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おじさん求婚される

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「飲んでいいよ~。で、あんた魔力無いよね?使い切ったにしては平気そうだし。元々無い感じ?ゼロ?」
「・・・はい。生まれつき魔力を持っていません。」

「すご~い。そんな人いるんだ。あれ?ん?面白い。」
「そうですか・・・。」
「結婚しよ?」
「はぁ?」

「だから~、結婚しよ?」
「・・・。」

聞き間違いだと思った。そしてもう一度言われて、それが聞き間違いではないことが分かったが、理解はできなかった。

「いいよね?俺、かなり優良物件だよ?
宮廷魔術師だし収入も安定してる。家もあるし、顔も結構綺麗だと思うんだよね。
それに強いし、魔力無くて不便してるところとか補ってあげるよ。掃除とか全部やってあげる。結婚してくれるよね?」
「あなたは、、」
「ラウロ。俺の名前はラウロだからラウロって呼んでよ。」

やっぱり私の話など全然聞く気がないらしい。話を遮られて名前を呼ぶよう言われた。


「ラウロ、あなたは恐らく20代半ば辺りですよね?立派な仕事もある。私はもう40代も後半に差し掛かろうとしているおじさんで、魔力を持っていない。そんな私と結婚したいと言う理由が分からない。」
「ん~、直感?別に年齢とかよくない?気になるなら老化止める魔術使おうか?
それより名前は?」

「シモンです。
たとえ年齢がよくても、私はラウロのことをよく知らないしラウロも私のことをよく知らないのに無理でしょう。」
「シモンね。大丈夫大丈夫。これから知っていけばいいじゃん。」
「結婚は知ってからでも遅くないのでは?ラウロは若いのだし結婚を急ぐ理由が分からない。」

「え~だってうかうかしてたら取られちゃうかもしれないじゃん。」
「魔力のない私と結婚したいと思う者などいませんよ。だからこんな歳まで1人なんですから。」
「ん~でもダメ。すぐに結婚したい。」
「なぜです?後になって後悔するのはあなたですよ?」
「後悔なんてしないよ。俺、人生の中で一度も後悔したことなんてないし。」

「それでも、私がとんでもない悪人かもしれないんですよ?結婚などそんなに出会ってすぐにするものではありません。」
「ねぇねぇ、色々言ってるけどさ、シモンも絶対に嫌ってわけでもないんでしょ?
俺のことが嫌いだとか、生理的に無理とかなら無理かもしれないけど。理由を並べてもさ、最後には自分がどうしたいかでしょ?嫌じゃないなら俺のものになっちゃいなよ。」

「・・・。」

確かに嫌だとか嫌いとかは言っていない。
生理的に無理ではないが、好き嫌いを判断するにはまだ情報がなさすぎるだけであって、それだけで嫌ではないと判断されても。

「結婚式は大聖堂でいい?衣装は俺が用意するし。家だけど、もしかしてここじゃ狭い?もっと広いところの方がいい?」
「いや、ちょっと待ってください。まだ了承していないですし、話を進められても困ります。」
「じゃあさ、シモンは何が引っ掛かってるの?了承できない理由は何?」
「引っ掛かっていることしかないですよ。むしろ了承できる理由がない。」

「あ、もしかしてちゃんと愛してるって言って欲しいタイプ?え、なんか可愛いんですけど~
愛してるよ~、シモン愛してるよ~、大好きだよ~」
「・・・。」

なんだその吹けば飛ぶような軽い『愛してる』は。
よく知らないおじさんの私のどこを愛すると言うのか。ラウロと話していると頭痛がする。
愛とか好きとかは無いのが当然として、なぜ私と結婚しようとしてるのか全く分からない。

「あ、キスする?」
「は?」

ラウロはひらりと飛んで、私は2人がけのソファーに押し倒されてキスされた。
本当に何が起こっているんだ?
夢か?そうか。夢だな。きっと最近少し忙しくて疲れておかしな夢を見ているんだ。
魔力のない私が結婚などあるわけがない。
夢なら早く覚めてくれればいいのに。いや、誰かに必要とされたいという願望が夢に現れたのか?だとしたらやはり私はひとりぼっちなのが寂しかったのか。

と思ったが、唇の隙間から侵入してくる舌の温かさと、吐息の温かさ、口の中を撫でられる感触はリアルすぎる。
現実逃避をしていただけで、やはりこれは夢ではなく現実なのか。
理解が追いつかない頭で、キスって気持ちいいんだななどと思いながらボーッと彼のキスを受け入れた。

「されるがままでいいの?抵抗しないならそれ以上もしちゃうよ?」
「は?それ以上?」
「そう。俺はしたいけどね。シモンとセックス。」
「・・・冗談でしょう?。」

「本気だよ。だってシモンのこと好きだし。」
「ラウロに好きになってもらうような要素が私には無いんですが。」

掴まれた手さえ振り解けないのに、私の力では組み敷かれた状態から逃げ出すなんて無理だろう。
こうなったら話をして諦めてもらうしかない。

「あるよ。顔。」
「え?」

好きになってもらう要素としてまさか顔なんて言われるとは思ってなかった。
なんの特徴もないような平凡な顔なんだが・・・。無理矢理捻り出した結果か?

「他にもあるよ。冷静なところ。魔力が無いところ。まぁちょっと違うけど。
あと、俺には無いこの筋肉も好きかな~。あと、優しいところ。っていうか全部かな。だから俺のものになって?」
「い、意外とあるんですね・・・。」

そんなに色々挙げられてなんだか嬉しいと思ってしまった私がいた。
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