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僕は君の腹の中 *
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琥珀の背中の傷を毎度見る度に、睡蓮は複雑な胸の内を反映したかのように、心がざわめいてしまうのだ。
「………。」
すうすうと寝息をたてて眠るその部屋の主を見下ろして、睡蓮はその火傷の痕が残る逞しい背中に白い指先で触れる。
包帯は取れたのだ。薄桃色の肉の柔らかさを覆うよう、張り始めた皮膚にちょんと触れては、もにょりと口をもぞつかせる。ぽふんと兎になれば、ひょこひょこと歩み寄って琥珀の腕の中にその身を収める。
睡蓮の薄桃色の口元が、ふわりと琥珀の唇に触れた。ぴすぴすと鼻を鳴らして大好きな香りを肺いっぱいに吸い込めば、そのふわふわの毛並みを押し付けるように顎下に擦り寄る。
「おけぇり。」
「ふわ、た、ただいま…起こしてごめん、」
「なんで兎だ?」
「ええ、だって…布団狭くなっちゃうだろう?」
もふ、と睡蓮の柔らかな毛並みに鼻先を埋めると、琥珀はその兎の体を抱きしめる。仕事をして、疲れてきているのは睡蓮の方だというのに、こうして琥珀自身を慮る。
「せめぇほうが良いだろ。色々出来るし。」
「でも、人型とると琥珀とやらしいことしたくなっちまうもの。」
「発情期終わったのに?」
「終わったって、僕だって雄だもの。好きな子の肌には触れたいよう。」
赤眼できょろりと見上げる可愛らしい兎の、なんともアレな発言に、琥珀は自尊心が満たされる。そうか、やはり俺の思った通り、欲を持つのは俺だけではないらしい。睡蓮の丸っこい体を抱き込みながら、もにもにとふかふかのオッポを揉み込む。
「このまんま、俺に獣姦させるきか?それこそお前の尻は破裂しちまうけど。」
「ぎゃっや、やだやだっ!なんでそんな怖いこと言うのさっ」
「お前こそ、俺にお預けさせるほど偉くなったとはなあ。」
「ぅ、わ、わかっ、わかったからあっ!」
わたわたと右前足で琥珀の顎を押し返すと、ぽひゅんと情けない音を立てて姿を表す。琥珀の腕に抱きしめられながら、睡蓮は不服そうににゅっと唇を尖らせる。
「それに、お前は俺の背中を気にしてくれるけどよ、」
暗い部屋で、琥珀の金色がキラリと光る。そのまま睡蓮の頭を抱き込んで体勢を変えると、睡蓮は背中に琥珀の温もりが移った寝具を感じた。
押し倒されたのだ。琥珀を見上げる形で、まるで思い至らなかったと言わんばかりの間抜けっ面を晒す。どうやら本気で睡蓮は跨がる気でいたらしい。サラリと琥珀の黒髪が一総垂れる。それがまろい頬を撫でると、むん、と口を噤んだ。
「せ、」
「せ?」
「背中に、爪立てちゃったらどうしよう…」
どうやら、琥珀の手練手管で前後不覚になるのはわかりきっているらしい。しかし、そんな事を雌から言われるなど、なかなかに煽られる。琥珀はぐるりと喉を鳴らすと、がじりと小鼻に齧りついた。
「あいてっ」
「馬鹿野郎、そんなもん男の勲章だろうが。」
「うぅ…」
「つか、」
興奮する。
そう長いお耳に口付けて宣うと、その大きな手のひらを着物の袂から侵入させる。ひくり、と薄い腹が震えて、睡蓮の喉奥がきゅうんと鳴った。
無意識に蕾がひくついてしまい、甘えたな声が漏れる。睡蓮の意思に反してきゅうきゅうと声が漏れるのは、本能が全面にでてしまったからだ。
発情期は終わったはずなのに、体が熱い。
