【BL】欠陥Ωのオフィスラブストーリー

カニ蒲鉾

文字の大きさ
83 / 131
3【招待という名の呼び出し】

3-1もう一度イチから(1)

しおりを挟む
 
 
 
 怒涛の美樹彦さん襲撃事件があった次の日。
 
 
 例え前日に大変な事があろうとも通常通り人間みな平等に朝はやってきて、平日である今日もグズることなく朝から元気な子供たちの通園準備をする傍ら、自分も出勤準備を整えていた。
 
 
「つかささん、変わります」
「ごめん楓真くんお願い」
「「ぱぁぁぱぁぁっ」」
「はーいパパだよ~」
 
 
 先に準備が整った楓真くんがリビングへ顔を出し、子供たちの支度をバトンタッチしてくれると急ピッチでネクタイを結び髪を整えに洗面所へと駆け込んだ。
 
 
 
 *****
 
 
 
「それじゃあふぅくん、つぅくん、今日も先生の言う事をよく聞いて、お友達と仲良くね」
「元気よく楽しんでおいで」
「「あーい」」
 
 
 僕と楓真くんのほぼ決まり文句のような言葉にいいお返事で返す子供たちの頭をそれぞれ撫で手を振ると、先生に「お願いします」と挨拶をして保育園を後にする。
 見える限りいつまでも手を振り続ける双子に後ろ髪引かれる思いで車へ乗り込み出発するとそのまま会社へ向かった。
 
 
 
 *****
 
 
 
 特に渋滞等に巻き込まれることも無く、楓真くんの運転する車が会社の敷地を跨ぎそのまま社長専用駐車場へとスムーズに入り停止したのを確認すると、「運転お疲れ様」とお礼を言いシートベルトをはずそうとする僕を「つかささん」と呼ぶ声が引き止める。
 ん?とそちらに顔を向けたその一瞬に、ちゅっと掠める柔らかい感触。
 あまりにも一瞬のことに目をぱちくり瞬いていると、にっと少年のように笑う楓真くんの無邪気な笑顔が僕を見つめていた。
 
 
「エネルギーチャージいただきました」
「……お粗末さまでした」
 
 
 車から一歩外へ出れば僕たちの関係は秘書と社長。
 この瞬間、最後のエネルギーチャージを満足そうに満たした楓真くんは切り替え早くさっさと一人車から降りていくかと思えば、わざわざ助手席側へと回りドアを開けてくれる。
 衝突を防ぐ為、頭上の車枠へ手を添えることも忘れずエスコートしてくれる姿は楓珠さんしかり御門の男の嗜みなのかもしれない。
 
 
「足元気を付けてくださいね」
「ありがとう」
 
 
 楓真くんの助けを受けスムーズに車から降りると、そのまま半歩後ろへ控え歩いてすぐの会社入口へ向かおうとした、その時、僕たちを待ち構える人物がいた。
 その人影にいち早く気付いたのは楓真くんだった。
 
 
「はぁ…社長室に、って言ったのに…」
「え?」
 
 
 ボソリと呟く楓真くんの呟きを拾うよりも先に、カツンと靴音を静かに響かせ僕たちの前へ現れたのは昨日の今日で決意を決めたのか、顔つきが若干違って見える湖西くんだった。
 
 
「おはようございます、社長、橘先輩」
 
「おはよ、わざわざ待ってなくても…律儀だな」
「社長へ挨拶するより先に秘書課へ行くのが気まずくて…」
「まぁ、確かに」
 
 
 昨日は楓真くんの判断で湖西くんを秘書課へ戻すことなくそのまま帰宅させた事もあり、僕が楓真くんと共に秘書課へ戻った時には心配の声はかけられたもののその場に居ない湖西くんに対して皆触れてもいいのか微妙な雰囲気が漂っていたのは確かなこと。僕も楓真くんも特に何も触れないことから誰もその名前を出すことなくその日は退勤となった。
 当の本人もどういう顔をして行けばいいのか悩んでいたらしい。
 美樹彦さんとの関係が顕になってから見せた大人びた態度で忘れかけていたが元々僕が見ていた湖西くんは後輩色の強い元気な性格をしていた。どちらが彼の本心かはわからないが、気まずそうな顔をする湖西くんを見て社会人に成り立ての10以上も年下の男の子なのだと実感していた。
 
 
「とりあえず一旦このまま社長室行こうか。つかささんは途中まで一緒に行って先に出勤してください、湖西と話してからそっち行かせます」
「承知致しました」
 
 
 湖西くんもこくりと頷いたのを確認すると楓真くんを先頭に社内へと向かう。
 エントランスで受付に挨拶をされながら社員証を機械へかざしスルーすると、まだ出勤者も疎らなエレベーターホールでは呼べばすぐに降りてきたエレベーター。
 他社員と乗り合いになる事もなく三人だけで乗り込み、進んで操作盤の前に立つと目的階である15のボタンを押した。
 
 
 

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...