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水の都ルーセント編

フィール湖

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 エリアルの滝から半日。
 時刻はちょうど夕暮れ時。鮮やかな橙色は空を塗りつぶしていた。
 現在いる場所は第二大陸内で最大を誇るフィール湖。
 この湖には魔物は存在しておらず、普通の魚が多く生息していて、釣り放置勢の聖地だ。

「さて、今日はフィール湖の湖畔で野宿するぞ」
「りょかち!」
「準備しますね」
『なら私たちは獲物を狩ってくる』
『お肉がいいですね』
「頼んだ」

 カプリスとリーリスは野宿の準備を始め、ギルターとフィズリールは近くの森へと狩に向かった。
 俺もカプリスたちに交ざって野宿の準備をすることにした。

「釣りに行ってくるわ」
「あーい」

 三十分くらいで野宿の準備は完了し、俺は釣り具を取り出して岩場の方へ向かう。
 フィール湖の岩場は釣り師の間では有名なスポットで、有名な釣り師はここで最大500Mは稼ぐとか何とか。
 なぜかシーラカンスが釣れたりするからな。
 ・・・実は海とつながってたり? まあ、その辺は深く考えないでおこう。
 野宿で使う為に買った床几椅子に座り、竿を振って待機。
 掛かるまで本の続きでも読んでいよう。




 一時間位経っただろうか。
 キャンプ地の方でギルターの吠え声が聞こえた。
 現在の成果じゃゼロ。まあ、リアルじゃこんなもんか。
 糸を巻き取り、床几椅子をしまって皆の元へと戻る。

「あ、お帰りマスター」
「ただいま。なんも釣れなかった」
「さすがリアル! そんな簡単に釣れないかー」
「ギルたちはどうだ?」
『私達をなめるなよ主』
『イノシシ三頭狩って来ました!』

 二匹の後ろには普通のイノシシが三匹横たわっていた。

「さすがだ。俺は血抜きしてくるからカプリスとリーリスで夕飯の準備してくれ」
「あいさー」
「了解です」
「ギルとフィズは俺と来い」
『わかった』
『了解しました』

 夕飯を二人に任せて、二匹を連れて血抜きに向かった。



 二時間血抜きを行った後、イノシシをアイテムボックスにしまって戻るころには料理のいい匂いが漂っていた。

「あ、料理できてるよー! 今日はカレーにしてみました!」

 俺たちが戻ってきたのを確認したカプリスは、俺たちに手を振りながら満面の笑顔で言う。

「カレーか。野宿にはぴったりだな」

 そういえば野宿してるのにカレーは食べてこなかったな。
 俺が作ってたらポトフとかになってたし、カプリスに任せて正解だった。

「でもルウなんてあったか?」
「ルウなんてなくてもカレーは作れるのだ!」
「お前、そんな料理スキル高かったのか」
「にししー! 将来の夢はお嫁さんだかんねー! と言ってもシルファさんにチャットで作り方教わりながら作ったんだけどね」

 元気に笑うカプリス。
 そうか。シルファか。確かにあいつならルウを使わないカレーも作れそうだ。

「お嫁さんね。それは味を見てからだな」
「どうぞどうぞ」

 相変わらず笑顔のカプリスは器にご飯とカレーを盛って渡してきた。

「ありがとう」

 カレーを受け取り、展開されている床几椅子に座る。

「いただきます」
「めしあがれー!」

 スプーンで掬い、一口。

「お、美味いな」

 美味かったのでパクパクとカレーを放り込んでいく。

「お気に召したよーでなによりです! ほい、リーちゃん。あ、ギルちゃんとフィズちゃんはこっちねー」

 リーリスにカレーを渡した後、カプリスはギルターとフィズリールのために皿に盛りつけた魚と肉を渡す。
 ギルターは渡された瞬間バク付き始める。
 フィズは嘴を使って器用に食べ始めた。
 それを確認したカプリスも満足そうに笑って自分も食べ始める。

 二十分くらいで食べ終えた俺たちは各々のんびり過ごすことにした。
 俺は再び岩場の方へと向かう。
 欠けた月に照らされた湖畔を歩き岩の上へ。
 湖に映る月。
 静かな湖畔に吹く心地よい風。風によって揺らいだ水が反射する月光をきらめかせた。

 アイテムボックスから酒を取り出して呷る。

「ふぅ」

 タバコが欲しくなるな。

「・・・あるな」

 アイテムボックスから紙煙草を選択して取り出す。
 なんかの依頼で大量に確保したんだよなぁ。

「世界観的にちゃんとしたボックスってのはなんか違うする気がするけど。まあいいか」

 一本取り出して咥える。
 指の先に魔術で火を灯そうとしたところで、横から火を出された。
 そこにいたのはカプリス。

「サンキュー」
「どいたま」

 タバコに火を点けて吸う。
 久しぶりに吸うタバコはうまい。

「ふぅ・・・」
「タバコ吸うんだね」
「ああ。向こうでは結構な。臭い移るぞ」
「んや、親も吸う人だから気にしなくていいよ」
「あいよ」

 タバコを吸いつつ酒も飲む。
 健康に悪いコンビだが、落ち着くときにはこれが一番だと俺は思う。
 欲を言えばメンソール系のタバコがよかったかな。
 スッキリするし。

「ねえ、マスター」
「ん?」
「もしも帰れるとしたらどうする?」
「帰れるとしたらか」

 帰れたとしてもまた仕事に追われそうだな。

「多分普段通り仕事にいくんだろうよ」
「これだから大人はー。仕事仕事って夢がないねー」
「夢・・・ねぇ。そうだな。作家でも目指してみるのもありだな」
「お、いいじゃん! どんなの書きたい?」
「ファンタジー」
「そりゃまたなんで?」
「現実逃避のため」
「にはは! それは草生えますわ!」
「あたりまえだろ。あんな仕事仕事の毎日だったら非現実的なことに逃げたくもなるさ」

 いつも通りの日常よりも、非日常のほうが面白いに決まっている。

「大人って大変なんだね」
「お前ももう少ししたらこちら側だぞ」
「うへぇ・・・。うち専業主婦になりたい」
「今のご時世共働きが当たり前だからなぁ」
「あ、因みに結婚する気あるの?」
「まあ、あるっちゃあるな。相手なんていないけど」
「じゃあ、うちにしちゃいなよYOU!」

 俺の左腕に絡みつきもたれ掛かってくるカプリス。

「こっちじゃカッコいい見た目だけど、向こうじゃその辺にいるような見た目の男だぞ?」
「男は見た目じゃないのさ!」
「お、いいこと言うねぇ」
「にしし!」

 酒を一杯呷り、カプリスの頭をガシガシ撫でてやる。

「でも、俺なんかよりもいい男が見つかると思うぞ」
「そうかなー」
「そうだよ(便乗)」
「そのネタリアルで使う人初めて見た」
「俺の周り結構いるぞ」
「なにそれ楽しそう!」

 カプリスみたいに話の合う女の子が周りにいなかったので、なんか新鮮で楽しかった。
 彼女といるのはとても居心地がいい。
 好きかと聞かれれば、おそらく好きと答えるだろう。
 近いうちには答えを出さないとな。彼女に悪いし。

「さて、そろそろ寝るぞ」
「ういー」

 テントに戻り、お互いのテントの前まで来た。

「おやすみマスター」
「ああ、お休みカプリス」

 一言交わして俺はテントに入り、眠りについた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


お読みいただきありがとうございます!

カプリスは順調にノアの心に入り込んできていますね。
いいぞ! がんばれカプリス!

ってなわけで、感想、誤字脱字報告お待ちしております!
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