6 / 10
6
しおりを挟む
四時間目が終わり、俺は港人を連れて先輩の教室へと向かった。
空がいる2年2組はすぐ上の階であり、いつでも会いに行けるような距離にある。
俺は後ろの扉からひょこっと教室を覗いた。そこには机で教科書を片付けている空の後ろ姿があった。
「空ー!」
俺は先輩を呼んだ。
「うおっ…!?」
隣にいた港人も横で先輩の名前を叫ぶ俺に驚いている。
そして先輩は、突然俺に呼ばれて驚いたのか、肩をビクッと震わせてこちらを向き、その後こちらへ来た。
「ビックリした…」
「先輩!会いたかったです」
「さっきも会ったでしょ」
俺はいざ先輩を前にすると、会いたい気持ちをつい抑えきれなくなってしまう。
「ん、隣の子は友達?」
先輩は俺の横にいた港人を見て言った。
「あ、はい…!ただ俺は付き添いって感じで…!」
「ああ、そうなんだ」
「なんかその…イケメンすね」
謎に気まづそうな港人は空へそう言う。
「はは、ありがと」
先輩は優しく微笑み、港人へ礼を言った。
「ちょっと港人ぉ!!?」
「じゃ俺戻るわー。じゃ」
港人は俺と先輩にひらひらと手を振り、そそくさと居なくなった。
「…あの子も犬っぽい感じだね、雅みたい。雅が二人いるみたいだった」
「んなことないっすよ…!ほら早く食べましょうよ!」
俺は他の人に気移りしたような先輩に少しムッとしてしまった。
この気持ちも隠そうと頑張ったが、これも顔に出ているのかもしれない。
自分の今の顔が自分で見れたらいいのに。
「…あ、俺いつも昼は屋上で食べてるんだけど…だから雅も屋上で食べようよ」
「…はい」
そして俺と先輩は階段を登り、校舎の屋上へと向かった。
そして、長い階段の先にある屋上の扉を開くと、春風が肌をさし、明るい空が近くに見えた。
「屋上…すご…初めて来ました…」
「…そうなんだ。俺はここ好きでよくいる」
そう言うと先輩は慣れたような足取りで奥にあったベンチへと案内してくれた。
開放感がある雰囲気が気持ちいい。
人は俺と先輩以外に誰もいないようだ。
「…ここ」
ベンチに腰掛けた先輩は、隣の空いている席をポンポンと叩き、俺を見た。
俺はベンチへ腰掛ける。
隣にはずっと片思いしている先輩が座っていて、未だにこの状況全てが夢なんじゃないかと思う。
「…先輩の中にもし俺と港人がいたとしたら…港人の方がカッコイイし港人を選ぶんじゃないんすか…」
「…港人ってさっきの子?」
またもや俺は何を言っているんだろう。
ハッとする頃には既に言ってしまっていた。
「…はい」
「雅だよ」
俺は先輩を見た。
これは告白なんかじゃないのに、俺の名前を呼んでくれるこの声には毎度、ドキッとしてしまう。
「…」
「さっき、嫉妬したの?」
「…はい」
「ふふ、本当雅は可愛いね」
そう言うと先輩は俺の頭をさらさらと撫でる。
先輩の手の感触が頭に伝わってくる。
「…俺が可愛がってる子犬は、雅だけだよ」
「…先輩…!」
この言葉を聞けただけで、十分だ。
「元気になったんだ?笑 素直」
「はい!」
そして俺と先輩は、膝に置いていた弁当の包を開けてお互い弁当を食べ始めた。
「あっ、そのウィンナー美味しそう!」
俺は先輩の弁当の中に入っていたおかずを見てこう言った。
「ああこれ…?食べる?」
「えっ!いいんすか!?」
予想外の返答に俺はビックリしたが、先輩が言うなら有難く貰おう。
(待ってしかもこの状況…もしかしたら先輩があーんしてくれるんじゃ…!?)
そう思った俺は、待つように口を開いた。
「…仕方ないな」
そういい先輩は箸でおかずを摘み、俺の口へ運ぼうとした。
しかし、口を開いて待つ俺をみて、何故か先輩の動きが止まった。
「はあくくださいよぉ」
「…っああ、悪い」
そういい先輩はようやく俺の口の中におかずを入れてくれた。
「意地悪しないでくださいよ!」
俺は先輩から貰ったおかずを頬張りながら言った。
「いやなんか…」
「何すか?」
「…なんかえっちだな…って」
先輩は俺から目を背けて、小さな声でそう呟いた。
「っ…!?」
「悪い、別に何でもない」
「あ、は、はい…」
エッチって…!?
あーんして貰えるのを待っていただけの俺が…?
先輩からエッチなんて言葉を聞いたのは初めてで、全身が燃えるように熱くなる。
しかし、先輩からエッチ、と言われた時謎に体がゾクッとした感覚があった。
(何この気持ち…っ、先輩からエロいなんて言われて何ゾクッとしてんだ俺…っ!?)
