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47 罪と罰(上)
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クソ、やられたな。
「安宿なんか使うんじゃなかった。この穴、見てみろよ」
「え!?」
ミイナも穴を覗き込む。
あれ……?
と、ミイナが何かに気づいたらしい。
「……その、穴の向こうなんですけど、部屋の隅に三角座りをするクオンがいました。とても落ち込んでるみたいです」
俺が見た時には気づかなかった。
まさかあいつ、隣の部屋に居て俺とミイナが激しいセックスをするのを見てたのか?
「深刻なダメージを負ってるみたいですね」
俺も気になってもう一度穴を覗く。
クオンは本当に部屋の隅で小さくなって体操座りをしている。
あまりに隅の方にいるので初見では気づけなかった。
奴は「あー」とか「うー」とか「嘘だ」などと呟いており、額からは血を流していた。
――もしかして、ミイナに掃除させてる時に聞こえてきた壁ドンって、クオンの頭突きだったのか?
よほど見たくなかったんだろうな。
だったら見なければ良かったのに。
愛する女の裸を見るとは、許せない奴だな。
「……衛兵に訴えても証拠がないから厳しいでしょうね」
だから泣き寝入りをしろと? 冗談じゃない。
「あいつには今から罰を与える。その為に、少し待っててくれないか」
「え? 分かりましたが」
俺は宿屋に事情を話し、この後の協力を依頼した。
金貨の詰まった革袋と引き換えにして。
俺はすぐに部屋に戻り、ミイナにも協力を頼んだ。
俺の愛する女の裸を見てそのまま帰す程、俺は甘くない。
俺がクオンに実行する罰を聞くと、部屋の隅で置物と化していたリリカが控えめに口を挟んできた。
「あの、タクマ様……。クオンはもう、十分に罰は受けたと言えるんじゃないですか? 正直、元恋人のあんなところを見たらショッキングすぎると思います」
「――モトコイビトジャナインデ」
「ヒィ!?」
ミイナが過去最速の言葉をリリカに叩きつけた。
超一流魔術師の詠唱でもここまで速くはないだろう……。
それだけ、聖女の逆鱗に触れたということだ。
「ハモンデス」
「ヒィィィィ!? ごめんなさい! ごめんなさい! もう許してください!」
「えいっ」
ミイナが笑顔のデコピンをリリカに決めて、手打ちとなった。
「俺は全く足りないと思うが」
「ええええ!?」
リリカが驚いてる。ああ、誤解させたか。
「クオンのことだよ。あいつには全然、罰が足りてない。この覗き穴だが、クオンが空けたものだぞ」
鑑定をしたのですぐに分かった。
あいつは他人の情事を覗き見る為に、俺達が行為に没頭してる間に卑劣な犯罪行為を働いたということだ。
「で、ですが……あの、ミイナ様、私は発言しても……?
