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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
20、冒険者ギルド
しおりを挟む冒険者ギルドに着いた俺達は、すぐに窓口に向かっていた。
ギルドカードを作りに来ただけだというのに、なんだか周りの視線が痛い。
まさかアレを入れていることがバレてる……?
心配でもう一度冒険者の方をチラリと見てみるが、そういうわけでも無さそうでホッとする。
そんな俺の後ろにはウルが立っていた。
たぶん俺のお尻を守っているつもりなのか、今日はずっと後ろにいる。
そのことがやはりおかしいと思っていると、元気な声が前から聞こえてきた。
「はい、じゃあこれがデオさんのギルドカードですよ!」
俺のギルドカードを作ってくれたお嬢さんが、元気にカードを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「えっと、デオさんはすでに説明は大丈夫なんですよね?」
「あ、ああ。ここにいるウルに聞いたので……」
ウルの名前を呼んだだけなのに、周りの冒険者から殺気が溢れた気がした。
なんだ、ウルは一体ここの冒険者に何をしたんだ?
「デオさんはウルさんのお知り合いなんですね!」
「一応そうなる」
「ウルさんがソロ以外でいるなんて初めて見たのですけど、どんな関係なんですか?」
ど、どんな関係!?
えっと、弟の身代わり……いや、エッチをした関係とか……?そんなの言えるわけがない。
困った俺は、ついウルを見てしまう。
それなのにウルは楽しそうに俺をニヤリと見つめるだけで、全く助けを出してはくれなかった。
「えっと、ウルは俺の手伝いをしてくれる仲間?ですかね……」
「成る程!デオさんはいかにも訳ありっぽいですもんね!」
「ええ……そう、見えますか?」
「はい!!」
そんな元気に言われても困ってしまう。
俺はこれでも追われている身なんだ。だからもっと目立たないよう生きていかないといけないのに……。
そう思っていたら、奥の部屋から若い男の職員さんが飛び出してきた。
「ウルさん!丁度良いところに来てくれましたね!!」
その男性は、小走りでこちらにくると俺の後ろにいるウルの手を掴んだ。
それなのにウルは何も言わずに男性を見つめていた。
もしかしてウルのやつ、機嫌が悪い?
「どうしても神級の方が一人いて欲しい会議がありましてね、今すぐに来てください!!」
「……なら、仕方がないね……デオ、俺は少し離れるけど絶対に約束した事は守ってね?」
あのウルが凄く嫌そうな顔をしていたけど、大人しく従っているなんて……。
やはり強いとは言え媚びは売るタイプなんだな。
そしてそのままウルはその男性職員に連れられて、奥の部屋に入っていった。
一人残さられた俺は、もう少しだけギルドのお嬢さんとお話しする事にした。
どうしても一つ気になる事があったのだ。
「あの、ウルって有名なんですか?」
どうもここにいる冒険者は、全員ウルの事を知っているようだった。でもウルはこの国をメインで活躍している冒険者という訳ではないはずだ。
それなのに何故?
「ええ!知らないで連れてるんですか!?」
「いや、連れてるというか着いてきているというか……」
「ウルさんはこの国の冒険者ギルド最強の男と呼ばれているんですよ!」
「えぇ!?あのウルが……」
確かに、人外と言える強さを持っているのは分かるけど、そこまで強いとは思っていなかった。
これなら、俺が手も足もでないわけだ。
「だからウルさんを引き抜こうとしているパーティーは多いんです」
「だから、あんなにギラギラした目でウルを見ている人が多かったのですね……」
そう思いチラリとまた冒険者達を見たが、何故かいまだにこちらを見ているように思える。
「うーん、今はウルの相棒であるあなたを見極めてる人達の方が多いので……ウルさんが戻ってくるまでは気をつけた方がいいですよ?」
「ああ、成る程。親切ありがとうございます。それならウルを待つのにふさわしい場所はありますか?」
「でしたら、今は一つ空き部屋があるのでそちらでお待ちください!会議が終わったらウルさんにそちらに行くように伝えておきますね!」
「なにから何まで本当にすみません」
頭を下げる俺を見て、ギルドのお嬢さんは笑顔で俺に鍵を渡してくれた。
だから俺は素早くその部屋に移動して、鍵を閉めたのだった。
それから暫く一人でいると、何もしていないせいなのか自分に取り付けられた。バストアップスライムキットと、スライムの振動するオモチャの存在が気になってしまったのだ。
くそ、さっきまで全く気にならなかったのに……こんなところで疼き出すなんて。
でも今は俺一人だし少し触るか……なんて考えてしまった俺は防具を外してしまった。そしてその下には結構ピッチリした服しか着ていない。
だからこそ今の状態がしっかりわかってしまい、俺は誰もいないのに恥ずかしくなってしまう。
それを隠そうと服を伸ばしたのに、さらに乳首はピンと立つのが目立ってしまう。そしてズボンからは布を押し上げるように、それがしっかり立っているのが傍目にわかる。
とりあえずこれだけでもどうにかしようと思ったそのとき、ガチャリと鍵が開く音がして俺は焦る。
ウルが来たのか?と、乳首と股間を隠すように俺は椅子に深く座り直して、失敗したと気がつく。
おもちゃの振動が先程よりもわかりやすくなってしまったのだ。
「お、本当にこんな所に一人でいやがったぜ!」
そして部屋から入ってきた男達を見て、俺は絶望してしまった。
そこにいたのはウルではなく、先程受け付けの近くで俺を睨んでいた一つの冒険者パーティーだったのだ。
ー ー ー ー ー
次回モブレっぽい描写のある微エロになりますので一応注意です!
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