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1【運命との出会い】
1-16 ない記憶(2)※
しおりを挟む自分は昨夜、本当に楓真さんと―――
そんな考えが頭を過ぎると、途端に太ももに触れているこの手がもっと卑猥に動く様をつい想像してしまい、ひぅっと息を呑む。
そんな僕を見て妖艶に微笑む楓真さんの吐息を間近に感じながら、今もなお太ももの際どい箇所に触れる右手と、抱き込む左腕が布越しに潰す右胸に全神経が集中し、心臓がありえない速さで暴走している。
自分が今どんな表情で、何を求めているのか、よくわからない。
ただ、何も覆われていない無防備な穴の奥底からとろぉっと溢れベットシーツを濡らす感触が、これはまずい……と警報を鳴らす。
「……はっ、ぁ」
「――っ、つかささん今自分がどんだけエロい顔してるかわかってますか」
「……っ、わ、からな……ぁっ」
「くっそ、人が必死に…」
小刻みにびくっびくっと反応してしまう身体に戸惑っていると、耳元でちっと舌打ちが聞こえた――次の瞬間、太ももにあったはずの右手がその更に奥に伸ばされていく。何をするのだろう…なんて思う暇もなく、ピンと伸ばされた楓真さんの綺麗な中指が普段触れることの無い閉じた箇所にそっと触れた。
くちゅ…っと耳を覆いたくなる音が、そこから聞こえてくる。
「ぅ…、そ」
「つかささん、濡れてる…」
「やっ、言わないで―――」
かわいい、と耳元で囁かれびくっと肩が揺れる。
どんどん進む手の侵入を拒もうと必死に足を閉じて抵抗するも、人間の二本ある両手のうち右手は奥に、左手は徐々に頭をもたげる僕の性に触れ、なんの抵抗にもならない。
「ゃ、やめっ」
「つかささん、みて?」
見せつけるかのようにゆっくり焦れったく左右の手を動かされる。
「前も後ろもぬるぬるしてる…気持ち?」
「――っんぁ、」
かと思えば、わざと音をたてるように粘性の液体がかき混ざる独特のくちゅくちゅといった音を響かせながら激しいピストン運動を繰り返し、いつの間にか二本に増えた指がくぱぁと入口を広げる。そんな抽挿と中を掻き回す動きを交互に繰り返されていた。
まさに視覚からも聴覚からも犯されている気分に余計羞恥に襲われる。
奥で感じているのか、前で感じているのか、もうわけがわからず、気付けば僕を攻めるたくましい腕に無我夢中で縋っていた。
「もっ、やぁ、だめ、やめ」
「うん気持ちいいね。つかささんはどこをどうされるのが一番好き?」
「わ、わからな―――」
「ふふ、じゃあ身体に聞くね」
「ひぁっ!?」
押してはいけない、秘密の場所を二本の指がぐいっとした途端、今までにないくらい身体が大きく飛び跳ねた。
「見ぃつけた」
その時の顔を見ていないのに、妖艶に微笑む楓真さんの表情が想像できたのは一瞬の事。
ビリビリがずっと続く身体はわけがわからず、視界もチカチカ火花が散る。
そこはダメ、そう口にするよりも先に、その一点に集中してありとあらゆる触り方を身に受ける。
感度が極まりすぎてもはやある種の拷問ではないか、と溢れる涙が止まらなかった。
「ぁっ、あっ、だめ、だめっ」
「んーん、だめじゃない、いく、でしょ?」
「やっ、やぁっいっ、んんっぅ―――」
頭が真っ白にるのと同時に楓真さんの手を濡らす液体が前と後ろどちらから出たものなのかわからないまま、全身の力が抜けていく。
「はっ、はっ……」
「……はぁ、昨日我慢したのに、結局」
そんな楓真さんの呟きをどこか遠い意識で聞きながら、瞼が閉じていくのに逆らうことができなかった。
*****
本当に、断じて、そんなつもりは無かったと神に誓って断言できる。
だけどつかささんのあの表情とフェロモンが我慢のリミットを崩壊させた。むしろ最後まで手を出さなかっただけでも褒めてほしいところである。
……なんて、犯罪者は皆そう言う。
結果やってしまった事には変わりない。俺が全部悪い。目が覚めたら土下座してでも謝ろう……嫌われたくはない。
そう一人反省会をしつつ、意識を失ったつかささんを抱き上げ備え付けの浴室へ運ぶ。
つかささんが身に纏う一枚のスエットを簡単に脱がすと、そのままカラの浴槽へそっとおろし、水温調節したシャワーを優しくかける。
濡れる太ももは目に毒すぎて直視できず、いの一番に洗い流す。
正直、昨夜も危なかった。
キスまではしてしまったがその先はすんでのところで思いとどまり、いい子で待てができたのだ。だけど無防備にすやすや眠るつかささんを目前に何もしないで終わるのは悔しくて、少しでも朝起きて意識してくれたらなという悪戯心で服と下着を脱がし、代わりに自分のを着せた。
そしてあと何か…と考えた末、太ももの内側に跡を残した。
赤く綺麗に色付いた跡を満足気に眺め、そのまま彼を抱いて眠りについたのだが、まさか次の日の朝想像以上の出来事になるなんてその時の俺は全く思いもしなかった―――。
綺麗に洗い流したつかささんを柔らかいタオルに包み込み再び抱き上げ寝室に戻る。
一番に目に飛び込んでくるのは明らかに事後です、と主張する所々液体で濡れたしわくちゃのベット。
それだけで先程の光景が鮮明に頭をよぎる。
指先で感じた温かい粘膜が俺のそれを包み込むのを想像しただけでやばかった。
「はーー…やりたいざかりの童貞かよ…」
そんな独り言を漏らしながら、一旦シーツを全て剥ぎ取り床に落とす。綺麗になったベットにつかささんを抱えたまま腰を下ろした。
今までそういう経験をしてこなかったと言ったら嘘になる。
生まれ持ったアルファ性のせいか、言い寄られることは日常茶飯事。
けれど、好きでもない人と肌を重ねる行為に抵抗があり、必要最低限どうしてもその衝動から逃れられない時のみ、必ず避妊具を使用しリスクの低いセーフセックスを前提とした後腐れのないベータ女性のみを相手に選んできた。それも終われば虚しいだけ。
性的に寄ってくる男も女もどうでも良く、シンプルに運命の番以外眼中になかった。
そんな俺が、やっと出会えた運命―――。
昨夜のつかささんも今朝のつかささんも、俺の理性をぶち壊すには十分だった。
コンコン
「二人とも起きてる?」
いつまでも邪な考えにとらわれた思考を、突如として平日の朝の日常に呼び戻すかのように扉が開き、顔を出した父さんと目が合った瞬間、うわぁと歪められる表情。そして―――
「ワンコじゃなくてオオカミだったか……」
「……未遂です」
罪悪感でいっぱいだった。
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