睡蓮は琥珀の頬に、己の頬を重ねるように擦り寄ると、その右腕をゆっくりと背に回した。
聞くに堪えない水音は、それだけ己が昂ぶっている証明だ。睡蓮は、今。琥珀の腹の下で細い両足を自分で抑え、琥珀に全てを晒している。腹の中側をぞりぞりと指で擦られるたびに、ひんひんと啼く。琥珀はそれを聞くたびに、まるで囀りのようだと愛おしむ。
「ふぁ、っぁ、あ、な、なか、っ…」
「なかきもちいな、」
「ぅん、っ…う、んっ…!」
「ほら、まだ我慢しておけ。」
「ひぁ、っぁあっき、きもちぃ、あっ、」
薄い胸を上下させ、琥珀の前にはぽちりとした可愛らしい睡蓮の突起が晒される。ぬちぬちと腹の中を擽りながら、唇でそこを挟むように甘く吸い付けば、身を震わしながら精液を零す。
「こ、こはく、ぁっも、もぅ、っ」
「ん、口開けろ。」
「ぅ、ンっ…んくっ、」
はふはふと必死に呼吸を繰り返す。唇を隙間なくくっつけて、舌先に唾液を絡めて与える。小さな喉仏を上下させ、こくんと飲み込む睡蓮に、褒めるようにそっと胸元を撫でた。
口を開けといえば、無意識に足まで開いてしまう。そんなやらしい癖をつけさせた責任は取らねばなるまい。
「ん、…なんか、…日にち経ってる割に…」
「ひぅ、っ…」
ぬくり、と挿し込んだ琥珀の指は、思いの外すんなりと入った。睡蓮の蕾は、琥珀の指を二本含んだのにも関わらず、太い指を柔らかく包み込み、甘く締め上げるように蠕動する。
「……おい、お前もしかして、」
びくん、と睡蓮の肩が跳ねる。表情が見たくて、琥珀が上体を起こし見下ろせば、そこには恥ずかしそうに手で顔を隠すようにして震えている姿があった。
「は、やく…ほ、ほしくて…」
「お、おう」
「れ、練習…したの…」
「おっ、」
睡蓮が、遮るために隔てているはずの指の隙間から、涙目でちろりと琥珀を見やる。
なんだそれ、そんな、一体いつそんなことをしていたというのだ。琥珀は絶句したまま睡蓮を見下ろすと、震える声で小さく呟いた。
「こ、こはがねてるとき…えっと、ひ、ひとりでね、あの…」
「一人でぇ!?」
「し、しぃーーっ!!!」
余りにも喧しい声で叫ぶものだから、睡蓮は慌てて琥珀の口元を抑えた。その小さな手のひらをガシリと抑えるように掴むと、べろりと手のひらを舐める。ひくんと反応する素直な姿に覆いかぶさると、その長い耳をがじりと甘く噛んだ。
「この小せえ手で、頑張ったんか。」
「ぅ、ぅ…」
「かぁいらし、お前はほんとに男心を擽りやがる。」
「ぼ、僕だって、お、」
「お前は俺の雌だろう。」
大きな手の平が、そっと睡蓮の頭を撫でる。額が重なり、鼻先を擦り寄せ、睫が触れ合う距離に琥珀がいる。ああ、僕は、琥珀の雌になったんだ。そう思い、そしてそれが嬉しくてじゅわりと唾液が口に溜まる。興奮だ。これは、紛れもなく興奮をしているのだ。
「睡蓮。」
「はい、」
ぺしょ、と答えるように唇を舐める。琥珀が満足して、唇を開いてくれるまで、睡蓮は熱を帯びた瞳でうっとりと見つめて甘える。琥珀が嬉しいと睡蓮も嬉しい。だから、睡蓮は琥珀の望むことを全て叶えてあげたくて、己の主導権を全て明け渡して愛を示す。
クルル、と喉が鳴る。睡蓮の大好きな琥珀の甘える声は、本能からくるものだと知っているからだ。
「ん、っぅ、ぅあ、っ」
がじりと肩口を噛まれ、睡蓮の体がふるりと震える。熱い手のひらが柔らかな尻を揉むように割り開くと、再びヌクリと指を侵入させた。
睡蓮が、自分の手で準備をした蕾に、琥珀の指が入ってくる。前よりも、ずっとすんなりと三本目が挿入されると、きゅぅきゅうと吸い付くように甘えるのだ。
「痛えかも、いいか?」
「うん、っ…」
「血が出たらごめん。」
「も、それも経験したもの…」
「ああ、そうだったな。」
あれは、お前が大変だった。そう言ってクツクツ笑う。琥珀の引き締まった腰に、細い脚を絡める。端ないとは思ったのだが、睡蓮は我慢していた。だから、もう、とにかく早く欲しかったのだ。
「催促も上手になりやがって。」
「ふ、ぅぁ、っ…!」
目を細めた琥珀が、睡蓮の腰を持ち上げて引き寄せる。下履きから膨らんだ性器を取り出すと、その小さな蕾に押し当てる。濡れて、ひくつく。まるで先端に口付けをしているかのようなその動きに、睡蓮の顔の横に付いていた腕には脚鱗が浮かび上がった。
「…力抜け、ゆっくりするから。」
「ぅ、う、うっ、」
「大丈夫、大丈夫だから、びびんな。な?」
「ひぅ、ン…は、っ」
ふうふうと胸を上下させ、必死に深呼吸を繰り返す。こめかみに口付け、ゆっくりと琥珀は睡蓮の蕾を割り開くように、己の性器を挿入していった。
「はぅ、ぁ、」
にゅる、と熱くて太いものが侵入してくる。火傷してしまいそうな程、熱を持っている太い幹は、睡蓮の内壁の柔らかさを楽しむかのように、ゆっくりと中を摩擦していく。蕾が収縮するたびに、中の存在を自覚させられて、睡蓮はお腹が苦しいのと胸がいっぱいなのが一緒くたになって、右腕で縋り付くように琥珀に抱きついた。
「どした、怖いか、」
高い体温を抱き締める。その柔らかな髪を梳くように撫でながら、心配の色を滲ませる声色。きっと、今にも腹に収めたいであろうに、そんな様子を心配してくれる。
「こわくない、よっ…で、でも、ぉ、おなか、が…」
「苦しい、」
「ううん…、ぅ、」
うれしい、
紅玉の蕩けた瞳で、今にも死にそうなくらい震える声でぽしょりと呟かれる。
琥珀は数度瞬きをした。腹が、喜んでいる。睡蓮は、己の腹が待ち望んでいたのだと、そう言ったのだ。
なんともやらしくて、そして健気だ。琥珀は頭の後ろからじわじわと侵食してくる熱に、瞳を揺らした。ああ、やばい。せっかく優しくしたかったのに。
「くぁ、っ、」
目の前に火花が散る。琥珀の瞳孔がきゅうっと細まり、金色が燃えるように輝いた。
睡蓮は、最初は何が起きたのかわからなかった。ただ、腹の奥を殴られたかのような衝撃と、次いで襲い来る、稲妻のような鋭い痺れが神経の隅々まで行き渡り、びくん!とその身を大きく反らした。
「ぁ、ぁくっ、ひ、な、なに、ぃっ!あ、あぁ?あっぁっ!」
「っ、ふ…!!」
がつんときた衝撃が、律動だというのを徐々に脳が認識する。それでも、生きていて経験のしたことない、激しい熱と痺れが細い体を、焼くように全身を侵す。
「ぁあ?あ、っう、ぅうーーーっ!!ひ、ひぃ、あっあや、ゃだぁあっあっ!ま、まって、ぇっ、ひぅ、あーーーっ!!」
喉を震わす。目の奥から、泣きたくもないのに涙があふれる。下半身は馬鹿みたいになにがしかを撒き散らし、肉を溶かすような熱に侵されながら、気持ちいいの本当の意味を教え込まれる。
頭が馬鹿になって、獣みたいに泣いて、もうどうにでもなってしまえと思うのに、理性が時折やめろと邪魔をする。もう、頭がおかしくなりそうだ。
きもちいい、きもちいい、きもちいい。
「き、もちぃ、ぁあ、あっあっ!」
口端から、唾液が溢れる。全身を琥珀の好きなように扱われることが、こんなにも幸せだなんて知らなかった。目線がどこに向いているのかもわからない。
