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最終章〜終結。そして始まる

141話〜獣化と慕われると放心状態と

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 一方アリスティアは、南側の祭壇に向かう途中、ガインが持つ武器をみてこの場の危機を察知する。

「あれはいったい? みたことのない武器だがこの感覚、恐らくとんでもない物だ。このままの速度では間に合わないっ!」

 そう感じたアリスティアは、走りながら「獣モード!!」と叫んだ。

 すると、艶やかな黒い毛が全身を覆い牙をむき出し、黒豹へと姿を変化させていく。

 それと同時に素早く詠唱すると、魔法陣が現れ身につけていた衣類が吸い込まれていった。

(本当はこの姿、嫌なんだよなぁ……。だが、今はそんなこと言ってられない。クッ、我慢するか)

 完全に黒豹に姿を変えたアリスティアは、いやいやながらも四本の足を地につけ更に加速させる。

 そんな中__同じ祭壇を目指すクレイの姿が視界に入ってきた。だが、構っている暇はないと思いそのまま追い越していく。

(クレイマルスか。なるほど、装備を変えたようだな。まさか、本当に異世界の者だったとは……)

 クレイは祭壇に向かい走っていたが、自分を追い越していった黒豹に驚き立ち止まる。

「黒豹!? なんでこんなとこにおるんや。……獣人ハーフは獣化できるって聞いとったが。てか、こんなんしてる場合やなかったっ!」

 そう思ったが、ここで考えてる暇はないと、再び駆け出し祭壇へと向かう。



 その頃クロノアはクルフと戦っていた。というか、全身ボロボロで傷だらけのクルフが地面に頭をつけクロノアに何やら訴えている。

 クロノアは困惑しながら、そんなクルフを見下ろしていた。

「ヒィッ、お願いですっ! どうかお許しを……」

 そう言いクルフはひたすら謝っている。

「え、えっと……。なぜこうなった?」

 そう思いクロノアはクルフとの戦いを振り返ってみた。


 そして時間は少しさかのぼり__クロノアが、杖をかざす。

 《ストーンバースト!!》

 そう魔法を唱えると、約半径二十メートルの地面がグラグラ揺れ始める。と同時にドンッドンッと大きな音がし地面から岩が突きでた。

 それを確認するとクロノアは杖をクルフに向ける。すると無数の突き出た岩が、勢いよくクルフ目掛け放たれた。

 クルフは自分に向かってくる無数の岩石を鎖鎌の鎖を大きく振りその先端についている鉄球で岩を弾く……と、その瞬間。
 その岩石がバァーンッと大きな音と共に弾けとんだ。

 それと同時にクルフは、無数の岩石の攻撃と爆発により呆気なくその場に倒れた。

『アチャー、やりすぎたかなぁ』

 クロノアはそう思い駆け寄りしゃがみ込みクルフを覗きみる。

『大丈夫かな? んー、息してるから心配なさそうだね。どうしようかなぁ、このままにはしておけないだろうし』

 そう思いこの城にくる途中の街で購入した回復薬を飲ませようとした。

 だがこのままの状態で回復させたらまずいと思い、拘束魔法を唱えようと杖をクルフに向ける。

 クルフは気絶していたが、クロノアが魔法を唱えてる間に目を覚ました。

 それと同時に、クロノアが自分に杖を向け魔法を唱えようとしていることに気づく。

 それをみたクルフは、トドメを刺されると思い泣きだす。そして、クロノアに謝罪し始めた。

 クロノアはクルフのその行動に困惑する。そして、拘束の必要がないと思い魔法を唱えるのをやめた。


 現在__クロノアは、クルフを見下ろしながら溜息をついていた。

「クルフだっけ、もういいよ。その代わり、色々聞きたいから、大人しくしててくれるかな?」

 それを聞いたクルフは目を輝かせる。

「はい、クロノア様。いえ、お姉さまっ! そう言っていただき凄く嬉しいです」

 一呼吸おき唾をゴクリと飲むと、再び話し始めた。

「下僕でも、なんでも構いません。どうかどうか、貴女さまにお仕えさせてくださいっ!」

 クルフはクロノアを見上げると、目をウルウルさせながらそう訴えかける。

 それを聞いたクロノは、一瞬「……」となったが、我に返り「えぇー」と驚き叫んだ。

 その反応をみたクルフは、ショックを受けガクッと肩を落とす。

「やっぱり、あたしみたいな落ちこぼれ、誰にも相手されないよね……」

「あ、ちょっと待って、そうじゃない、ただ驚いただけだよ。まさか、そんなこと言われると思わなかったから」

 クロノアはクルフに、勘違いさせてごめんと謝った。

「う、う……。ありがとうございます。お姉さま、あたしは貴女に一生ついていきますっ!」

 その後、二人は色々と話をする。

 ふとクロノアは、ハクリュウのことが心配になり南側の祭壇の方をみた。その時、祭壇で起きようとしていることに驚きその場で凍りつく。

 それをみたクルフは、どうしたのかと言いクロノアの体を揺すぶる。

 するとクロノアは我に返りクルフの方を向いた。

「ごめん、ありがとう。だけど、なんであんな武器がこの世界に……」

「それってどういう事?」

 クルフはクロノアが何をみてそう言ったのか分からなかった。それなので、クロノアのみていた方をみて納得する。

「なるほどです。確かにガインが持つ武器をみれば誰でも驚きますよねぇ。って、お姉さま今『あんな武器がこの世界に』と言いましたよね?」

「うん、言ったけど。それがどうしたの?」

「じゃ、あのガインの能力についても知ってるとか?」

 そう聞かれクロノアは、少し考えたあと口を開いた。

「んー、能力が何か分からないけど。ただ、私の知ってる武器にそっくりだっただけ」

「そうなのかぁ。だけどガイン大丈夫かな? あの能力、まだ未完成って聞いてたけど」

「えっ!? 未完成って……ちょっと、それ凄くまずいんじゃっ!」

 顔から血の気が引いていきクロノアは、今にも倒れそうだ。

「お姉さまっ!? だ、大丈夫ですかっ!」

 クルフは倒れそうなクロノアを抱え支える。

 そしてクロノアは、しばらく放心状態のままになり、クルフに介抱してもらうのだった。
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