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《189話》

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 サラに説明だけをしてマーガレットは帰って行った。
 正確にはサイヒの下に帰って行った。
 今日は姉妹でパジャマパーティーらしい。

「サイヒ様のパジャマ、きっと凄、く素敵で、す」

 マーガレットは流石はサイヒの姉と言うべきか可愛らしさが天元突破しているような人物だった。
 愛らしい顔立ちに柔らかな雰囲気、可愛らしい声。
 美の基準が綺麗に特化しているサイヒには無い魅力だ。
 そんなところにローズ王太子も惹かれたのだろう。

 だがそれでもサラのサイヒ至上主義は変わらない。

 しかし、サイヒが美しすぎるせいで女性として羨んだことは無かったが、サラは初めて女性を羨んだ。
 可愛さに特化した女性と言うものを初めて見たのだ。

 今までサラの周りにいた女性は美人が多かった。
 サイヒから始まり、ナナも然り。
 ラックも美人の部類である。

 それにくらべてサラは可愛い系だ。
 だから最初から同じ土俵に上がっていなかった。

 だがサラはマーガレットに会った。
 ”可愛い”存在。
 男が夢中になるであろう魅力。
 それは美人の持つ魅力とは違った。
 そしてサラはこんな風になりたいと思ったのだ。

「可愛いを、教えて、貰う…誰が良い、ですか、ね………?」

 サラは今まで出会った女性を思い出す。
 だがやはり女性の最上位はサイヒしか思いつかない。
 マーガレットに直接可愛いの秘訣は聞けない。
 それにサラにマーガレットの可愛いは真似できない。
 あれは産まれた時から愛おしまれて”可愛い”存在に作り上げられた可愛さなのだ。
 先天的要素も多いが、後天的要素が大きすぎる。

 もうサラは19歳だ。
 後天的要素で可愛いを極めるのは難しい。

 さらに言うなら、マーガレットの可愛さはセブンの隣に立つ可愛さではないと思う。
 王太子の横に立つ存在が持つ可愛さと無邪気さと柔らかさだ。
 セブンの横に並ぶなら、家庭的で優しくてそれでいて頼りになって人をほっこりさせるような、そんな可愛さが求められる気がする。

「でも、そんな、人物…………」

 サラは考える。
 記憶の端に何かが引っかかるのだ。

 可愛くて
 優しくて
 頼りになって
 人をほっこりさせる

 そんな人物がサラの脳裏にチラチラと浮かび上がる。

 マーガレットに負けないくらい可愛くて、それでいて方向性の違う誰かが居た気がする。

「う~、思い、出せない、です………」

 頭を使うとどっと疲れる。
 脳味噌はの使用は意外とカロリーを使うのだ。
 サラはマーガレットが持ってきてくれたマドレーヌに手を伸ばし口に運んだ。

「ん、美味しい、です。でも、もっと美味しいの、食べた事ある気、が?」

 セブンの作った物だろうか?
 もっと家庭的で、それでいて絶品なマドレーヌを食べた事がある。
 この家でも診療所でも無く、どこか珍しい場所で。

「美味しい物食べた、思い出…?」

 セブンにはしょっちゅう美味しい物を食べさせて貰っている。
 それ以外に負けないくらい美味しい物を食べた思い出だ。

「サイヒ様の、結婚式、ご飯も、ケーキも、美味しかった、です」

 天界。
 そう天界だ。
 サラは天界で手作りで絶品の食事を取った事を思い出した。

 そして同時に思い出した。
 サイヒが隣に居ることを認めた存在。
 サイヒに妹のように可愛がられている存在。

 可愛くて、優しくて、頼りになって、人をほっこりさせる、マーガレットの魅力にも負けない存在。

「マロンさん!!」

 サラはサイヒの専属侍女であるマロン・スクワラルの事を思い出したのだった。
 そしてマロンの持つ可愛さと能力はサラが求めているもの。
 
「天界に行く!です!」

 サラはこぶしを握り締め、瞳に炎を宿すのであった。
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