16 / 67
1【運命との出会い】
1-16 ない記憶(2)※
しおりを挟む自分は昨夜、本当に楓真さんと―――
そんな考えが頭を過ぎると、途端に太ももに触れているこの手がもっと卑猥に動く様をつい想像してしまい、ひぅっと息を呑む。
そんな僕を見て妖艶に微笑む楓真さんの吐息を間近に感じながら、今もなお太ももの際どい箇所に触れる右手と、抱き込む左腕が布越しに潰す右胸に全神経が集中し、心臓がありえない速さで暴走している。
自分が今どんな表情で、何を求めているのか、よくわからない。
ただ、何も覆われていない無防備な穴の奥底からとろぉっと溢れベットシーツを濡らす感触が、これはまずい……と警報を鳴らす。
「……はっ、ぁ」
「――っ、つかささん今自分がどんだけエロい顔してるかわかってますか」
「……っ、わ、からな……ぁっ」
「くっそ、人が必死に…」
小刻みにびくっびくっと反応してしまう身体に戸惑っていると、耳元でちっと舌打ちが聞こえた――次の瞬間、太ももにあったはずの右手がその更に奥に伸ばされていく。何をするのだろう…なんて思う暇もなく、ピンと伸ばされた楓真さんの綺麗な中指が普段触れることの無い閉じた箇所にそっと触れた。
くちゅ…っと耳を覆いたくなる音が、そこから聞こえてくる。
「ぅ…、そ」
「つかささん、濡れてる…」
「やっ、言わないで―――」
かわいい、と耳元で囁かれびくっと肩が揺れる。
どんどん進む手の侵入を拒もうと必死に足を閉じて抵抗するも、人間の二本ある両手のうち右手は奥に、左手は徐々に頭をもたげる僕の性に触れ、なんの抵抗にもならない。
「ゃ、やめっ」
「つかささん、みて?」
見せつけるかのようにゆっくり焦れったく左右の手を動かされる。
「前も後ろもぬるぬるしてる…気持ち?」
「――っんぁ、」
かと思えば、わざと音をたてるように粘性の液体がかき混ざる独特のくちゅくちゅといった音を響かせながら激しいピストン運動を繰り返し、いつの間にか二本に増えた指がくぱぁと入口を広げる。そんな抽挿と中を掻き回す動きを交互に繰り返されていた。
まさに視覚からも聴覚からも犯されている気分に余計羞恥に襲われる。
奥で感じているのか、前で感じているのか、もうわけがわからず、気付けば僕を攻めるたくましい腕に無我夢中で縋っていた。
「もっ、やぁ、だめ、やめ」
「うん気持ちいいね。つかささんはどこをどうされるのが一番好き?」
「わ、わからな―――」
「ふふ、じゃあ身体に聞くね」
「ひぁっ!?」
押してはいけない、秘密の場所を二本の指がぐいっとした途端、今までにないくらい身体が大きく飛び跳ねた。
「見ぃつけた」
その時の顔を見ていないのに、妖艶に微笑む楓真さんの表情が想像できたのは一瞬の事。
ビリビリがずっと続く身体はわけがわからず、視界もチカチカ火花が散る。
そこはダメ、そう口にするよりも先に、その一点に集中してありとあらゆる触り方を身に受ける。
感度が極まりすぎてもはやある種の拷問ではないか、と溢れる涙が止まらなかった。
「ぁっ、あっ、だめ、だめっ」
「んーん、だめじゃない、いく、でしょ?」
「やっ、やぁっいっ、んんっぅ―――」
頭が真っ白にるのと同時に楓真さんの手を濡らす液体が前と後ろどちらから出たものなのかわからないまま、全身の力が抜けていく。
「はっ、はっ……」
「……はぁ、昨日我慢したのに、結局」
そんな楓真さんの呟きをどこか遠い意識で聞きながら、瞼が閉じていくのに逆らうことができなかった。
*****
本当に、断じて、そんなつもりは無かったと神に誓って断言できる。
だけどつかささんのあの表情とフェロモンが我慢のリミットを崩壊させた。むしろ最後まで手を出さなかっただけでも褒めてほしいところである。
……なんて、犯罪者は皆そう言う。
結果やってしまった事には変わりない。俺が全部悪い。目が覚めたら土下座してでも謝ろう……嫌われたくはない。
そう一人反省会をしつつ、意識を失ったつかささんを抱き上げ備え付けの浴室へ運ぶ。
つかささんが身に纏う一枚のスエットを簡単に脱がすと、そのままカラの浴槽へそっとおろし、水温調節したシャワーを優しくかける。
濡れる太ももは目に毒すぎて直視できず、いの一番に洗い流す。
正直、昨夜も危なかった。
キスまではしてしまったがその先はすんでのところで思いとどまり、いい子で待てができたのだ。だけど無防備にすやすや眠るつかささんを目前に何もしないで終わるのは悔しくて、少しでも朝起きて意識してくれたらなという悪戯心で服と下着を脱がし、代わりに自分のを着せた。
そしてあと何か…と考えた末、太ももの内側に跡を残した。
赤く綺麗に色付いた跡を満足気に眺め、そのまま彼を抱いて眠りについたのだが、まさか次の日の朝想像以上の出来事になるなんてその時の俺は全く思いもしなかった―――。
綺麗に洗い流したつかささんを柔らかいタオルに包み込み再び抱き上げ寝室に戻る。
一番に目に飛び込んでくるのは明らかに事後です、と主張する所々液体で濡れたしわくちゃのベット。
それだけで先程の光景が鮮明に頭をよぎる。
指先で感じた温かい粘膜が俺のそれを包み込むのを想像しただけでやばかった。
「はーー…やりたいざかりの童貞かよ…」
そんな独り言を漏らしながら、一旦シーツを全て剥ぎ取り床に落とす。綺麗になったベットにつかささんを抱えたまま腰を下ろした。
今までそういう経験をしてこなかったと言ったら嘘になる。
生まれ持ったアルファ性のせいか、言い寄られることは日常茶飯事。
けれど、好きでもない人と肌を重ねる行為に抵抗があり、必要最低限どうしてもその衝動から逃れられない時のみ、必ず避妊具を使用しリスクの低いセーフセックスを前提とした後腐れのないベータ女性のみを相手に選んできた。それも終われば虚しいだけ。
性的に寄ってくる男も女もどうでも良く、シンプルに運命の番以外眼中になかった。
そんな俺が、やっと出会えた運命―――。
昨夜のつかささんも今朝のつかささんも、俺の理性をぶち壊すには十分だった。
コンコン
「二人とも起きてる?」
いつまでも邪な考えにとらわれた思考を、突如として平日の朝の日常に呼び戻すかのように扉が開き、顔を出した父さんと目が合った瞬間、うわぁと歪められる表情。そして―――
「ワンコじゃなくてオオカミだったか……」
「……未遂です」
罪悪感でいっぱいだった。
51
お気に入りに追加
1,395
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる