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内緒のドリンクファイト 4
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おきて。
甘ったるい声が脳を揺さぶる。
はやく、あるくん、おきて。
起きてあげなくちゃなあ、と思う。けれど、最近はよく眠れている代わりに、眠気が抜けきらず身体が重たい。今もまるで押し倒されているような苦しさがあって、上半身を起こすこともままならない。
ちゅ、とリップ音が聞こえた。次いで、口内を何かがくすぐったく暴れる。息を吸うのがままならなくなって、助けを求めるように舌を絡ませた。触れ合っている部分が熱く、下腹部が悪い欲を持ち始める。もっと、と強請る内に意識がはっきりして、慌てて舌を引っ込めようとしたがもう遅かった。
開けた視界の先に、熱に浮かされた垂れ目があった。俺が起きたのを確認して、楽しそうに目元を緩める。行為を分からせるように、わざとらしく水音を立てて、互いの繋がりを深めた。
くぐもった嬌声を漏らしながら、されるがままにキスを受け入れた。今日は平日で仕事があるのに、彼との久しぶりの交わりを楽しんでいる自分がいた。
彼は満足したようで、もう一度リップ音を鳴らして離れていく。
「おはよう、ご主人クン!」
先ほどまで俺と繋がっていた場所は、出会った頃に近い、意地悪な笑みを浮かべていた。
「あれ、まだ足りなかった? ご主人クンはおれのメスだもんね~」
動けないままの俺に軽く唇を落とし、耳元に顔を寄せた。赤茶色が首や頬を優しく撫で、くすぐったかった。
「お仕事なのに、欲張りね。えっちなご主人クン」
「ひぅっ」
からかうように耳元に息を吹きかけられる。思わず喉から上擦った声が出て、引き出すように舌で耳の縁をなぞっていく。
「ぁ、だめ、しごっ、ぃかない、とっ」
「そうだよ、ご主人クンはお仕事行くの。おれが朝の準備手伝ってあげるね」
やけに聞き分けが良い、絶対何か仕組まれている。いや、そもそも何で家にいるのだろう。俺は鍵を閉めたし、彼に鍵を預けたりもしていない。
めいくんは俺の身体を引っ張り上げ、そのまま無理矢理歩かせた。覚束ないまま、エプロンのリボンがたなびく様を眺める。
「まずは、朝の処理からね」
「えっ!?」
えいっ、と軽い声掛けで、スウェットもパンツも下ろされた。背後に回られて、便器と向き合う形になる。
「キスだけでもう勃ってる~!」
彼の長い指先が、熱を持ち始めた先端をからかった。そのまま一本ずつゆっくりと陰茎を抱きしめていく。
「ぇ、ん、なんで……?」
「ご主人クンの専属メイドだもん」
楽しそうな吐息が首筋にかかる。空いていた手がシャツの裾から侵入し、乳首に掠った。
「そぉ、だめらってぇ。んッ……!? らめって、ばあ!」
下では高ぶりを扱かれ、合わせるようにきゅっと摘まんだり弾いたりと遊ばれる。服の中は見えないため、何をされるのか確認できない恐怖は興奮に変わっていく。
「ぁ、むりっ、いっちゃうっ……!」
「うんうん、おれの手の中でイっていいよ」
素早く上下に動かされ、胸の頂点を押しつぶされた。目の前が真っ白に弾け、訳も分からないまませり上がってきた精液を便器に吐き出した。
「たまにはめいくんが褒めてあげる。ご主人クン偉~い! 偉いから、おれからプレゼントを差し上げま~す」
乳首を弄んでいた指は皮膚を伝って降りていき、腹部にぴたっと吸い付いた。そのまま内臓を探るように、ぐっぐっと何度も押し込まれる。胎内とも違う部分が疼いていた。
「ふにふにのお腹で気持ち良い~。ず~っと押してるのも楽しいかも~。ほら、ぎゅ~ぎゅ~」
最初は何をしているのか、よく分からなかった。しかし、執拗に押し込まれる度に、快楽に似たくすぐったさがせり上がってくる。
彼によって導かれているものが、この場所に関係していると、もっと早く気付くべきだった!
「だめ、ほんとうにだめ、でちゃうから!」
「なにが~? めいくん分かんな~い」
とぼけるようにゆったりと扱かれ、また快楽に飲み込まれそうになった。喘ぎ声を漏らしながらも耐え、羞恥心で気がおかしくなりそうながらも、どうにか言葉を紡ぐ。
「お、おしっこ、でちゃうから……」
「ご主人クン、恥ずかしい?」
こんな状況、恥ずかしくない方がおかしい!
必死に頷き続ければ、あはは、と笑って腹部を押し込まれた。
「ほら、出しちゃえ! メイドのおれにされるがまま、恥ずかしい思いをして、一気に出しちゃえ~!」
「んっ、やだ、ほんとにやだ、やだ」
「快楽に弱いくせに、我慢してて可愛いね」
気を抜けば、漏らしてしまいそうだ。膀胱を刺激する振動に強弱をつけ始められた。何度も優しく押されると物足りなくて、無意識にめいくんの手に押し当てるように身体が動いた。
「うんうん、物足りないね~。じゃあ、次、強く押してあげる。そのタイミングで出したら、きっと射精と同じくらい気持ち良いよ~」
手を止めて、悪魔のような言葉を囁かれた。
きっと射精と同じくらい気持ち良いよ。
駄目だ。絶対に駄目だ。でも、めいくんに今までされたことが良くない欲望を焚きつける。俺は彼に支配されることを望んでいる。
「大丈夫、おれはどんな有クンも好きだよ」
たった一言で、脳がぐずぐずになった。じんわりと甘く溶かされて、期待するように腹部を責めるものに俺の手を重ねる。
「有クン」
熱っぽい声が俺を呼び、そのままきつく押し込まれた。ずっと刺激されていた膀胱は耐えきれず、通り道を擦るように勢いよく尿が飛び出た。一晩で溜まった分が抜けていくのは、たまらなく気持ちが良かった。俺の吐息とじょろじょろという音が混ざりあって、自分のどうしようもなさを痛感する。
「ね、気持ち良かったでしょ」
めいくんは偉いね~と言いながら、萎えた陰茎をウェットティッシュのようなもので拭き始めた。
「あ、ちゃんと肌に優しいやつだよ。ご主人クンの身体への配慮で~す」
「え、配慮……? 待って、なにしてるの!?」
「よし!」
便器にそれを投げ入れて、今度はピンク色の何かを取り出した。何に使うのかも分からない丸いリングを見せつけた後、下腹部に降りていく。
「意外と種類があって悩んだの~。おれのピンクか、ご主人クンの黄色か」
「俺の、黄色……?」
「ご主人クンのイメージカラー!」
それは俺の陰茎を通り過ぎ、陰嚢の裏に押されて根本にぴったりとはまる。続いて現れたものは、男性器に似ていた。
「でも、やっぱりおれの色がいいなって。だって、ご主人クンと一日一緒にいるものだし」
その筒は縁の近くには何カ所かと、頂点部分に一カ所穴が空いていた。ただ、頂点部分の穴は、透明なもので塞がれている。それはすっぽりと陰茎を多い、握り込んでいたパーツでリングと連結された。
「突貫で閉じたから、耐久性は不安なの……。うん、ご主人クンに似合ってる! おれの次にピンクが似合うかもね」
リングと筒を繋ぐパーツに針金が通り、南京錠を使って一つになった。
なにこれ。これがなんなのか分からないけど、絶対にろくでもないことだ!
「おしまい! 次は朝ご飯食べさせてあげる」
手洗ってくる~、といつもの気の抜けた口調でめいくんが去っていく。理解が追いつかないまま、その筒に触れた。プラスチックで下向きに固定されたそれは、ちょっとした振動を伝えるだけで、俺には何もすることが出来ない。本来なら空いていたであろう出口部分の穴に指で触れれば、突貫という言葉通りその部分だけ荒い凹凸がある。
何かをされたのは分かる。それは俺が苦しむことになる可能性が高いものだと思うし、自分ではどうにも出来ないことをされたのは分かる。でも、何かはまだ検討が付かない。
部屋の外から、遅刻するよ~と怒られ、慌ててそれらをパンツの中に仕舞った。ひどく窮屈で違和感があり、職場でバレたらどうしようかと心配になった。
これがなんなのか理解したのは、昼休憩の終わり頃だった。
今朝のスムージーとお粥も、弁当として食べることを強要されたポトフも、全部汁物だった。考えなしに飲んだブラックコーヒーが俺の身体を蝕んでいる。
職場の外に出て、急いでメッセージアプリを開く。通話マークをタップすれば、彼はすぐに出た。
「めいくん!」
「お昼ご飯は美味しかった?」
「めいくん!」
「あはは、美味しかったみたいだね」
スピーカー越しに、楽しそうな声が聞こえた。
「ご主人くんがいないと暇だよ~」
膀胱がきゅっと押し込まれた気がした。心なしか膨らんだお腹が言葉を荒くした。
「なんでこんなことをしたの!」
めいくんに取り付けられたものは、俺の排泄を阻害するものだった。出口塞がれているため、出してしまえば縁の空気穴から漏れて、周りを汚すだろう。だから、実質的に我慢する以外の選択肢がない。
聞いた途端に、スピーカーからはなんの音もしなくなった。画面を確認すれば、一応通話は繋がっていて、電波が悪いわけでもなかった。
どうしよう、怒鳴ったのが悪かったかもしれない。もしも彼が怒ったら、俺はこれを外してもらえなくなる。
一旦謝ろうかと思ったところで、う~、と子どものような呻き声が聞こえた。
「だってえ……。メイドじゃないおれを見られたのが恥ずかしくてえ~……。有クンの前では一番可愛いおれでいたいのにい……」
え。たった、それだけ?
