婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

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《123話》

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「青天の霹靂」

 青く晴れた空に突然におこるかみなり。思いがけない突発的事変のたとえ。

 [使用例] 邦枝が日本を去るというのは青天の霹靂であった[有吉佐和子*地唄|1956]

 [解説] 中国南宋の詩人陸りく游ゆうの詩「九月四日雞未鳴起作」にあることば。英語に、ほとんど同じ発想で比喩的意味も変わらないA bolt from (out of) the blue.があり、その定訳ともなっています。

 いきなり何だと思われるであろうが、現在レオンハルトが喰らった衝撃はその言葉そのものだった。
 セブンの家に帰ってきたが誰も居なかった。
 診療所は昼までだったらしいので、何処かに行ったのだろうとは思っていた。
 先に家に帰ったレオンハルトは己に宛がわれた部屋でのんびりグラビア雑誌を読んでいた。
 金持ち極まりない。

 この世界では紙は高級品だ。
 紙の名産地のカカン王国と文明の発達しているクロイツ王国ではそうでもないが、他国では質の良い紙と言うのは中々に値が張る。
 なので雑誌はかなりの値段である。

 しかもグラビア雑誌。

 媒体を紙に乗せるのは高度な技術だ。
 クロイツでは印刷機があるが、ディノートには無い。
 つまりは魔術で紙に女体を映写したわけだ。

 何が言いたいのかと言うとレオンハルトが読んでいるグラビア雑誌はディノートでは物凄い値段だと言う事だ。

 ソレを時間つぶしに買っちゃうレオンハルト。
 流石クロイツの宰相にして公爵家の主。
 金持ちである。
 そんなに金があるなら診療所に寄付でもしてやれ、と思うがレオンハルトは仕事は出来るし友情にも熱い男だが、脳と肉体の8割は煩悩、主に色欲で出来ている。
 エロイこと以外に金を使う趣味は無い。
 全く持って残念なイケメンだ。

 そんな下半身に脳があるようなレオンハルトが、初めて男にときめいた。

 空色の髪に翡翠の瞳。
 神が何年もかけて作り出したかのような美貌。
 立っているだけで垂れ流す存在感と色香。
 物凄い美少年をセブンが連れて来た。

 そして美少年が上目遣い(身長差のせい)でレオンハルトに「よろしく」と言った時、レオンハルトの心臓がキュン、と音を立てた。

(何?何この美少年!?うわ、ありえねーっ!男にときめいた!しかも抱きたいとかじゃなくて、何か雄のフェロモンに当てられてときめいた!!この俺が?一晩で女10人抱きつぶすこの俺が?男に乙女みたいにときめいた!?ありえねーありえねーありえねー!!!!!)

 足元がガラガラと崩れていくような絶望感。
 レオンハルトは目の前が真っ暗になった。
 そして膝を折り、地面に突っ伏した………。

「セブン氏、彼は何処か具合が悪いのか?」

「いえ、多分自分に絶望してるだけです」

 セブンはレオンハルトの性格をよく知っている。
 そして自分の男としての魅力に自信満々な事も理解している。
 なのでレオンハルトが床に突っ伏した理由を分かってしまった。
 感想は「こいつ、やっぱりアホだったんだな…」である。

「レオンハルト、サイヒ様は女性だぞ」

「なにぃっ!!」

 ガバリ、とレオンハルトが物凄い速さで立ち上がる。
 そしてサイヒを上から下まで見て…。

「いや、男だろ?」

 そうのたまった。

「おま、何て無礼なことを!」

「だって下半身が反応しない。俺の下半身が反応しない女など存在しない。3歳から墓場までが俺のストライクゾーンだ。今はナナ一筋だが」

「ちょ、何言ってるのよ恥ずかしい!」

 ナナが頬を赤くする。
 満更でもないのであろうか?
 サキュバスがする反応としては乙女的である。

「ふむ、ナナ氏の番か。下半身が反応しないのは申し訳ないが、これでも私は女だ。今は男装をしているがな」

「レオンさん、サイヒ様、は、女性です、よ!!」

「え、マジで女………?」

「「「マジ」」」

 ガクリ。
 再びレオンハルトが膝から崩れ落ちた。

「こんなに美しい女性に勃たないなんて…俺は男失格だ………」

 _| ̄|○のポーズに再びなったレオンハルトの前にサイヒはナナを突き出した。

 ギュンッ↑↑↑

「おうっ!」

 レオンハルトのエロンさんが勃った。
 一瞬だった。
 ナナの足を見ただけでレオンハルトのエロンさんは硬度を取り戻した。

「勃った………俺は、ちゃんと男だった…不能じゃ無かった…………」

 ボロボロと大粒の涙が廊下を濡らした。
 事と内容が違えば感動的な絵面だったかもしれない。
 実際にはレオンハルトのエロンさんが元気になっただけである。

「私の存在のせいで落ち込ませてすまない。元気を出してくれ御仁」

 サイヒがレオンハルトの目を見つめる。

 キュン♡

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁざああっ!!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 レオンハルトが奇声を発し、ナナを担いで家の外に飛び出した。
 サイヒの雄の色香に再びときめいた自分が許せなかったのだ。
 そして恐怖した。
 サイヒなら男でも抱かれて良いかも、と本能が思ったことを。
 結果、レオンハルトはナナ(と書いて獲物と読む)を持って逃げ出した。

 今頃雄の本能を取り戻すべくナナを喘がしている事だろう。
 猥褻罪で捕まらないよう外でだけは止めておいて欲しいものだ。

「え、と…サイヒ様、取り合えずお茶でも淹れますのでリビングでお待ちください」

「あぁ、世話になる」

 セブンの立ち直りは案外早かった。
 だてにレオンハルトの親友をしていない。
 だが今の出来事でできれば知人位に戻りたいと思ったのはセブンだけの秘密であった。
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