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第3章 大切なもの
玲華の狙い⑰
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「それにな、この映画の為にもお願いしたいんだよ。君の存在があることで、彼女達の演技はよりリアリティさが増す。そう思うんだ」
もちろん、俺の演技のためにもね、と楽しそうに付け足した。腹が立つ。
「⋯⋯⋯⋯」
腹が立つが、どう断れっていうんだ。こんな状況。
断りようがない。
「もちろん、来れる時だけでいい。学校終わって余裕があるときだけでいいさ」
「でも、俺俳優さんのお手伝いなんて、何すればいいか全然わからないですよ。いても足手まといなだけです」
「いいんだよ、いるだけで。俺の話相手。面倒なことはうちのマネージャーにさせるから。何ならRINちゃんやREIKAちゃんを手伝っててもいい」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ますます断りにくい提案を出されてしまった。
「わかりました。でも、ほんとに足引っ張るだけかもしれないんで⋯⋯」
「いいよいいよ。じゃあ、LIME交換しよう」
山梨さんはそう言いながら、嬉しそうにスマートフォンを出した。 俺もスマホを出して、QRコードで連絡先を交換する。
「よし、交換、と。よろしくな、リアル達也!」
「それはやめてください⋯⋯」
バシバシと背中を叩いてくる。絶対この人面白がってるだろ⋯⋯。
(それにしても⋯⋯あの山梨陽介とLIME交換しちゃった⋯⋯ほんと、人生何があるかわからないな)
あまりミーハー気質なほうではないが、相手が有名人なだけあって、やはり高揚感をある。純哉あたりに自慢したくなった。
「あと、"山梨さん"って言うのやめてくれよ。あんまりその苗字好きじゃないんだ」
「え、なんでですか?」
「なんか県名みたいじゃない?」
「まあ⋯⋯」
実際県名だし。
「だから、名前で呼んでくれよ。そっちのほうが慣れてるし」
それは、俺のほうが緊張するんだけど。そんな馴れ馴れしくしていいものなのだろうか。一般の高校生が、売れっ子俳優に対して。
「わかりました。陽介さん」
「おう! じゃあ、また連絡するよ」
陽介さんは、さわやかな笑顔を向けて手を振って、荷物置き場に戻っていった。
ぽつんと取り残された俺のもとに、次に現れたのは、田中マネージャーだった。
「ああ、君! よかった⋯⋯帰ってきたらREIKAちゃんもRINちゃんもいないし、みんな片付けしてるし。あれからどうなったの?」
走り回っていたのか、田中マネージャーは汗だくだった。
そんな彼に、さっき彼がいなかったときに起こった事を説明すると、彼はまた頭を抱える羽目になっていた。
「け、契約とかどうなるんだろ⋯⋯うちのプロフダクションとはもう解約になってるし⋯⋯ああ、また社長に電話しないと⋯⋯」
ぶつぶつと独り言を言いながら、どこかにふらふらと行ってしまった。
きっと玲華のマネージャーになってから、彼の心労は極端に増えたんだろうな。
もっとも、それは俺にも言える事なのだけれど。
もちろん、俺の演技のためにもね、と楽しそうに付け足した。腹が立つ。
「⋯⋯⋯⋯」
腹が立つが、どう断れっていうんだ。こんな状況。
断りようがない。
「もちろん、来れる時だけでいい。学校終わって余裕があるときだけでいいさ」
「でも、俺俳優さんのお手伝いなんて、何すればいいか全然わからないですよ。いても足手まといなだけです」
「いいんだよ、いるだけで。俺の話相手。面倒なことはうちのマネージャーにさせるから。何ならRINちゃんやREIKAちゃんを手伝っててもいい」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ますます断りにくい提案を出されてしまった。
「わかりました。でも、ほんとに足引っ張るだけかもしれないんで⋯⋯」
「いいよいいよ。じゃあ、LIME交換しよう」
山梨さんはそう言いながら、嬉しそうにスマートフォンを出した。 俺もスマホを出して、QRコードで連絡先を交換する。
「よし、交換、と。よろしくな、リアル達也!」
「それはやめてください⋯⋯」
バシバシと背中を叩いてくる。絶対この人面白がってるだろ⋯⋯。
(それにしても⋯⋯あの山梨陽介とLIME交換しちゃった⋯⋯ほんと、人生何があるかわからないな)
あまりミーハー気質なほうではないが、相手が有名人なだけあって、やはり高揚感をある。純哉あたりに自慢したくなった。
「あと、"山梨さん"って言うのやめてくれよ。あんまりその苗字好きじゃないんだ」
「え、なんでですか?」
「なんか県名みたいじゃない?」
「まあ⋯⋯」
実際県名だし。
「だから、名前で呼んでくれよ。そっちのほうが慣れてるし」
それは、俺のほうが緊張するんだけど。そんな馴れ馴れしくしていいものなのだろうか。一般の高校生が、売れっ子俳優に対して。
「わかりました。陽介さん」
「おう! じゃあ、また連絡するよ」
陽介さんは、さわやかな笑顔を向けて手を振って、荷物置き場に戻っていった。
ぽつんと取り残された俺のもとに、次に現れたのは、田中マネージャーだった。
「ああ、君! よかった⋯⋯帰ってきたらREIKAちゃんもRINちゃんもいないし、みんな片付けしてるし。あれからどうなったの?」
走り回っていたのか、田中マネージャーは汗だくだった。
そんな彼に、さっき彼がいなかったときに起こった事を説明すると、彼はまた頭を抱える羽目になっていた。
「け、契約とかどうなるんだろ⋯⋯うちのプロフダクションとはもう解約になってるし⋯⋯ああ、また社長に電話しないと⋯⋯」
ぶつぶつと独り言を言いながら、どこかにふらふらと行ってしまった。
きっと玲華のマネージャーになってから、彼の心労は極端に増えたんだろうな。
もっとも、それは俺にも言える事なのだけれど。
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