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第三章 母子草
落ち着かない心
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黄虎から少し離れた所で玄華は顔を作り、微笑みながら近付く。
「黄虎わざわざありがとう、気を遣わせてしまいましたね」
「伯母上っ」
席を立って会釈するが、黄虎の顔は曇っていた。玄華は不思議に思いながらも、手振りをして言う。
「お掛けになって」
「はい…」
二人は椅子に腰掛ける。
「体調が優れぬとお伺いしましたが、もしや祖母上に言われたことが…」
黄虎は伏し目がちに言葉を詰まらせた。
玄華ははっとして気付く。思い返せば、黄虎とは黄理のお見舞い依頼会っていなかった。あの時は一時落ち込んでいたが、黄怜のことで頭が一杯で、黄理の自室での事をすっかり忘れていたのだ。黄虎は思い詰める性格だ、その表情からしまったと自分の鈍感さに呆れ、額を叩こうと手を上げた。
「伯母上?」
「だっ大丈夫ですよ、気になさらないで」
玄華は虫を払った振りして手を下ろす。
「でもお顔色が優れぬようですが…」
「南宮領域で妖魔が災厄を起こしていると聞いて、民の心配をしていたのよ」
「実はその事ですが、父上の体調も回復されたので、私も南宮領域に応援に行って参ります」
「そうですか、黄虎がいれば皆も心強いわ」
「そう言っていただけるのは、伯母上だけですよハハハ」
従弟だけあって、その優しさは黄怜にも似ている。黄虎と話すことで、玄華は気持ちが明るくなるのだ。それを分かって、千玄は黄虎を通したのだろう。玄華は湯呑みを持ち、お茶を一口飲んで尋ねる。
「いつ発ちますの?」
「白虎家からは、磨虎と柊虎が先に向かっております。もう到着していると思われますので、私も急ぎ明日発ちます」
「どっ、どなたが行くか分かっていますの?」
「はい、蒼龍家からは蒼万が参ると報告を受けております」
玄華の予想が当たり、途中から黄虎の話し声が遠くなる。
「妖魔は数は多いようですが大物ではないらしく、既にあの二人が到着しているなら、退治は私が着く頃には終わっているでしょう、私は民を救う手助けができればと存じます。蒼万は十日程遅れっ」
「そっ蒼万は遅れるのですか?」
ゴトンッ
「うわっと…はい、伯母上?」
玄華は思わず湯呑みを指で弾き倒しかけ、黄虎がそれを掴んで玄華を見た。
「ごっごめんなさいっ、あっありがとう… こんな大変な時に蒼万は、何故遅れるのかと思って…」
玄華は苦笑いして誤魔化す。
「伯母上、妖魔を早く退治したいお気持ちは分かります。しかし蒼万の神力では… 退治よりも救済の方がよいかと…」
「そっ、そうですわね…」
「はい…」
「明日お発ちになるのね、あなたも無茶なことはせず、くれぐれも気をつけてね」
黄虎は妖魔に対し、玄華が神経質になっていると思った。
「伯母上私は大丈夫です。決して無茶などせず、行って様子を確認したら直ぐに戻ります」
玄華が微笑むと黄虎は安堵して、明日の支度があるからと自殿へ帰った。
黄虎を門まで見送り、千玄はまだ庭園で椅子に座っている玄華に近付き尋ねる。
「玄華様、黄虎様は何と?」
「明日、妖魔退治で南宮領域に発つそうよ」
玄華は空の湯呑みを両手で持っていた。
「そうですか…」
「蒼万は十日程遅れるそうよ…」
「…まさか?」
「いいえ大丈夫よっ!」
「しかし玄華様っ」
「千玄っ、蒼万は行けないのではなく、遅れるだけよっ」
言いながら、玄華は湯呑みを摩ったり握ったりする。
「発つ前に何かあったとしても、行けるということは問題無いということよ。黄怜を東宮に置いて行くとしても、その状況が安全だからよ。仮に…仮に何かあって一緒に連れて行くことになっても、蒼万達が着く頃には白虎家の二人に妖魔は退治されているわっ、そうでないと…」