彼が顔を赤らめて照れている姿が、すぐに想像できた。きっとあの可愛い表情で、こんな訳の分からないことを言っている。俺の理解が追いつかない部分に、今は触れている。
だから、と言った瞬間に声色は一転して、甘ったるい意地悪なものに変わっていく。
「ご主人クンも恥ずかしい思いをすれば相殺だよね~」
恥ずかしい思いをすれば、相殺……?
「いや、そんなことないよ……? そもそも私服のめいくんも」
「有クン。お腹の調子はどう? 普段は水分も全然取ってないのに、今日は朝からいっぱい摂取したでしょ。きっと身体が揺れるたびに、ちゃぷちゃぷって音が鳴っちゃうかも~。ねえ、おれの手の感触、まだお腹に残ってるんじゃない?」
その言葉で、ワイシャツ下にくっきりと彼の手の形をした熱が浮かび上がった。
「ほら、ぎゅ~ぎゅ~」
「っん……!?」
それは体内に染み込んで、直接膀胱を刺激した。苦しいのにくすぐったくて、今にも飛び出したがっている。
「おしまい。今日もお店で待ってるね」
「う、ん……」
口が勝手に返事をしていた。聞き届けるとすぐに通話は切られ、ただ膀胱の苦しさが増しただけだった。
甘ったるい声が脳を揺さぶる。
はやく、あるくん、おきて。
起きてあげなくちゃなあ、と思う。けれど、最近はよく眠れている代わりに、眠気が抜けきらず身体が重たい。今もまるで押し倒されているような苦しさがあって、上半身を起こすこともままならない。
ちゅ、とリップ音が聞こえた。次いで、口内を何かがくすぐったく暴れる。息を吸うのがままならなくなって、助けを求めるように舌を絡ませた。触れ合っている部分が熱く、下腹部が悪い欲を持ち始める。もっと、と強請る内に意識がはっきりして、慌てて舌を引っ込めようとしたがもう遅かった。
開けた視界の先に、熱に浮かされた垂れ目があった。俺が起きたのを確認して、楽しそうに目元を緩める。行為を分からせるように、わざとらしく水音を立てて、互いの繋がりを深めた。
くぐもった嬌声を漏らしながら、されるがままにキスを受け入れた。今日は平日で仕事があるのに、彼との久しぶりの交わりを楽しんでいる自分がいた。
彼は満足したようで、もう一度リップ音を鳴らして離れていく。
「おはよう、ご主人クン!」
先ほどまで俺と繋がっていた場所は、出会った頃に近い、意地悪な笑みを浮かべていた。
「あれ、まだ足りなかった? ご主人クンはおれのメスだもんね~」
動けないままの俺に軽く唇を落とし、耳元に顔を寄せた。赤茶色が首や頬を優しく撫で、くすぐったかった。
「お仕事なのに、欲張りね。えっちなご主人クン」
「ひぅっ」
からかうように耳元に息を吹きかけられる。思わず喉から上擦った声が出て、引き出すように舌で耳の縁をなぞっていく。
「ぁ、だめ、しごっ、ぃかない、とっ」
「そうだよ、ご主人クンはお仕事行くの。おれが朝の準備手伝ってあげるね」
やけに聞き分けが良い、絶対何か仕組まれている。いや、そもそも何で家にいるのだろう。俺は鍵を閉めたし、彼に鍵を預けたりもしていない。
めいくんは俺の身体を引っ張り上げ、そのまま無理矢理歩かせた。覚束ないまま、エプロンのリボンがたなびく様を眺める。
「まずは、朝の処理からね」
「えっ!?」
えいっ、と軽い声掛けで、スウェットもパンツも下ろされた。背後に回られて、便器と向き合う形になる。
「キスだけでもう勃ってる~!」
彼の長い指先が、熱を持ち始めた先端をからかった。そのまま一本ずつゆっくりと陰茎を抱きしめていく。
「ぇ、ん、なんで……?」
「ご主人クンの専属メイドだもん」
楽しそうな吐息が首筋にかかる。空いていた手がシャツの裾から侵入し、乳首に掠った。
「そぉ、だめらってぇ。んッ……!? らめって、ばあ!」
下では高ぶりを扱かれ、合わせるようにきゅっと摘まんだり弾いたりと遊ばれる。服の中は見えないため、何をされるのか確認できない恐怖は興奮に変わっていく。
「ぁ、むりっ、いっちゃうっ……!」
