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【オマケの王都散策事情④】
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「出来ることはないかもしれませんが俺口だけは回りますから。国民が俺の事御使い様だって言うなら、信じてくれているのなら、気持ちだけでも楽にさせることが少しは出来ると思います。
感染しないよう最大限に注意を払うので案内してください」
前髪越しでもフィルドが驚いた眼をしたことが気配で分かった。
「絶対うつっちゃ駄目だからね。今はフカミちゃんカグウの小姓なんだから何かあったら俺がカグウにしばかれるんだからね」
やっぱりカグウも、その親衛隊も、泣きそうになるくらい優しい。
本当なら自分には関係のないこの国で、ほぼ傾きかけた国なのにそれでもここに居たい、力になりたいと思うのはきっとそんな人たちの影響のせいでだと深海は思った。
ブラックタッグの収容所も建物の外見は他の収容所と変わらない。
中に入る時深海はこれ以上ない位に緊張した。
自分が考えた死に場所で死んでいく者たちと対面するからだ。
血液すら冷える思いを感じたが何時の間にかフィルドが背中を擦ってくれており、その熱がじんわりと血管を伝わり深海の体を温める。
「大丈夫です、行きます!」
扉を開ける。
躊躇なく深海は中へ入った。
「フィルド様!御使い様まで!!」
修道女が2人の姿を見て驚愕の声を上げる。
まさかこの死の収容所に訪問者、しかも王の側近がやってくるなんて思いもしなかったのだろう。
「皆さん体調はいかがですか?痛みは、苦しみは少しでもマシでしょうか?俺はここから先には進めません。でも、俺が提案した終の棲家で命を終わらせることをさせてすみません。
俺が皆さんの終の棲家を決めてしまって、病気を治すことが出来なくてすみません」
皆の視線が深海に集まる。
(泣いちゃダメだ!!堪えろ!!!)
死に行く者の視線が怖くて深海は顔を上げられない。
「御使い様、貴方のお陰で我々は苦しまず逝けます」
「貴方の薬のお陰で私たちは今とても穏やかです」
「糞尿と腐った臓物の溢れかえった道端で私たちは死ぬはずでした。でも今は柔らかいベッドで清潔なシーツに包まれ雨に濡れず風にも吹かれず安らかに逝けるのです。
我々がこの病気を持って逝きます。
御使い様、どうか王様のお傍に何時までも居て下さい。カグウ王の傍で、この先も私たち家族を、友人を守って下さい」
眠たそうな虚ろな目で死に行く者たちは深海を見ていた。
決して不幸でないと思っている安らかな目だった。
誰にも罵声を浴びせられることなく深海は収容所を出た。
深海はミホクにケシの実を集めてくれと頼んでいた。
死に行く者が苦しまないように。
アヘンを作り出した。
アヘンはモルヒネなどを含む代表的な麻薬の一種だ。
ケシ科のケシの花が散ってから約10日後、果(さくか)が未熟なうちに特殊なナイフで縦に浅く切り傷をつけ、にじみ出てきた乳液がしばらくして固まってくると、これをへらでかき取って集め、弱く加熱乾燥させたものがアヘンである。
これを塊状としたものが生アヘンであり、この生アヘンを粉末とし、モルヒネの含有量を9・5~10・5%に調整したものが日本薬局方のアヘン末である。黄褐色ないし暗褐色で特異なにおいがあり、強い苦味を有する。
アヘンは中枢神経を麻痺させ、鎮静、鎮痙、鎮痛、鎮咳、止瀉、催眠および麻酔補助の目的で使用される。
効果はモルヒネと同様であるが、作用は緩やかで遅い。
副作用として悪心、嘔吐、頭痛、めまい、便秘、皮膚病、排尿障害、呼吸抑制、昏睡など慢性中毒をおこし、廃人同様になる。
その感受性は個人差が大きい。
だが廃人になるほどの時間は患者には残されていない。
きっと心地よく逝けるだろう。
だが地球では戦争すら起こすほどのモノを作り出してしまった怖さが深海にはあった。
これが王都に蔓延すれば深海が来た時以上にカカンは崩れていただろう。
だからアヘンだけはミホクにも手を出させなかった。
心配するのはブラッグタッグの収容所で介護をしている者たちがアヘンに興味を気をひかれないかだ。
神に仕える者として麻薬には手を出してほしくない。
その旨はカグウに頼み込んで大司教に伝えて貰っているのだが。
「大丈夫だってフカミちゃん。大司教はカグウに心酔しているから言いつけは必ず守られるよ。フカミちゃんが危惧するようなことはカグウが起こさせないから安心して良いんだよ」
フィルドが深海の頭を撫でる。
「今覗きましたね?」
「てへ、ゴメンね~フカミちゃんがあんまり悲痛な顔してるから」
「勝手に覗いた罰として少し路地裏で胸を貸して下さい」
「いいよ~俺の胸堪能してね♡」
その言葉は軽薄な様で今の深海にはありがたかった。
約束通り路地裏で胸を借りて深海はこの世界に来て初めて泣いた。
多分相手がフィルドでなかったら引きそうなほどわんわんと大泣きした。
15歳にもなってこんな風に泣くのは恥ずかしかったが深海の背中に回されて抱きしめてくれるフィルドの右腕と頭を撫ぜてくれる左手の体温を感じて「泣いて良いんだよ」とフィルドがそんな仕草で甘やかすものだから深海は30分も泣き明かした。
腫れた目はフィルドが回復魔法で治してくれた。