いつになく玄華の動揺が激しい、千玄は何も言えず、黙って側に付いていた。
「黄虎わざわざありがとう、気を遣わせてしまいましたね」
「伯母上っ」
席を立って会釈するが、黄虎の顔は曇っていた。玄華は不思議に思いながらも、手振りをして言う。
「お掛けになって」
「はい…」
二人は椅子に腰掛ける。
「体調が優れぬとお伺いしましたが、もしや祖母上に言われたことが…」
黄虎は伏し目がちに言葉を詰まらせた。
玄華ははっとして気付く。思い返せば、黄虎とは黄理のお見舞い依頼会っていなかった。あの時は一時落ち込んでいたが、黄怜のことで頭が一杯で、黄理の自室での事をすっかり忘れていたのだ。黄虎は思い詰める性格だ、その表情からしまったと自分の鈍感さに呆れ、額を叩こうと手を上げた。
「伯母上?」
「だっ大丈夫ですよ、気になさらないで」
玄華は虫を払った振りして手を下ろす。
「でもお顔色が優れぬようですが…」
「南宮領域で妖魔が災厄を起こしていると聞いて、民の心配をしていたのよ」
「実はその事ですが、父上の体調も回復されたので、私も南宮領域に応援に行って参ります」
「そうですか、黄虎がいれば皆も心強いわ」
「そう言っていただけるのは、伯母上だけですよハハハ」
従弟だけあって、その優しさは黄怜にも似ている。黄虎と話すことで、玄華は気持ちが明るくなるのだ。それを分かって、千玄は黄虎を通したのだろう。玄華は湯呑みを持ち、お茶を一口飲んで尋ねる。
「いつ発ちますの?」
「白虎家からは、磨虎と柊虎が先に向かっております。もう到着していると思われますので、私も急ぎ明日発ちます」
「どっ、どなたが行くか分かっていますの?」
「はい、蒼龍家からは蒼万が参ると報告を受けております」
玄華の予想が当たり、途中から黄虎の話し声が遠くなる。
「妖魔は数は多いようですが大物ではないらしく、既にあの二人が到着しているなら、退治は私が着く頃には終わっているでしょう、私は民を救う手助けができればと存じます。蒼万は十日程遅れっ」
「そっ蒼万は遅れるのですか?」
ゴトンッ
「うわっと…はい、伯母上?」
玄華は思わず湯呑みを指で弾き倒しかけ、黄虎がそれを掴んで玄華を見た。
「ごっごめんなさいっ、あっありがとう… こんな大変な時に蒼万は、何故遅れるのかと思って…」
玄華は苦笑いして誤魔化す。
「伯母上、妖魔を早く退治したいお気持ちは分かります。しかし蒼万の神力では… 退治よりも救済の方がよいかと…」
「そっ、そうですわね…」
「はい…」
「明日お発ちになるのね、あなたも無茶なことはせず、くれぐれも気をつけてね」
黄虎は妖魔に対し、玄華が神経質になっていると思った。
「伯母上私は大丈夫です。決して無茶などせず、行って様子を確認したら直ぐに戻ります」
玄華が微笑むと黄虎は安堵して、明日の支度があるからと自殿へ帰った。
黄虎を門まで見送り、千玄はまだ庭園で椅子に座っている玄華に近付き尋ねる。
「玄華様、黄虎様は何と?」
「明日、妖魔退治で南宮領域に発つそうよ」
玄華は空の湯呑みを両手で持っていた。
「そうですか…」
「蒼万は十日程遅れるそうよ…」
「…まさか?」
「いいえ大丈夫よっ!」
「しかし玄華様っ」
「千玄っ、蒼万は行けないのではなく、遅れるだけよっ」
言いながら、玄華は湯呑みを摩ったり握ったりする。
「発つ前に何かあったとしても、行けるということは問題無いということよ。黄怜を東宮に置いて行くとしても、その状況が安全だからよ。仮に…仮に何かあって一緒に連れて行くことになっても、蒼万達が着く頃には白虎家の二人に妖魔は退治されているわっ、そうでないと…」
いつになく玄華の動揺が激しい、千玄は何も言えず、黙って側に付いていた。
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