「うんうん、おれの手の中でイっていいよ」
素早く上下に動かされ、胸の頂点を押しつぶされた。目の前が真っ白に弾け、訳も分からないまませり上がってきた精液を便器に吐き出した。
「たまにはめいくんが褒めてあげる。ご主人クン偉~い! 偉いから、おれからプレゼントを差し上げま~す」
乳首を弄んでいた指は皮膚を伝って降りていき、腹部にぴたっと吸い付いた。そのまま内臓を探るように、ぐっぐっと何度も押し込まれる。胎内とも違う部分が疼いていた。
「ふにふにのお腹で気持ち良い~。ず~っと押してるのも楽しいかも~。ほら、ぎゅ~ぎゅ~」
最初は何をしているのか、よく分からなかった。しかし、執拗に押し込まれる度に、快楽に似たくすぐったさがせり上がってくる。
彼によって導かれているものが、この場所に関係していると、もっと早く気付くべきだった!
「だめ、ほんとうにだめ、でちゃうから!」
「なにが~? めいくん分かんな~い」
とぼけるようにゆったりと扱かれ、また快楽に飲み込まれそうになった。喘ぎ声を漏らしながらも耐え、羞恥心で気がおかしくなりそうながらも、どうにか言葉を紡ぐ。
「お、おしっこ、でちゃうから……」
「ご主人クン、恥ずかしい?」
こんな状況、恥ずかしくない方がおかしい!
必死に頷き続ければ、あはは、と笑って腹部を押し込まれた。
「ほら、出しちゃえ! メイドのおれにされるがまま、恥ずかしい思いをして、一気に出しちゃえ~!」
「んっ、やだ、ほんとにやだ、やだ」
「快楽に弱いくせに、我慢してて可愛いね」
気を抜けば、漏らしてしまいそうだ。膀胱を刺激する振動に強弱をつけ始められた。何度も優しく押されると物足りなくて、無意識にめいくんの手に押し当てるように身体が動いた。
「うんうん、物足りないね~。じゃあ、次、強く押してあげる。そのタイミングで出したら、きっと射精と同じくらい気持ち良いよ~」
手を止めて、悪魔のような言葉を囁かれた。
きっと射精と同じくらい気持ち良いよ。
駄目だ。絶対に駄目だ。でも、めいくんに今までされたことが良くない欲望を焚きつける。俺は彼に支配されることを望んでいる。
「大丈夫、おれはどんな有クンも好きだよ」
たった一言で、脳がぐずぐずになった。じんわりと甘く溶かされて、期待するように腹部を責めるものに俺の手を重ねる。
「有クン」
熱っぽい声が俺を呼び、そのままきつく押し込まれた。ずっと刺激されていた膀胱は耐えきれず、通り道を擦るように勢いよく尿が飛び出た。一晩で溜まった分が抜けていくのは、たまらなく気持ちが良かった。俺の吐息とじょろじょろという音が混ざりあって、自分のどうしようもなさを痛感する。
「ね、気持ち良かったでしょ」
めいくんは偉いね~と言いながら、萎えた陰茎をウェットティッシュのようなもので拭き始めた。
「あ、ちゃんと肌に優しいやつだよ。ご主人クンの身体への配慮で~す」
「え、配慮……? 待って、なにしてるの!?」
「よし!」
便器にそれを投げ入れて、今度はピンク色の何かを取り出した。何に使うのかも分からない丸いリングを見せつけた後、下腹部に降りていく。
「意外と種類があって悩んだの~。おれのピンクか、ご主人クンの黄色か」
「俺の、黄色……?」
「ご主人クンのイメージカラー!」
それは俺の陰茎を通り過ぎ、陰嚢の裏に押されて根本にぴったりとはまる。続いて現れたものは、男性器に似ていた。
「でも、やっぱりおれの色がいいなって。だって、ご主人クンと一日一緒にいるものだし」
その筒は縁の近くには何カ所かと、頂点部分に一カ所穴が空いていた。ただ、頂点部分の穴は、透明なもので塞がれている。それはすっぽりと陰茎を多い、握り込んでいたパーツでリングと連結された。
「突貫で閉じたから、耐久性は不安なの……。うん、ご主人クンに似合ってる! おれの次にピンクが似合うかもね」
リングと筒を繋ぐパーツに針金が通り、南京錠を使って一つになった。
なにこれ。これがなんなのか分からないけど、絶対にろくでもないことだ!
