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第三陣

⑨光の中に……

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 反乱は三日目に鎮火した。

 寄せ集めだった反乱軍の統制が不十分ではあったが、第三王子ガルデオンの勢力と、ジェイコブ率いる革命軍の活躍により、王城は最後は静かに落ちたそうだ。

 犠牲者は出たが、ほとんどの兵は次々と降伏して戦いは終わった。
 王と王族は全員捕縛され、それぞれ刑に処されることになった。

 新政権はガルデオンが王の座に、革命に参加した者達も、政権を運営するための重要なポストに就いたらしい。
 まだ生まれたばかり、荒削りな者達が集まった状態で、これから多くの混乱と衝突が予想される。
 ここからガルデオンがどう飛躍していくのかで未来は変わっていくだろう。
 もちろんレインズも公国を率いながら、今後は支えになっていくのだろうと思われた。




 俺はレインズの部屋の長椅子に座りながら、手元にある白い紙に記された文字を長い時間見続けていた。

 何度、何時間見ても変わらない。
 これは悪人リストだが、もう悪人達の名前は書かれていない。
 革命が起こっていた時は、元悪人達それぞれの活躍などが頻繁に表示されていたが、今は消えてしまった。
 大悪人である、レインズとガルデオンの名前が消えたのを最後に全ての名前が消えて、代わりに一文が記されているだけだ。


 悪人ポイント、理想値に達したため任務完了
 お疲れさまでしたー


 これを最初に目にした時は、半笑いしかできなかった。
 終わったのは喜ばしいことだが、もう少し言い方ってものがあるだろう。
 相変わらず神のやることは俺をイラつかせる。

 まあこれで、この世界を天変地異が起きて崩壊から守ることができた。
 つまり実感はないが、俺は世界を救うことに成功したということだ。

 任務は達成したが、俺にお呼びがかかることはなかった。
 この世界に、レインズのそばに残りたいと俺は願ったので、その願いが通じのだと俺はそう思っていた。


「リヒト、またそれを見ているのか?」

 いつの間にか、部屋に入ってきたレインズが隣に座ってきた。
 ふわりと頭を撫でられて俺が笑うと、目の下に軽くキスをされた。

「だってさ、今でもまだ嘘みたいで……」

「嘘ではないだろう。そこに書いてあることが全てだ。お前が世界を救ったんだ。少なくとも、俺はそう思っている」

 改めてそう言われると心臓がドキッとした。
 革命に関しては俺はほとんど関わっていないし、ガルデオンのこともレインズがいなければ成立しなかった。
 俺が救った、と言っていいのか分からないが、土台作りくらいは手伝えたのかもしれない。

「それに、リヒトは俺を救ってくれた。俺にとっては唯一無二のヒーローだ」

「そ、そんな風に言われると、照れるなぁ」

 真面目な顔で言われてしまうと、顔が綻んでしまう。憧れてはいたが、ヒーローなんて自分には似合わないと思っていた。
 レインズにとってのヒーロー、そうであるなら俺は十分満足で嬉しかった。




 俺がこの世界の人間ではないこと、それをレインズに話した時、レインズはしばらく無言で考えていたが、分かったと納得してくれた。

 もう少し何か質問でもされるものだと思っていたが、俺を信じるからと言われて全面的に受け入れてくれた。
 もともとこの世界の人間にはない魔力を感じたと言われてしまった。
 何か違和感のようなものは気がついていたらしい。
 受け入れたことで、レインズも悪人リストが見れるようになり、二人で何が起きているのか一緒に確認できるようになった。

 レインズに関しては魔力が半減したのでその分の影響力が減ったようだった。
 ガルデオンは魔力を得たことで心の安定も得たようだ。
 おそらくその事で二人の名前が消えるところも一緒に確認した。

 こうして俺の任務が完了したのだが、レインズの心配事はやはり俺が神に元の世界に連れて行かれてしまうということだった。
 しかし、しばらく経っても、俺がそのまま残っていたので、最近になってやっと安心したように力が抜けた表情になってきた。

「リヒト、本当にこの世界に残るということでよかったのか……? 今からでも神に願えば……」

「何度もそれでいいって言ったよ。俺はレインズの側にいたい。その願いをきっと叶えてくれたんだよ」

 言ってはみたものの、不安でたまらないという目をしたレインズに近づいた俺は、向かい合うように膝に座った。

「……それとも、俺が帰るって言ってもよかったの?」

「だめだ……、そんなの、絶対に許さない……。だけど、リヒトが望むなら……それを叶えてやりたい気持ちも……」

「レインズは優しいね。だから、俺、レインズが好きだよ。こんなに好きな人の元を、離れたら生きていけない」

「リヒト……、俺もだ。リヒトに帰ると言われたら、壊れてしまう……リヒトが消えたら……どこにいても俺は必ず……」

 レインズが喋り終わる前に、大丈夫だと安心させるようにレインズの唇に自分の唇を重ねた。

 そうするとレインズもまた俺に口付けを返してきて、それはだんだん深いものになっていった。

「……んっっ……はぁ、レインズ……今日はもう……王城へは行かなくても……いいの?」

「ああ、大丈夫だ。決め事はだいたい終わった」

 王や政権内部が交代してから、残務処理に追われてレインズはあちこちと走り回っていた。
 こんな風に、ゆっくり触れ合えるのは久しぶりで、一度触れ合ったらもうお互い止められなくなってしまった。
 お互い昂ったモノを擦り合わせながらキスを続けた。体は火のように熱くなってレインズを求めていた。

