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2【動き出す思惑】

2-44閑話休題

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 ちなみにこれは余談。
 
 リビングのソファでそのまましばらく二人だけの時間を過ごしたのち、再びまったりしている時の僕と楓真くんの会話でのこと。
 
 
「ねぇ楓真くん…この際だから聞いてくれる?」
「ん、どうかしました?」
「実はねここだけの話、何かあるとしたら湖西くんよりも松野さんの方かな…って初対面の時から少し思って彼を若干警戒しちゃってたんだよね…はー…自分の当たらない勘が恥ずかしい…」
「あー松野さん…確かにあのわざとらしいメガネの奥に何か含んでそうな目してますよね」
「でしょ?人を見かけで判断しちゃダメだね…」
 
 
 しゅん、とする僕の頭を楓真くんはクスリと笑いながら撫でてくれる。
 
 
「警戒するのはいい事ですよ。自己防衛ができて偉いです。あとはそれを俺にも相談してくれれば完璧でしたね」
「あ…確かに……次からそうします」
 
 
 そうしてください、と笑う楓真くんとこの話はここで終わりになるかと思っていると、そんな予想に反して「だけど」と接続の言葉を使い続きがあるように匂わせてくる。
 不意な続きに、ん?と首を傾げ言葉を待った。
 
 
「あれ実際、何かありますよ」
「え」
「多分ですけど……花ちゃん狙いかなって俺は予想してます」
「え!?」
 
 
 ここで聞くとは思ってもみなかった花野井くんの名前の登場に驚き背後に座る楓真くんの顔を勢いよく振り向き仰ぎ見る。
 その彼の表情は不意をついたことを面白がっているのか、ニヤッと笑っていた。
 
 
「気付いてます?松野さん、アルファなんですけど、なんか花ちゃんを見る目が――」
「え、ちょっと待って松野さんがアルファって所から知らなかった…」
「やっぱり。あの人見た目からして上手く隠してますもんね、フェロモンも完璧なほど隠せてます」
「人を見かけで判断しちゃいけないね…」
「ははっ二回目」
 
 
 ぽかん…と呟く僕に破顔してまで笑う楓真くんをぽかりと小さく殴った。
 
 
「でも、わーー…そっか、そっかぁ…知らなかった…確かに今日所々で花野井くんをフォローする松野さん、よく見かけたかも…」
「でしょ。その時の花ちゃんを見る松野さんの目が、守りたいほっとけない、そう言ってるように同じアルファとして俺は見えました」
 
 
 とても説得力のある楓真くんの言葉に何度も「なるほど…」と繰り返してしまう。
 
 
「えー…そう言われてから考えると、あの二人の雰囲気お似合いな感じに思えてきたかも…」
「見た目も性格も凸凹感がピッタリですよね。まぁまだわかんないですけど、あくまで俺の予想です」
「だね。はぁー…もしそれが本当で上手くいくようなら、二人はアルファとベータっていう性にとらわれずなるようになって欲しいなぁ…」
「そうですねぇ」
 
 
 玉の輿に乗りたい!と強く意気込む無邪気な姿を長年近くで見てきたかわいい後輩花野井くんの幸せを願って独りごちる僕の呟きに優しく相槌を打つ楓真くんは、後輩の色事にソワソワする僕を終始微笑ましそうに眺めていたらしく、正面のテレビに反射するその光景を見るまでしばらく気付かなかった。


 
 
 
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