「おしまい! 次は朝ご飯食べさせてあげる」
手洗ってくる~、といつもの気の抜けた口調でめいくんが去っていく。理解が追いつかないまま、その筒に触れた。プラスチックで下向きに固定されたそれは、ちょっとした振動を伝えるだけで、俺には何もすることが出来ない。本来なら空いていたであろう出口部分の穴に指で触れれば、突貫という言葉通りその部分だけ荒い凹凸がある。
何かをされたのは分かる。それは俺が苦しむことになる可能性が高いものだと思うし、自分ではどうにも出来ないことをされたのは分かる。でも、何かはまだ検討が付かない。
部屋の外から、遅刻するよ~と怒られ、慌ててそれらをパンツの中に仕舞った。ひどく窮屈で違和感があり、職場でバレたらどうしようかと心配になった。
これがなんなのか理解したのは、昼休憩の終わり頃だった。
今朝のスムージーとお粥も、弁当として食べることを強要されたポトフも、全部汁物だった。考えなしに飲んだブラックコーヒーが俺の身体を蝕んでいる。
職場の外に出て、急いでメッセージアプリを開く。通話マークをタップすれば、彼はすぐに出た。
「めいくん!」
「お昼ご飯は美味しかった?」
「めいくん!」
「あはは、美味しかったみたいだね」
スピーカー越しに、楽しそうな声が聞こえた。
「ご主人くんがいないと暇だよ~」
膀胱がきゅっと押し込まれた気がした。心なしか膨らんだお腹が言葉を荒くした。
「なんでこんなことをしたの!」
めいくんに取り付けられたものは、俺の排泄を阻害するものだった。出口塞がれているため、出してしまえば縁の空気穴から漏れて、周りを汚すだろう。だから、実質的に我慢する以外の選択肢がない。
聞いた途端に、スピーカーからはなんの音もしなくなった。画面を確認すれば、一応通話は繋がっていて、電波が悪いわけでもなかった。
どうしよう、怒鳴ったのが悪かったかもしれない。もしも彼が怒ったら、俺はこれを外してもらえなくなる。
一旦謝ろうかと思ったところで、う~、と子どものような呻き声が聞こえた。
「だってえ……。メイドじゃないおれを見られたのが恥ずかしくてえ~……。有クンの前では一番可愛いおれでいたいのにい……」
え。たった、それだけ?
彼が顔を赤らめて照れている姿が、すぐに想像できた。きっとあの可愛い表情で、こんな訳の分からないことを言っている。俺の理解が追いつかない部分に、今は触れている。
だから、と言った瞬間に声色は一転して、甘ったるい意地悪なものに変わっていく。
「ご主人クンも恥ずかしい思いをすれば相殺だよね~」
恥ずかしい思いをすれば、相殺……?
「いや、そんなことないよ……? そもそも私服のめいくんも」
「有クン。お腹の調子はどう? 普段は水分も全然取ってないのに、今日は朝からいっぱい摂取したでしょ。きっと身体が揺れるたびに、ちゃぷちゃぷって音が鳴っちゃうかも~。ねえ、おれの手の感触、まだお腹に残ってるんじゃない?」
その言葉で、ワイシャツ下にくっきりと彼の手の形をした熱が浮かび上がった。
「ほら、ぎゅ~ぎゅ~」
「っん……!?」
それは体内に染み込んで、直接膀胱を刺激した。苦しいのにくすぐったくて、今にも飛び出したがっている。
「おしまい。今日もお店で待ってるね」
「う、ん……」
口が勝手に返事をしていた。聞き届けるとすぐに通話は切られ、ただ膀胱の苦しさが増しただけだった。
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