ヤンキー、お山の総大将に拾われる2-お騒がせ若天狗は白兎にご執心-

だいきち

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この鉤爪で引き寄せる **

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 我慢して我慢して、きっと箍が外れてしまったのだろう。睡蓮はそんなことを思って思考を飛ばし、そして余計なことを考えるなと窘められるかのように、琥珀によって快楽の海に引きずり込まれる。
 熱い。互いの素肌が重なっているので、押さえつけられるように琥珀に伸し掛かられている睡蓮は、その華奢な腰の、尻との境の僅かな窪みに汗を溜まらせる。それが細い筋を描いて伝うだけでも参るのに、片腕だけでは琥珀に止まってとおねだりも出来ない。

「あー…、んとに、なんでもっと早く抱かなかったんだろな。俺は、」

 ぐい、と睡蓮の柔らかな尻肉を押し上げるかのように、腰を押し付ける。この、熱くてとろけそうな媚肉を押し広げて、琥珀の先端は睡蓮の腹の奥深くまで穿いていた。

「ぅ、ぅう、くっ、んぇ、あ、あっ」

 けぷり、と口端から胃液が零れた。内臓を掘削されて、とんでも無く苦しい。苦しいのに、同時に尻は麻痺をしてしまったかのように、ずっと気持ちがいいのだ。
 ぽこんと膨らんだ臍の下、そこに琥珀の性器がある。背後から、まるで愛おしむように抱きすくめられて、大きな手のひらが睡蓮の薄い腹に這わされる。

「かぁいらし。俺のを必死に飲み込んで、前後不覚になっちまってて、お前は本当にかぁいらしいな。」
「か、かぁ、い…ぅ、ぼ、ぼく、っ、かぁ、…いぃ…っ?」
「可愛い、んとに、お前が可愛くて、俺は歯止めが効かねえかもしれねえ。」
「ふぅ、ぅ、え、ひ…っ、」

 ゆるゆると睡蓮の口元が緩む。嬉しい、琥珀がこの貧相な体に溺れてくれるのは嬉しい。熱い体温が再び重なる。体を横に向かされ、小柄な睡蓮と唇を重ねるのに、わざわざずろりと性器を少しだけ引き抜いて、上体を倒して甘えさせてくれるのだ。

「ン、んぅ、ふ、ぅう、っ…」
「おめぇは小せえな。口付け一つ、腹に収めたままできねえ。」
「ごめ、」
「怒ってンじゃねえよ、壊さねえようにしねえとって思ったまでさ。」

 汚れた口元も気にせず、琥珀はべろりと舐めあげては、睡蓮の小さなおくちに指を差し込み、開かせて唾液を飲ませる。

「ん、っ…ぁ、ぁう…」
「お前を娶るなら、」
「ふぇ、っ…」
「俺はきちんと、お前に求愛してえ。」

 蜂蜜のような、甘ったるい瞳には、情けない顔の睡蓮が映っている。

「きちんと求愛して、お前が俺に尽くす以上に、満足させてやるつもりだ。」

 琥珀は、睡蓮が己の身を犠牲にしてまで、琥珀に尽くしたいと思っているのを理解している。
 これが玉兎の習性だ。睡蓮はきっとそう思っているだろう。だけど、それは勘違いだ。だって、睡蓮は自分の意志で道を開くことのできる立派な雄だ。
 そんな自我のある睡蓮が、流されずに本能から琥珀を選んだ。つまり、それは美しく、愚かで哀れな盲信的な愛であるのだろう。己の一番を前にしたら、自分を捨て置いて尽くすという、健気なまでの自己犠牲精神。
 それが、琥珀の空白を埋めるように柔らかく満たしていく。琥珀の知らない感覚は、この健気な兎が身を持って教え込んだのだ。


「お前が自身を愛さねえ分、俺がいっとう愛してやる。お前の中の、お前自身が何番目だろうが関係ねえ。俺は、お前を一番に愛してやる。だから、お前は俺を一番に考えろ。」
「ぅ、っ…こ、こは、っ…くぅ…っ…」

