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第五章 それは日々の話
65 晴れの日の朝 緋色
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「早いな……」
重い瞼を開けてみれば、先に起きた成人が、いそいそと使用人風の服に着替えている。
「お仕事、お仕事」
「はあ?」
機嫌良く言うので、ぼんやりとしている頭を振って起き上がる。
カーテンの隙間から朝日が差し込んで、久しぶりの晴れ間を示していた。三日も続いた雨が、ようやく止んだらしい。
頭痛が止んだのか……。
ほっと息を吐く。意識なく寝込んだり、酷く苦しんだりする様子は無かったが、頭を揺らすと痛んだようだ。三日の間、ベッドの住人だった。大人しくベッドに居てくれたのは、成長の証だな。
決して無理をしなくなったことに安心する。
ただ、痛むときやしんどいときに休むことは覚えたが、休んだ後に体がすぐに動けるものではない、ということをまだ、理解していないらしい。
治った、と言っては性急に起き上がろうとして倒れ、調子の良いときのペースで歩き出しては転ぶ。まったくもって、目が離せない。
本当は、側にいるときは、全て抱き上げて移動したい、と思っている。大した重さもないし、くっついていれば嬉しいし、転ぶ心配もなくて安心だ。できることはなるべく自分でしたい、という成人の意志を尊重して言わないが。
「もう一日、大人しくしてたらどうだ?」
俺の提案は、んーん、と首を横に振るだけで却下された。
ああ、くそ。眠い。
俺が、ベッドで眠気とたたかっている間に、成人は機嫌良く着替え終わって、ベッドの横からちょいちょい、と手招きしてくる。もそもそとベッドの端に寄れば、ちゅっと口づけをされた。いつも通り、少しひんやりとしている。
「おはようの、ちゅー」
にこにこと言って離れる頭に下から手を当てる。ぐっと引き寄せて、もう一度。ひんやりとした唇が同じ温度になるまで、ちゅ、ちゅ、と口づけを落とした。
「あったかい」
ほわ、と嬉しそうに笑う。
そうか。
お前はキスが、あったかいのか。
暑がりの俺と、寒がりの成人。基本の体温も違う、別の生き物。
諦めて、頬を撫でた。
「外出は禁止」
離宮の中の行動くらいは、自由にしてやるか。どうせすぐに疲れて部屋に戻ることになるだろ。
「はーい」
今日は晴れ。秋の終わりの風が吹いている。
重い瞼を開けてみれば、先に起きた成人が、いそいそと使用人風の服に着替えている。
「お仕事、お仕事」
「はあ?」
機嫌良く言うので、ぼんやりとしている頭を振って起き上がる。
カーテンの隙間から朝日が差し込んで、久しぶりの晴れ間を示していた。三日も続いた雨が、ようやく止んだらしい。
頭痛が止んだのか……。
ほっと息を吐く。意識なく寝込んだり、酷く苦しんだりする様子は無かったが、頭を揺らすと痛んだようだ。三日の間、ベッドの住人だった。大人しくベッドに居てくれたのは、成長の証だな。
決して無理をしなくなったことに安心する。
ただ、痛むときやしんどいときに休むことは覚えたが、休んだ後に体がすぐに動けるものではない、ということをまだ、理解していないらしい。
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本当は、側にいるときは、全て抱き上げて移動したい、と思っている。大した重さもないし、くっついていれば嬉しいし、転ぶ心配もなくて安心だ。できることはなるべく自分でしたい、という成人の意志を尊重して言わないが。
「もう一日、大人しくしてたらどうだ?」
俺の提案は、んーん、と首を横に振るだけで却下された。
ああ、くそ。眠い。
俺が、ベッドで眠気とたたかっている間に、成人は機嫌良く着替え終わって、ベッドの横からちょいちょい、と手招きしてくる。もそもそとベッドの端に寄れば、ちゅっと口づけをされた。いつも通り、少しひんやりとしている。
「おはようの、ちゅー」
にこにこと言って離れる頭に下から手を当てる。ぐっと引き寄せて、もう一度。ひんやりとした唇が同じ温度になるまで、ちゅ、ちゅ、と口づけを落とした。
「あったかい」
ほわ、と嬉しそうに笑う。
そうか。
お前はキスが、あったかいのか。
暑がりの俺と、寒がりの成人。基本の体温も違う、別の生き物。
諦めて、頬を撫でた。
「外出は禁止」
離宮の中の行動くらいは、自由にしてやるか。どうせすぐに疲れて部屋に戻ることになるだろ。
「はーい」
今日は晴れ。秋の終わりの風が吹いている。
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