【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

21 白い髪の毛と丸い顔  成人

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「ね?なるもおじいちゃんになる約束しよ」
「おじいちゃん?」

 おじいちゃんって何だっけ?絵本に出てくる、白い髪の毛や髭の人のこと?おじいさん?
 俺?俺がなるの?おじいさんに?白い髪の毛とお髭のおじいさんに?

「私と斑鹿乃むらかのはおばあちゃんになるから、なるはおじいちゃんになるの」

 おばあちゃん。絵本でおじいさんの隣にいる人だな。おばあさんって書いてある人。おじいさんとおばあさんは、だいたいいつも一緒にいるよね。
 ふーん……。
 ん?
 ええ?乙羽おとわがおばあさん?腰が曲がって、何だか丸くって、にこにこしてる、あのおばあさん?
 俺は、ひゃひゃひゃ、と笑ってしまった。

「何よ、なる。何笑ってるの?……っと」

 乙羽おとわは大きい声を出しかけて、口を押さえる。
 しー。末良すえよしが寝てるからね。
 いっぱい遊んで、おやつを食べてジュースを飲んだら、末良すえよしはねんねしてしまった。電池が切れたみたいに、こてんと寝た。可愛い。
 水瀬みなせがお布団を運んできて、俺の部屋に敷いた。斑鹿乃むらかのが、小さな声で水瀬みなせにお礼を言って末良すえよしを抱っこして、布団の上にそおっと下ろした。よっぽど疲れていたのか、末良すえよしはびくともしなかった。ほっ。

乙羽おとわがおばあさん」

 俺は、おじいさんとおばあさんの絵が書いてある絵本を取り出して見てみた。
 それから、乙羽おとわを見る。
 ひゃひゃひゃ。

「もう、何よ」
乙羽おとわがおばあさん」
「そうよ。おばあさんになって常陸丸ひたちまるに、じいさんやって話しかけるのよ」

 常陸丸ひたちまるがじいさん。

「…………」

 あ、うん。そっちは何となく思い浮かんだ。不動ふどうみたいになるんじゃない?それから、力丸りきまるがじい様って呼んでたあの人みたいになる。皆、そっくりだから分かる。
 不動ふどうの父上がじい様でしょ。ほら、父上の後でじいさんになってる。不動ふどう常陸丸ひたちまる力丸りきまるの父上だから、その後じい様になるんだよね。
 うん。常陸丸ひたちまるは、強いじいさんになりそう。じいじみたいに。ああ。あんな感じだ。

「え、何?そっちは笑わないの?」
「うん。常陸丸ひたちまるはじいさん」
「失礼ね。まだまだ若いわよ」
「ん?」

 斑鹿乃むらかのが、くすくす笑った。
 斑鹿乃むらかのも、吉野よしのみたいになるのかな。斑鹿乃むらかのは背が高くって、吉野よしのは背が低いし、顔もそんなに似てなかったけど、何となく吉野よしのみたいなおばあさんになる気がした。

「うん」
「何を納得してるの?」
斑鹿乃むらかのはおばあさん」
「ああ、想像ができたってこと?やーね。私たちもなるのよ」
「おじいさんとおばあさん?」
「そうよ」
「うーん、うん?」
「約束したからね」
「…………」
「なる。さっきうんって言ったから、もう約束よ?」
「うーん」

 俺と乙羽おとわがおじいさんとおばあさんになる姿は全く想像ができないんだけれど、約束してしまったみたいだ。
 そのうち白い髪の毛になって、しわができて。
 後で予想図を描いてみよう。
 白い髪の毛とお髭の生えた俺の顔と、白い髪の毛と丸い顔の乙羽おとわ…………。
 俺はまた、ひゃひゃひゃ、と笑ってしまった。


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