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第31話 ついてきたもの
しおりを挟む火おこしをする私たちとは別に、ニャルラとガウェインはテントを張ったり、炊事の準備をしたりと忙しそうにしていた。
そんな二人の様子を見ていた私は「お姉さんと弟のようね」と感想を口にする。
アリシアとガウェインを見ていても同様に姉と弟のように見えるあたり、ガウェインは弟キャラなのかもしれない。
こちらの視線に気づいたガウェインの動きは少しぎこちないものになっていた。
ガウェイン達がキャンプの準備を進めていく中、シグマも火おこしを終える。
魔力がある世界なのだから「魔法で火をつけてしまえばいいのでは?」と思うかもしれないが、実際はそうもいかない。
というのも、この世界に広く伝わっている魔法と言うのは「魔法陣」であり、発動には複数名の協力もしくは長時間の準備が必要なのだ。
私が生まれたときに体内に埋め込まれた「制御魔法陣」や、誘拐されたときに騎士団が使おうとしていた「封印魔法陣」なんかがそうである。
それゆえ、日常の雑務を魔法で処理しようとすると余計に手間と時間がかかるという結果になるのだ。
生前の日本でもなかなか業務の自動化が普及していなかったのと似たような理由である。
とはいえ、インフラ機能としての魔法陣は大いに役立っているので決して評価されていないわけではない。
つまり、この世界での魔法陣は「電化製品」のような役割を果たしているのだ。
「まあ、大戦時代は「詠唱」で魔法を発動する「化け物」も結構いたらしいけどね」
魔王軍の書庫で読んだ本に書いてあったわと独り言つ私。
それを近くで聞いていたシグマが「当時は詠唱すらしない奴もいたぞ」と懐かしそうに言う。
それを聞いた私は「まるで魔法使いね」とつぶやくのだった。
焚火の灯のみが頼りになるほど暗くなった森の中。
周囲の植物に燃え移らないようにひらけた土地にキャンプを設置した私たちは、テントなんかも張り終えて炊事の時間となった。
夜目が利くシグマがどこからか捕まえてきた動物たちを解体する私たち。
野兎の肉なんかは数日間熟成させるのがベストなのだが、そうも言ってられないのでその辺で入手した香草を使って臭みを消していく。
ニャルラにも料理を手伝ってもらい、手早く調理をすませる。
豪快な腹の音を鳴らすシグマを待たせるわけにもいかないので、さっそく食事の時間となった。
「お嬢様の料理は野外でもおいしいですね」
食材は現地調達のバーベキューでも料理が上手なのはすごいですと、肉を一口食べたガウェインが褒める。
同じく、シグマやニャルラも「やっぱり料理長を弟子にするぐらいだから旨いな」ととても喜んでいた。
森の中に肉が焼けるいい匂いが漂う。
野生の魔物たちが寄ってきたりしないのか?と気になった私であるが「問題ない」とシグマが言う。
というより、今ここにいるシグマとニャルラに寄ってくるような奴はいないとのことだった。
「ただ、山を越えたらそうもいかないがな」
邪神教のテリトリーに入った後は慎重に行動する必要があるというシグマ。
グレイナル山脈の手前側は魔王軍の領域だから安心してよいとのことだった。
しかし、そんな話をしている時に問題が起こる。
「シッ!何か聞こえるニャ……」
肉を食いながら談笑していた私たちの空気をぶった切ってニャルラが言った。
人差し指を口元に当てた彼女が目を閉じて耳を澄ませる。
私には何も聞こえないけど、シグマもニャルラと同じように「何かいるな……」とテントの方を見た。
隣に座るガウェインが「お嬢様、気を付けてください」と言って剣を片手に立ち上がる。
一同の意識が全部テントに集中した時であった。
「……もきゅ……もきゅ…………」
なんだか聞き覚えのある声がテントの中から聞こえてくる。
気が抜けたように息を吐いたニャルラは「ちょっと行ってくるニャ」と立ち上がってテントへと向かう。
一同はニャルラが歩いていくのをその場で見守っていた。
彼女がテントの中に不用心に入っていくと、すぐに中からこちらへと戻ってくる。
「どうやら寝具の中に隠れてついてきてたみたいニャ」
焚火へと戻ってくるニャルラの腕の中には真っ白でモコモコとしたまん丸なウサギがいた。
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