 ひっく、と嗚咽を漏らす。無骨な手が、右腕とは細さの違う草臥れた左手に絡まった。血の通わぬ冷たい腕だ。
 琥珀はそっとそこに口付けを落とすと、がじりと齧る。

「話は終いだ、やっぱこういうの、柄じゃねえやな。」

 綻ぶように、琥珀は笑った。睡蓮の知らない初めての笑みだ。強がりでもカッコつけでもない、ありのままの柔らかな笑み。そんな琥珀が綺麗で格好よくて、そして可愛くて、睡蓮はつい腹を締め上げるように、きゅうっと反応してしまった。

「催促しなくても、ちゃんと種付けてやっから。もちっと付き合え、な。」
「ぅ、んっ…ふぁ、あ、ぅっ、」

 にゅち、と音がする。琥珀が腰を引き、その怒張した性器が内壁を摩擦したのだ。結合部に絡まる粘度の高いそれが、律動を助ける。細い腰を鷲掴み、引き寄せるようにして腰を打ち付ける速さを徐々に上げていけば、睡蓮は簡単に理性を飛ばす。やらしくて可愛い、琥珀だけの雌。

「ん、んぁ、っぁや、ゃっいぃ、い、ひゃ、っ」
「ん、っま、…もちっと、な、」
「だ、だぇ、あっ、へ…ぅ、うあっあぁ、やーー…!」
「やだじゃねえっての、ほら、」

 ぢぅ、っと首筋に強く吸い付く。赤い鬱血痕は白い肌によく映える。琥珀は足を抱えあげて深くまで挿入をし直すと、その腹に大きな手の平で下腹部を覆うように触れる。

「お前が知らねえ部分まで、俺が知ってるってのは気分がいいな、」
「ふぅ、ぁ、っあぁ、い、いぅ、うっ…!」
「っん、…ふは、」

 だらしなく口を開いて、己の主導で翻弄することの心地よさは、きっと睡蓮だからだろう。琥珀は、狭い蕾を何度も摩擦をするように腰を打ち付けると、その奥にある狭い部屋にごちりと先端を押し付ける。

「ひぎ、っ…!」
「んん…っ、ここ、お前の指じゃ…届かなかったろう…」
「ぃ、いあ、ゃ、やら、っ…そ、そこ、はぁ、あ…っ…」

 睡蓮の真っ赤なお目々が見開かれる。そこはいけない、琥珀が何度もその狭い隙間に入りたがるように、擦り付けるようなその動きだけでも、睡蓮は馬鹿になってしまう場所であった。
 本能はそこを侵されるのを求めているらしい。下肢の力が抜け、だらしなく脚が開いてしまう。睡蓮の理性の抵抗を、あっけなく覆すように尾が揺れる。

「な、ここ…」
「はぁ、あっあぅ、ゃ、ゃぇへ…こは、っだ、だぇ、あ、あっ」
「なぁ、だめか?ほんとに駄目?」
「きゅ、うっ…」

 金色の瞳が、おねだりをするように睡蓮を見下ろす。可愛い、可愛くて喉が鳴ってしまう。これが計算されての顔だとわかっているはずなのに、睡蓮の頭は駄目だという割には、勝手に足が腰に絡まって、琥珀を引き寄せてしまう。

「どっち、なぁ、睡蓮の口から、いいよって言ってくれよ。」
「ゃ、ゃだしんじゃうぅ…っ…」
「気持ちいいことしかしねえもの、なあ、怖がんないで、お願い睡蓮。いいって言って。」
「ひぅ、う~…ゃ、やだこわ、いぃ…っ…」

 気持ちいいのは大好きだ、きっと、ここを開かれたらもう戻れない。わかっているから怖いのだ。
 琥珀はおねだりをするように、何度も細い腕に口付けては、ぐりぐりと腰を押し付ける。ぐっ、ぐっ、と睡蓮の狭いそこを不躾に割り開いているくせに、お願いと可愛くおねだりをする。

「ぅ?うぁ、や、ぁ、あぁ、ぁっあんっ、ん、んぅ、うっ、うーー…」
「わけ分かんなくなってんの気持ちぃな。」
「はぅ、あ、ぁあ、き、きもひぃ、ぁ、あぅ、やぁ、な、なんれ、っあれ、ぇっ?」

