285 / 1,321
第四章 西からの迷い人
こぼれ話 衣装部屋より 1
しおりを挟む
皇国の王城の衣装部は、最近活気づいている。仕事が楽しくて仕方ない。
「やっぱりこの、パーカーの帽子に、くまの耳を付けたものは渡してしまってもいいと思うんですよね。」
「色は、薄い茶色と白と二種類作ってみたんですけど、やはりお気に入りのぬいぐるみと同じ白がいいですかね?もちろん、目は赤にして背中の真ん中の裾の方にもさりげなく赤の模様を入れてあります。」
「寝るときに、上下で着たらどうかと思って、ズボンのお尻にしっぽを付けてみたんですけど。」
「ああ、しっぽはやめた方がいいわ。座っても寝てもちょっと邪魔でしょ。」
「そうですね。可愛いと思うんですけど。」
「成人さまの服は、着心地と脱ぎ着のしやすさを忘れては駄目よ。いつ眠たくなられて寝てしまわれても心地好く寝られるように、緋色殿下が抱き上げられた時に、殿下の手に不快感が無いように気を付けないとね。」
「そうですねえ。とにかく細いですから、柔らかく包んでおきたいですよね。」
「男の子なんだから、格好いいのもお好きだと思うのだが……。」
今日は、赤虎さまと寧子さまの結婚式を王城の敷地内の神社で執り行い、披露宴を王城の大広間で開かれたので、休日であるが、着付けの手伝いやほつれた衣装の直しのために出勤してきている。
皇族の衣装と使用人たちの衣装を作るための部署であるので、本来なら五条となられた赤虎さまの衣装に関わることはないが、今回は、息子として送り出してやりたいとの陛下の意向で、王城での挙式、披露宴となったので、私たちも張り切って衣装を作らせて頂いた。赤虎さまは、扱いとしては皇族ではないため、赤を大っぴらには使えないが、薄桃色で黒の軍服の袖口に刺繍し、釦などにも薄桃色を使用した。寧子さまの白無垢の裏地も薄桃色で、今後のお衣装にも取り入れてもらうつもりだ。五条なら公務をお手伝いなさることもあるだろうし。
「先日のパンツ、喜んで頂けたかしら?」
「あのぞうは、完璧よ。きっと大丈夫。」
服や靴下は、身につけていらっしゃることが見えるから分かりやすいのだが、パンツだけは知りようがない。まあ、それも、王城で洗濯に出してくれれば分かる。洗濯係の知り合いに聞けば、使って頂けていることが分かるのだが、離宮ですべて済まされてしまうから、近寄ることもできない。
成人さまは時々、王城内をご機嫌で歩いてらっしゃるから、お声をお掛けしたいのだが、まさか、パンツは気に入って頂けましたか?とは聞けないし。
「あなたたち、まだいたの?」
「部長!お疲れさまです。本日は、赤虎さまのご結婚、おめでとうございます!」
呆れたような声が聞こえて、私たち四人は立ち上がる。
衣装部の部長、五条涼乃絵さまは、花婿の母として本日の結婚式、披露宴に出られていた。黒の留袖の裾には、薄桃色の花が金の模様と共に散っていて、とても素敵だ。金の帯にも、薄桃色の小花を散らし、五条が皇家と繋がったことを示していた。
「やっぱりこの、パーカーの帽子に、くまの耳を付けたものは渡してしまってもいいと思うんですよね。」
「色は、薄い茶色と白と二種類作ってみたんですけど、やはりお気に入りのぬいぐるみと同じ白がいいですかね?もちろん、目は赤にして背中の真ん中の裾の方にもさりげなく赤の模様を入れてあります。」
「寝るときに、上下で着たらどうかと思って、ズボンのお尻にしっぽを付けてみたんですけど。」
「ああ、しっぽはやめた方がいいわ。座っても寝てもちょっと邪魔でしょ。」
「そうですね。可愛いと思うんですけど。」
「成人さまの服は、着心地と脱ぎ着のしやすさを忘れては駄目よ。いつ眠たくなられて寝てしまわれても心地好く寝られるように、緋色殿下が抱き上げられた時に、殿下の手に不快感が無いように気を付けないとね。」
「そうですねえ。とにかく細いですから、柔らかく包んでおきたいですよね。」
「男の子なんだから、格好いいのもお好きだと思うのだが……。」
今日は、赤虎さまと寧子さまの結婚式を王城の敷地内の神社で執り行い、披露宴を王城の大広間で開かれたので、休日であるが、着付けの手伝いやほつれた衣装の直しのために出勤してきている。
皇族の衣装と使用人たちの衣装を作るための部署であるので、本来なら五条となられた赤虎さまの衣装に関わることはないが、今回は、息子として送り出してやりたいとの陛下の意向で、王城での挙式、披露宴となったので、私たちも張り切って衣装を作らせて頂いた。赤虎さまは、扱いとしては皇族ではないため、赤を大っぴらには使えないが、薄桃色で黒の軍服の袖口に刺繍し、釦などにも薄桃色を使用した。寧子さまの白無垢の裏地も薄桃色で、今後のお衣装にも取り入れてもらうつもりだ。五条なら公務をお手伝いなさることもあるだろうし。
「先日のパンツ、喜んで頂けたかしら?」
「あのぞうは、完璧よ。きっと大丈夫。」
服や靴下は、身につけていらっしゃることが見えるから分かりやすいのだが、パンツだけは知りようがない。まあ、それも、王城で洗濯に出してくれれば分かる。洗濯係の知り合いに聞けば、使って頂けていることが分かるのだが、離宮ですべて済まされてしまうから、近寄ることもできない。
成人さまは時々、王城内をご機嫌で歩いてらっしゃるから、お声をお掛けしたいのだが、まさか、パンツは気に入って頂けましたか?とは聞けないし。
「あなたたち、まだいたの?」
「部長!お疲れさまです。本日は、赤虎さまのご結婚、おめでとうございます!」
呆れたような声が聞こえて、私たち四人は立ち上がる。
衣装部の部長、五条涼乃絵さまは、花婿の母として本日の結婚式、披露宴に出られていた。黒の留袖の裾には、薄桃色の花が金の模様と共に散っていて、とても素敵だ。金の帯にも、薄桃色の小花を散らし、五条が皇家と繋がったことを示していた。
543
お気に入りに追加
5,083
あなたにおすすめの小説
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる