炎上ラプソディ 

怜悧(サトシ)

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目を開いた筈なのに視界は暗い。
手脚が重たいのは拘束されているからだろうか。軽く動かすと鎖の響きが少し鈍いところがある。緩めてくれているのか。
状況判断をくだすと、統久は腰をわざとらしくモゾモゾと動かして、左右に首を振る。
「ッん、っはぁ、シェル、シェル.....みえない、よ」
シェンが近くにはいないことは気配で分かっていたが、恋人に甘える声を出して腰をあげる。
「.....残念だったね。鹿狩統久君だよね、君の企みは全て露見しているんだよ」
くっくっくと笑う声は悪役らしく野太く、そして徐に手を伸ばして統久の肌に手を這わせる。
「ッ、て、ちが、う、ちがうッ」
シェンの飲ませた薬は偽薬だが、強烈な促進剤だとの話なので感じている演技をしなくてはいけない。
統久は触れられる度にビクビクと背筋を震わせて、たまらないように腰を押し付ける。
「おやおや、恋人以外でもいいのかい。シェル·イライズ君は怒ってしまうのではないかな。この映像は彼にも見せるからね」
耳元で囁きながら、開き始めている色づいたあわいに指先を伸ばして焦らすようになぞりあげる。
「ッンンンッ、ああ、ああ、ッ、はあ、ぼくは、ハイルだ、シェルのとこに戻して」
「ちゃんと調べがついているんだよ。君の記憶を消して、安全なオメガにしてから、ちゃんとイライズ君に返してやるから、心配するなよ」
つぷっと穴の中に玩具を埋め込み、様子を伺うような表情を浮かべると、黒服の男は無遠慮にその体を抱き上げて、ストレッチャーへと載せる。

少なくとも、ここは基地の中だろう。
玩具が体内で震えているのがわかる。
「暗い、の、こわい。あああっ、あああ、とっ、て、とって」
感じ過ぎて怖いのだという雰囲気を出すと、統久は腰を揺らしてストレッチャーをギシギシと揺さぶる。
男は仕方がないとばかりに、統久の目隠しを外す。
場所は、コテージではない。
灰色の鉄壁が見えるので、機体の中かどこかの建物だろう。
「ッは、あ、ああっ、ここ、どこっ、シェル、ああ 、シェルはどこっ、ぉ」
聞いて答えてくれるとは思わなかったが、統久は男に問いかける。

「コロニーだよ。凶悪囚人の矯正施設だ。」
オークションでの仲介は昔君に潰されたからねと、にっこりと笑うと、男は手にしたリモコンを弄って強いに設定した。

チャンスは、いま、だけだ。
統久は緩んでいる腕の拘束を少しずらして嵌めている指輪のスイッチを1度軽く押した。


ストレッチャーで運ばれている今だけがチャンスだろう。身体を抵抗するように暴れさせながら、腕を伸ばして少しづつリングのボタンを押していく。
「ッ、はァ、は、あ.....なんで、こんな、こと」
「それは、君が1番分かっていることじゃないか。純情な青年を騙して潜り込ませて.....酷い売女だな」
じっと目を見据えてくる男は、すっかりシェンの演技に騙されているようである。
「.....ッしら、ない」
「まあ、真実がどうでもら構わない。君がそっくりさんだとしても、記憶を消しておけば憂いはない」
首を振り続ける統久に、彼は笑いかけてずんずんとストレッチャーを奥に進める。
このまま、大ボスのところまで行ければこちらの思惑通りだ。
「流石に、彼と面通しすれば真偽はわかるからな」
スイッチが強へと切り替えられて、思考が覚束無くなっていくのがわかる。
統久は、廊下の壁にリングを向けて爆弾を設置しながら、身体を跳ねさせる。
シャーと音が響きストレッチャーがエレベーターに乗せられ、上昇する。
そして、広いフロアへと転がされて執務室へと連れてこられる。
中はぐずぐずになっているが、まだ意識は保てる。
リングを何度か押して、朦朧とする視界に部屋の主の顔を見上げた。
「.....発情期ではないようだね、促進剤は飲ませたのかい」
ゆっくりと歩みよる顔には、見覚えがある。
幼い時に父の元を訪ねてきていた。
「効いてないですかね。力は出ないようですけど」
「覚えてないかな。私はウォンバット.....といっても、君が小さい頃の話だからな」
そうだ、ウォンバット·テイラー極東管理官だ。このあたりの辺境の警備官たちの長である。
この工作も全て報告済で、大体の計画は上に伝えてある。
手回しがいいわけだ。
こんなのが大ボスならば、捕まえられるわけが無い。

シェンのことは報告に入れておかないで良かったな。
「ッ.....な、ぜ.....ウォンバット管理官、あな、たが、ッンンンッ、ッふ」
声を出そうとすると、スイッチを絶妙に変えられて声がうわずり喘ぎ声に変わる。
「優秀な君もやはり所詮はオメガでしかないよ。オメガは金になるからね。私は、いわゆる派閥争いに負けて辺境などに飛ばされたからね、金が必要なんだよ」
分かるよねと呟いて、統久の頬をゆっくりと撫でる。

「まあ、煩わしい総監の息子をここでいたぶってあげようとね、ずっと計画を聞いてから君がくるのをたのしみにしていたよ」
にっこりと笑うと顔を寄せてくるのに、甘い匂いが充満してくるのを感じて、統久は指輪のボタンを長押しすると、すとんと指から床に落とした。
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