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第四章 西からの迷い人
こぼれ話 衣装部屋より 2
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名門五条家の当主夫妻が子宝に恵まれなかったことは、悪意を持って語られていたと聞いている。涼乃絵さまは、何度も離縁を提案されたけれど、五条さまが絶対に頷かなかったのだとか。離縁するくらいなら、当主を辞める、と一度本当に当主の座を退かれた。
後を継いだのは弟君だと伺っているが、その間に五条の領地は色々と不都合な事態を起こし、御前会議も締め出されたのだとか。
どこまでが本当なのかは分からない。私のように身分の高くない若者は、そんなこともあったのよ、なんていう年配の方々のお話を頷きながら伺うのみだ。
今、お子様はいないまま、当主夫妻でいらっしゃるということは、その弟君は、やはり何かをやらかして、もう一度五条さまが当主をされることになったのだろう。弟君のお子さまを育てようと準備していたのも、駄目になったようだ。
涼乃絵さまは、当主夫人でなくなった時に復帰された衣装部を、当主夫人に戻られても続けられている。五条さまが、好きな仕事をしている君のことが大好きなんだよ、と仰って辞めることはないと後押しなさったとか。
なんて素敵な旦那さまだろう。これも、本当のところは分からないけれど、たまに五条さまが、涼乃絵さまを衣装部まで迎えに来られて、一緒におられる様子を見ていると、ただの噂には思えない。ああ、私も、結婚しても仕事を続けていいよ、家事は協力しあおう、と言ってくれる旦那さまが欲しい!
何故なら、今、仕事が楽しくて仕方ないからだ。
「何をしていたの?」
着物を脱いで、上品なワンピースに着替えられた涼乃絵さまが、にこやかに歩いて来られた。手伝いに付いて行った同僚がそのまま、お茶の準備を始めたので、椅子をお譲りして、着物用のまとめ髪を外そうと背中に回る。涼乃絵さまは、もともと高貴なお生まれなので、私たちが何か手伝うことはすんなりと受け入れてくださる。
「この、くまの耳つきパーカーが完成したので、もう成人さまにお渡ししようかと話してました。」
「あら、可愛い。」
お墨付きをもらって、座ったままパーカーを手に説明を始めた先輩が嬉しそうに笑う。
「でも、こんなのは緋色殿下のお話の中には無かったので、殿下の反応が心配なんですが。」
ここにいる唯一の男性の先輩が、声を上げた。確かに、ようやく服のことに興味を持ってくれた緋色殿下の注文に、動物の形の服というお言葉は無かったが、何せ緋色殿下である。存在も知らないに違いない(断言)。
まったく着るものに興味が無く、あまり目立たない服とか、着やすいもの、しか言わない緋色殿下が、この靴下を成人のサイズで作ってくれ、と可愛らしい靴下を持って衣装部に来られた時には、衣装部に激震が走ったものだ。
ああ、あの感動の日!
靴下の可愛かったこと!成人さまを洋服屋さんに連れていってくれた乙羽さまには感謝しかない。
後を継いだのは弟君だと伺っているが、その間に五条の領地は色々と不都合な事態を起こし、御前会議も締め出されたのだとか。
どこまでが本当なのかは分からない。私のように身分の高くない若者は、そんなこともあったのよ、なんていう年配の方々のお話を頷きながら伺うのみだ。
今、お子様はいないまま、当主夫妻でいらっしゃるということは、その弟君は、やはり何かをやらかして、もう一度五条さまが当主をされることになったのだろう。弟君のお子さまを育てようと準備していたのも、駄目になったようだ。
涼乃絵さまは、当主夫人でなくなった時に復帰された衣装部を、当主夫人に戻られても続けられている。五条さまが、好きな仕事をしている君のことが大好きなんだよ、と仰って辞めることはないと後押しなさったとか。
なんて素敵な旦那さまだろう。これも、本当のところは分からないけれど、たまに五条さまが、涼乃絵さまを衣装部まで迎えに来られて、一緒におられる様子を見ていると、ただの噂には思えない。ああ、私も、結婚しても仕事を続けていいよ、家事は協力しあおう、と言ってくれる旦那さまが欲しい!
何故なら、今、仕事が楽しくて仕方ないからだ。
「何をしていたの?」
着物を脱いで、上品なワンピースに着替えられた涼乃絵さまが、にこやかに歩いて来られた。手伝いに付いて行った同僚がそのまま、お茶の準備を始めたので、椅子をお譲りして、着物用のまとめ髪を外そうと背中に回る。涼乃絵さまは、もともと高貴なお生まれなので、私たちが何か手伝うことはすんなりと受け入れてくださる。
「この、くまの耳つきパーカーが完成したので、もう成人さまにお渡ししようかと話してました。」
「あら、可愛い。」
お墨付きをもらって、座ったままパーカーを手に説明を始めた先輩が嬉しそうに笑う。
「でも、こんなのは緋色殿下のお話の中には無かったので、殿下の反応が心配なんですが。」
ここにいる唯一の男性の先輩が、声を上げた。確かに、ようやく服のことに興味を持ってくれた緋色殿下の注文に、動物の形の服というお言葉は無かったが、何せ緋色殿下である。存在も知らないに違いない(断言)。
まったく着るものに興味が無く、あまり目立たない服とか、着やすいもの、しか言わない緋色殿下が、この靴下を成人のサイズで作ってくれ、と可愛らしい靴下を持って衣装部に来られた時には、衣装部に激震が走ったものだ。
ああ、あの感動の日!
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