【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

22 七月のお誕生日会はやります  成人

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 あっという間に日にちは過ぎて、七月のお誕生日会の日になった。
 吉野よしのが急にいなくなってすごく悲しかったり、お葬式っていう初めての儀式に参加したりしたけれど、何があっても、夜がくれば眠くなって寝るし、お腹が空いたらご飯を食べる。俺たちは、いつも通りにご飯を食べて、お仕事をして楽しいことをする。
 近しい人に悲しいことがあった後は、嬉しい儀式などは控えるものらしいけれど、皆がいつも通りに笑っている方が祖母も喜ぶと思います、と斑鹿乃むらかのが言ったから、七月のお誕生日会は、いつも通り開催されることになった。
 順番だから。充分に年を重ねたから。本人が穏やかに逝ったから。
 色んな言葉で吉野よしのの人生の最後は語られた。
 誰もが、最初に悲しんだ後は穏やかで、じいじは、次はわしだな、と言った。順番だからな、と。
 じいじはものすごく元気で強いままだから、まだまだ長生きしそうだな、と思って笑った。皆もそう思っていて、

「九条さまが先、とは私はなかなか大変に頑張らなくてはなりませんな」

 と、じいやが言った。じいじの次はじいやらしい。もう二人ともじいさんだから、そうなるのか。おじいさんとおばあさんになる約束は果たしたから、いいのか?

「うーん。でも、じいじがいなくなったら悲しい」
「ははは。わしも、吉野よしののようにひ孫の顔は見たいからのう。まだ大丈夫そうじゃ」

 ひ孫?

末良すえよし?」
末良すえよし吉野よしののひ孫じゃな。わしの孫は三郎さぶろうじゃから、三郎さぶろうの子どもがわしのひ孫じゃ」
「おおー」

 三郎さぶろうが結婚して、赤ちゃんが生まれたらそれがじいじのひ孫。三郎さぶろうはまだ結婚もしていないから、まだまだかかりそう。

「ふふ」

 元気なおじいさんっていいな。常陸丸ひたちまるは元気なおじいさんになりそう。緋色ひいろは、どんなおじいさんになるかな。
 俺は?

「ふふふ」
「ん?」
「色んなおじいさんがいて面白い」
「そうか」

 俺が知ってるおじいさんは、強くて元気な人ばっかりだなあ!絵本とだいぶ違う。
 おばあさんって吉野よしの以外にいるかな。
 あ。
 灯可とうか見可みかの話によく出てくる緋見呼ひみこさま!
 ………………。
 絵本とだいぶ違うな?おじいさん達より、もっと絵本と違うな……。
 吉野よしのくらい歳を取らないと、白い髪の毛と丸くてしわのある顔にならないのかしら。
 うーん。
 緋見呼ひみこさまが、おばあさん……。
 乙羽おとわも、こんな感じかもしれない?
 おばあさんになっても、丸くてしわのある顔にはならないんじゃない?

 
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