 まだ日も高く、柔らかな日差しが部屋を包んでいいた。明るい光の中でレインズも俺もキスをしながらお互いの服を剥ぎ取って生まれたままの姿になった。

 そのままベッドになだれ込んで、レインズは俺の体を隅々まで愛撫し始めた。

「ハァハァ……ハァ……んんっ……」

「リヒト、ここにもここにも、印を残してもいいか?」

「んっ……好きに……、いっぱい付けて」

 足の先から頭の先まで、レインズに愛されていないところはないというくらいキスをされた。
 その度にレインズは赤い花びらのような痕を残していく。
 どこもかしこも愛されているのだという証に見えて、嬉しくてたまらなかった。

 ついにレインズの舌が俺の後ろの蕾に到達してしまい、俺はビクッと体を揺らした。

「リヒト、今日はここを愛しても大丈夫だろうか……?」

「う……うん」

 悪人リストは消えてしまったので、もう俺の名器は機能しないだろう。
 こっちは何も感じないくらいだったので、ちゃんとできるかどうか、そんな心配が出てきてしまった。

 そんな俺のソワソワした態度を、レインズは足元で見ながらムッとした顔をしていた。

「……過去は問わない……つもりだが、妬けるものは妬ける」

「……え、……あっ、まっ……そんなところっ」

 レインズは俺の孔を丁寧に舐め始めて、指を使いながらゆっくりと広げてきた。
 懐かしい違和感と痛みがある。
 スキル名器は、すぐに臨戦態勢になったので、やはり元に戻っているのだなと分かったが、それはそれで恥ずかしいものがあった。

「んっ……くっ……は…ハァハァ……、あっ……あんんっ」

「ここが好きか? 今、きゅっと締まった」

「あっっ……そこ、きもち……いい」

 レインズは唾液を中に塗り込むように舌を入れて、丁寧に舐めて広げていく。俺は絶え間ない快感に身悶えしながら、早くレインズを受け入れたいと切ない目で見つめた。

 そんな俺を見たレインズは、ごくりとなどを鳴らした後、机に置かれていたオイルを手に取って、すでにガチガチになっている自身に塗り込んだ。
 何度見ても巨大に聳え立つソコに、俺もごくりと唾を飲み込んだ。
 大悪人として君臨していたのは、ソノ暴れん坊のおかげではと変な想像までしてしまった。

「リヒト、力を抜いてくれ」

「うん………」

 仰向けに寝ている俺の足を持ち上げて、レインズは後ろに自身をあてがってきた。
 ゆっくりと入り口をみちみちと広げながら、灼熱の杭が俺の中に挿入ってきた。

「はぁ……ハァハァ……はぁ……んは……うっ」

「大丈夫……か、半分は……」

 俺の様子を見ながら、ゆっくり挿れてくれるレインズが、嬉しかったが、今はもっと強く奪って欲しかった。
 俺は足を上げてレインズの腰に巻きつけた。

「きて、もっと深く……、俺を貫いて」

「くっ……リヒト」

 煽ってしまった自覚はある。
 堪えるように息を吐いていたレインズの目がギラリと光った。
 そうだその目だ。
 初めて会った時、そのギラギラと輝く黄金色に目を奪われた。
 思い返せばあの時に、俺はレインズに落ちてしまったのかもしれない。

「ぁぁっ、…………っん、アッ、ああああーーっっ」

 鳴らすようにゆるゆると動かしていたレインズは、一気に腰を沈めて俺を貫いてきた。

 尻の奥深くまでえぐられるような衝撃に、目の周りがチカチカと光るほど痺れてしまった。
 しばらくこのまま、じっとしておきたいくらいだったが、レインズの方は火がついたようで、すぐに律動を始めてしまった。

 押し広げられる感覚は久しぶりだし、今まで体験したことのないような圧迫感に苦しくなった。
 しかし、それも少しの間だけで、ナカを擦られる度に生まれてくる快感で、体はどんどん熱に覆われていった。

「はぁ……ハァっ、んんっ…ハァ、アッアッアッ……くっっ……んっはっ……アッ……」

 レインズの大きなベッドが軋むほど、激しく打ち付けられて絶え間ない快感の波に俺は喘ぎ続けた。
 一人翻弄されているみたいだったが、目を開けると情欲に燃え上がっているレインズの瞳と目が合った。
 レインズもまた、興奮してくれているのだと思うと、嬉しくてぎゅっと締め付けてしまった。

「ううっ…」

 イキそうになってしまったのか、堪える顔になったレインズが愛おしくて、ついクスリと笑ってしまった。

「何で悪い子だ。俺を弄ぶとは……。たっぷり注ぎ込んで、腹を満たしてやる」

「あっっ、……っんんっ、ちょっ……うっわぁっっ、やばっ……くるっ」

 レインズは俺の腹を押してきたので、外からも中からも擦られる感覚はヤバすぎて飛びそうになる。
 片方の手はしっかり俺のを握って愛撫してくるので、もう限界は近かった。

「ハァハァ……だめ……だめだって、も……でる」

「ああ、しっかり受け止めろ」

 バチバチと肉のぶつかる音を鳴らしながら、レインズの律動はいっそう激しくなった。
 俺は声ならない声を上げて、腰を持ち上げながら達してしまった。
 びゅうと勢いよく飛んだ白濁は俺の顔まで濡らした。
 レインズは俺の両足を掴んでぶつけるように腰を打っていたが、ピタリと止めた後、息を吐きながら中に放った。
 熱い飛沫を尻の奥で感じて、イッたばかりで敏感になっている俺は、声を上げて中のレインズを締め付けた。

「……っっ、リヒト。お前の後ろは嬉しそうによく動くな。俺のを飲み込んでいるみたいだ」

「や……やめ」

 ズルリと引き抜いたレインズは今度は俺をうつ伏せにした。
 後ろから胸の尖を掴んで指でつまんで擦ってきた。
 その刺激でゾクゾクとして声が漏れてしまう。

「今度はここを弄りながら、もっとリヒトを鳴かせてみよう」

「えっ……うわっ、もう!?」

 さすがの回復力でレインズのモノはすぐにまたガチガチになっていて、俺の中にズブズブと挿入ってきた。
 一度達しているので、中から溢れてきたものが、足に垂れてぽたぽたとシーツを汚していく。

「時間はたっぷりある。今まで我慢していた分、愛させてもらおう」

 素敵な言い方だが、魔力の少ない俺には連戦は明らかにキツい。
 すでにヘロヘロになってシーツに顔を押し付けたが、レインズの方はお構いなしにまた始まってしまったので、俺はヒィヒィと喘ぎ声だか苦し声だか分からないものを漏らし続けた。
 それは暗くなっても終わらず、一晩中愛されて揺さぶられ続けたのだった。




 まだ空が暗い朝方、俺は一度目を覚まして、枕元の水差しからコップに水を注いで喉を潤した。
 少し起き上がっただけだが、するりと手が伸びてきて、またレインズの懐に包まれてしまった。

 ずいぶん眠ったと思ったのだが、この温かさに包まれたらすぐに眠気がやってきた。
 目の前にあるレインズの寝顔はまだ幼い少年のようにも、力強い青年のように見えた。
 その頬に触れてキスをしてから、俺はまた目を閉じた。
 おはようのキスはどこにしようか。
 そんなことを考えながら……



『リヒト、リヒト、……楠木理仁』

 眠ったと思ったのに名前を呼ばれて意識が浮上した。
 そしてフルネームで呼ばれたので、完全に目が覚めてバッと起き上がった。

 そこはレインズのベッドの中、ではなく真っ白な石造りの西洋風の神殿みたいな場所だった。
 その景色が懐かしいと思うくらい、俺はずいぶんと長い間、異世界にいたらしい。

『遅くなってすまない。色々報告を上げなくてはいけなくてだな、呼び出すのが遅れてしまった。改めて、無事依頼を達成してくれたこと感謝している。ありがとう』

「あっ……ああ! お前っ、神か!! 今頃? 遅すぎだろう! というか、俺は……もう願いを……」

『……異世界に残りたい、という希望だな。悪いが、それは叶えられない』

「なっ……なんだって!?」

『契約は元の世界に戻すことだからな、もう結ばれてしまった契約だ。お前に不利なものではないし、履行しないわけにはいかないんだ』

「おっ……俺、報酬とか何もいらない! レインズの側にいたいんだ。お願い、お願いします」

『……力になれなくてすまない。最初の契約通りの報酬は与えるし、ここでの記憶は全て消える。それは向こうも同じだ。理仁のことは忘れるから、お互い苦しむことはない』

「そ……そんなっ」

 あまりのショックに俺は膝から崩れ落ちた。
 そんなのまるで長い夢だから忘れろと言われたみたいだ。実際には強制的に記憶を奪われてしまう。
 夢なんかじゃないと、膝を手で打って悔しさをぶつけた。

『……今までも同じように依頼された人間はいる。お前は、成敗の力を使わずに、唯一悪人ポイントを減らしたやつだ。力になってやりたい気持ちはある……、だが神は決められた奇跡しか起こせない』

「それは……どういう……」

『だが、人はどうだ? 自分で作り出したものであるが、人にはいつも驚かされる。そうだな、またここに来ることができたら……』

 どくどくと心臓に流れる血の音が俺の体を揺らしていた。
 全て終わってしまうという絶望と、よく分からないが神が示したわずかな希望が胸の中を駆け回る。

 それが奇跡だというなら起こしてみせる。

 俺は顔を上げて、唇を噛んだ。

 がんばれ、という声が聞こえた気がした。
 夢であって欲しくない。
 そう思った瞬間、まばゆい光に包まれて全て真っ白になった。






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