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3【発情期】
3-13 怒り(2)
しおりを挟む13階は全部屋会議室で構成されたフロア。
大中小様々なサイズで計7部屋存在し、その用途に合わせて使用申請を出し貸切とする。
エレベーターを降りてすぐの壁にある使用状況を確認する電光パネルでは全ての部屋が使用中となっていた。
……その割には、人の気配がまったくしない。
いくら防音対策がしっかりした会議室といえど、人がいればその気配はする。
それが全部屋使用中となれば絶対だ。
なのに、このフロアに降り立った途端、異様なまでにシーンと静まり返った今ここで会議が行われているとは到底思えなかった。
絶対にこのフロアで間違いない。
確信を持ち奥へと向かう。
守衛室で確認した防犯カメラの会議室は一番奥の部屋だった。念の為そこにたどり着くまでに通過する部屋は全て確認しながら早足で進んでいく。
磨りガラスの扉を覗き、ドアノブを回して中を確認する。
これを6回繰り返したが、奥以外の全ての部屋は使用中のランプはついていてもやはり中には誰もいなかった。使われた形跡もない。
全てフェイクで借り出されていた。
予想はしていたがため息が漏れてしまう。
残るは奥まった位置に存在する小会議室。
その場所はもう目と鼻の先。
普段、奥すぎる位置なのと、会議をするには使い勝手の悪いサイズ感という理由であまり使われる事がないその場所から、いままでの6部屋とは違ってしっかりと人の気配を感じることが出来た。
ドアノブに手をかけ、ゆっくり回す。
何故か音を立てないよう慎重な動きとなってしまう。
いまにも心臓がバクバク飛び出てしまいそうなくらい暴れ狂っている。
もし、この扉の向こうでつかささんが最悪の状況になっていた場合、果たして俺は冷静でいられるのだろうか……。
正直自信はない。
だから、そんな状況にはなっていないでくれ――そう祈る気持ちでドアノブをゆっくり回していった。
目に飛び込んできた光景は、願いも虚しく、最悪で、最悪で、最悪な状況――
「―――っつかささん!!!」
アルファ2人に前と後ろから抱えられるつかささん。
その姿は、シャツをギリ纏っていると言えるくらい心もとなく、下半身はむき出しの状態で無理やり開かされ、その腹には白濁の液体がドロっと広がっている。
そんなつかささんは意識があるのかないのか、顔は俯きここからでは判断がつかなかった。
ただひとつ言えるのは、扉を開けた瞬間香ったつかささんの爽やかな柑橘系のオメガフェロモンが今ではとぐろをまくよう、ドロドロと甘ったるくあたりを埋めつくしている。
尋常ではない雰囲気なのは一目瞭然だった。
今すぐにでもあのアルファ2人から引き離し手中におさめたい。そんな衝動に行動を移す……直前。
「楓真さん、ようこそいらっしゃいました」
「っ!」
「さすが、たどり着くのがお早い」
「……椿姫秘書。これは、一体どういう事ですか」
「んー…そうですねぇ…見ての通り、橘さんを襲ってます」
扉付近に優雅な態度で椅子に座り、入口に立ちつくす俺に驚くどころか話しかけてくる椿姫秘書にその勢いは削がれてしまった。
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