「そ、そういえば!零先輩とはお昼一緒に食べないんですか…?」
俺は自分の気持ちを切り替えるべく、違う話を振った。
「…うん。クラス違うから。でもたまに食べる時あるよ」
しかし先輩は反応を変えずにただ冷淡と話す。
(気にしてんの俺だけか…。考えんのやめよ)
そうして、昼休みの時間も終わりに近付いており、二人の時間の終わりも同時に近付いてくる。
「先輩、また食べましょ!!あとクラス遊びに行きます!」
「うん。でも大きい声で名前呼ぶのは…やめてね」
「分かりました!」
「ほんとに…?」
そうして、俺と先輩は別れ、お互い自分の教室へ戻ったのだった。
空がいる2年2組はすぐ上の階であり、いつでも会いに行けるような距離にある。
俺は後ろの扉からひょこっと教室を覗いた。そこには机で教科書を片付けている空の後ろ姿があった。
「空ー!」
俺は先輩を呼んだ。
「うおっ…!?」
隣にいた港人も横で先輩の名前を叫ぶ俺に驚いている。
そして先輩は、突然俺に呼ばれて驚いたのか、肩をビクッと震わせてこちらを向き、その後こちらへ来た。
「ビックリした…」
「先輩!会いたかったです」
「さっきも会ったでしょ」
俺はいざ先輩を前にすると、会いたい気持ちをつい抑えきれなくなってしまう。
「ん、隣の子は友達?」
先輩は俺の横にいた港人を見て言った。
「あ、はい…!ただ俺は付き添いって感じで…!」
「ああ、そうなんだ」
「なんかその…イケメンすね」
謎に気まづそうな港人は空へそう言う。
「はは、ありがと」
先輩は優しく微笑み、港人へ礼を言った。
「ちょっと港人ぉ!!?」
「じゃ俺戻るわー。じゃ」
港人は俺と先輩にひらひらと手を振り、そそくさと居なくなった。
「…あの子も犬っぽい感じだね、雅みたい。雅が二人いるみたいだった」
「んなことないっすよ…!ほら早く食べましょうよ!」
俺は他の人に気移りしたような先輩に少しムッとしてしまった。
この気持ちも隠そうと頑張ったが、これも顔に出ているのかもしれない。
自分の今の顔が自分で見れたらいいのに。
「…あ、俺いつも昼は屋上で食べてるんだけど…だから雅も屋上で食べようよ」
「…はい」
そして俺と先輩は階段を登り、校舎の屋上へと向かった。
そして、長い階段の先にある屋上の扉を開くと、春風が肌をさし、明るい空が近くに見えた。
「屋上…すご…初めて来ました…」
「…そうなんだ。俺はここ好きでよくいる」
そう言うと先輩は慣れたような足取りで奥にあったベンチへと案内してくれた。
開放感がある雰囲気が気持ちいい。
人は俺と先輩以外に誰もいないようだ。
「…ここ」
ベンチに腰掛けた先輩は、隣の空いている席をポンポンと叩き、俺を見た。
俺はベンチへ腰掛ける。
隣にはずっと片思いしている先輩が座っていて、未だにこの状況全てが夢なんじゃないかと思う。
「…先輩の中にもし俺と港人がいたとしたら…港人の方がカッコイイし港人を選ぶんじゃないんすか…」
「…港人ってさっきの子?」
またもや俺は何を言っているんだろう。
ハッとする頃には既に言ってしまっていた。
「…はい」
「雅だよ」
俺は先輩を見た。
これは告白なんかじゃないのに、俺の名前を呼んでくれるこの声には毎度、ドキッとしてしまう。
「…」
「さっき、嫉妬したの?」
「…はい」
「ふふ、本当雅は可愛いね」
そう言うと先輩は俺の頭をさらさらと撫でる。
先輩の手の感触が頭に伝わってくる。
「…俺が可愛がってる子犬は、雅だけだよ」
「…先輩…!」
この言葉を聞けただけで、十分だ。
「元気になったんだ?笑 素直」
「はい!」
そして俺と先輩は、膝に置いていた弁当の包を開けてお互い弁当を食べ始めた。
「あっ、そのウィンナー美味しそう!」
俺は先輩の弁当の中に入っていたおかずを見てこう言った。
「ああこれ…?食べる?」
「えっ!いいんすか!?」
予想外の返答に俺はビックリしたが、先輩が言うなら有難く貰おう。
(待ってしかもこの状況…もしかしたら先輩があーんしてくれるんじゃ…!?)
そう思った俺は、待つように口を開いた。
「…仕方ないな」
そういい先輩は箸でおかずを摘み、俺の口へ運ぼうとした。
しかし、口を開いて待つ俺をみて、何故か先輩の動きが止まった。
「はあくくださいよぉ」
「…っああ、悪い」
そういい先輩はようやく俺の口の中におかずを入れてくれた。
「意地悪しないでくださいよ!」
俺は先輩から貰ったおかずを頬張りながら言った。
「いやなんか…」
「何すか?」
「…なんかえっちだな…って」
先輩は俺から目を背けて、小さな声でそう呟いた。
「っ…!?」
「悪い、別に何でもない」
「あ、は、はい…」
エッチって…!?
あーんして貰えるのを待っていただけの俺が…?
先輩からエッチなんて言葉を聞いたのは初めてで、全身が燃えるように熱くなる。
しかし、先輩からエッチ、と言われた時謎に体がゾクッとした感覚があった。
(何この気持ち…っ、先輩からエロいなんて言われて何ゾクッとしてんだ俺…っ!?)
「そ、そういえば!零先輩とはお昼一緒に食べないんですか…?」
俺は自分の気持ちを切り替えるべく、違う話を振った。
「…うん。クラス違うから。でもたまに食べる時あるよ」
しかし先輩は反応を変えずにただ冷淡と話す。
(気にしてんの俺だけか…。考えんのやめよ)
そうして、昼休みの時間も終わりに近付いており、二人の時間の終わりも同時に近付いてくる。
「先輩、また食べましょ!!あとクラス遊びに行きます!」
「うん。でも大きい声で名前呼ぶのは…やめてね」
「分かりました!」
「ほんとに…?」
そうして、俺と先輩は別れ、お互い自分の教室へ戻ったのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
風邪ひいた社会人がおねしょする話
こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。
一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる