炎上ラプソディ 

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
上 下
33 / 36

33

しおりを挟む
統久はキョロキョロと周りをもの珍しい様子で眺め、漂うフェロモンとシーツを巻いただけの格好に眉を寄せる人達の中を闊歩しながらホテルに向かう。
「あそこにいるより楽しいな」
見るもの全てに目を奪われている様子に、シェンは微笑ましくなるが、軽く息をついてホテルの入口に向かって手を引く。
「……辛かっただろ。もっと早くに迎えに行きたかったが」
会わせてくれると言われたのもあって出方を伺っていたのもあったが、確証が欲しかったのもある。
「わかんない。ウォンは怖かったけど、別に辛くはなかったよ。セックスは楽しいし。ウォンはオメガが嫌いみたいだけどさ」
少し考えながら部屋の鍵をうけとるシェンに、気楽そうな表情で伝える。
楽観的なのは、記憶を無くしても変わらないようだ。
あまり敵のことを悪く言わないのも、なんとなく腑に落ちない。
まあ、それが調教ってやつなのかもしれないが。
自分の服の替えをもってきたが、統久には少し小さいかもしれない。
エレベーターで階をあがって、部屋の鍵を開くと統久はぐいと腕を掴み返して、シェンを引っ張り込む。
「ねえ、いいかげんに名前教えてよ、ご主人様」
首に腕を回して唇を寄せる相手に、シェンは鼓動を早くする。
「シェン……だ」
「シェンね、綺麗な名前だな」
肩で結んだシーツの結び目を掴んで解くと、ばらっと布が床に落ちて全裸の身体が晒される。
ほんのり赤みがさして、欲情した目を向けられる。
「煽るのうますぎるな」
「そう?よくわからないけど、ね」
腕を伸ばして指先で、雄の膨らみを辿る仕草は蠱惑的で、無意識ではやっていないだろう。
淫らな視線を向けたまま、ジッパーを下ろしてズボンを引き下ろすと、身体を屈めて頬を寄せて擦り付ける。

このまま、記憶を無くした彼を手に入れて、ずっとこうしていたい。
などという欲望にかられるが、シェンは軽く首を振る。
きっと、そんなことは彼には不幸でしかない。
「シェン……ねえ、早くほしいな」
囁くように呟くと、下着をおろして勝手に引き出すとさきっぽを唇へと含み、緩やかに舌先を絡める。
「待ては教えて貰わなかったのかよ」
「ん、っむ、ふ……っ、おしえられたけど……好きじゃない」
喉の奥まで頬を膨らませて飲み込み、チュパチュパとはしたない音を響かせて吸い上げる様に、だんだんと昂りが増してくる。
「両脚、開いてみろよ」
声をかけると既に先走りや愛液で濡れた下腹部が顕になる。

「びしょびしょじゃねえか、ホントに堪え性ないな」

低く呟くとシェンは統久の後頭部を掴んでぐいと喉奥を突き上げた。


いつもの彼よりも欲望に正直というのが感想だ。
頭をとらえられながら腰に回した腕を引き寄せて貪りつくす姿は、綺麗な獣のようだ。
ウグッウグッと漏れる呻きにさえ興奮してしまう自分に驚きながらも、シェンは喉奥を容赦なく突き上げる。
「ーーッううう……ッ」
ビュッと口内へと欲を吐き出すと同じ、足元に生暖かい感覚を覚えて下を見下ろすと、統久の下肢が精液にまみれて、床をびしょびしょに濡らしている。
感じすぎて膀胱が緩んだのか。
ゆっくりと引き抜くと恍惚の表情を浮かべて、飲み込めなかった白濁を唇から零しながら、荒く呼吸を繰り返している。
「ーーッも、お、がまん、できないッ、はやく、はやく」
脚を開いて腰をあげて媚びる様に、シェンはたまらず統久の頭を掴んで引き上げる。
ふわりと絡むフェロモンの空気に、ひどく暴力的な感情を煽られるが、抑えるように拳をぎりと握り締める。
「せっかく上等なベッドあるんだし、使わなきゃ損だろ」
引きずるように腕を引いて、クイーンサイズのベッドへとつれてくると、衣服を脱ぎ出す。
戦闘してきた後で昂りは最高潮である。
こっちもいいかげん我慢できねえしな。
ずりずりとベッドに這い上がり、統久は両脚を開いてシェンの腰に腕を回す。
「シェン、ま、てない」
掠れた色気を含んだ声は、濡れて男をさそう。
まるで生まれつきそうであるかのように、貪婪な表情を浮かべて腰をあげてひくつくアナルをシェンの太腿へと押し付ける。
「滅多に見られないよな。楽しませてもらってから……記憶が戻るか試させてもらうよ。それくらいの役得はいいだろ」

このまま、自分のものにしたい欲求もある。
黙っていれば気づかれない。
作戦で記憶を無くしたと報告すればいいだけだ。
刷り込みでオレを主人として認識してしまったと、総監に報告して、それから……正式に彼を手に入れることも多分できる。

だけど、オレはベータだ。
もしもオレがアルファなら、それが彼の幸せになるかもしれないと思える。
「シェン……は、やく」
「せかすなよ、ちゃんと挿れてやる」
切っ先を押し当てゆっくりとズブズブと狭い腸道へと押し込んでいく。

ベータでは孕ませることはできても、満足させることはできない。発情を抑えることも。
クスリが効かないなら尚更、30を超えたら10年は外に出られなくなってしまうだろう。 

外に出さなきゃいい。
そんな利己的な考えもあるけどな。
そんなの、ガラじゃない。

「ッあ、あッ……はあ、ああ、ッくる、ッ、熱いッ」
「熱くてふてえだろ?」
「ンッ、ふ、ッああ、いいッ……ッ」
腰を擦り付けて奥まで欲しいとねだる様に、シェンはゆっくりと腰をまわして弱い箇所を狙って突き上げを繰り返し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩
BL
全寮制の男子高校で嫌々風紀委員長になった姫川歩が嫌々ながら責任感を持って風紀の仕事をする話。 一度、王道学園での非王道のお話を書いてみたかったので書いてみました。 男前受けです。

処理中です...