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(あー…くそ調子狂う…)

先輩と別れて一人になった途端、また色々な感情が頭をぐるぐる駆け巡る。

俺はポケットに入れていたスマホを取り出した。

(他の人から言われるエッチってどういう意味なのか調べてみよ…)

俺は気になって仕方がなく、とりあえず検索をかけてみることにした。

「性的にいやらしい様、またはそういう人を指す…」

俺の顔は更に熱を持ち始める。

(…えっ俺でそういうこと考えたってことか…?いや、なわけ…)

そんなことを考えながら廊下を歩いていると、いつの間にか時間はチャイムギリギリになっていた。

(やっば、早く戻んねーと…!)

そして教室へ帰るやすぐ、五時間目の古典の授業が始まった。

(あー疲れた…、んで五時間目は古典…つまんねーし眠くなるんだよなこの先生…)

「このクラスは授業が進んでいるので、この時間は自習とします」

(えっまじか…!?よっしゃ!)

なんと自習の時間になった。まるで奇跡だ。

先生は教卓の前の椅子へ腰掛けた。

…まあこの時間俺は自習するつもりなどないが。

そうして俺は萎れるように机に顔を伏せた。

「なあ先輩とどうだっ…って、雅生きてる?」

前の席の港人は俺の方を見て尋ねてきた。

「…半分」

今も尚、僅かに赤面して俺にえっち、と言った空の顔が頭から離れない。

周りに聞こえるのではないかという程心臓がうるさく鳴っている。

「その顔は、さてはなんか進展あったんだな?」

「…えっちってどういう意味」

「…は?」

俺は昼にあったことを全て港人へ報告した。

「ああなるほどな…再会した初日から進展がエグいな…」

「先輩からエッチって言われてから…余計先輩を意識しちゃうって言うか…何なんだろこれ」

「恋だな」

「なんか…変な感じする…」

「ていうかさ、雅はいずれ、先輩と付き合いたいわけだろ?」

港人は俺に言う。

「うん…」

「お互いの全てを知ってみたいってなった時、それか付き合った時、セックスする日も来るかもしれないぜ…?」

「セッ…!?」

俺は伏せていた顔をついバッと上げた。

エッチ、という言葉には性的にいやらしいという意味を持つということ。

さっき検索をかけた時に、いやかける前からもう既に分かったことだ。

「先輩はその時少なくとも雅に少しでも性的な魅力を感じた、ってことじゃね?もしかしたらあの時そういう事に発展してた可能性もあったかもな…?」

「…俺と…?」

俺は考えすぎなのかもしれない。

いや、考えすぎだ。

でも自分で自分に問いかけてみた時、俺も先輩とそういう事をしてみたい、と少しばかり思う。

「あん時、先輩目逸らして赤くしてたんだろ?勃ってたんじゃね笑」

「や、やめろよ!変な気持ちにさせんな!!」

港人に言って正解だったのか不正解だったのか…

でも今、自分の秘めていた気持ちに気付けた気がする。

俺は、先輩とならセックスをしてみたい、と思う。

これはきっと健全な気持ちであると思う。

ていうか俺は学校の授業中になんてことを考えているのだろう。

「てか今日の帰りは一緒に帰んねえの?」

「うん、帰りはまだいい。俺がまだ無理そうだわ笑」

「なんか色々進展あるけど、お前一応今日再会したばっかだもんな」

今日あった出来事の内容が濃すぎて、先輩のことが頭からこびり付いて離れない。

再会した初日だというのに。

(これから俺どうなんだろ…)

「明日も早く来て図書室行ってみたら?明日は多分今日以上にドキドキすっと思うぜ笑」

「…今日以上に、か。…うん、そうしてみる」

そうして俺は明日の朝も人気の少ない小さな図書室へ向かうことを決心したのだった。

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