このセカイで僕が見つけた記憶

さくらもち

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ニ話

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「…ここは…?」

 寒さなんてない、先程の空腹感もなかった。ただ、真っ白なセカイ。それだけだ。
 辺りを見回しても、辺り一面、白い白いセカイで埋まっていた。
 誰もいないセカイで、僕だけがそこにいる。

「天国……なの、かな…?」

 不思議と怖くはなかった。むしろ、とても居心地のいいところだ。
 拳を強く握りしめ、前へ進もうとした。

「普通の人がここにいてはいけない」

 ふと、後ろから声が聞こえてきたので振り向くと、そこには真っ黒なローブをまとった男の子がいた。僕と同い年くらいかもしれない。
 赤い瞳には光が見られず、ただ闇の中にいるみたいだ。
 けど、少しだけ半透明で真っ黒なローブの下から足なんてなかった。

「人…?」

「…珍しい。お前は誰だ?このセカイで僕以外に誰か来るなんて、前に人が来たのが何千年…くらい前だっただろうかーー」

興味深いと言うように、まじまじと僕を見ている。お母さん以外に人を見たのは久しぶりだろう。

「だ…れ…」

「すまない、僕はこのセカイの管理人。そして、ここは記憶のセカイ」

「何を言って……お母さんは?」

「いない。だが、帰れなくはない」

 それを聞いて何とも言えない感情になった。

 もし、お母さんが帰ってきていたら、怒られてしまうだろう。でも、なぜだかあそこに帰りたくない気持ちもあるからだ。
 けど、早めに帰らなくては。

「ここに来る者は、大抵自分の記憶を忘れてしまっている。何か違和感があるだろ?」

「でも、僕は自分の記憶があるよ。違和感なんてない。名前は、テンって言うんだ」

「テン……そうか、それならわからない。大体違和感を持ってくるからな。だが、ここに来たのは運命。神が何かお前に定めを与えたということだ。お前はここで何か探さなくてはいけない」

 僕の名前を聞くと、少し険しい顔をしたがすぐさま元に戻った。
 でも、わからないという言葉を聞いたとき、少しだけほっとしたのはなぜだろう。

「それじゃあ、帰れないの?」

「いや、見つければ帰れる。だが、ここは死と生の狭間。けして、惑わされぬように気をつけろ」

「…待って。君の名前は?」

「僕か……僕は誰だろう…とりあえず、何でもいい。好きな名で呼ぶがいい」

 この人はなんでそんな平然とした顔をしているのだろうか。
自分の事すらあまりわかっていないのに、悲しくはないのか。しかも、名前がないなんて僕だったら辛い。

 けど、なんで名前がないのかそこから先は聞いてはいけないような気がした。

「名前がないの?………それじゃあ、ツバサって呼んでいい?」

「ツバサ……?まぁいいだろう」

少しだけ、?の顔をした。ツバサなんて少し女の子ぽい名前が嫌だっただろうか。
 ツバサと名付けたのは、それがただしっくりくるからーーというだけだった。

「あの、ここって具体的に何なの?」

「ここは、いろんな忘れ去られた記憶が集まり、それを管理するのが僕の役目だ。だから、お前はもしかしたらその記憶に惑わされ、帰れなくなることがある。それに気をつけてさえすればいい。しかも、ここは生と死の狭間、間違えれば生きては帰れん」

「…帰れなくていいのに」

 もし、帰ってもあの家にお母さんがいなかったら。
みんな、みんな、いなかったら。
 僕は帰らなくてもいい。いらない子ならそのまま消え去りたい。

「…ここにいたら、お前は自分の名すら忘れてしまう。ここにいればいるほど、何もかも忘れてしまうぞ?」

「……なら、ツバサはずっとここにいるから?ここにいるから、名前がわからなかったの?」

「それも…わからない。要は、早く探せ」

 そう言い残して、ツバサはいなくなってしまった。また僕一人だ。

 探せ、このまま探さなかったらツバサと一緒にいて楽しく笑えるだろうか。

 ツバサと初対面のはずなのに、なんでこんなにも心が暖かくなるのか。

「駄目……だよね。早く探さなくちゃ」
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