在しなかったのだから。
全ての行動はプレイヤーの技術により、その技術が成しえるすべてはゲーム内で可能だった。
唯一の例外は魔法、そう呼ばれる技術だけだったのだから。

ただ、使徒と呼ばれる開発者たち、その人物たちが当時実装できなかった仕組みを、この世界が生まれるときに創造神が遊び心として拾い上げたのかもしれない。
使徒としてまつられるほどに、この世界にも影響をもたらしたのだろうから。

そんなことをオユキは考えながら、目の前でロザリアが手本として行う祈りの所作をまねる。
両膝をつき、手を組む。聖印を持っているなら握りこむ。
そのまま肩の高さに上げた、その手に額を当て、祈りを捧げる。

オユキ、それにトモエも。
改めて捧げる願いなど決まっている。
感謝を。第二の生に、新しい機会に。分かたれたはずの道行きが、再び一つとなったことに。
そう感謝を捧げていると、手の中に突然固い感触が現れ、オユキは驚く。
一体何がと、組んだ手を解いてみれば、捻じれた枝に鳥の羽の意匠が施された、アクセサリーが手の中に存在していた。
隣を見れば、トモエの手の中にも、同じようなものがある。

穏やかな微笑みを湛えた、ロザリアが、二人のほうへと振り返り。

「あら。早速お二人には讃えるべき功績があったようですね。」

そういうと、口元を抑えてくすくすと、大きすぎない音を立てて笑う。
その表情を見て、オユキとトモエは目を合わせ、ああ、なるほどと理解する。
比翼連理、そういう事だろう。死後もこうして共にある、生前の約束を果たせたことを喜ぶべきか。
お互いに、執念深いと、そう考えるべきか。

改めて手の中のアクセサリーをオユキは見る。それは鎖を掛ければ首から下げられるだろう、リングに台座を用意し、そこにはめれば指輪になるだろう、実に扱いやすそうではあるが、完成はしていない。
そして昔そうであったように、オユキはそれをトモエに差し出す。
何も言わず、驚いたように、それでも嬉しそうにトモエはそれを受け取り、トモエは自分が手に入れただろう物を、オユキに渡す。
そうして、交換して、二人は納得する。おそらくこれはこうするのが正しいのだろうと。

その様子をはたからニコニコとみていたロザリアが。

「あら、当協会では結婚の誓い、その式も執り行っておりますよ。」

等と茶化す。
オユキはそれに対して至極真面目に。

「そうですね。生活の目途が立ち、落ち着いたら。その時はご相談させていただきます。」

そう返す。
ロザリアがお幸せに、と言いながらも、ゲームの時にはなかった功績の証について説明を行う。

「さて、こうしてお二人の門出を祝うがごとく、さっそく功績を認められたわけですが。
 もちろん、その功績に背く行いを我らの神は認めません。
 剥奪されるだけでなく、二度と同じ内容で讃えられることはないでしょう。
 また、その功績は我々の身の証にもなります。神々によって直々に功績を認められているのです。
 何よりの、身分証明でしょう。」

ロザリアの言葉に二人とも頷く。
それはそうだ、人が人を認めたわけではなく、神が人を直接評しているのだ。
実際に神がいるこの世界、それに異を唱えることがどれほど難しいか。

「なるべく、人から見えるように身に着けるのが、功績をたたえられたもののあるべき姿といわれますが、難しいこともあるでしょう。それでも、常に持ち歩くようにしてください。
 ご安心を、たとえ不慮の事で手から落ちても、それは神々によるあなた方の功績の証明。
 願えばまた手元に帰ってきます。」

そういった、便利機能がついているらしい。
加えて、ロザリアは自身の功績と語った聖印を、オユキとトモエの前に持ち上げる。
そして、その一点を指しながら、説明を行う。

「この功績には、それを賞した神の色が刻まれています。」
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