縋り付いていた腕は気がつけば投げ出され、長いお耳には、粘着質な水音と、琥珀の荒い呼吸音だけが聞こえた。
「………。」
すうすうと寝息をたてて眠るその部屋の主を見下ろして、睡蓮はその火傷の痕が残る逞しい背中に白い指先で触れる。
包帯は取れたのだ。薄桃色の肉の柔らかさを覆うよう、張り始めた皮膚にちょんと触れては、もにょりと口をもぞつかせる。ぽふんと兎になれば、ひょこひょこと歩み寄って琥珀の腕の中にその身を収める。
睡蓮の薄桃色の口元が、ふわりと琥珀の唇に触れた。ぴすぴすと鼻を鳴らして大好きな香りを肺いっぱいに吸い込めば、そのふわふわの毛並みを押し付けるように顎下に擦り寄る。
「おけぇり。」
「ふわ、た、ただいま…起こしてごめん、」
「なんで兎だ?」
「ええ、だって…布団狭くなっちゃうだろう?」
もふ、と睡蓮の柔らかな毛並みに鼻先を埋めると、琥珀はその兎の体を抱きしめる。仕事をして、疲れてきているのは睡蓮の方だというのに、こうして琥珀自身を慮る。
「せめぇほうが良いだろ。色々出来るし。」
「でも、人型とると琥珀とやらしいことしたくなっちまうもの。」
「発情期終わったのに?」
「終わったって、僕だって雄だもの。好きな子の肌には触れたいよう。」
赤眼できょろりと見上げる可愛らしい兎の、なんともアレな発言に、琥珀は自尊心が満たされる。そうか、やはり俺の思った通り、欲を持つのは俺だけではないらしい。睡蓮の丸っこい体を抱き込みながら、もにもにとふかふかのオッポを揉み込む。
「このまんま、俺に獣姦させるきか?それこそお前の尻は破裂しちまうけど。」
「ぎゃっや、やだやだっ!なんでそんな怖いこと言うのさっ」
「お前こそ、俺にお預けさせるほど偉くなったとはなあ。」
「ぅ、わ、わかっ、わかったからあっ!」
わたわたと右前足で琥珀の顎を押し返すと、ぽひゅんと情けない音を立てて姿を表す。琥珀の腕に抱きしめられながら、睡蓮は不服そうににゅっと唇を尖らせる。
「それに、お前は俺の背中を気にしてくれるけどよ、」
暗い部屋で、琥珀の金色がキラリと光る。そのまま睡蓮の頭を抱き込んで体勢を変えると、睡蓮は背中に琥珀の温もりが移った寝具を感じた。
押し倒されたのだ。琥珀を見上げる形で、まるで思い至らなかったと言わんばかりの間抜けっ面を晒す。どうやら本気で睡蓮は跨がる気でいたらしい。サラリと琥珀の黒髪が一総垂れる。それがまろい頬を撫でると、むん、と口を噤んだ。
「せ、」
「せ?」
「背中に、爪立てちゃったらどうしよう…」
どうやら、琥珀の手練手管で前後不覚になるのはわかりきっているらしい。しかし、そんな事を雌から言われるなど、なかなかに煽られる。琥珀はぐるりと喉を鳴らすと、がじりと小鼻に齧りついた。
「あいてっ」
「馬鹿野郎、そんなもん男の勲章だろうが。」
「うぅ…」
「つか、」
興奮する。
そう長いお耳に口付けて宣うと、その大きな手のひらを着物の袂から侵入させる。ひくり、と薄い腹が震えて、睡蓮の喉奥がきゅうんと鳴った。
無意識に蕾がひくついてしまい、甘えたな声が漏れる。睡蓮の意思に反してきゅうきゅうと声が漏れるのは、本能が全面にでてしまったからだ。
発情期は終わったはずなのに、体が熱い。
睡蓮は琥珀の頬に、己の頬を重ねるように擦り寄ると、その右腕をゆっくりと背に回した。
