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風吹く星よ

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 早速、作業ロボを解体する。
暗視スコープを付けて、部屋の照明を落とした。
光に反応して、起動する装置が内蔵されている可能性があるからだ。
 まずは外装を外し、内装を露出させる。

「……ないようだね。照明を付けて」

 幸い、光に反応する装置はなかった。
安全のために部屋の外からサポートをお願いしている壱号に照明を付けてもらう。
暗視スコープを着用していても暗所での作業は難しい。


 暗視スコープを整備作業用に製作したゴーグルを取り替える。
このゴーグルはBSゴルゴン戦の報酬であるメカニックレンズを使用した特別製。
 装備すると、スキルの効果が上昇する。
フレスヴェルグ開発にも大活躍してくれた。


 作業ロボの頭脳であるコンピューターに問題があるプログラムがないか調べる。

「やっぱりあったね」

巧妙に偽装してあったが、まだまだ甘い。
 問題があったのは命令系統。
本来、使用者が最上位になるはずなのに、その上が設定されていたのだ。


 これでは僕じゃなくて、他人の命令を優先してしまう。
すぐに権限を削除し、僕が最上位になるように書き換えた。
 ついでに、壱号たちにも適用している人格の種を組み込んでおく。
いずれ、壱号たちのような個性が生まれるだろう。


 気になる点はまだある。
作業ロボのコンピューターにはすでにある命令が組み込まれていたのだ。
 その命令とはデータを収集し、外部に送信すること。スパイだ。
狙いは僕の技術だろう。


 僕が所持している技術にはヴィンディスの技術レベルを超えている物がある。
バッテリー技術やエネルギーシールド技術などのギングの技術。
ライフクリスタルなどのジーイフ、ジャンクスターの技術。
具体的に何が欲しいのかは知らないけど、こんな手段を用いる奴らには一つも渡すつもりはない。


 ソフト面のチェックは終了。
次はハード面のチェックだ。
 部品を一つずつ鑑定に掛けていく。
見たことがない部品は解析にも掛ける。


 偽装が施されているみたいで、鑑定はすり抜けられることもあったが、解析までは抜けられることはない。
部品の数が多いため、チェックには時間が掛かったが、これで安心して使用できる。
 部品の中には送受信アンテナがあった。
このアンテナでデータを送るつもりだったんだろう。


 さらに爆弾も仕掛けられていた。
外部から起爆できるタイプだ。
起爆される前には全ての作業ロボから爆弾を取り外す。


「さて、どうしてやろうか」

 このままやられっぱなしは性に合わない。
上位者権限は少しの嫌がらせで許してあげようと思うが、爆弾は許せない。
 取り付けられていた爆弾は安定性が低い物で、外部からの衝撃で爆発する恐れがあった。
こんなものを仕掛けるなんて、どういう了見をしてるんだろう。
万が一、変な場所で爆発したら被害者が出ているところだった。


 報復するには犯人を突き止めなくてはならない。
まだどこが犯人なのかはまだ分からないのだ。
 あの商会に影響力を持つのは統合軍だけど、国の可能性もあるし、商会が勝手にやった可能性もある。
これからそれを突き止める。


 コンピューターにはデータの送信先が残っている。
犯人はそいつに間違いない。
 暗号化されていたが、この程度ならすぐに解除できる。
アンテナの大きさと出力から推測すると、そんなに遠くではないはずだ。
クインシフのどこかに違いない。

「やっぱり統合軍か」

 場所は統合軍クインシフ基地。そこに併設されてある統合軍戦略研究所クインシフ支部。
まさか研究所だとは思ってもみなかった。
見たことがない形状のアンテナだったし、送受信できるアンテナはそこにしかなかったのかもしれない。


 統合軍が欲しがったのは僕の技術。
だったら、見せつけてやろう。僕のクラッキング技術を。
 使用するのは作業ロボに内蔵されていた送受信アンテナだ。
 研究所は外部からのサイバー攻撃を防ぐため、本来はオフラインになっているはずの場所だ。
だけど、このアンテナを使えば、侵入可能。こちらのデータを転送するために、回線がオープンになっていた。


 向こうが僕のデータを狙ったのなら、僕も統合軍のデータを狙う。
我ながら良い仕返しを考えたものだ。

「よし。侵入成功」

 ここまで行けば、あとは僕の思い通りだ。
 セキュリティーは外部からの攻撃に強くても、内部から攻撃には弱いことが多い。
一度内部に侵入できれば、自由に研究所のコンピューターを調べることができた。


 ここは研究所。
データ総量は膨大だ。
 全てダウンロードするのは現実的じゃないし、記録装置の容量の無駄になる。
有用なデータだけを選択して、頂戴することにした。


「選別終了。それじゃあ始めるとするか」

 マイグラントのコンピューターにデータをダウンロードを開始した。
選別したとはいえ、データ量は膨大。全てを転送するのにはかなりの時間を要する。
何時気付かれるのか分からないため、警戒しておく。
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