 頭の中がくるくると回る。気がつけば、あんなにやめてといったのに、琥珀の下生えがしとりと濡れそぼっているのがわかるほど、腹に収めていた。

「は、はぃ、っ…てぅ、っ?は、はぃって、う?うぁ、あっ、いぃ、ゃ、やあぁーー…っ」
「せま、っ…ぁ…へ、へいき、っ…入ってね、えから…っ」

 琥珀のこめかみから汗が伝う。信じられないほどに気持ちがいい。琥珀は、茂みをピタリと睡蓮の縁につけるほど挿入をしていた。
 だって、あんなにおねだりをしたのに、睡蓮はやだやだとびびりすぎて素直にならなかったのだ。気持ちいいし、きっと睡蓮も気持ちいい。だから、琥珀はおねだりをしながら、隙きを見てずぽりと押し込んだ。

「ほ、ほんとぉ…あ、ぁっこ、こにっ、は、はぃ、っへらぃ、い…っ?」
「入ってねえ、ぁ、すげ…っ、しま、る…っ…」
「んぅ、あ、あぁ、あゃ、っき、きもひぃ、ゃ、ゃらこわぃ、あ、あぁ、あっ!」
「あ…っく、い、きそ…ごめ、あ、あやま、る…から…っ、」

 じゅぱ、といやらしく、琥珀の先端を睡蓮の腹にねぶられる。結合部に纏わりついていた粘液の質が変わり、琥珀の先走りと絡まって、背骨が抜けてしまうかと思うほどに気持ちがいい。涙と涎と鼻水と、睡蓮はありとあらゆる水分で濡らしたびしょびしょの顔で、可愛く思考を飛ばして腰を跳ねさせる。
 ここは気持ちがいい、気持ちが良すぎて怖い。怖いけど、琥珀が気持ちよさそうに蕩けた顔で見下ろしてくるから、睡蓮のなけなしの雄が満たされる。

「こ、こはぁ、あ、っ、…か、ァい…ぁ、あっかぁ、いぃ、っ…」
「っ、くそ…お前のが、かわいい…っ!」
「きゃぅ、うっ!あっ、あぁ、あっあぁぁあ!!」

 バツン!と濡れた音と共に腰が打ち付けられた。目の前で光が弾けて、一際高い声が上がる。あまりの衝撃と、火傷のような性感は、たった一度では終わるわけもない。睡蓮は、息継ぎもままならぬまま、琥珀によって貪るようにガツガツと揺さぶられては、腰を挟むように割り開かれた細い脚を、ぶらぶらと揺らす。

「んぁ、あっ!あぁ、あっあぁあい、いぅ、っで、でひゃぅ、ゃ、やだぁ、あぁーーっ!!」

 悲鳴のように喘ぎながら、強い快感に訳がわからぬといった具合に、髪を振り乱して泣き喚く。そのくせ、右腕はしっかりと琥珀の手綱を握るかのように、長い黒髪を握りしめながら、雌のようにひゃんひゃんと鳴く。

「イくって、いえ、ほら…っ、」
「いぃ、ぐっ…!!あ、い、いぐ、がらぁ、っ!も、やめで、ぇっしんぢゃぅ、うぁあ、あっ、あぁあ…っ、っ…!」
「ん…ぐっ、…!」

 かは、と詰めていた息を吐きだした。琥珀の性器をぐにぐにと刺激し、そしてぶしゃぶしゃと温かい水流を琥珀の腹に浴びせる睡蓮は、もうなすがまま、蕩け、恍惚とした表情であった。

「く、ぁ、っ」

 鋭い電流のような感覚が、背筋を伝って全身に分散する。凝っていた熱がぎゅるりと渦を巻いて、突き出すように押し付けた下肢を伝って吹き上げる。
 その薄い腹に叩き付けるかのように、粘度の高い精液を流し込むと、琥珀は脳汁が滲み出てくるような中毒性のある感覚に苛まれた。
 これが、本当の番いとの行為だと、ようやっと理解したのだ。長い髪をだらしなく乱したまま、肩で呼吸をし、ゆるゆると擦り付けるようにして腰を揺らめかす。
 睡蓮は気絶をしたかのように、四肢を投げ出していた。白い体を所々染め上げ、ポコリと膨らんだ腹を軽く押せば、結合部からはしたない音を立てて精液を逆流させる。

「はー…、」

 瞳孔は開き、完全に獣の顔つきであった。琥珀は、脚鱗が浮かぶ猛禽の鉤爪に変化した己の手を見ると、そっとその黒い爪先で睡蓮の頬を優しく撫でたのであった。

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