聞くに堪えない水音は、それだけ己が昂ぶっている証明だ。睡蓮は、今。琥珀の腹の下で細い両足を自分で抑え、琥珀に全てを晒している。腹の中側をぞりぞりと指で擦られるたびに、ひんひんと啼く。琥珀はそれを聞くたびに、まるで囀りのようだと愛おしむ。
「ふぁ、っぁ、あ、な、なか、っ…」
「なかきもちいな、」
「ぅん、っ…う、んっ…!」
「ほら、まだ我慢しておけ。」
「ひぁ、っぁあっき、きもちぃ、あっ、」
薄い胸を上下させ、琥珀の前にはぽちりとした可愛らしい睡蓮の突起が晒される。ぬちぬちと腹の中を擽りながら、唇でそこを挟むように甘く吸い付けば、身を震わしながら精液を零す。
「こ、こはく、ぁっも、もぅ、っ」
「ん、口開けろ。」
「ぅ、ンっ…んくっ、」
はふはふと必死に呼吸を繰り返す。唇を隙間なくくっつけて、舌先に唾液を絡めて与える。小さな喉仏を上下させ、こくんと飲み込む睡蓮に、褒めるようにそっと胸元を撫でた。
口を開けといえば、無意識に足まで開いてしまう。そんなやらしい癖をつけさせた責任は取らねばなるまい。
「ん、…なんか、…日にち経ってる割に…」
「ひぅ、っ…」
ぬくり、と挿し込んだ琥珀の指は、思いの外すんなりと入った。睡蓮の蕾は、琥珀の指を二本含んだのにも関わらず、太い指を柔らかく包み込み、甘く締め上げるように蠕動する。
「……おい、お前もしかして、」
びくん、と睡蓮の肩が跳ねる。表情が見たくて、琥珀が上体を起こし見下ろせば、そこには恥ずかしそうに手で顔を隠すようにして震えている姿があった。
「は、やく…ほ、ほしくて…」
「お、おう」
「れ、練習…したの…」
「おっ、」
睡蓮が、遮るために隔てているはずの指の隙間から、涙目でちろりと琥珀を見やる。
なんだそれ、そんな、一体いつそんなことをしていたというのだ。琥珀は絶句したまま睡蓮を見下ろすと、震える声で小さく呟いた。
「こ、こはがねてるとき…えっと、ひ、ひとりでね、あの…」
「一人でぇ!?」
「し、しぃーーっ!!!」
余りにも喧しい声で叫ぶものだから、睡蓮は慌てて琥珀の口元を抑えた。その小さな手のひらをガシリと抑えるように掴むと、べろりと手のひらを舐める。ひくんと反応する素直な姿に覆いかぶさると、その長い耳をがじりと甘く噛んだ。
「この小せえ手で、頑張ったんか。」
「ぅ、ぅ…」
「かぁいらし、お前はほんとに男心を擽りやがる。」
「ぼ、僕だって、お、」
「お前は俺の雌だろう。」
大きな手の平が、そっと睡蓮の頭を撫でる。額が重なり、鼻先を擦り寄せ、睫が触れ合う距離に琥珀がいる。ああ、僕は、琥珀の雌になったんだ。そう思い、そしてそれが嬉しくてじゅわりと唾液が口に溜まる。興奮だ。これは、紛れもなく興奮をしているのだ。
「睡蓮。」
「はい、」
ぺしょ、と答えるように唇を舐める。琥珀が満足して、唇を開いてくれるまで、睡蓮は熱を帯びた瞳でうっとりと見つめて甘える。琥珀が嬉しいと睡蓮も嬉しい。だから、睡蓮は琥珀の望むことを全て叶えてあげたくて、己の主導権を全て明け渡して愛を示す。
クルル、と喉が鳴る。睡蓮の大好きな琥珀の甘える声は、本能からくるものだと知っているからだ。
「ん、っぅ、ぅあ、っ」
がじりと肩口を噛まれ、睡蓮の体がふるりと震える。熱い手のひらが柔らかな尻を揉むように割り開くと、再びヌクリと指を侵入させた。
睡蓮が、自分の手で準備をした蕾に、琥珀の指が入ってくる。前よりも、ずっとすんなりと三本目が挿入されると、きゅぅきゅうと吸い付くように甘えるのだ。
「痛えかも、いいか?」
「うん、っ…」
「血が出たらごめん。」