「思う存分、タクマと話し合ってください。私はタクマを信じてるので、反対意見が出たくらいで目くじらは立てませんよ? 簡単に怒る人って、余裕がないんだと思います」
「あっ、ハイ」
リリカは複雑な所感を抱いたようだった。まだ若いのに大変な苦労をしてるな、このメイドは……。
「リリカ、思うところを話すといい」
「ええとですね、私、クオンはもう十分に罰を受けたと思うんです。だって、自分が好きになった人が他の男に抱かれてるところとか、見たら凄いショックだと思いますもん! だから、もう罰は十分に――」
「ヌルいんだよ」
リリカに厳しく言ってやる。
「あいつは俺が最も大事にしているモノを許可なく見たんだ。卑劣にも、覗き穴を作ってまでな。あいつには自分が最も見たくないであろうモノを直視させる必要がある。そうすることで、あいつの記憶を上塗りし、罰を与えたことにできるからだ」
「でも――」
「リリカの優しい気持ちは分かる。クオンは十分傷ついた。だからもう許してやれというのだろう? 俺が今からやるのは最低なことだ。もし直視できないなら隣室で休んでるアクアスの元に行っても構わない。この一件で、俺からレイナ姫に報告することは何もない。お前が今回の俺の行為を見なかったことで、不利益を被ることはないんだ」
「…………」
「リリカ、クオンが今受けている痛みは、他人から与えられたものなのか? 違うだろう。あいつが勝手に失敗し、受けただけの痛みだ。だがな、もしリリカが本当にクオンのことを思うのなら、寧ろあいつには贖罪の機会を与えるべきなんだよ。罪にはそれに応じた罰が必要なんだ。何故なら贖罪を果たさない限り、どんなに風化しても罪自体が消えることはないからだ。あいつは今日の覗き見を一生負い目にすることになる。誰にも責めてもらえないからだ。そんなことで、クオンがこの先まっとうに生きていけると思うか? 確かにあいつは今日、全部を失うかもしれない。でも、この覗き見という卑劣な罪についてだけは、贖罪する機会を得るんだ。それは、この先の人生で絶対に無駄じゃないはずだ」
リリカは黙って聞き入っている。
「俺だってクオンには同情するさ。確かにクオンは『鼻水を垂らしながらヨガリ狂い』、『子種を求めて脚を無様にホールドし』、『さらにはパイズリで胸を蹂躙され』、『お掃除フェラを三回も行う』最愛の人の姿を見た。それを以って罰が与えられたと考える者もあるだろう。だがな、それはただの不幸であって、罰ではないんだ。そこを履き違えたら何にもならないぞ」
罰は他者から与えられなければ意味はない。
だから、俺は与えてやるのだ。
クオンに、罪を償う機会を……。
リリカは俺の意見が変わらないことを知ると、ただ俯いて黙った。
大人しく俺の判断を見守るという事だろう。
「部屋は、出ないんだな……」
「見届けさせてください。タクマ様の言う正しさを……」
「分かった。なら、そこで見ていろ」
そう言って、俺はミイナを抱き寄せた。
「安宿なんか使うんじゃなかった。この穴、見てみろよ」
「え!?」
ミイナも穴を覗き込む。
あれ……?
と、ミイナが何かに気づいたらしい。
「……その、穴の向こうなんですけど、部屋の隅に三角座りをするクオンがいました。とても落ち込んでるみたいです」
俺が見た時には気づかなかった。
まさかあいつ、隣の部屋に居て俺とミイナが激しいセックスをするのを見てたのか?
「深刻なダメージを負ってるみたいですね」
俺も気になってもう一度穴を覗く。
クオンは本当に部屋の隅で小さくなって体操座りをしている。
あまりに隅の方にいるので初見では気づけなかった。
奴は「あー」とか「うー」とか「嘘だ」などと呟いており、額からは血を流していた。
――もしかして、ミイナに掃除させてる時に聞こえてきた壁ドンって、クオンの頭突きだったのか?
よほど見たくなかったんだろうな。
だったら見なければ良かったのに。
愛する女の裸を見るとは、許せない奴だな。
「……衛兵に訴えても証拠がないから厳しいでしょうね」
だから泣き寝入りをしろと? 冗談じゃない。
「あいつには今から罰を与える。その為に、少し待っててくれないか」
「え? 分かりましたが」
俺は宿屋に事情を話し、この後の協力を依頼した。
金貨の詰まった革袋と引き換えにして。
俺はすぐに部屋に戻り、ミイナにも協力を頼んだ。
俺の愛する女の裸を見てそのまま帰す程、俺は甘くない。
俺がクオンに実行する罰を聞くと、部屋の隅で置物と化していたリリカが控えめに口を挟んできた。
「あの、タクマ様……。クオンはもう、十分に罰は受けたと言えるんじゃないですか? 正直、元恋人のあんなところを見たらショッキングすぎると思います」
「――モトコイビトジャナインデ」
「ヒィ!?」
ミイナが過去最速の言葉をリリカに叩きつけた。
超一流魔術師の詠唱でもここまで速くはないだろう……。
それだけ、聖女の逆鱗に触れたということだ。
「ハモンデス」
「ヒィィィィ!? ごめんなさい! ごめんなさい! もう許してください!」
「えいっ」
ミイナが笑顔のデコピンをリリカに決めて、手打ちとなった。
「俺は全く足りないと思うが」
「ええええ!?」
リリカが驚いてる。ああ、誤解させたか。
「クオンのことだよ。あいつには全然、罰が足りてない。この覗き穴だが、クオンが空けたものだぞ」
鑑定をしたのですぐに分かった。
あいつは他人の情事を覗き見る為に、俺達が行為に没頭してる間に卑劣な犯罪行為を働いたということだ。
「で、ですが……あの、ミイナ様、私は発言しても……?
