ハコ入りオメガの結婚

朝顔

文字の大きさ
上 下
7 / 19

⑦ 君塚家【客室ベッド】※※※

しおりを挟む
「はぁ……はぁ……ァァ………いっ………ぁあ……」

 体の奥で灼熱の塊が揺れる度に、とてつもない快感が体を突き抜ける。
 魂まで丸ごと溶けてしまうような熱は、絶え間なく解放を求めていて、こみ上げてきた快感に弾けたのを意識の向こうで感じた。

「ふふっ、今度はちょっとだけ出ましたね。ここを擦るとすぐにイってしまうから可愛いです」

「んっ……ぁぁっ、こっ……あれ……」

 ぼんやりした視界がクリアになっていき、薄明かりの下に佳純の顔が浮かんできた。
 興奮したように頬を染めて切なげに細めている目がなんとも色っぽい。
 そんな顔をして、なぜ俺を見下ろしているのかと思ってしまった。

「き……きみ……づかさ……これは……?」

 なんとか声を絞り出したら、ひどく掠れていて、ほとんどまともな発音が出てこなかった。

「ん? もしかして……、気がつきました?」

「は……はい、………えっ、ななっ何? おしり……え? はいって……!?」

 記憶が混濁していて、今自分がどんな状況なのか全く理解できない。
 ただ、まるで感じたことのないくらいの強烈な快感の波が下半身から押し寄せてきて、そこに目を向けたら驚きの光景に息を呑んでしまった。

「ここ、ですか? 反応が初々しくていいですね。でも、ここは、もうすっかり私の形になってしまいましたよ。だってもう、三日もしているのですから」

「へっ!? みみみ三日!?」

「あっ……だめ、だめです。今は動かないで、無理に抜こうとすると、傷ついちゃいます」

「えっ……あっ……あぁっ」

 ぼんやりしていた意識が完全に戻ってきた。体を引こうとしたら、動くなと言われたのでそのまま動きを止めた。
 辺りを見渡して見ると、そこは俺が逗留用に借りている客用の部屋だった。
 そしてベッドの上でライトに照らされて見えるのは、一糸纏わぬ姿の俺と佳純だった。
 ベッドに寝転んだ俺は足を開いていている状態で、お尻の後ろの孔には佳純の陰茎が挿入されていた。
 信じられない光景で、しかも尻の奥ではどくどくと絶えず何か、アレかソレが動いているので思わず声を漏らしてしまった。

「今、射精中なんです。すみません……、発情期のオメガの体内に挿入ると、フェロモンの影響でしばらく止まらないんです」

「しばらくって……どれくらい?」

「三十分……くらい? ですかね」

「さっ!? さっ………」

 もう、最後の方は声にならなかった。
 色んな状況と情報が一気に頭に雪崩れ込んできて、完全にオーバーヒート状態だ。
 何から整理したらいいか分からない。

「アルファの男性器には、挿入時にノットと呼ばれる根元が膨らむ部分があって、無理に引き抜こうとすると……」

「あっ…ああの、それは……分かりました」

 こんな状態なのにあれだが、そっちのリアルな話は置いておいて、なぜこんなことになっているのか最初から思い出すことにした。

 今何をしているかと言えば、セックスと言われるもので、一般的には愛する者同士が愛を交わす行為だ。
 俺の記憶の最後は、この部屋でキスを交わしたところ。
 なぜキスをしたかと言えば、佳純が俺の提案を受け入れてくれて、しかもビジネスではなく、ちゃんと気持ちのある関係にしたいと言ってくれた。

 それで、そういう事に………はそうなんだが
 その前に……三日間とは……

「あっ、俺……発情して……」

「よかった、そこを思い出していただけたんですね。無理やりしてしまったと思われたらどうしようかと思いました」

「そ、そんなっ、無理やりだなんて。俺は君塚さんがいいから……ぁ………んっっぁ」

 佳純の腕を掴んで誤解はしていないのだと訴えたら、中にいる佳純が急に大きくなって、そこがぐっと押される感覚に思わず声を上げてしまった。

「君塚さ……あんまり、おっきくしないで……」

「すみません……諒さんがあんまり可愛くて……」

 俺の顔の横に手をついた佳純は赤い舌を出して、ペロペロと俺の唇を舐めてきた。
 なんて卑猥な光景なんだと、胸が爆発しそうなくらいドキドキと揺れていた。
 どうしようかと思ったが、俺も応えるように舌を出した。
 ぴちゃぴちゃと音を鳴らしながら、お互いの舌を絡めて、こぼれ落ちた唾液まで佳純は舐めとっていく。


「んっ……んっ、はぁ……まっ……きみず……かさ……」

 発情の残りが刺激されて下半身に熱が溜まっていく。
 腹の上に水溜りのように溢れたモノを見て、驚いてしまった。

「三日って……ずっとこのまま?」

「ああ、それはですね。気を失うまですると、諒さんは寝てしまうので、その後お風呂に入れたりして、私も体を休めていました。諒さんは起きると、すぐに発情モードで私にしがみついて離れなくなるので、そうしたらまたベッドへ……の繰り返しですね」

「うわっ……ああ……俺はなんて……記憶が全然……」

「気になさらないでください。むしろこうやって諒さんと発情期を過ごせて、本当に嬉しく思っているんです。こんな風に心から、触れ合いたいと思ったのは初めてです。私の特性まで崩れてしまったのですから」

 ずいぶんと迷惑をかけてしまったらしい。
 考えたらあれはどうしたのかなど色々と浮かんでくるが、知るのが恐くて飲み込むことにした。

 こんな風に話している間も、俺の腹の中でどくどくと流れ続けているモノを感じるのだから、何と言っていいのか分からない。

「……それより、また君塚に戻ってしまうのは悲しいです」

「え?」

「ずっと、佳純と呼んでくれていたのですよ。私も諒と呼ぶと、すごく喜んでくれました」

「わ、私がですが!?」

 発情期のオメガは脳が快感に支配されてしまうので、動物的な本能で交尾することしか頭になくなってしまう。
 安定的な番関係のある者同士であれば、ある程度理性を保てると聞いたことがあるが、番のいないフリーのオメガは特にその状態に入りやすく、その間の記憶はほとんど残らない。
 この辺りのことは、学校のバース性の授業で誰もが学んでいることなので、佳純も知っているはずだ。
 それでも本当に悲しそうな顔をするので、胸がトクンと揺れてしまった。
 もっと無表情な人だと思っていたのに、こんなに豊かだったなんて知らなかった。

「………分かりました。今度からそう呼ばせていただきます。それで……あの、まだ……終わらない、のですか?」

 まともに話していながら、そこがドクドクと揺れる度に、小さな快感が止むことなく突き上がってくる。
 さすがに中がどうなっているのか不安になってきてしまった。

「あと……少しだけ、出してもいいですか? アルファの射精は長いですけど、最後に出し切る時に一番強烈な快感が訪れるんです」

「んっ、は……はい。でも、あの……お腹がぱんぱんになったら、どうしようかと……」

 三十分も出し続けられるなんて、どうなってしまうのかそれだけが心配になってしまった。

「大丈夫です。量はそんなに出ないので、毎回私がお風呂で掻き出して……」

「わーーー! もーいーです。分かりました」

 想像するだけで恥ずかしくなって、手で顔を覆った。
 綺麗にしてもらったのだから文句は言えないのだが、そんなところまで触れられるなんて、変なプレイみたいに思えて恥かしさしかない。

「それよりこうやって注ぎ込んでも、体の方は……」

「……はい、ご存じだと思いますが、抑制剤には避妊効果があって、効力が消えるのが二週間くらいで、普段から飲んでいますから、今回の行為では……おそらく子ができることはないです」

 発情期のオメガは最も妊娠しやすい時期だとされていて、この期間に精を受ければほぼ確実に妊娠すると言われている。
 しかし、フェロモンが関係しての望まない妊娠の可能性もあり、抑制剤には完璧ではないらしいが避妊の効果が取り入れられることになった。
 妊娠を希望する時は、それ用の薬が用意されている。
 三日間、どれだけの精を受けたか分からないが、今回のことで子ができる確率はほとんどないだろう。

「そこはあくまで私の望みだけですから、必ずそうして欲しいわけではありません。こうして、二人で甘い時間を過ごせるだけで十分です。祖母もきっと、諒のことを紹介したら、大喜びするに違いありません」

 さりげなく、諒と呼ばれて胸がドキッとしてしまった。
 私も早く会いたいですと言いながら、胸が高鳴ってしまった。
 佳純が俺の名前を呼んでわずかに頬を染めたので、それを見たら俺もカッと熱くなってしまった。

「佳純………んんっぁ」

 俺も呼びたいと思って名前を呼んだら、また中の佳純が大きく膨らんだ。
 圧迫感が増すのだと佳純の目を見て訴えようとしたら、佳純の顔が近づいてきて、また唇を奪われた。

 今度は鳥のキスのような、軽く何度も唇を合わせて遊んでいるようなキスで俺を翻弄してしまう。

「はっ……くっっ……諒、そろそろ……最後まで出したくなってきました」

「あ、んんっ……はい……」

 どうすればいいのか分からなくて、とにかく佳純の首に腕を回してしがみついた。

「な……まえ、呼んで………」

「佳純……」

「あっ……くっ………諒……んっ、うっっ!!」

「んっ………っっ」

 佳純は最後まで出し切ったようだが、今までにないくらい腸壁に大量の飛沫を感じて、俺もぶるりと震えた。
 ビクビクと腰を揺らしてしまい、まるで雄を体内に飲み込もうとしているかのようにぎゅっと佳純を締め付けた。

 しばらくそのまま動かずに二人で荒い息をしながら抱き合っていたが、むくりと起き上がった佳純が自身をズルリと引き抜いた。

「あっ……あっああっ」

 考えたくないが大量のナニカが溢れているのを感じて思わずぎゅっと目を閉じた。

 気持ち悪さなんて微塵もなかった。
 体内にあるものも、溢れていくものも愛おしく思えて、自分はどうなってしまったのか恐ろしくなった。

「諒さん? 大丈夫ですか? また眠くなってしまいましたか?」

「んっ……疲れた……」

「ふふふっ……はははっ、素直で可愛いなぁ。いいですよ、眠っても。またお風呂に入れてしっかり綺麗にしますから」

「あり……がと……佳純、………とう」

「さあ眠り姫、ゆっくり眠って。でも起きたら、今度はちゃんと覚えていてくださいね」

「ん………か………すみ、…………き」

 もう指一本動かすことができない。
 急速に収まっていく熱。
 発情期の終わりはいつもドロドロに眠くてたまらない。
 濃厚な暗闇に飲まれていくように、意識を手放した。
 最後に何か言ったような気がするのだけれど、考える間もなく、眠りの世界へ落ちていった。








 □□□
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

「恋の熱」-義理の弟×兄- 

悠里
BL
親の再婚で兄弟になるかもしれない、初顔合わせの日。 兄:楓 弟:響也 お互い目が離せなくなる。 再婚して同居、微妙な距離感で過ごしている中。 両親不在のある夏の日。 響也が楓に、ある提案をする。 弟&年下攻めです(^^。 楓サイドは「#蝉の音書き出し企画」に参加させ頂きました。 セミの鳴き声って、ジリジリした焦燥感がある気がするので。 ジリジリした熱い感じで✨ 楽しんでいただけますように。 (表紙のイラストは、ミカスケさまのフリー素材よりお借りしています)

後輩の甘い支配

ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)  「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」 退職する直前に爪痕を残していった後輩に、再会後甘く支配される… 商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。 そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。 その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げる。 2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず… 後半甘々です。 すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...