「も、それも経験したもの…」
「ああ、そうだったな。」
あれは、お前が大変だった。そう言ってクツクツ笑う。琥珀の引き締まった腰に、細い脚を絡める。端ないとは思ったのだが、睡蓮は我慢していた。だから、もう、とにかく早く欲しかったのだ。
「催促も上手になりやがって。」
「ふ、ぅぁ、っ…!」
目を細めた琥珀が、睡蓮の腰を持ち上げて引き寄せる。下履きから膨らんだ性器を取り出すと、その小さな蕾に押し当てる。濡れて、ひくつく。まるで先端に口付けをしているかのようなその動きに、睡蓮の顔の横に付いていた腕には脚鱗が浮かび上がった。
「…力抜け、ゆっくりするから。」
「ぅ、う、うっ、」
「大丈夫、大丈夫だから、びびんな。な?」
「ひぅ、ン…は、っ」
ふうふうと胸を上下させ、必死に深呼吸を繰り返す。こめかみに口付け、ゆっくりと琥珀は睡蓮の蕾を割り開くように、己の性器を挿入していった。
「はぅ、ぁ、」
にゅる、と熱くて太いものが侵入してくる。火傷してしまいそうな程、熱を持っている太い幹は、睡蓮の内壁の柔らかさを楽しむかのように、ゆっくりと中を摩擦していく。蕾が収縮するたびに、中の存在を自覚させられて、睡蓮はお腹が苦しいのと胸がいっぱいなのが一緒くたになって、右腕で縋り付くように琥珀に抱きついた。
「どした、怖いか、」
高い体温を抱き締める。その柔らかな髪を梳くように撫でながら、心配の色を滲ませる声色。きっと、今にも腹に収めたいであろうに、そんな様子を心配してくれる。
「こわくない、よっ…で、でも、ぉ、おなか、が…」
「苦しい、」
「ううん…、ぅ、」
うれしい、
紅玉の蕩けた瞳で、今にも死にそうなくらい震える声でぽしょりと呟かれる。
琥珀は数度瞬きをした。腹が、喜んでいる。睡蓮は、己の腹が待ち望んでいたのだと、そう言ったのだ。
なんともやらしくて、そして健気だ。琥珀は頭の後ろからじわじわと侵食してくる熱に、瞳を揺らした。ああ、やばい。せっかく優しくしたかったのに。
「くぁ、っ、」
目の前に火花が散る。琥珀の瞳孔がきゅうっと細まり、金色が燃えるように輝いた。
睡蓮は、最初は何が起きたのかわからなかった。ただ、腹の奥を殴られたかのような衝撃と、次いで襲い来る、稲妻のような鋭い痺れが神経の隅々まで行き渡り、びくん!とその身を大きく反らした。
「ぁ、ぁくっ、ひ、な、なに、ぃっ!あ、あぁ?あっぁっ!」
「っ、ふ…!!」
がつんときた衝撃が、律動だというのを徐々に脳が認識する。それでも、生きていて経験のしたことない、激しい熱と痺れが細い体を、焼くように全身を侵す。
「ぁあ?あ、っう、ぅうーーーっ!!ひ、ひぃ、あっあや、ゃだぁあっあっ!ま、まって、ぇっ、ひぅ、あーーーっ!!」
喉を震わす。目の奥から、泣きたくもないのに涙があふれる。下半身は馬鹿みたいになにがしかを撒き散らし、肉を溶かすような熱に侵されながら、気持ちいいの本当の意味を教え込まれる。
頭が馬鹿になって、獣みたいに泣いて、もうどうにでもなってしまえと思うのに、理性が時折やめろと邪魔をする。もう、頭がおかしくなりそうだ。
きもちいい、きもちいい、きもちいい。
「き、もちぃ、ぁあ、あっあっ!」
口端から、唾液が溢れる。全身を琥珀の好きなように扱われることが、こんなにも幸せだなんて知らなかった。目線がどこに向いているのかもわからない。
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