「思う存分、タクマと話し合ってください。私はタクマを信じてるので、反対意見が出たくらいで目くじらは立てませんよ? 簡単に怒る人って、余裕がないんだと思います」
「あっ、ハイ」
リリカは複雑な所感を抱いたようだった。まだ若いのに大変な苦労をしてるな、このメイドは……。
「リリカ、思うところを話すといい」
「ええとですね、私、クオンはもう十分に罰を受けたと思うんです。だって、自分が好きになった人が他の男に抱かれてるところとか、見たら凄いショックだと思いますもん! だから、もう罰は十分に――」
「ヌルいんだよ」
リリカに厳しく言ってやる。
「あいつは俺が最も大事にしているモノを許可なく見たんだ。卑劣にも、覗き穴を作ってまでな。あいつには自分が最も見たくないであろうモノを直視させる必要がある。そうすることで、あいつの記憶を上塗りし、罰を与えたことにできるからだ」
「でも――」
「リリカの優しい気持ちは分かる。クオンは十分傷ついた。だからもう許してやれというのだろう? 俺が今からやるのは最低なことだ。もし直視できないなら隣室で休んでるアクアスの元に行っても構わない。この一件で、俺からレイナ姫に報告することは何もない。お前が今回の俺の行為を見なかったことで、不利益を被ることはないんだ」
「…………」
「リリカ、クオンが今受けている痛みは、他人から与えられたものなのか? 違うだろう。あいつが勝手に失敗し、受けただけの痛みだ。だがな、もしリリカが本当にクオンのことを思うのなら、寧ろあいつには贖罪の機会を与えるべきなんだよ。罪にはそれに応じた罰が必要なんだ。何故なら贖罪を果たさない限り、どんなに風化しても罪自体が消えることはないからだ。あいつは今日の覗き見を一生負い目にすることになる。誰にも責めてもらえないからだ。そんなことで、クオンがこの先まっとうに生きていけると思うか? 確かにあいつは今日、全部を失うかもしれない。でも、この覗き見という卑劣な罪についてだけは、贖罪する機会を得るんだ。それは、この先の人生で絶対に無駄じゃないはずだ」
リリカは黙って聞き入っている。
「俺だってクオンには同情するさ。確かにクオンは『鼻水を垂らしながらヨガリ狂い』、『子種を求めて脚を無様にホールドし』、『さらにはパイズリで胸を蹂躙され』、『お掃除フェラを三回も行う』最愛の人の姿を見た。それを以って罰が与えられたと考える者もあるだろう。だがな、それはただの不幸であって、罰ではないんだ。そこを履き違えたら何にもならないぞ」
罰は他者から与えられなければ意味はない。
だから、俺は与えてやるのだ。
クオンに、罪を償う機会を……。
リリカは俺の意見が変わらないことを知ると、ただ俯いて黙った。
大人しく俺の判断を見守るという事だろう。
「部屋は、出ないんだな……」
「見届けさせてください。タクマ様の言う正しさを……」
「分かった。なら、そこで見ていろ」
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