異世界に落ちたことは幸運なことではなかったけど、こんな風に自分は優しくされているのだと感じるたびに深海はこの世界が少しずつだが愛おしくなっていくのを感じていた。
感染しないよう最大限に注意を払うので案内してください」
前髪越しでもフィルドが驚いた眼をしたことが気配で分かった。
「絶対うつっちゃ駄目だからね。今はフカミちゃんカグウの小姓なんだから何かあったら俺がカグウにしばかれるんだからね」
やっぱりカグウも、その親衛隊も、泣きそうになるくらい優しい。
本当なら自分には関係のないこの国で、ほぼ傾きかけた国なのにそれでもここに居たい、力になりたいと思うのはきっとそんな人たちの影響のせいでだと深海は思った。
ブラックタッグの収容所も建物の外見は他の収容所と変わらない。
中に入る時深海はこれ以上ない位に緊張した。
自分が考えた死に場所で死んでいく者たちと対面するからだ。
血液すら冷える思いを感じたが何時の間にかフィルドが背中を擦ってくれており、その熱がじんわりと血管を伝わり深海の体を温める。
「大丈夫です、行きます!」
扉を開ける。
躊躇なく深海は中へ入った。
「フィルド様!御使い様まで!!」
修道女が2人の姿を見て驚愕の声を上げる。
まさかこの死の収容所に訪問者、しかも王の側近がやってくるなんて思いもしなかったのだろう。
「皆さん体調はいかがですか?痛みは、苦しみは少しでもマシでしょうか?俺はここから先には進めません。でも、俺が提案した終の棲家で命を終わらせることをさせてすみません。
俺が皆さんの終の棲家を決めてしまって、病気を治すことが出来なくてすみません」
皆の視線が深海に集まる。
(泣いちゃダメだ!!堪えろ!!!)
死に行く者の視線が怖くて深海は顔を上げられない。
「御使い様、貴方のお陰で我々は苦しまず逝けます」
「貴方の薬のお陰で私たちは今とても穏やかです」
「糞尿と腐った臓物の溢れかえった道端で私たちは死ぬはずでした。でも今は柔らかいベッドで清潔なシーツに包まれ雨に濡れず風にも吹かれず安らかに逝けるのです。
我々がこの病気を持って逝きます。
御使い様、どうか王様のお傍に何時までも居て下さい。カグウ王の傍で、この先も私たち家族を、友人を守って下さい」
眠たそうな虚ろな目で死に行く者たちは深海を見ていた。
決して不幸でないと思っている安らかな目だった。
誰にも罵声を浴びせられることなく深海は収容所を出た。
深海はミホクにケシの実を集めてくれと頼んでいた。
死に行く者が苦しまないように。
アヘンを作り出した。
アヘンはモルヒネなどを含む代表的な麻薬の一種だ。
ケシ科のケシの花が散ってから約10日後、果(さくか)が未熟なうちに特殊なナイフで縦に浅く切り傷をつけ、にじみ出てきた乳液がしばらくして固まってくると、これをへらでかき取って集め、弱く加熱乾燥させたものがアヘンである。
これを塊状としたものが生アヘンであり、この生アヘンを粉末とし、モルヒネの含有量を9・5~10・5%に調整したものが日本薬局方のアヘン末である。黄褐色ないし暗褐色で特異なにおいがあり、強い苦味を有する。
アヘンは中枢神経を麻痺させ、鎮静、鎮痙、鎮痛、鎮咳、止瀉、催眠および麻酔補助の目的で使用される。
効果はモルヒネと同様であるが、作用は緩やかで遅い。
副作用として悪心、嘔吐、頭痛、めまい、便秘、皮膚病、排尿障害、呼吸抑制、昏睡など慢性中毒をおこし、廃人同様になる。
その感受性は個人差が大きい。
だが廃人になるほどの時間は患者には残されていない。
きっと心地よく逝けるだろう。
だが地球では戦争すら起こすほどのモノを作り出してしまった怖さが深海にはあった。
これが王都に蔓延すれば深海が来た時以上にカカンは崩れていただろう。
だからアヘンだけはミホクにも手を出させなかった。
心配するのはブラッグタッグの収容所で介護をしている者たちがアヘンに興味を気をひかれないかだ。
神に仕える者として麻薬には手を出してほしくない。
その旨はカグウに頼み込んで大司教に伝えて貰っているのだが。
「大丈夫だってフカミちゃん。大司教はカグウに心酔しているから言いつけは必ず守られるよ。フカミちゃんが危惧するようなことはカグウが起こさせないから安心して良いんだよ」
フィルドが深海の頭を撫でる。
「今覗きましたね?」
「てへ、ゴメンね~フカミちゃんがあんまり悲痛な顔してるから」
「勝手に覗いた罰として少し路地裏で胸を貸して下さい」
「いいよ~俺の胸堪能してね♡」
その言葉は軽薄な様で今の深海にはありがたかった。
約束通り路地裏で胸を借りて深海はこの世界に来て初めて泣いた。
多分相手がフィルドでなかったら引きそうなほどわんわんと大泣きした。
15歳にもなってこんな風に泣くのは恥ずかしかったが深海の背中に回されて抱きしめてくれるフィルドの右腕と頭を撫ぜてくれる左手の体温を感じて「泣いて良いんだよ」とフィルドがそんな仕草で甘やかすものだから深海は30分も泣き明かした。
腫れた目はフィルドが回復魔法で治してくれた。
異世界に落ちたことは幸運なことではなかったけど、こんな風に自分は優しくされているのだと感じるたびに深海はこの世界が少しずつだが愛おしくなっていくのを感じていた。
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